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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄79


 その夜、海人邸。

 夕食を終えた海人達は、居間でまったりと過ごしていた。
 雑談に興じながら茶菓子に手を伸ばし、と実に平和な風景だ。
 流石に面子の大半が女性陣なだけあると言うべきか、話題はなかなかに尽きず、話が終わる様子はない。
 しかもこの場唯一の男である海人は器用に話を膨らませ、無表情なローラも時折鋭い指摘で話にアクセントを付け、
と本来異分子になりそうな二人が見事に溶け込み、更に場を盛り上げている。
 
 が、時計の針が10を指したところで、ローラが唐突に話題を変えた。   

「もうこんな時間ですか……歓談は楽しいのですが、そろそろ本題に移らせていただいてよろしいでしょうか?」

「ああ、私の芸を探るという話だったな。と言っても、本当に大した芸の持ち合わせはないんだが」
 
「あ、そーいやカイト、あんた他に芸無いって言ってたけど、彫刻できるんじゃなかったっけ?
ほら、確か前ファニルちゃんに即興で作ってあげたって言ってたじゃない」

 居心地悪そうに頭を掻く海人を見て、ルミナスが思い出したように口を開いた。

「……ファニル様に、ですか?」

「ああ、最初に会った時、彼女が転んで髪飾りを壊してしまってな。
買ったばかりで泣いてたんで、即興でそれの模造品を彫り上げたんだ。
シンプルな作りだったんで、結構簡単だったが」

「その時、ファニル様の反応はいかがでしたか?」

 す、と海人の目をまっすぐに見つめる。

 まだ幼いが、ファニルの目は侮れない。
 親の教育方針で髪飾りなどの嗜好品全て平均的な子供の小遣いを貯めて買っており、
ハロルドの孫という割には安物ばかり身に付けているが、それがなかなか凄い。

 というのも、どれも安物には違いないが子供の小遣いで買ってるにしてはかなりの上物なのだ。
 しかるべき場所に転売すれば、それこそ買値より上の値が付きそうな品々。
 幼いながら、大商人の孫娘の名に相応しい才覚の片鱗を見せている。

 その彼女が買った品の模造品を即興で彫り上げたなら、それは立派な芸だ。
 
 が、年に似合わず気遣いの出来る優しい子供でもあるので、
心遣いを無下にできず喜んで見せた可能性もある。

「素直に喜んでいたな。正直完璧に模倣できたわけではないんで、
若干冷や冷やしてたんだが……演技で喜んでいたわけではなかったはずだぞ」

「左様ですか……では、何か即興で彫り上げる事は出来ますか?」

「ふむ……なら、子犬でも彫るか」

 決めると、海人は創造魔法で必要な物を作り出した。

 そして、すぐさま木材を片手に彫刻を彫り始めた。
 迷いなく、そして淀みなく道具の鋭い刃によって、あっという間におおよその形が出来上がる。
 そこから更に細部を彫り込んでいくが、ここからが圧巻であった。
 流れるような毛並、生命感溢れる瞳、可愛らしい手足、更には口元に子犬が咥えるには若干大きそうな骨。
 これらが、まるで地中から掘り出して土を払っているだけのような速度で完成していく。

「……ホント、つくづく出鱈目よね」

 凄まじい集中力と手捌きで彫り進めていく海人を眺めながら、ルミナスが呟いた。

 彼女はこれまで仕事柄様々な国に出向き、色々な町を訪れている。
 町によっては様々な大道芸人が磨き抜いた芸を見せている事も多く、
早彫りで彫刻を完成させるような人間もいた。

 彼らはその技巧によって客のリクエストに応じ、その場で作品を彫り上げていたが、
それは客が見飽きぬ程度の短時間で完成させたにもかかわらず、なかなかの出来だった。
 中にはシリルでさえ細部は粗いが、時間を考えれば許容すべきと評する程の物もあったぐらいだ。
 その時は一芸を磨き抜けばここまで到るのか、といたく感心したものである。

 が―――目の前の理不尽の権化は、間違いなくそれを上回っている。

「シ、シリルさんの視線が凄い事になってる……」

「……今にも食らいつかんばかりだな」

 宝蔵院姉妹が、若干慄いた様子でシリルを見つめる。
 
 まだ彫り上がっていないというのに、シリルの目は彫刻に釘付けになっていた。
 その目には技巧への驚愕もあるが、それ以上に彫刻の出来に目を奪われているようだ。
 視線が、彫刻刀の動きではなく完成していく彫刻に固定されっぱなしなのである。
 その視線に込められた熱たるや、愛の度が過ぎるあまり対象物を食べてしまいそうな程。

 また、先程から言葉を発してすらいない。
 そんな労力があるなら、その分をより精緻な観賞に当てたいと言わんばかりに。

 これは、過去ルミナスが見たシリルの美術品に対する反応の中でも最も強烈だ。
 今までの最高は、グランベルズの美術館である絵画を観賞した時。
 その時も容姿に見合わぬ艶めかしい吐息を漏らし、無自覚に周囲のカップルの喧嘩を誘発した事に気付かぬほどに夢中だったが、
今回はその倍以上に集中しているように見える。
    
 そうしてローラを除いた周囲がシリルの様子に慄いている間に、あっという間に一時間程が経過する。  
 そこでようやく海人は手を止め、満足げな笑みを浮かべた。

「うむ、こんなものだな。感想は?」

「……素晴らしい出来かと。
あの短時間で彫り上げたなど、この目で見ていなければ信じられなかったでしょう」

 海人から手渡された彫刻をひとしきり観察し、称賛するローラ。

 これは、決して御世辞ではない。
 全体的な造形それ自体もだが、細部の彫りが非常に繊細なのだ。
 特に毛並など一番凄まじい速度で彫っていたというのに、乱れが見当たらない。

