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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄66
 翌日。カナールから離れた草原の上空に、ルミナスの姿があった。
 その表情に普段の穏やかさはなく、目は猛禽の如く細められている。

「……いたっ!」

 叫びつつ、光の下位魔法の砲弾を連続で地上へ打ち込むルミナス。
 
 が、一瞬前までそこにいた狼型の魔物達は上空からの不意打ちを早急に察知していた。

 周囲の草木を揺らしながら、猛スピードで逃げていく魔物の群れ。
 彼らの動きに一瞬遅れるように、草原に点々と穴が開いていく。

 その機動性は素晴らしいが、ルミナスの位置は上空。
 多少早く逃げたところで、その動きは全て把握できる。
 下位魔法の乱打で徐々に逃げ道を潰し、その軌道を操っていく。

 魔物がある地点にやって来たところで、ルミナスは光弾を群れの先頭の鼻先に叩き込んだ。
 その攻撃に怯んだ魔物達が一瞬停滞すると同時に、静かな声が響く。
 
「では、良き旅路を」

 上空から、矢の雨が降り注いだ。

 豪雨のように降り注ぐ矢が、次々に魔物に襲い掛かっていく。
 矢の貫通力は恐ろしく高く、強靭な魔物の体を易々と貫いてしまう。
 狙いも恐ろしく正確で、全てが心臓を穿っている。 

 結果、一秒にも満たぬ僅かな時間で二十を超える魔物は全て絶命した。
 彼らの命を奪った矢が並ぶ様は、さながら墓地のようだ。

 瞬く間に魔物の群れを葬った弓兵は、満足そうな顔で獲物の元へ舞い降りた。

「……流石ゼリスナード製。弦の材質もストームドラゴンの腱ですし、素晴らしいですわね」

「良い武器使ってるって言っても、あの短時間でこんだけの数の心臓正確に射抜くあんたも凄いと思うけどね」

 翼をはためかせて降下しながら、微笑むルミナス。

 ゼリスナード製の弓は確かに強力な武器だが、使いこなすには相応の技量が求められる。
 その強力さゆえに放つ時の反動も強く、狙撃にはより繊細な技巧が必要になるのだ。
 まして、それを使い速度に定評のある狼系の魔物数十匹の心臓を一瞬で射抜くなど、もはや曲芸の域だ。

「ふふ、これだけの武器を手にした以上、あの程度の芸当は出来て当然ですわ。
まあ、それはそれとして……存外、あっさり片付きましたわね」

「そうね。小口の依頼ばっかだったけど、こんだけ早く片付くと爽快だわ」

 シリルの横に置いてある巨大な布袋を眺めながら、軽く肩を回す。

 布袋の中には、計十匹以上の魔物の首が入っている。
 昨日ギルドで受けた依頼の、討伐対象のなれの果てだ。
 どれも弱い魔物で一件一件の報酬は安いが、これだけ集まれば相応の収入になる。
 
 二人は、たまにこうやって依頼を一気に片付けて副収入を得ている。
 あくまで副業なので早く終わらせられる魔物討伐系に偏ってはいるが、いつのまにやら冒険者ランクもCと高くなっていた。
 と言っても、これ以上のランク昇格は探索系や調査系など様々な種類の依頼を引き受けなければならない為、
二人にとっては事実上の限界値でもあるのだが。 
 
「しかし……これを持って帰るのは少々面倒ですわねぇ」

「ま、そこそこ報酬が良い依頼なんだからしょうがないでしょ」

 苦笑しながら、魔物の亡骸の首を一つ一つ落とし、袋に放り込んでいく。
 
 魔物討伐系の依頼全般に共通する事だが、証拠として死骸なりその一部なりを持ち帰らなければならない。
 今回はどの依頼も獲物の首だけでよかったが、噂では上位ドラゴン丸々一頭持って来いという時もあったとも聞く。
 それを思えば、たかが小型の魔物数十匹の生首ぐらい面倒でも何でもない。

 シリルも単に愚痴っただけなのか、軽く頷いて自身も亡骸の首を落とし始める。
 そのついでに、矢の回収も行う。矢は血に塗れてはいるが、手入れすればまだ再利用できるのだ。
 
 やがて全ての首が袋に放り込まれ、二人の作業が終わった。

「これで終わりっと。見落とした死体ないわよね?」

「はい。では、町に戻ると致しましょ……!?」

 視界の端に何かを捉え、シリルはすかさず左へ振り返った。

 見えたのは、そこそこ大きな魔物らしき影。
 それが凄まじい速さで視界を通り過ぎていく様子だった。
 その影はかなり離れた場所にいたはずなのに、瞬く間にシリルの視界から姿を眩ませてしまう。

 全く同じ物を見たルミナスが、鋭い面持ちで呟く。

「……とんでもない速度だったわね」

「ええ、私達で捉えきれない速度となりますと……」

 影が消えていった方角を睨み、唸る。

 やや反応が遅れたとはいえ、それだけで見失う程シリルの動体視力は甘くない。
 あれほどの速度を出せるとなると、間違いなく上位以上の魔物。
 中位ドラゴンさえ一対一で仕留めてしまう、恐るべき生物である。

