ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編セット8

 番外編36



 海人邸の居間で、海人とエミリアはソファーに背を預けていた。

 今日は海人が手掛けていた研究も一通り一段落し、特にやる事も無かった。
 何をするか海人が考えていたところ、たまには頭を休めないと良くないし、久々に夫婦で静かな時間を過ごしたい、
とエミリアが提案し、夫婦揃って何も考えずただぼーっとする事にしたのだ。

 が、その間にも海人はついつい研究の事を考えてしまう。
 次に何をやるか、それは完成後公表しても問題ないか、など様々な事を。
 もはや長年の癖で完全に遮断するのは不可能に近いのだが、

「こら。まーた研究の事考えてたでしょ」

 エミリアは、容赦なく夫の鼻を抓る。

「……すまん」

 ひりひりする鼻頭を指でさすり、頭を下げる海人。 
 
 癖なんだから仕方ないだろう、と言いたくもあるがそれを言うとエミリアは怒る。
 打撃関節絞め技のコンボを受けるぐらいならいいのだが、拗ねられると厄介だ。
 そうなると、海人が謝るまで延々背後から恨めし気な視線を向けてくる。
 そのしつこさたるや相当なもので、危険を伴う実験をする時と彼女が家事をする時以外は背後霊の如く付き纏う。
 食事の時は流石に背後から離れるが、代わりに正面から睨んでくるのでプレッシャー三倍増しだ。
 結局、最長二日で海人が音を上げて土下座する羽目になる。
 
 ゆえに何も言わないのが最善であったが、それでも不満が消えるわけではなく、
思わず妙な考えが口から零れた。 



「……亭主関白というのも、少々憧れるなぁ」

「亭主関白?」

 きょとんとした顔で、聞き返すエミリア。

「いや、いつもお前の尻に敷かれっぱなしだからな。たまには立場逆転してみたいなー、と。
そう、亭主関白みたいな感じで」

「ふーん……試しにやってみても構わないけど、具体的にどんな事したいの?」

「そうだな、例えば仕事が終わったらすぐにメシ、と言ってすぐに食事を出されるとか」

「それ、いつもやってない?」

「……言われてみればそうだな」

 むう、と唸る海人。

 エミリアの言うとおり、今も食事を欲した時はすぐに出てきている。
 海人は毎日のように研究に勤しみ、何日後の何時に出てくるかすら読めないのだが、
それでも彼が地下から出てくる時には必ずエミリアが地下の入り口で出迎え、食事の要不要を聞く。

 そして、欲しいと言えばすぐに準備してくれる。
 深夜だろうが早朝だろうが、愚痴一つ零さず。
  
 それもすぐに食べたい時は、御手製シチューを始めとした冷凍保存してある料理にパンや御飯などの主食やサラダを添えて出し、
待てるという時は海人のリクエストを聞き、それに合わせた料理を出す。
 そして要望がないならないで、自己判断により海人が一番美味しいと感じそうな料理を作ってくれる。
 料理の腕もプロ級で、出来が悪い事はまずない。

 夫に出す食事において、エミリアは尽くしきっていると言って差し支えないだろう。

「では、好きな時に風呂に……」

「それもいつもやってるじゃない。言ってくれれば喜んで背中も流したげるわよ?」

 微笑みながら、肩を竦めるエミリア。

 食事だけでなく、風呂についてもエミリアの準備は万端だ。
 放っておけば研究室に籠もりっぱなしで何日も風呂に入らない夫の為、
毎日早朝にきちんと浴槽を洗ってお湯を入れ保温し、いつでも入れるようにしている。
 勿論普通の家庭なら電気代的に論外な所業だが、海人の稼ぎから見れば誤差でしかない。

 そして海人がやりたがらないので控えているが、言われれば夫の背中を流すぐらいは喜んでやる。
 甲斐甲斐しく、愛情たっぷりに、弱すぎず強すぎない心地良い力加減でやるつもりだ。

「ぬぬ……ならば寝る……」

「一応寝室は毎日ホテル見たくシーツからなにから新しいのに変えて、
部屋全体も一番念入りに掃除してるけど、まだ何かやる事ある?」

 少し悔しげな夫に、悪戯っぽい笑顔を向ける。

 寝室についても、エミリアは抜かりがない。
 一日が終わり体を休める、ある意味最も大事な場所。
 ベッドは心地良い寝心地を得られるよう最大限の注意を払っているし、
部屋全体も他の部屋より徹底して清潔感を保ち、心地良い空気を維持している。