 そして何よりも驚きなのが、彫刻のサイズ。
 掌に乗せて握れば、そのまますっぽりと覆い隠されてしまう程に小さい。
 そんな小さな物に、精緻な彫り込みを行っている。 

 使っていた彫刻刀の異様なまでの切れ味もだが、彫る技術力が尋常ではない。
  
「お褒めに与り光栄……と言いたいところだが、これはその内彫ろうと思って放置してた案の一つでな。
頭の中にある設計図に従って完成させただけだ。一から作ろうとすれば流石に相当時間がかかる」

「それにしても、異常な速度かと。絵画よりこちらの方に才があるとしか思えません」

「絵画は色々細かい計算を入れているが、彫刻は立体なせいでそれをやるとやたら時間がかかるんでな。
感性のみで造形を考え、計算はそれを最短手順で完成させる為のみに留めて彫り上げとるんだ」

「…………それこそ、まさに絵画ではなく彫刻に才能があるという証明では?
出来の方も、絵画とさして遜色ないように見えますので」

「む……? なるほど、言われてみると彫刻もかなり良い出来だな」

 ローラがテーブルの真ん中に置いた彫刻をしげしげと観察し、納得したように頷く海人。

 これまで彫刻の出来についてはさして頓着した事がなかったが、改めて見るとかなりの出来だった。
 木彫りである為豊かな色彩とは無縁だが、彫りによって生じた陰影が良いコントラストを生み出し、
立体特有の強い存在感もある。

 冷静に見ても、悪くない出来―――というか、絵画に迫る出来だ。
 流石に海人の集大成とも呼ぶべき最高傑作の絵画には到底届かないが、
その試作品のレベルには到達している。 
   
 今まで気付かなかったな、などと海人が暢気に思っていると、突然今まで黙っていたシリルが叫び出した。

「かなりどころじゃありませんわぁぁぁぁぁあっ!
な、な、なんですのこの超絶的に可愛らしい物体は!?
くりくりと愛らしい瞳、触ったらふわふわしてそうなぐらいにリアリティ溢れる毛並、
そして一心不乱に骨にむしゃぶりつくこの仕草……!
なんとしてでも欲しい……! ああもう! これで買いますわ!」

 パァン、と愛用の財布を豪快に海人の目の前に叩きつけるシリル。

 海人は完全に暴走しきってるシリルに気圧されたが、一応財布の中身を改める。
 所詮即興で彫った物なので売る事に躊躇はない、というか無償で譲っても問題ないのだが、
シリルの性格上それを受け入れるとは思えない。
 ならばとりあえずこの場は受け取り、後で余剰分を返すのが最善だろう。

 海人はそんな事を考えながら財布を開き――――らしくもなく、一瞬絶句した。
 
「……お、おい!? どう見ても二十万以上入ってるぞ!?」

「その反応なら額に不足はないという事ですわね!? もう返しませんわよ!?
ああ、ここまで物欲をそそられる作品、何年ぶりでしょう……!
このサイズなら携帯も容易ですし、いつでもどこでもこの子といられますわ!」

 財布空でも一片の悔いも無し、と言った表情で彫刻を抱きしめるシリル。

 余程嬉しいのか、そのまま軽やかにステップを踏み、クルクルと回ってさえいる。
 その動きはまるで貴族の令嬢が躍るかのように麗しく優雅だったが、
海人にはそれに目を奪われるほどの余裕はなかった。

 友人のかつてないはしゃぎっぷりに、唖然とする他ない。
  
「……ルミナス、あれ大丈夫だろうか?
驚きすぎて頭の中身がどうにかなってしまったんじゃなかろうな?」

「それは大丈夫だと思うけど、かなり珍しいわね。
あの子美術品とか大好きだけど、買って手に入れたいって思う事あんまないのに」

 浮かれに浮かれているシリルを見ながら、ルミナスが意外そうに呟く。

 シリルは、美しい物が大好きだ。
 宝石、衣服、絵画、彫刻、ジャンルを問わず美しければ何でも称賛する。
 目利きも確かで、絵を見れば大体大まかな値段を見積もってしまう。

 が、美術品を買う事は滅多にない。
 美しい物を愛ではするが、それを所有したいという願望には乏しいのだ。
 買う事が皆無というわけではないのだが、その回数はルミナスが知る限り両手で足りる。
 もっとも、衣服については結構買い込む事も多いのだが。
 
「ふむ、そこまで気に入って貰えたなら作った甲斐があるな。
いずれにせよ、とりあえずこれは及第点という事で良いんだな?」  

「無論です。しかし、よもやこれほどの芸が出てくるとは思いませんでした。
一番期待していた本命には、まだ触れてもいないのですが」

「ん? 何か本命があったのか?」

「はい。その事に触れる前に、幾つか確認したいのですがよろしいでしょうか?」

「構わんぞ。答える気がない事は答えんが」

「承知しております。
以前シェリス様から伺ったのですが、カイト様はこの大陸の出身ではなく、この国での生活期間もさして長くはない。
これは事実ですか?」

「事実だ」 

「なるほど。では次に……音楽の経験はおありでしょうか?」

「あるが、それが―――ああ、そういう事か。楽器と楽譜だな?」

「察しが早くて助かります。譲渡に問題はございますか?」

「譲る事自体に問題は無い。ただ、楽器は動物の一部を使用してる物もあるんで、全ては作れん。
一応楽器の製法は知っているが、即座に役立つのは作れる物とその関係だけだな。
ただそれにしたって楽器の使い方を教えなきゃならんし、楽譜もこちらの物とは違いが大きいんで、
読み方を教えるか全部手直しする必要が―――」