 二人はしばし影が消えていった方角を睨みながら考えていたが、
 
「……ま、害があるようだったらそのうち稼ぎになるだろうし、
ないならどうでもいいし……放っときましょ」

 あっさりとした言葉と共にルミナスが荷を担ぎ、飛翔した。

 彼女が魔物退治を行うのは、あくまでも収入の為。
 危険だろうから、と無報酬で上位の魔物を退治する程御人好しではない。 

 後ろめたい思いが全く無いわけではないが――――実家の弟妹達が自立するまで、死ぬわけにはいかないのだ。
  
 そんな上司の思いを見透かしながら、シリルもまた無言で付き従った。

   




































 昼になり日が高く昇った頃、海人達は買い出しをしていた。

 彼らが買い集めた材料は、その大半が高級食材。
 牛肉は赤身と霜降りのそれぞれ最高峰を買い揃え、魚も刺身で食えるような鮮度の物ばかり。
 ついでに卵は味比べをしたいというシリルの要望の元、高価格帯から低価格帯まで一通り揃えている。
 量も凄まじく、知らぬ者が見たらどんな大規模なパーティーをやるつもりだと問われそうな量だ。
 
 が、それだけの買物をしている割に、彼らの財布の中身はさして薄くなっていなかった。
 買い始めた時よりは薄くなっているが、買った量と質を考えればもっと薄くなっていてしかるべきだというのに。

 その理由は――――今現在主の横で凛とした表情を若干上機嫌そうに緩めている値切りの鬼神。

「なかなか良い買い物が出来ましたね。流石に祭りとなると皆さん気前が良くなるようで」

 やや弾んだ声音で語る刹那に、周囲は引き攣った笑みを浮かべた。
  
 祭り中のせいか、食料品店も多くの店が普段より値下げして気前良く品物を売っていた。
 一割二割は当たり前、凄い所では全品半額という店もあった。
 それも、普段と同じ質を維持したまま。

 まさにお祭り騒ぎ特有の御奉仕価格。
 あまりの気前の良さに、普段買物にさして興味を示さない海人でさえ目を奪われた。
 
 が――――唯一、刹那だけは平然としていた。

 それどころか祭りの陽気で浮かれた店主達を相手にいつも以上に巧みに躍らせ、普段よりも迅速に値切っていた。
 相手の反応を見ながら上手く調子に乗せギリギリの額まで値切るその姿は、まさしく鬼神。
 それでいて相手に不快感を残さないのだから、恐るべき手並みだ。 

「ま、出費が少ないのは良い事だ。そこそこ稼いではいるが、私の収入にも限りがあるしな」 

「そういえば、今あんた月いくらぐらい収入あんの?」 

「秘密だ。が、屋敷のローンが無くなったんで、出費が激減したのは事実だな」

 ルミナスの問いを、苦笑してはぐらかす。

 海人は、控えめに言っても金持ちだ。 
 シェリスの屋敷のメイド達への授業料一つとっても破格。
 時折頼まれる書類処理の仕事の報酬も高い。
 
 更に、稀に行う食料品卸しが凄まじい。
 海人は創造魔法というある種反則的な魔法が使える為、その制約に引っかからない物は自前で作れる。
 おかげで一度の売却額が最低数十万だというのに、元手は0なのだ。
 そこらの商人が聞けばその反則ぶりに怒り狂う事必至だろう。

「その口振りからするとかなり稼いでんのね。
しかもあんたは金あんま使わないから余計に貯まるし。あー、羨ましい」

「そんなに羨むような話でもないと思うがな」

 ルミナスの冗談めかした言葉を受け流しながら、海人は肩を竦めた。
  
 確かに高額な所得を得てはいるのだが、海人には今一つ実感がない。
 
 というのも―――――この異世界に来て以来、海人の収入は激減しているからだ。

 彼が生まれ育った世界においては独自の研究で生み出した物の数々が特許を取得していた。
 以前はそれによって、黙っていても毎年億単位の金が入っていたのである。
 少し前までは、教師や事務処理、販売業などで金を稼ぐ事になるなど、夢にも思っていなかったのだ。
 
 が、素性を碌に明かしていないルミナスにそんな事を言えるはずもない。
 というか、もし言った場合次の瞬間にミンチにされかねない。
 彼女の家計事情は、かなり厳しいのだ  

「そんじゃ買う物買った事ですし、そろそろ帰りましょっ……ありゃ?」

 先導するように歩みを速めた雫が、その速度をいきなり緩めた。
 彼女の視線の先には、海人達が見慣れた冒険者の男の姿がある。

「おーっす、雁首揃えてどうした?」

 軽い調子で右手を挙げ、ゲイツ・クルーガーが挨拶してきた。
 
「見ての通り、食料の買い出しよ。あんたは?」

「ん、あー……ちっと、な」

 困ったように頭を掻き、言葉を濁す。

「何かあったのか?」

「いや、何があったってわけじゃ、いやあったっちゃあったんだが……」

「歯切れが悪いな。悩み事なら聞いてやらんでもないが?」

「あー悩み事って程じゃ……いや、悩み事っちゃ悩み事か。聞いてくれっか?」

 ゲイツの言葉に、海人だけでなくルミナス達も頷いた。
 彼らは人通りの邪魔にならないよう脇に寄り、ゲイツの話を待った。

「……いや、実はスカーレットの事なんだがな。
まあ、なんだ。散々待たせちまったから、結婚指輪以外にも何か送ろうと思ってんだが……何にするべきかと思ってな」

 照れくさそうに、頭を掻く。

 ゲイツは、かれこれ二年も婚約者との結婚を先延ばしにしていた。
 理由は一流の冒険者になるまでは、という大真面目な決意だが、それで二年も待たされた相手は堪らない。
 待たせた間散々愚痴られ時に殴られもしたが、それで帳消しになるような事でもないだろう。