「ぬぐぐ……残るは支配的で横暴な振る舞い……」

「それが出来るんだったらそもそも尻に敷かれてないでしょ」

 夫の言葉を、ばっさりと切り捨てる。

 海人は敵対者には支配的とか横暴とかそういう次元ではない残虐性を発揮するが、
中立あるいは味方寄りの人間に対してはかなり温厚だ。
 妻であるエミリアにはその傾向が特に顕著で、結婚以来八つ当たりをされた記憶も、
理不尽な文句を言われた事も無い。

 そんな人間が、今更横暴な振る舞いなど出来るはずがなかった。

「……むう」

「ふふん。そんじゃ、亭主関白が無理ってのが判明したところで……私は鬼嫁ってのやってみたいわね」

「む、試すのは構わんが……具体的に何をしたい?」

 言いながら、海人は小首を傾げた。

「そうね……例えば、自分は料理しないで夫に料理を作らせる。
ま、仕事放り出してまでやれとは言わないけど」

「今でも休みの日にはけっこうやらされとると思うが?」

 半眼で、妻を睨む海人。

 基本的に家事全般を完璧にこなすエミリアだが、海人の時間が空いている時は少々異なる。
 その代表格が料理で、自分の方が圧倒的に上手いにもかかわらず夫に作らせたがるのだ。
 何を作っても喜んでくれるので嬉しくはあるのだが、元々料理好きではないので、面倒だという思いは拭えない。

「うぐ……ちょっとした事で怒り、すぐに暴力を振るう」

「ほとんどまんまじゃないか?」

 ふう、と溜息を吐く。

 エミリアの手の早さは折り紙つきだ。
 研究馬鹿すぎて己の健康を忘れ去る夫を矯正する為に手が早くなっている事が多いが、それを抜いても余罪はある。

 町中で他の女に目をやれば抓り、御世辞でも他の女の容姿を褒めれば肘打ち、
親しげに知人女性と話せば家に帰ったら関節技。
 愛ゆえに生まれる嫉妬心由来の行為なので怒る気にはならないが、
もう少し何とかならないか、という思いは拭えない。
 特に知人女性については、親愛より警戒心の方が圧倒的に強いのだから。

 自覚はあるのか、エミリアがばつの悪そうな顔をする。

「ぬぐ……家事で疲れたー、とか言って夫に肩もみとかさせる」

「理由は違うが、基本的に休みの時は肩と言わず全身マッサージしてるだろう?」

 やや呆れたような口調になる海人。

 海人は休みの時は、自ら考案した全身美容マッサージをエミリアに行う事にしている。
 これは特製の美容クリームを用いて全身に適度な刺激を与える事で、体を引き締め肌を含めた体の調子を整えるというもので、
他のいかなるマッサージもこれが誇る効果の足元にも及ばないという代物。
 美容クリームの値段の関係上庶民には到底手が出ないが、富裕層の間では大ブームになっているマッサージだ。
 元々顔が良く抜群のスタイルを誇るエミリアも、これを行うと更に美しくなる。  

 所用時間も二時間近いので、肩もみなど比較にもならない奉仕の仕方である。

「……ひょっとして私、かなり鬼嫁?」

「いや、全然違うだろう。普段は家事から何から完璧なんだからな。
ま、そうだとしても――――私が君を愛してる事には何ら変わりないわけだが」

「~~~~~っ!? ああぁぁぁっ! 普段言わないくせに、なんでこういう時にそういう事言うかな!?」

 夫の言葉に、一気に赤面するエミリア。

 普段の海人は態度で愛を示しはするが、言葉に出す事は滅多にない。
 言ったとしても遠回しで皮肉気なそれで、愛情を感じはするものの少々物足りない。
 自分はスキンシップから何から惜しみなくやっているだけに、尚の事。

 それゆえに、何気なく放たれた海人の言葉の効果は絶大だった。
 しかも若干気落ちしていた状況だったので、余計に効果が高い。

 エミリアは顔の火照りと緩みそうになる頬を抑えるのに、必死だった。 

「はっはっは、照れた顔も可愛いぞー」

「ぬっがあああああああああっ! 馬鹿! あんたほんっっっと馬鹿!」

 赤面した顔のまま海人に詰め寄るが、彼は愉しげに笑うのみ。
 それもそのはずで、語気こそ荒いがエミリアの顔は緩みに緩みまくっている。
 怒りより、嬉しさが上回っている事が丸分かりだ。

 ――――仲睦まじい夫婦の、日常の一幕であった。
 
  






 番外編37




 ある日の昼下がり。
 海人と雫は、庭で日向ぼっこに興じていた。
 
 海人は特に何をするでもなく庭にやって来た小鳥や風に揺れる木々の動きを眺め、
雫はそんな彼の腿を枕にして心地良さそうに目を閉じている。

「……なるほど、なかなかに心地良い」

「でしょー? こーんな良い天気なんですから、地下こもってたんじゃ勿体無いですって」

 ぱちりと目を開け、海人に目を向ける。

 今日は、朝からとてもいい天気だった。
 朝は若干肌寒かったものの、それでも空は見事な晴天。
 庭に大の字になって天を見上げれば、それだけで心洗われる。
 それほどに心地良い空気だった。