「その点については御心配なく。部下に三人ほど音楽狂がいますので、
彼女らに教えていただければ、即座に覚えるでしょう」

 海人の言葉を遮り、ローラは彼の懸念を否定した。

「音楽狂?」

「はい。音楽に傾ける情熱において、彼女らを上回る人間は存在しないでしょう。
未知の音楽とあらば、習得まで仕事はおろか寝食すら忘れて練習を続けかねないのが難点ですが」

「……教えていいのかそれ?」

「体が動かなければ演奏できない事までは忘れませんので、問題ありません。
そして、音楽にかまけて仕事を忘れる、あるいは支障をきたせばどうなるか理解できる程度の理性も残ってはいます」

 淡々と、眉一つ動かさず物騒な事をのたまうローラ。
 そんな彼女に、海人は思わず苦笑する。
 
「相変わらず過激な教育方針だな」

「いつもの事ですし、私の休暇終了後シェリス様が辿る運命を考えればまだ生温いかと」

「へ? どういう意味です?」

「……音楽程度の事ならば、本来シェリス様が気付いてしかるべき事です。
ですが昨日の夜に何か探る際に留意すべき点があるかお尋ねしたところ、音楽を含めた人前に出る類の芸の優先順位を下げられました。
大仕事が終わった後の緩みであれば締め直さねばなりませんし、未熟であれば一刻も早く克服させねばなりません」

 静かに、だが明朗に語るローラ。
 
 海人という男を扱う場合、最大の注意点は存在の露呈だ。
 本人が厭っているというのもあるが、能力の一部でも他者に知れれば引き抜き合戦になりかねない。
 ゆえに、誰かの目の前に出なければ話にならない類の芸はすべて却下。
 仮に仮面で顔を隠すなどしたとしても何らかの事故で剥がれてしまう可能性もあるし、
そもそも仮面状態では怪しすぎて出せる場があまりに限られてしまう。
 
 つまり、探るべきは彼が人前に出ずに発揮できる類の芸。

 そういう意味では、音楽という芸は真っ先に外されてしかるべきだ。
 自ら演奏する以上、人前に出なければ話にならない。

 しかし――――芸としての音楽は期待できないが、知識としての音楽ならば話は変わる。

 おそらくは他大陸の人間であろう海人が知る音楽は、当然未知の楽器、未知の曲であるはず。 
 それを手に入れれば、売り込みによる利益は勿論、新たな価値観の取り込みによる文化的な発展も望める。
 その面から言えば、とりあえず優先的に探っておくべき情報なのだ。 

 さらに、海人は秘密主義で警戒心が強くなかなか気を許してくれない困った男だが、
自身に害が及ばないと判断する範囲では可能な限りの協力をしてくれる。
 楽器や楽曲であればその協力の範囲内に収まる可能性が高い為、ますます探らない理由がない。

 ローラは、昨日海人が色々細かい芸は持ち合わせていると言った段階でこれに気付いた。
 しかし、主であるシェリスは夜になっても気付かぬばかりか、音楽の優先順位を下げてしまった。
 気付かなかったのが、緩みゆえか未熟ゆえかは不明だが、いずれにせよきっちりと追求し心の底から改善を促さねばならない。

 ――――それも、ローラの仕事の一つなのだから。

「あの、具体的には何をするんです?」

「色々と候補はございますが、最大で私との組手を三日連続でしょうか」

「それ、流石にシェリスさん死んじゃうんじゃないですか?」

 冷や汗を垂らしながら、雫が思わず突っ込む。

 ローラとの組手の過激さは、一応海人達から聞いている。
 月一のそれを週一に変えると言っただけで、シェリスを含むあの屋敷の人員全てが土下座する程だと。
 詳細は知らないが、それだけでいかに過酷なのかが良く分かる。
 
 それを三日連続など、途中でシェリスが衰弱死する未来しか思い浮かばない。

「仕事に支障をきたさぬギリギリの加減は心得ております」

「……あの、前々から思ってたんですけど、ローラさんってシェリスに対して使用人としてどうよ、
って態度多くないですか?」

「問題ございません。私の雇用契約には、そういった条項も盛り込まれていますので」 

「へ……?」

「私が雇われる際、雇用条件に色々と加えているのです。
ちなみにシェリス様はそれら全てを必要な事だとして呑み、私を雇われました」

「……シェリス嬢も随分無茶な事をしたものだな。まあ、つくづく大したものではあるが」

 しれっとのたまうローラを眺め、海人は苦笑する。

 どんな条件かは不明だが、多くの条件の一つがそれだとすれば、
全て合わせればどれほど強烈な条件になるのか、正直想像を絶する話だ。
 何歳の時に結んだ契約なのかは知らないが、命知らずを通り越し自殺志願に等しいだろう。

 が、何よりも恐ろしいのは――――未だローラがシェリスに仕えているという事実。
 
 ローラの性格からして、条件に反すれば即辞表を叩きつけているだろう。
 それが過酷極まりない労働環境に晒されて尚屋敷を辞めていないのは、シェリスが条件を守っているという何よりの証左。
 相当無茶を言われたであろう条件を、全て守りきっているという事なのだ。