 ゆえに、ゲイツは今まで待ってくれていた感謝を表したいと思っていた。
 こんな無駄な意地っ張りを待ってくれていた婚約者に、最大級の感謝を送りたいと。

「なんでもいいんじゃない? まあ、スカーレットさんなら装飾品よりは実用品の方が良さそうだけど」

 微笑ましそうにゲイツを眺めながら、ルミナスは自分の意見を述べた。

 ゲイツの婚約者であるスカーレット・シャークウッドは彼にベタ惚れだ。
 極端な話、それが心のこもった贈り物であるのなら、道端の石ころでも喜ぶだろう。

 ゆえに、物は何を選んでも問題は無い。

 ただし、その気性を考えると装飾品よりは実用品。
 日常的に使える物をより喜ぶはずであった。 

「やっぱそう思うか? でも、デートの時とか結構着飾ってくるから、
実は俺が知らねえだけで装飾品好きなんじゃないかとも思うんだよなぁ……」

 うーむ、と唸る。

 長い付き合いだが、ゲイツは未だ婚約者の好みを掴みきれているとは思っていない。
 料理人という職業柄良い調理器具を送るととても喜んでくれているが、装飾品の類も十分に喜んでくれるのだ。
 そしてその次のデートの時は、必ず送った物をそれに見合った衣装と共に身に付けてきてくれる。

 自分が知らないだけで、実はお洒落したいという願望があるのではないか、と思わずにはいられなかった。

「可能性は否定いたしませんが、恋人とのデートに気合を入れない女はいない、というのを忘れてはいけませんわね。
私達は見た事ありませんが、良いレストランに行く時の服装など、どんな感じですの? シンプル、あるいは少し派手目か」

「シンプルだな。普段は良いとこ行く時もワンピースにネックレスが一番多い」

「なら、必要以上に着飾る趣味は無いと見ていいですわね。
やはり、質の良い調理器具でも用意した方がよろしいのでは?」

「いや、実はあいつ自宅用でも相当良い物揃えて持ってんだよ。
あれ以上揃えるとなると流石になぁ……」

 がしがし、と頭を掻く。

 スカーレットが仕事で使う調理器具は、どれもこれも最高品質。
 私生活用の物はそれと比べれば質が劣るが、それでも高品質だ。
 その中には今までゲイツがプレゼントした物もあるが、どれも幸運に恵まれて手に入った物。
 易々と手に入る物ではないし、普通はそもそも金額的に手が出ない。

「それはまた大変だな。他に彼女が好きな物とかはないのか?」

「あー……一応、あるにはあるんだが……」

 海人の問いに、言葉を濁す。
 心当たりはあるのだが、出来れば他言するなと本人から言われているのだ。

「あら、なんですの?」

「……可愛い物全般。人形とか、ぬいぐるみとか……」

 少々迷った末に、暴露する。

 スカーレットは豪快な性格の女性だが、そのイメージとは裏腹に可愛らしい物を好む。
 自室には所狭しと質の良い人形や可愛らしいぬいぐるみが飾ってある。

「へえ~、ちょっと意外ですね」

「なら、そこら辺で人形なりぬいぐるみなり良さそうな物を見繕って買えばいいじゃない」

 ルミナスは軽く首を動かして、近くの人形店を顎で示した。

 この町はありとあらゆる物が高品質で揃う。
 人形やぬいぐるみなどの嗜好品も例外ではない。
 今は祭りの最中でもあるので、良い物が安く買えるはずだ。 

「それも考えたんだが……ちょっと、な」

「何か問題でも?」

「……詫びだというのに、そこらの店で買った物をはいどうぞ、では手抜きな気がするんだろう。
かと言って値段を高くするのは結婚後財布が共同になる事を考えれば論外、といったところか?」

 ゲイツの心情を予想し、確認する海人。

 今回のゲイツのプレゼントの理由は、婚約者への誠意。
 相応の労苦を伴わねば、それを示したという実感は得にくい。
 物の予算を高くすればそれを稼いだ時の労苦で実感を得られるだろうが、相手は近々結婚する人間。
 遠からず財布が共同になる事を考えれば、最終的に二人の貯蓄が減る事になる。