 が、海人はそれを気にした様子もなく、朝食を摂ってすぐ地下に行った。
 いつものように、新魔法開発の作業をする為に。

 非常に、勿体無い。
 一年でも稀なこれほどの好天気を一日地下で過ごすなど、最早冒涜的でさえある。
 そもそも海人は基本室内型なのだから、たまには虫干ししないと健康によろしくない。
  
 そう判断し、雫は海人の首根っこをひっつかんで強引に庭に連れだしたのだ。

「だが、もう少しで透明化魔法が完成するんだがなぁ……」   
 
「あ、もうそこまでいってるんですか?」

 横向きになりながら、感心したような声を上げる雫。

 ここしばらく、海人は透明化魔法の開発に注力していた。
 元々同様の魔法は開発していたのだが、ラクリアが古代遺産の透明化魔法を使えると知ってから、
本格的にやる気を出したらしく、他の開発をひとまずおいてそちらに集中していたのだ。

 数日前には体が幽霊のように透けるだけだったのが、完成寸前になっているあたり流石という他ない。
 
「かなり試行錯誤したが、後は術式を理論通り組み立てて実際に使用してもらうだけだ。
とりあえず、理論上は上手くいくはずだ。もっとも、使用に際しては注意も必要だが」

「注意ですか?」

「ああ、あくまでも姿を消すだけだからな。
例えば沼地で使えば足跡で見破られる恐れがある」

 頭を掻きながら、問題点を述べる。

 透明化の完成度それ自体は問題ないのだが、透明化自体の問題はどうにもならない。
 沼地に立てばぬかるんだ足跡が、草原に立てば踏み潰された草が、池に入れば不自然に空いた水が、
そこに何かがいるという証拠になってしまう。
 
 こればかりは、流石の海人もどうしようもない。

「あー、なるほど……でも、飛翔魔法で浮いてれば問題ないんですよね?」

「まあな。ただ、透明化自体の魔力消費も大きいからな……消耗にも気を遣わねばならん」

「具体的にどんぐらいです?」

「現段階では理論上一時間につき十万前後だ。
ま、君らの場合元々の魔力量に加えてダイヤモンドもあるから、それほど強烈な負担にはなるまいが」

 言いながら、小さく肩を竦める。

 透明化魔法の消費は大きいが、それでも雫や刹那が使う分にはさしたる問題ではない。
 二人共魔力量が百万近く、更には海人から支給された大粒ダイヤモンドにも魔力を溜めこんでいる。
 その為、丸一日透明化と飛翔魔法を併用し続けてもさしたる問題にはならないのだ。

 もっとも、常人では透明化魔法だけを十分持続させる事も出来ない為、燃費が悪いのは事実なのだが。

「確かにそうですね。でも、透明化かぁ……夢が広がるなー……お姉ちゃんがおやつ食べてる途中で堂々とくすねたり、
海人さんのお茶に大量の塩ぶち込んでみたり……」

 ウキウキと悪戯計画を練り始める雫。

 透明化。実に素晴らしい魔法だ。
 気配を断ち、消音魔法を使い、透明化魔法を使えばもはや滅多な事では見つからない。
 雫なら気配断ちの技能が異常に卓越している為、さらに完璧になる。

 そうなれば、もはや悪戯し放題。
 しかも相手によっては気を抜けば見つかるというスリルも楽しめる。
 悪戯好きな雫にとっては、夢のような話だった。

「おいおい、私が開発した魔法で悪戯しても多少なら笑って許すが、
度が過ぎれば流石に相応のお仕置きをするぞ?」

「ふふん、なんだかんだであたし達には甘い海人さんに、どの程度のお仕置きが出来ますかね?」

 苦笑しながら窘める海人に、不敵な笑みを返す。

 身内相手にも口が悪く性格も悪く、ついでに悪戯好きな海人だが、よくよく観察しているとかなり手緩い。
 例えば刹那が何かやらかした時にくすぐりを持ち出してからかう事はよくあるが、実際にやる事はまずない。
 せいぜいが割った壺を接着剤を使って元通りにしろという程度だ。

 今口に出した程度の悪戯なら、五分ぐらい両こめかみを拳でぐりぐりとされるぐらいで済むはずだった。

「そうだな……軽度な所では台所から君の好物だけを消し、
その上で君を障壁で閉じ込めて他の人間だけで白玉ぜんざいを食べ、
その後許したふりをして白玉ぜんざいを手渡し、いざ口を付けようとしたところで消すといったところか」