 つくづく大した御令嬢、そう思い海人は我知らず苦笑を零した。

「本人が聞けば喜ぶかと。私としては、組手の際に泣き叫ぶ事の禁止も盛り込んでおけばよかったかと思っているのですが」

「……あの、シェリス殿が泣き叫ぶのですか?」
 
 ローラの苛烈な言葉に、思わず訊ねる刹那。

 付き合いは短いが、それなりにシェリスという人間は見てきている。
 海人の出鱈目具合のせいで崩れる事も多いが、基本的には優雅な御令嬢。
 付け加えるなら旧ルクガイア王が攻め入ってきた時には真っ先に最前線となるであろう場所に駆けつけて奮闘し、
かつてカナールがエルガルドの陰謀で襲われた際には、自身も傷を負っていたにもかかわらず迷う事無く戦いに赴いたという。
 
 あくまで海人相手が例外というだけで、本来は気高く優雅で、
勇敢な貴族の御令嬢だというのが刹那のシェリスに対する認識だ。
 
 そんな人間が、組手で泣き叫ぶなど少々想像しがたい。
 雫のように、泣き叫びながら隙を窺い平常心を崩そうとしているのなら分からなくもないが、
ローラの口振りだとそういうわけでもなさそうだ。
 
「実に嘆かわしい事ですが、事実です。前半は果敢に策を巡らせ全身全霊を注ぎ立ち向かってこられるのですが、
後半に入って打てる手が片手で数えられる程度になりますと、半泣きで悲鳴を上げ始めます。
悲鳴を上げるような体力があるなら、その分他に回すよう何度も申し上げているのですが、なかなか直りません」

 何でもない事のように言いながら、ローラは静かに紅茶を啜る。

 ローラとの組手において、シェリスは屋敷でも比較的積極的な部類だ。
 攻めなければ圧倒的な力で一方的に蹂躙されるだけと理解しているからこそだが、
前半戦はそれこそ自身の力を最大限に生かす戦略を立て、攻撃に虚実を巧みに入り混ぜ、
時として大きな危険を伴う奇手すら混ぜて全力で立ち向かってくる。 

 が、打てる手がほぼなくなった後半戦に突入すると段々泣きが入り始める。
 それまで堪えていた悲鳴を上げ、あらゆる戦略が目前の敵を打倒するのではなく攻撃を少しでも軽減する方向に傾いてしまう。
 防御に傾きやすい事はまだ良いのだが、悲鳴はいただけない。
 悲鳴は余計な体力の消耗であるばかりか、自らの弱気を呼ぶ事にも繋がり、実戦では生存率が下がる。
 なので改善するよう促しているのだが、なかなかに直らないのだ。
 戦士として、まだまだ心構えに不足があると言わざるをえない。

 とはいえ、これはあくまでローラの主観。
 シェリス、というかローラとの組手経験者の大半にも言い分はある。

 全ての策を逆に利用され、偶然上手くいきそうになっても力技で叩き潰され、
真っ向勝負を挑めば一番の愚策と言わんばかりに圧倒的戦闘力で蹂躙される。 
 それでも諦めずに立ち向かい、もはや奇策すら博打ではなく自滅になってしまう程に消耗した状態で、
碌に動けなくなったら動かなくなるまで滅多打ちにされる事が分かっているのに悲鳴すら上げるなというのかと。
 むしろなんだかんだで毎回逃げずに組手に赴いている根性を褒めて欲しいと。

 ―――両者の主張の正誤はさておき、議論が平行線になりそうな事だけは明白だった。

「ふむ……そこまで厳しい組手となると、逆に興味が出てきますね。
よろしければ、明日の朝お相手願えませんか?」

「ちょ、セツナさん正気!?」

 無謀極まりない申し出をする刹那に、ルミナスが思わず叫んだ。

「はい。先日のラムサス公爵との戦いでつくづく未熟を思い知らされましたので。
格上との鍛錬は、むしろ望むべきでしょう」

「……う、それ言われたらあたしも参加しなきゃいけなくなるんだけど」

 粛々と語る姉に、恨めし気な目を向ける雫。

 より強くなる為と言われれば、雫としては拒む事は出来ない。
 護衛としての立場もあるが、純粋に揉め事に巻き込まれやすい海人をより確実に守れるようになりたいという思いも強いのだ。

 まして、自分よりもはるかに強い姉が自ら申し出ている。
 雫の力量では、怖いから参加したくないなどとはとても言いだせない。

 そんな悲壮な覚悟を決める妹の頭を撫で、刹那は優しげに語りかけた。
 
「安心しろ、お前は強制参加させるつもりだからな」

「妹に対する優しさとかないの!?」

「お前が拙者より強い、あるいは弱くても拙者より確実に海人殿を守れるというなら文句は言えんが?」

「……しくしく」  

「では、明日の朝は御二人との組手ですね。承知いたしました。
よろしければ、ルミナス様とシリル様もいかがでしょう?」

 反論の言葉を失った雫に止めを刺しつつ、ローラはルミナス達に話を向けた。 

「……まあ、一応前から気にはなってたんですよね。怖いですけど、私もやります」

 仕方なさそうに、片手を上げるルミナス。

 実際、稀少と言えば稀少な機会だ。
 ルミナスよりも上の実力者など、世界を見渡してもそう多くはない。
 単独では絶対に敵わないレベルとなると、尚の事だ。
 
 エアウォリアーズの団長や副団長もその少数に含まれ、
二人にはたまに組手をしてもらっては絶望的な力の差を見せつけられているが、
それでも同じ人間ばかり相手にしていてはそのうち慣れを上達と勘違いして慢心の元になりかねない。
 その為、滅多に戦えない圧倒的強者との組手はむしろ望むべきであった。