 まして、相手は結婚前からゲイツの財布の紐を握っている堅実な女性。
 プレゼントを喜びはするだろうが、同時に怒らせる事になるのが目に見えている。
 
 そんな海人の推測に肯定の頷きを返し、ゲイツは尋ねた。

「大当たりだが……なんか良いアイデアねえかな?」

「いっそ手作りしてみたらどうだ? で、それを妥当な値段で買った物と一緒に手渡すとか」

「無理。俺はやたら不器用なんでな……そーいう細かい作業は全然ダメなんだ。
よっぽど腕の良い教師がいりゃ別なのかもしれねえが」

 海人の提案を、苦笑いしながら却下する。

 以前、ゲイツもその案を思いついた事はあった。
 未だ金が稼げなかった頃、金を掛けずに恋人に喜んでもらえる誕生日プレゼントを確保する為に。
 
 そのとき取り組んだのはぬいぐるみ作りだったのだが、これがどうしようもなかった。
 母や近くに住んでいた主婦に教わってどうにか作ってみたものの、出来たのは熊らしき物体の惨殺死体。
 こんな物渡したら別れ話になりかねない、と早々に諦めて冒険者らしく珍しい花を自力で取りに行った。

「ふむ……絵や彫刻で良ければ、私が教えてやらんでもないが?
絵や彫刻に関して教えた事はないが、教え方は……まあ、学問の授業に関しては評判が良いようだ。
どのみち手詰まりだろうし、試すだけ試してみるか?」

「は……? 絵なら多分願ったり叶ったりだし、
お前の授業の評判に関しちゃスカーレットから聞いてるが……その、どんぐらい描けるんだ?」

 間の抜けた顔で、問い返す。

 絵画なら、おそらくスカーレットにとって最高のプレゼントになる。
 ぬいぐるみや人形が増えすぎて、もはや部屋に置き場がないとこぼしていたのだ。
 絵ならば壁に掛けられるので、可愛らしい図柄で描けば喜んでくれるだろう。

 そして、海人の授業の完璧さはスカーレットから耳にしている。
 曰く、知識が直接頭に染み込み、一度教えられたらまず忘れない。
 あれほどの授業能力の人間は他にありえない、と。

 その評判からすると、試してみる価値はあると思える。
 どの道このままでは買った物をプレゼントする以外の道がない。
 上手くいかなかったとしてもそこに落ち着くだけなのだから、試すだけ試せばいい。

 が、海人自身のレベルがどの程度なのかが気になる。
 せめて目指す気になるレベルであってくれないと、意欲が高めにくい。
  
 そんな懸念を、シリルが嘆息と共に一蹴した。

「一度作品を見せていただきましたが、はっきり言って本職顔負けですわ。
もっとも、あの時は風景画ばかりでしたが」

「その気になれば何でも書ける。ま、論より証拠だな。
実際に描いてみるとしようか」

 そう言うが早いか、海人は近くの画材店へと足を向けた。 





























 能天気そうな足取りで、一人の青年がカナールの町を歩いていた。

 薄汚れたマントに年季の入ってそうな軽装鎧といかにも低ランクの冒険者と言った風情だが、
彼の顔立ちは整っており、形容しがたい気品も宿っている。
 身支度をきっちり整えれば、どこかの貴族の嫡男と言っても通用するだろう。
 常時浮かべている屈託のない笑顔と合わせると、お忍びでやって来た世間知らずの王子様と言った風情だ。
    
 が、そんな外見とは裏腹に、彼の考えている内容は思いっきり俗っぽかった。

(いやー、流石にあんだけ目立つ集団だと情報集まるのも早いねぇ)

 近くの屋台で買ったコーヒーを煽りながら、満足そうな笑みを浮かべる。

 彼は、今朝から昨日酒場で見かけた者達――――特に白衣の青年に関して重点的に調査していた。
 怪しまれないようあくまでも買い物ついでの世間話にかこつけてのものではあったが、それでも色々と入ってきた。
 
 この町に住んでいるわけではなく、時折食材の買い出しなどにこの町を訪れるという事。
 最近は主に五人組で行動し、別行動している姿をあまり見かけない事。
 あの青年が、結構な大金を大した執着も見せず買物資金として黒髪の女性に渡している事。
 彼がこの町に姿を見せるようになってから、まだ数ヶ月である事。

 情報を取捨選択して信用できそうな物を集めただけでも、結構な量が集まった。
 しかし、一種だけ――――戦闘能力に関する情報だけ、全く集まらない。   

(いくらなんでも、おかしいよね……)
 
 あの青年本人の戦闘能力はおろか、護衛らしい二人の情報すら、全く入らないのだ。
 あれだけの女性達を侍らせていれば、一度や二度は妬みからの襲撃を受けているはずだというのに。  
 一緒にいる有名人二人に慄いているだけという可能性も考えたが、残りの二人だけを伴ってくる事も珍しくないらしい。  

 となれば、力量を読めない者が無謀な特攻をやっていておかしくないはずなのだが――――全く情報が出ない。

 勿論普通なら、町中で揉め事を起こしていないだけという可能性を考える。
 狙ってきた相手を上手く町の外に誘き寄せて処理しているのだろうと。

 しかし、場所が問題だ。

(他ならともかく、この町じゃ偶然と思えないんだよなぁ……)
 
 軽く伸びをしながら、そんな事を思う。

 一般的に知られてはいないが、この町はこの国にとってある意味王都以上に重大な場所だ。
 一線を退いて尚大商会に多大な影響を与える四人の商人が作り上げたある種の理想郷。
 それにどんな影響を及ぼすかも分からない存在を、あの偉人達が把握していないとは思えない。

 そして、ここは一部有力者の間で傀儡師と渾名される人物の直轄地域でもある。
 優秀な人材を集める事に最大の熱意を傾けるあの淑女が、膝元にあれほどの人材がいる事を把握していないとは思えない。