 例え、団長や副団長が可愛く見える程容赦がない鬼神が相手だとしても、である。
  
「お姉さまが参加すると仰るなら、私も参加しないわけには参りませんわね」

 小さく肩を竦めながら、シリルも参加を表明する。

 彼女の言葉は本音だが、別の理由もあった。

 というのも、ここしばらく順調な戦いが多すぎるのだ。
 カナールでの戦いこそ危なかったが、その後はあまりにも順調すぎる。
 団内のトーナメント戦で第三部隊の隊長を接近戦で下し、
その後のルクガイア戦でも実力と総兵力のおかげで圧勝し、
この間鍛え直して雪辱戦にやって来た第三部隊の隊長さえも紙一重とはいえ再び接近戦で打倒した。

 日頃の精進諸々あってこその成果ではあるが、それにしても順調すぎる。
 特に第三部隊の隊長は、純粋な身体能力のみなら三隊長最強の男。
 自戒を怠っているつもりはないが、彼を返り討ちにした事は知らず知らず慢心するには十分な要素だ。
 ここらで在野にも凶悪な化物が潜んでいる事を再確認し、自戒を強めておきたいところである。
 
「では皆様方と組手という事で。カイト様、よろしいでしょうか?」

「鍛錬となれば私が口を出す事でもないだろう。ま、皆怪我はせんようにな」

 武人には程遠い自分が口を出せる事でもない、と海人はあっさりローラの言葉に頷いた。  




















  





 翌朝、目が覚めた海人はゆっくりと屋敷を散策していた。

 今日はいつもより早く目が覚めてしまったのだが、刹那達は早朝の鍛錬に勤しんでいる時間なので話し相手は無く、
かと言って二度寝するには時間が中途半端だったので、眠気覚ましに散歩する事にしたのだ。

 が、今海人にとっては計算外の事態が起きていた。

 今日はやや冷え込んでいる為か、歩き始めて間もなく残っていた眠気が消えてしまったのだ。
 眠気を払いつつ刹那達の鍛錬が終わるまで時間を潰すつもりで歩いていたのに、
予定の二割ほどの時間で終わってしまったのである。
 残り時間を潰さねばならないが、寝ぼけている状態ならともかく完全に目覚めた状態で屋敷を歩いていても退屈なだけ。
 普段なら地下に降りて研究をするところだが、現在はローラ滞在中につき封鎖中で、警報装置の解除にも手間がかかる。
 かといって厨房で朝食の準備を始める気分でもないし、風呂に入ろうにも昨日掃除してしまているので創造魔法でお湯を作らねばならない。 

 悩みながらふと中庭を見ると、視界に何やら凄い速度で飛び交う銀光が入った。
  
(そういえばローラ女士と組手をやると言っていたな……中庭の隅っこで見物しながら御茶でも飲むか) 

 いったん立ち止まり、足の向きを変える。
 
 中庭の戦闘は危険だろうが、入る時にさえ注意すればそれに巻き込まれる事は無い。
 また、御茶中に誰か飛んできたとしても障壁を張っておけば防げる為、危険は少ないと言える。
 彼女らの組手なら見応えもあるだろうから、暇潰しにはもってこいだ。
 
 そんな事を考えながら海人が中庭のドアをこっそり開けると、

「んなっ……!?」
 
 眼前に広がった光景に、絶句した。

 場の中心にいたのは、ローラ。
 いつも通りの無表情で、両手にナイフを握り悠然と佇んでいる。
 その姿は美しくも孤高で、妙な近寄りがたさが感じられた。

 ―――そんな彼女を囲むようにして、刹那達が膝をついている。

 肩で呼吸する程に疲弊しきって、武器を支えにかろうじて倒れていないような状態。
 多少の余力はありそうに見えるが、相当激しい運動を行った事は疑いようもない。

 状況からしてローラに四人で挑んで負けた事は明白だが、海人はそれがなかなか信じられなかった。 

 日常生活ではあまり感じさせないが、ルミナスとシリルは凄腕の傭兵だ。
 今までに挙げた戦功は数知れず、またその傭兵らしからぬ高い教養もあいまって、
今まで仕事で関わった国の大物達からは例外なく一目置かれている。
 二人の名を知らぬ傭兵など、碌に情報も集めない三流以下の者か傭兵になって一月も経たぬ新人ぐらいのものだ。
 
 刹那と雫も、二人と同格以上の戦士である。
 冒険者時代は御人好しや呪いじみた不運などが重なって無名だったが、
その類稀な戦闘能力で上位の冒険者でも手が出ないような魔物を数多葬っていた。
 暢気な生活を送っている今でも鍛錬は決して怠らず、その天賦の才をさらに大きく花開かせ続けている。

 日常生活こそ年の割に初心すぎる食道楽だったり、同性の上司に不毛な愛を抱く変態外見幼女だったり、
家事の練習で何故か屋敷を破壊する残念麗人だったり、悪戯をこよなく愛する愉快犯だったりと、
超人らしからぬ雰囲気があるが、戦闘となれば騎士団相手でも真っ向から叩き潰せる者達なのだ。