 彼らが姿を見せるようになった時期を考えれば、既にどちらかが接触し取り込んでいる可能性が高い。
 
 となると、町中での情報収集はさして期待できない。
 本人達も秘匿を厳命されているだろうし、多少口を滑らせたところで握り潰されているはずだ。
  
(家まで本人達をつけるのが一番確実だろうけど……ヤバい気がするんだよなぁ)

 むう、と唸る青年。

 一応、尾行する自信がないわけではない。
 彼の実力に近いのは、青年の側にいる超人の中でも二人のみ。   
 距離を多めに取って尾行すれば気配を悟られずに尾行する自信はある。
 万一見つかっても、逃げに専念すれば逃げ切れる自信もある。

 が――――なぜか、本能が激しく警鐘を鳴らす。

 寝言をほざくな大馬鹿野郎と言わんばかりに。
 自殺願望抱くような年じゃないだろうと叫ぶように。
 いっそ死んだ方がマシかもと思う事はあっても、まだ希望は捨ててないだろうと泣きつくように。

 まるで尾行すれば地獄行きが確定するかのように、激しく訴えてきている。 

 そして、今のところ青年の悪い予感が外れてくれた例はない。

 幼馴染の動きに感じた時は、伏せるのがあと一瞬遅れていたら頭が無くなっていた。
 がなり立てていた許嫁が唐突に黙った際に感じた時は、逃げる前に大槌が襲ってきた。
 妻となった元許嫁の笑顔に感じた時は、最近弛んでいるといきなり攻撃魔法の乱打が飛んできた。

 役に立たない事も多いが、非常に良く当たるのである。

(……うん、やったら死ぬね。今度こそ)

 過去の凄惨な予感的中遍歴を思い、家までの尾行は諦める。 
 度胸はあるつもりだが、それでもドラゴンの口に自ら飛び込みたくはない。

(つっても、収獲がこれぐらいじゃなぁ……幸いお祭り中だし、町の中なら気付かれずに済むか)

 小さく溜息を吐き、方針を決める。

 どんなに敏くとも、人でごった返した町の中で気配を判別するのはほぼ不可能だ。
 人の数が多いと感知する気配の数が多くなり、どうしても仕分けが難しくなる。
 そんな中で尾行者一人を判別するなど、もはや人間業ではない。
 
 それでも可能な限り尾行は避けたかったが、より多くの収穫を得る為には多少のリスクは仕方ない。
 そう腹を括り、青年はやたら目立つ五人組を探しに向かった。



















 日がオレンジ色に染まった地平線へと沈み始めた頃。
 とある広場で、二人の男が木炭を使ってせっせと絵を描いていた。

 それ自体は、さしてどうという事はない普通の光景。
 この町には流れの画家がやって来る事もあるし、隠居した老人が趣味で描いている事も多い。
 特に珍しくもなんともない、日常的風景の一つだ。

 ただし――――男の片割れが書き上げる速度が、段違いだった。

 そこそこ値の張る白い紙に躊躇いもなく木炭をザッザと走らせ、時折パン屑で一部消して瞬く間に描き上げている。
 その一切の迷いのない素早い動きは、さながら土に埋まった彫刻を掘り出しているかのようだ。
 特に気合を入れている様子もなく、次々に絵が生み出されている。

 そして、描かれている絵の質がこれまた凄まじい。

 目を閉じて身を丸めている子猫、平和そうに欠伸をしている子犬、毛繕いしているリスなど、
ありとあらゆる可愛らしい動物が次々に生み出されている。
 どれ一つとっても思わず頬が緩んでしまうような愛くるしさに満ちており、
見ているだけで心が和む見事な出来。

 そんな超人的な芸当をやってのけながら、この男はもう一人の男に対して小まめに指導も行っている。
 
 自分は迅速に何枚も描き上げつつ、相方の手が止まったらすかさずチェック。
 力の入れ方から濃淡の付け方まで、時に口頭で、時に手を取って懇切丁寧に教えている。
 その説明は実に分かりやすく、教わっている男は勿論見物している女性達も感心したように頷いていた。 
 
 やがて教わっている男――――ゲイツの手が止まった。

「おお……! 自分で言うのもなんだが、結構良い出来じゃねえか!?」

 そう言って、自分の描いた絵を両手で掲げる。

 彼が描いたのは教えた男――――海人が描いた、子猫の絵のポーズ違い。
 表情の繊細さ、毛並の美しさ、可愛らしさ、全てオリジナルの足元にも及ばないが、それでもなかなかの出来。
 題材はきちんと判別がつき、その姿に不自然さもない。

 今日一日勉強しただけという事を加味すれば、破格の成果と言える。
 
「そうだな。よく頑張った。で、概ねこんな感じで描いていくわけだが……何か質問はあるか?」

「いや、ねえんだが……正直、もう一回同じように描く自信がねえ。
出来れば、また今度教えてもらいてえんだが……」

 申し訳なさそうに、ゲイツが呟く。

 海人の教え方は、非常に良かった。
 基本的な描画法の説明もさる事ながら、梃子摺っていたゲイツの手を見て、
どこにどう力を入れれば上手く筆を運べるか、どう筆を進めていくべきか徹底的に解説してくれた。
 
 が、なまじ完璧すぎたがゆえに、不安が拭えなかった。
 海人に誘導してもらえたからこそ、上手く描けたのではないかと。
 元々不器用な事も拍車をかけ、どうにももう一度同じ事をできる気がしないのだ。 

「ふむ……では、時間があれば明日にでも屋敷に来い。一枚描き終えるまで見てから、注意すべき点を教えてやろう。
気が変わったなら、画材を持って来れば他の絵も教えてやる」

 自身なさげなゲイツに、海人はそんな提案をする。

 実のところ、海人は今日一日で授業を終わらせるつもりはなかった。

 ゲイツは呑み込みが良かったが、それでも一日で全て叩き込むのは無理がある。
 ド下手だった筆の使い方は手の力の入れ方などを細かく指導する事である程度矯正し、
濃淡の付け方のコツなども上手く掴ませる事が出来たようだったが、まだ教える事は多いのだ。
 
 そして、ゲイツの気が変わる可能性もあった。

 海人は最初に手っ取り早く描いて画力を見せる為に木炭画を描いたのだが、
ゲイツはそれを見て妙に感激してしまい、これを是非教えてくれと言い出した。
 それで木炭画を教えたのだが、やり始めてから白黒のそれより様々な色彩が使える油絵などの方に興味が移る可能性が捨てきれなかった。

 ゆえに、今日のはあくまでもお試し授業。
 本格的に始めるのは、次以降のつもりだったのだ。

 ――――だからと言って、この場でゲイツの勘違いをわざわざ正す気もなかったが。

「明日は空いてるし、その提案はありがてえが……良いのか?」

「明日なら時間が空いてるからな。それ以降も続ける場合は、明日お互いの予定とすり合わせよう。
それと、今日家で復習するんだったらこれを持っていけ」

「……すまねえな」

 海人から差し出された子猫の絵を受け取り、ゲイツは小さく頭を下げた。
 
「なに、見栄っ張りな婚約者に二年も待たされた哀れな女性の為だ」

 唇を悪戯っぽく吊り上げながら片付けを始める海人に、ゲイツは苦笑で応えた。
 二人の道具が綺麗に片付け終わったところで、会話が再開する。

「んじゃ、明日何時に行けばいい?」

「早い方が良かろう。そうだな、朝九時以降ならいつでも構わん」

「そんじゃ、九時に行かせてもらう。よろしくな」

 そう言うと、ゲイツは画材を抱えて人混みに消えていった。
 彼を見送り、姿が完全に見えなくなったところで、ルミナスがふと口を開く。

「……しっかし、あんたよくあんな速度で描けるわよねぇ」

「昔描いた事のある物を描いただけだから、考える時間がほとんど必要なかっただけだ。
ま、それでも即興だから細部は粗いんだがな」

 感心を通り越して呆れているルミナスに、種明かしをする。

 先程描いた絵は、全て海人が昔描いた作品。
 あの作業は単純に言えば頭の中にある完成品をなぞっただけの事。
 さらに言えば、より早く描くために背景は描かず、オリジナルより細部の書き込みを劣化させ、
肉体強化を使って腕を動かす速度も上げた。
 
 そして絵の質に関しては、元々腰を据えて取り組んだ時の物なのだから当然だ。
 これはオリジナルも最終的に仕上げた物には遠く及ばない出来だが、それでも構図は人間が可愛らしいと感じる構図を海人が研究して描いた物。
 多少手抜きしたところで、生半可な画家の絵よりは余程魅力的になる。
 
 ゆえに、速度も質も高くて当たり前。
 あくまでも、瞬時に己の手の力みさえ計算に入れて全ての手順を考えられる異常な頭脳と、
大概の物はある程度思い通りに作れてしまう無駄な器用さを併せ持つ海人にとっては、だが。

 余談だが、様々な種類を描いたのは待ってくれているルミナス達の為だ。
 彼女らが絵が完成していく様を面白そうに眺めていたので、
待ってもらっている間の退屈しのぎとして色々描いていたのである。

「つーか、あたしからするとこれだけの絵描けるってのが意外なんですけど」

 子犬の絵を眺めながら、雫が呟く。

 一応、新魔法を術式盤に刻む様子を何度も見ているので、手先の器用さは知っていた。
 屋敷の部屋を教室に改装した時のセンスの良さからして、芸術的センスも悪くないだろうとは思っていた。

 だが――――海人は美というものにさしたる関心を示さない男だ。

 美しい物を見て楽しむ心が無いわけではないのだが、見れないなら見れないで気にならない。
 美しければそれに越した事はないが、特別それに拘泥する事はない。

 そんな人間が自ら絵を描くなど、意外という他なかった。
 
「これでも昔は色々やってたからな。質を問わなければ芸の幅は広いぞ」

 雫に苦笑を返していると、ふと少し離れた場所から見覚えのある人物が歩いてきている事に気付いた。
 それと同時にその人物――――ケルヴィンも海人達に気付き、こちらへと近寄ってくる。
  