 そんな四人が、唯一人を前に揃って地に膝をついている。
 到底、信じられるはずがない状況であった。

「……四人がかりとはいえ、疲弊した状態で二十分も持ち堪えられるとは思いもいたしませんでした。
素直に、称賛させていただきます」

「褒められても全然嬉しくないですねぇ……! 
このメンバーで一人一人個別で戦った後に四人同時に相手してほとんど疲れてないっておかしいでしょ!?」

 ローラのあまりに理不尽すぎる超人っぷりに、ルミナスが反射的に叫ぶ。

 最初は、ローラと刹那の組手だった。
 開始と同時に先手必勝と言わんばかりの猛攻を浴びせた彼女だったが、
しばらく打ち合ったところでローラの蹴りが腹に入って空高く舞い、
体勢を立て直す前に地面に叩き落とされ、体が痺れているところで首にナイフを突きつけられた。

 次が、ルミナス。
 翼を広げ得意の空からの襲撃を主体に攻撃を仕掛けていたのだが、
全ての攻撃がひたすらあっさりといなされた。
 剣を振るえば紙一重で回避され、打撃を放てば投げや組技で返されそうになる。
 そしてどんな手を打つかローラを見据えながら空で考えていたら、
信じ難い脚力で大地を蹴ったローラが砲弾のように飛んできて、防御する間もなく蹴り落とされた。

 その光景を見ていた雫とシリルは冷や汗を掻いて腰が引けていたのだが、
直後ローラに御二人は同時にどうぞと言われ、プライドを刺激されて襲い掛かった。
 しかし、牽制に放たれたシリルの矢は全て素手で薙ぎ払われ、
それと同時に襲い掛かった雫は攻撃をいなされ、最後には投げ飛ばされてシリルへの飛び道具にされてしまう。
 飛翔魔法で急制動してシリルに衝突する少し前で止まったのだが、
直後投げた雫を追いかけてきたローラの拳により再加速され、背後にいたシリルごと殴り飛ばされてしまった。

 そして、つい先程。
 ローラの提案で今度は四人がかりで戦ったにもかかわらず、この惨状である。
 怪我らしい怪我こそ負っていないものの完全に疲弊した四人に対し、ローラは軽く汗を掻いているのみ。
 良く耳を澄ませば僅かながら息が乱れている事も分かるが、それを差し引いても惨敗としか言いようがない。 

 超人と言われるに相応しい実力を備えた四人を相手に、恐るべき怪物っぷりである。

「いえ、こう見えてもかなり疲れております。
流石に皆様方が相手では、手加減する余裕はほとんどありませんでした。
部下が相手であれば、十人がかりでもこの程度の時間で疲労する事など無いのですが」

「……正直、全く慰めになりません。四人がかりで総攻撃を仕掛けた時でさえ、
ああも見事にいなされてしまっては……」

 息を荒げながら、刹那が悔しげに呻く。
  
「あれは良い攻撃でした。ですが、見えずとも気配や空気の流れなどに注意を払っていれば、
どの方角からどんな攻撃が来るか先読みする事は十分可能でございます。
そして、それさえ分かれば後は攻撃到達が早い順に迎撃すれば済む話。
もっとも、皆様の連携がもっと上手ければあの時に有効打を受けていたと思われますが……まあ、
急造の連携攻撃としてはあんなところでしょう」

「急造にしては奇跡的なぐらい上手く出来たと思うんですけど!?」

 ローラの冷たい言葉に、今度は雫が抗議する。

 防がれた連携は結果こそ伴わなかったが、急造の連携としては極上だったと思う。
 ルミナスが剣を振るい、それとほぼ同時にシリルの矢が襲い、
間を開けず刹那と雫が双刃で襲い掛かる。
 タイミングを誤れば互いの動きが阻害し合って連携がかえって仇となる波状攻撃だったが、
互いの力を活かし合える良いタイミングで仕掛けられた。

 運もあったとはいえ、打ち合わせも練習も無しにあれだけ出来れば、称賛されていいはずだった。

「失礼ながら、奇跡的と呼ぶほどではございません。
ルミナス様とシリル様、セツナ様とシズク様の組み合わせの連携は中々でしたが、
組同士の連携は上手くいっておられませんでした。
もう一瞬速くセツナ様とシズク様が攻撃を仕掛けておられれば、多少体勢を崩されていたでしょう」

「確かに連携は拙かったですが、それでもあの僅かな時間でお姉さまの剣を弾きながら私の矢を払い、
その勢いのままシズクさんを蹴り飛ばしてセツナさんに叩き付けるなんて普通できませんわよ……」

 疲れたように、シリルがぼやく。

 確かに、連携に問題があったのは事実だ。
 刹那達とは一応一緒に鍛錬もしているのでやる価値がある程度の連携は可能だが、
やはり共に戦場を駆け抜けている部下達と比較すれば、雲泥の差がある。
 総攻撃の時はまだマシだったが、それでもローラの言うように奇跡的には程遠い出来だった。

 が、個々の能力が異常に高い為、本来ならさして問題にならなかったはずだ。
 なにせ、ルミナスや刹那の斬撃は並の兵士では一太刀防ぐ事も叶わないレベル。
 二人に比べれば劣るが、シリルの矢や雫の斬撃も並大抵ではない。
 本来なら、連携せずとも各々勝手に攻撃するだけで大概の強者を討ち取れる。
 エアウォリアーズでも、それを確実に防げるのは団長と副団長だけだろう。

 そんな攻撃を連携させても尚あっさり捌いてしまったローラが、出鱈目すぎるのだ。  

「多少年は離れているとはいえ……差が大きすぎますね」

 息を整えながらぼやく刹那。

 今回、刹那と雫は手札を明かすべきではないと判断し、海人製の魔法を封じて戦った。
 それを解禁して戦っていれば、おそらくは勝てただろう。
 それならば技で上回られたところで、基礎能力で補う事が出来る。