「おっす、何やってんだ?」

「なに、少し絵を描いてただけだ」

 言いながら、描き散らかした絵の束を手渡す。
 ケルヴィンはそれを外見に似合わぬ穏やかな手つきで受け取った。

「へー、あんた絵を描……!?」

 何気なく一枚目の欠伸をしている子犬を見た瞬間、彼の頭頂にある耳がピクリと固まった。
 まじまじと絵を見つめ、時折感嘆の声を漏らしつつ、唸っている。

 そして一枚目を捲り次のリスの絵を見ると、ぴくぴくと耳が動き始めた。
 忙しなくも愛嬌がある耳の動作に雫が触りたそうにしているが、
それにも気付かず三枚目、四枚目と熱気の籠もった目で目を通していく。 

 やがて全てを見終えたケルヴィンは絵の束を返却しつつ、口を開いた。

「……なあ、良ければ一枚売ってくんねえか?」

「へ? あんた絵眺める趣味なんてあったの?」

 意外そうに、ルミナスが問いかける。

 ルミナスが知る限り、ケルヴィンに絵画鑑賞の趣味は無い。
 というより、腰を落ち着けて過ごす事自体が苦手なはずだった。
 彼が腰を落ち着けている場所など、酒場ぐらいなのだ。

「違うっての。ほれ、こないだっからアンリに鍛錬付き合ってもらってたのは知ってんだろ?
その礼をしようと思ってたんだよ」

 顔を逸らしながら、頭を掻く。

 結果は残念だったが、腐れ縁の悪友には今回随分長く鍛錬に付き合ってもらった。
 単純な過酷さ以外に心をへし折らんばかりの罵詈雑言というおまけも付いていたが、
一度頭を下げただけで忙しい中わざわざ引き受けてくれた事には感謝している。
 
 その礼として、絵画好きなアンリに海人の絵をプレゼントしようと思ったのだ。
  
「なら、こんな絵よりそこらの店で買った方が良いだろう。
多少値は張るが、良い絵が揃ってるぞ」 

 頼み込むケルヴィンに、海人は真っ当な提案をした。

 手元の絵は下手な画家よりは余程マシな出来だが、やはり本職の一流に及ぶ出来ではない。
 この町であれば美術店もそれなりに存在し、価格帯ごとに良質な絵が多く揃っている。
 勿論、手抜きした海人の木炭画など及びもしない出来の絵画も。

 値は張ってしまうだろうが、ケルヴィンなら多少奮発すれば問題ない。
 昨日散財させたが、仕送りがあるルミナスとは違い、彼はそれでも余裕のある財政状況のはずなのだ。
 
「一通り回ったんだが、どれもしっくりこなくてな。が、これ見た時はこう、がつんときたんだ。
買物は自分の直感に従う事にしてんだが……売ってくれねえか?」

 拝むように、頼み込むケルヴィン。
 その必死な姿を見て、海人は苦笑した。

「……気は進まんが、そこまで言われてはな。
分かった、一枚五千ルンで売ろう。好きなのを選べ」     

「たった五千!?」

 提示された額に、ケルヴィンは思わず目を見開いた。

 彼は、今日一日アンリの為の絵を見て回っていた。
 そこで見たどの絵も、最低で二万以上。
 そのどれよりもしっくりきた絵が五千など、信じ難かった。
 
「私は画家ではないし、所詮手抜きだからな。このぐらいが妥当な所だろう。
ただし、そこらの店を回って良さそうな絵を別に一枚買っておけ。
私の絵は、あくまでそのおまけとして渡すように」 

「大丈夫だと思うんだがなぁ……」

「ま、保険だと思っておけ。絵の良し悪しが分からんようなら、店の店員と相談すればいい。
この町なら、固定店舗でぼったくられる事はないからな」

「そうか……昨日もだが、色々忠告ありがとな」

「なに、ただの気紛れだ。気にする必要は無い」

 礼を言って去って行くケルヴィンにそう声を掛け、見送る。
 そして彼の姿が見えなくなったところで、海人はルミナス達に頭を下げた。

「長々と待たせてしまったな。食材は大丈夫か?」

「新鮮だし、ちゃんと冷やし続けてたから大丈夫よ。
帰ったら御馳走作るから、期待してなさい」

 申し訳なさそうな海人に、ルミナスはそう言って優しく微笑みかけた。




















(いやー、良いもの見れたなぁ! あの速度! あの質! あれで素人って謙虚にも程があるよっ!)

 去って行く五人組を眺めながら、青年は笑顔を張り付けながら内心で感激していた。

 見たのは途中からだったが、あの青年の手並みは御見事だった。
 彼自身絵画を趣味にしているので分かる事だが、描いた事があると言ってもあの速度は異常にすぎる。
 まるでどう手を動かしていけばどんな絵が完成するか、あらかじめ分かっているような動きだ。

 そして出来上がった絵の質も、素晴らしい。
 遠目に見ていた時は判別が付きにくかったが、遠隔視の魔法で見た途端その繊細さに驚かされた。
 毛並の一部が潰れていたりもしていたが、画風で片付けてもおかしくない程度の事。
 あれより拙い絵でプロを名乗っている画家はいくらでもいる。
 
 本人は謙遜していたが、相当な才能と命を削る程の修練あればこその神業。
 あれで素人などとは、奥ゆかしいにも程がある。

 何も知らぬ常識的な青年は、そんな的外れ極まりない感想を抱いていた。

 ――――そもそもの目的すら忘れて。

(って違ぁぁぁぁうっ! いや凄いけどっ! ありえないぐらい凄いんだけどっ!
僕が見たいのはそういうのじゃないんだよぉぉぉぉっ!)