 だが、それはあくまでも海人という反則の恩恵あればこそ。
 素の実力では、今のようにルミナスとシリルを含めた四人がかりですら碌に手傷を負わせる事も出来ない。
 あまりにも圧倒的な実力差で、底がまるで見えない。

 以前軽く手合せした際に実力を推し量ったつもりでいたが、見積もりが甘すぎた。
 今の手応えからすると、海人の恩恵無くしては吸血族の能力を使用したところで制限時間まで持ち堪えられ、
時間切れと同時に叩き潰されかねない。

 年の差は十も離れていないというのに、あまりにも格が違いすぎる。
 仮に刹那が後十年精進を続けたところで、今のローラに追いつく事すら無いだろう。 

「それは仕方ないかと。皆様と私では潜ってきた戦いの数も質も違うはずですので」

「……前々から気になってたんですけど、ローラさんってシェリスに雇われる前は何をしてたんです?
どー考えても冒険者か傭兵やってたとしか思えないんですけど、それにしちゃ名前聞いた事ないですし……」

 訝しげな顔で訊ねるルミナス。

 ローラの強さは、本人も言ってるように膨大な戦闘経験が裏にあるとしか思えない。
 ルミナスさえも容易く上回る身体能力だけなら、まだ才能という言葉で頷けなくはないが、
ローラは攻撃技術と防御技術が神がかって優れている。
 それは、才能だけでは到底習得不可能な事。
 才能に加え、凄まじい量の実戦をこなして磨かれたからこその技術である。
 
 が、膨大な戦闘経験を積める職業と言えば魔物退治が多い冒険者か戦場が仕事場である傭兵だが、
どちらの業界を調べてもローラ・クリスティアという名前は出て来ない。
 絶世の美貌と豊富な知識、更には規格外の戦闘能力まで兼ね備えるような人間が話題にならないはずがないのに、だ。 

 海人もそうだが、ローラもまた謎が多い人物だった。

「素性について答える気はございませんが、仮に無名だったとしてもセツナ様とシズク様の例を考えればおかしな話ではないかと」

 言いながら、視線を刹那と雫に向ける。

 二人の戦闘能力は年齢を考慮せずともずば抜けているが、冒険者時代は無名だった。
 容姿も合わせれば普通に魔物退治をして回っているだけで有名になっていておかしくないというのに、
また二人はかなり真面目に稼ごうと積極的に魔物退治もしていたというのに、である。
 どうも御人好しやら壊滅的な金運やらが重なった結果らしいが、どのみち異常極まりない話だ。

 それを考えれば、ローラのような人間が活躍しつつも無名だった可能性もありえないとまでは言えない。
 
「確かにそうかもしれませんけど……なーんか引っかかってるんですよね。
知識の中に心当たりがありそうというか……実はローラさん偽名だったりしません?」

「生憎と、本名です。さて、その状態では皆様朝食の準備は無理でしょう。
僭越ながら、今日は私が作らせていただきます。この場までお持ちいたしますので、しばしお待ちください」

 話を早々に切り上げると、ローラは一礼して屋敷に繋がるドアへと向かった。
 その途中で、いつの間にか入って来ていた海人と鉢合わせる。

「おはようございます、カイト様。皆様の事は御心配なく。
疲れているだけですので、朝食までには立ち直られるでしょう」

 一礼し、語る。
 
 四人共かなり疲労している事は事実だが、それだけでもある。
 一人ずつ戦った時は勝負を決められるだけの威力を乗せた攻撃を叩き込めたが、
流石に四人がかりの時はそれは難しかった。
 隙を狙っている間に時間が過ぎ、予定していた組手の時間が終了してしまったのだ。 

 自分もまだまだ未熟、そう自戒しながら海人の横を通り過ぎようとしたローラだったが、  
  
「それはなにより。しかし……君も人が悪いな? ま、問い方が悪いとも言えるが」

 皮肉気に掛けられた海人の声に、一瞬足を止めた。
 そして、ゆっくりと彼に振り返る。

「……それを悟りながら教える気がないカイト様も、十分人が悪いかと存じます」
 
「おや、教えてもいいのか?」

「いえ、沈黙していただけると助かります。
おそらく、そこに気付けばルミナス様とシリル様は察してしまわれる可能性がありますので」

「ふむ……その口ぶりからすると、バレても特に問題はないのか?」

「古い話ですので。それに私の力はとうにご存じですから、知られたところで納得されるだけかと」

 淡々と答える。

 実のところ、ローラの素性それ自体は発覚したところでさして困らない。
 発覚したところで、探れるのは彼女の戦歴と戦闘法ぐらいのもの。
 そして戦歴については知られてどうなるものでもないし、戦闘法については特に隠していない為、
知られて困るというわけではないのだ。

 純粋に過去を探られるのが愉快でない、それだけの話なのである。 

「そうか……ま、気にはなるが詮索はすまい。私が知っても更に意味はないだろうしな」

「条件次第では、カイト様には教えて差し上げても構いませんが?」

「いたずらに身内に対する秘密を増やしたくもないんでな。ま、今回は好奇心を抑えておこう」

「それは残念です――――では、カイト様もこの場でしばしお待ちください。
下拵えは終えていますので、すぐに朝食をお持ちいたします」

 ローラはそう言って再び一礼すると、今度こそ屋敷の中に消えていった。












 

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

偽名……ねぇ。偽名・匿名で活躍してて、その状態で有名だったら
本名を名乗るようになっても気づかれないこともあるよね
美貌など判りやすい特徴があっても、隠して偽名・匿名だったら
逆に判別のミスを誘えるよねぇ
[2013/12/30 02:11] URL | #- [ 編集 ]


本名より有名な二つ名があったってパターンかな

pass:1111
[2013/12/30 06:31] URL | あ #JalddpaA [ 編集 ]


>財布空でも一片の悔いも無し、と言った表情で彫刻を抱きしめるシリル。

 ちょっと違和感と言うか……
 幾ら暴走気味とはいえローラの手の中にあるはずの彫刻をどうやってむしり取ったんでしょ

 テーブルに一度置かれる描写なり、それこそ毟り取る描写が欲しいです(ギャグ過ぎるかな?)
[2013/12/30 09:11] URL | 冥 #heXXx5yE [ 編集 ]


 >幾ら暴走気味とはいえローラの手の中にあるはずの彫刻をどうやってむしり取ったんでしょ

深読みすれば、女史が迎撃せずに譲ったのでは?
殺意・害意がない相手をいなすような場面ではないですし、
そも彼女に譲る気がなければ、テーブルの上からでも奪えないでしょうし。
まぁ、女史かそう読む海人の心理描写は欲しいってなるのかもしれないですけど

09
[2013/12/30 09:46] URL | You #BSnaxvNg [ 編集 ]


>女史が迎撃せずに譲ったのでは?
作中用語では一般的な「女史」ではなく「女士」やね
[2013/12/30 14:05] URL | #- [ 編集 ]


うーん……既視感がやばい
[2013/12/30 15:28] URL | ノマ #- [ 編集 ]


なるほどそういうことか
ローラの素性はあの伝説の人か
なるほどなるほど
[2013/12/30 18:08] URL | ひよりん #wLMIWoss [ 編集 ]


シェリス嬢、南無南無・・・・・・
まあ、ローラの言うとおりカイトと付き合う上で、存在の秘匿は何よりも気をつけなければならないことですからね~
しかし、そんなローラさんと雇用契約できたという昔の経緯も気になりますね。

>楽器は動物の一部を使用してる物もあるんで、全ては作れん
と、なると人間の髪の毛を植毛したという昔の日本人形や、鯨のひげを使ったからくり人形も駄目か・・・・・・・・・刹那と雫に日本人形をあげれば、喜びそうなんだが。

今年も更新、お疲れ様でした。
来年も楽しみにしています。良いお年を~
[2013/12/30 20:44] URL | 飛べないブタ #t50BOgd. [ 編集 ]


なるほどローラはあれだな(確信)
[2013/12/31 01:11] URL | hi #- [ 編集 ]


みなさま、あけおめことよろ

去年はお疲れ様でした、今年も更新を楽しみにしています。


09



>楽器は動物の一部を使用してる物もあるんで、全ては作れん
と、なると人間の髪の毛を植毛したという昔の日本人形や、鯨のひげを使ったからくり人形も駄目か・・・・・・・・・刹那と雫に日本人形をあげれば、喜びそうなんだが。

>刹那と雫に日本人形をあげれば、喜びそう
彫りの技術があるし、歯車などのメカニズムにも造詣があるだろうし、ふたりを労う為なら別段代用品で作れるんじゃ?
何も魔法で出すだけが海人の特技じゃないと思う。

>楽器は動物の一部を使用してる物もあるんで、全ては作れん
は、
一応楽器の製法は知っているが、”即座”に役立つのは”作れる物”とその関係だけだな。
って、続いてる。
全ては作れんっていうのは魔法ではという事なので
女士が特級の魔物でも倒せば、革でも髭でも幾らでも取れるでしょ。
別段、魔法では出せないという話ではないかと思う。
[2014/01/01 00:55] URL | You #BSnaxvNg [ 編集 ]


明けましておめでとうございます。

今回も楽しく読まさしてもらいました。

感想としては
後半部分では戦闘描写やローラに対する伏線がしっかりとできていました。

しかし、前半部分では刹那と雫の言葉数が少なく、シリルの暴走の仕方も違和感が...
確かにギャグの方に違和感がありますね。

今回の話で益々ローラの過去が気になってきました。
自分的には過去の出来事からの因縁などでまた一悶着トラブルがあって欲しいですね。
それと、この世界には正月などがないのでしょうか?
おせち料理などもみてみたいです。
[2014/01/01 05:44] URL | 高2で厨二 #- [ 編集 ]

更新お疲れ様です
明けましておめでとうございます。今年も更新楽しみにしています。私の初夢ですが会社で残業をしてました。ええ、社畜です。
さて、数日遅れましたが更新お疲れ様です。今回の話ですが、皆さんのコメント通りシリルの暴走に少し違和感がありましたが、あまり気にならないので軽く修正する程度で大丈夫でしょう。調子もだいぶ戻られてるようですので安心しました。
さて、完璧に見えて少し甘いシェリス御愁傷様です。まぁ、契約なので仕方ないですね。
そして、ローラの過去ですが伏線がそこら中にありますので、今回の話まででの範囲でわかる、おおよその素性、交友関係、戦歴など予想できました。(確信)
それはピーー(略)ーーですね。

[2014/01/02 04:26] URL | 名無しの権兵衛 #y2a4lNMg [ 編集 ]


>まるで地中から掘り出して土を払っているだけ~
この文章とても上手な表現ですね、その場の光景がパッと頭の中でイメージできました。
[2014/01/03 10:59] URL | #- [ 編集 ]


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