 ようやく本来の目的を思いだし、心の中で絶叫する。

 彼の目的は、あの白衣の男が名無しの英雄と呼ばれている者、あるいは者達の一人か探る事。
 確かに凄い技能で思わず見入ってしまったが、絵の技能は目的とは関係ない。

(……それとも、彼は友人関係が特殊なだけの謙虚な画家で、名無しの英雄じゃないのか? 
でも、あの雰囲気は単なる自信とは違いそうだし)

 手に持っていたコーヒーに口を付けながら、思考を巡らせる。

 傍目から見た限り、あの青年に武芸の心得は無い。
 そこらの町のチンピラにも殴り倒されそうな程に、弱そうだ。
 遠距離戦専門の魔法使いにしても、もう少し逞しい体をしている。
 これだけ見ると、とても彼が探す英雄、あるいはその一角とは思えない。

 だが、纏う雰囲気が引っ掛かる。

 年に似合わぬ風格がある事は、問題ない。
 戦闘能力に欠けても、自負に足る能力を持っていればそういう事もある。

 問題は、その中に漂っている独特の荒々しさ。
 幾多の戦場を駆け抜けた者が纏うような、血生臭い空気。
 ともすれば気のせいと断じてしまいそうな程僅かだが、あの白衣の青年からはそれを感じる。

(しかし、それにしちゃやっぱりあの華奢さは度が過ぎてる。あー、もう、分かんないなぁ……!)  

 表面上は静かにコーヒーを楽しみ、内心で頭を掻きむしる。

 雰囲気的には戦士のそれが滲み出ているのだが、体つきはまるっきり一般人かそれ以下。
 逆なら実戦経験がないという一言で済むのだが、これでは訳が分からない。 

 そうこう悩んでいるうちに、時間が過ぎていく。
 
(もうこんな時間…………あーあ、結局今日は碌な収穫無しか)
 
 広場の時計を見て嘆息し、広場から踵を返す。

 収獲が無いのは悔しいが、あの青年達の調査はあくまでついでだ。
 ちゃんとした仕事は別にあり、それを優先しなければならない。

 が、どちらが興味深いかと言われると、明らかにあの青年。
 訳が分からない男だが、それだけに好奇心を刺激される。
 
(……ま、しょうがないか。頭を切り替えてお仕事お仕事っと……)

 名残惜しい思いを振り切って、青年は雑踏の中へと消えていった。
  




テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この青年、諜報部の人間か!
どうやら女王陛下直属の、諜報部員みたいですね。
いずれ見つかって、彼の尋問術で全部しゃべる事になるのは確実ですね。
[2012/09/16 23:22] URL | Melt #xgVunY3w [ 編集 ]

更新お疲れ様です
なんか変な男が出てきましたねwww
どういうキャラなのかいまいち掴みきれませんでしたが、これからの展開に期待です(笑)
というよりカイトにどのように弄られるか期待してますw

最近思うのは・・・キャラが多くて一部忘れてしまう、ということです;
忙しい中すいませんが、キャラの設定集など出していただけるとありがたいです。

更新お疲れ様でした。↑は聞き流していいですw
[2012/09/16 23:55] URL | yubell63 #- [ 編集 ]


男の使命は予想通りっぽいですが、さてさてどうなるやら。
少なくとも男がカイトの核心に迫る情報を手に入れたら、シェリス一派への親友の立場は変わらないですが、信用は地に落ちそうですね~。

気になるのは男が刹那達の事かとおもうのですが、自身と同列に実力を考えてる所ですね。
女王側にローラ級の人間がいないとも限らないでしょうが、確か刹那達への評価が世界でも希に見る実力だったはずなので、恐らく刹那達が意図的に隠ししているだけだとは思うのですが。

となると、前の伏線(刹那達が害された場合、相手を~)っていうのが回収されるのかな?
それとも、今回の謎の魔物が襲来してばれる伏線かな?

期待してまってますね~。


……そういえば、刹那達がいくら町中とはいえ観察対象から気づかれないってのは違和感がありますね。
遠見で諜報員とはいえ、気づけないとカイトの護衛としてはアウトのような。
雫があまり喋ってないから、それが伏線?(というか、雫がいたのかどうかわからんけどw)
[2012/09/17 02:04] URL | takeway #- [ 編集 ]


海人の家にペットの予定はあるのでしょうか
[2012/09/18 17:25] URL | 平行世界 #- [ 編集 ]


更新待ってました。

カイトの絵は写真のような精密な物なんですかね?
心理学的なものを使えば抽象画というか線を何本か描くだけでも気持ちに訴えることも出来そうですが

謎の青年がフラグを着実に築いてるww
最後に盛大な失敗をさせられるんでしょうなww
[2012/09/19 19:59] URL | 煉恋々 #h2YGRmSs [ 編集 ]


 諜報員登場ですねw 前回の会談? で出てきた名無しの英雄の呼称からすると所属は明白w
 さて、どんなふうに関わってくるのか楽しみです♪
[2012/09/21 17:30] URL | 法皇の緑 #oNVs3kEU [ 編集 ]


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