「ぶっ……!? それで軽度ですか!?」

 さらりと語られた苛烈な罰に、雫は思わず噴き出した。

 この屋敷にある雫の好物は、どれも海人の創造魔法によって生み出された物ばかり。
 彼は意思一つでそれら全てを消去する事が出来る為、防ぐ術がない。
 いかに雫が超人といえど、海人の思考よりも速く動く事は不可能だ。

 また、他でそれらを食べる事も出来ない。
 雫の好物は多くがこの大陸では入手不可能で、余程の幸運がないかぎり買う事が出来ないのだ。
 海人の世界の高級菓子にいたっては、そもそもこの世界に存在しない物すらある。
 
 まさに、反抗の隙すらない完璧な罰。
 これで軽度など、到底信じられる事ではない。
 
 だが、海人の表情は語っている間どんどん喜色が強くなっていった。
 それをやるのが今から楽しみで仕方ない、と言わんばかりに。
 その表情は億の言葉よりも説得力に満ち溢れている。

「無論。まあ、確かに君らには甘いから一週間程度でこの報復は止めてしまうと思うが」

「しかも一日じゃないんですか!?」
  
「それではつまらないじゃないか。一週間細々と手口や物を変えて君の慟哭を楽しみ、
その楽しみより罪悪感の方が上回る頃合いになったら止める……おお、完璧じゃないか……!」

 身を震わせながら、邪悪に嗤う海人。
 身内に甘いのは事実だが、彼はかなりのサディストでもある。
 口実があるならば、後にしこりが残らないギリギリまで楽しむのは当然。

 そして、透明化魔法を悪用すれば立派な口実になる。
 なにしろ、護衛が折角主から賜った強力な武器を、己の悪戯心を満たす為に用いるのだ。
 少しぐらいやりすぎても問題ないぐらいの口実になってしまう。 

「くうぅぅ……その非道さはすっごい素敵なんですけど……何で対象があたしなんですかぁ……!」

「いや、君へのお仕置きなんだから当然だろう。
ちなみに、ちょっと重度だと刹那に協力してもらってくすぐりの実験台にするという案もある。
ここしばらく使ってなかったせいで指の動きが少々鈍っていたからな……ん? 
待てよ、ひょっとして悪用してもらった方が色々試せ……」

「すみません、絶対悪用しませんから勘弁してください」

 不穏な主の言葉を遮り、雫は即座に土下座した。

 ちょっと重度であの内容では、重度だった場合どうなるのか想像すら恐ろしい。
 雫は、心の中で透明化魔法の悪用をしない事を固く誓った。

「いやいや、そう怯えず是非悪用してくれ。そうだな、最初に刹那に悪戯してくれると助かる。
その後私に悪戯してくれればもう完璧。言う事はな……ああ、私への悪戯は刹那の目の前でやってくれると尚良いか」

 完全な自己都合で、透明化の悪用を推奨し始める海人。
 くすぐり以外に何を企んでいるのかは不明だが、碌でもない事だけは間違いなさそうだ。
  
「しません!」

「いや、そう怯えずともくすぐりならせいぜい丸一日だぞ?
いつもより軽めにやるし、ちゃんと時間を計算に入れて限度に余裕を持たせるから、気が触れる心配も……」

「絶対にっ! しませんっ!」

 懲りずに説得しようとする主に、雫は断固とした口調で宣言した。
  





 番外編38






 唐突だが、宝蔵院雫は白玉ぜんざいが大好物だ。

 それが高じて、最近では色々試してみたいと様々な種類の材料を海人に作ってもらい、
多様な組み合わせを試している程である。
 小豆の品種と砂糖の種類の組み合わせ方は勿論、白玉についても水分量、こね方、茹で方、
果ては冷水に晒す時間まで探究して自分の理想の食感を追い求め、付け合せを何にするかまで徹底してこだわっている。

 それでも海人が創造魔法で作った元の世界の名店のぜんざいには遠く及ばない出来だが、
本人は満足しているようで、いつかこの味を越えてみせる、と気合を入れていた。

 そして今日も白玉ぜんざいを作っていたのだが、

「……覚悟はいいかな、お姉ちゃん?」

「待て。確かに今のは拙者が悪かった。申し開きのしようもない。
正直、拙者の今日の夕食を根こそぎ奪われても文句を言えんと思う。
だが、それは流石にどうだろうか?」

 雫の手にある椀を眺めながら、後ずさる刹那。

 一見、とても美味そうな白玉ぜんざいだ。
 やや汁が少な目だがたっぷりの小豆が浸り、艶やかな色合いの白玉がちょこちょこと宝石の如く配置されている。
 それが盛られた漆塗りの汁椀との相性も素晴らしく、器の外側の漆黒、内側の朱色、
そして白玉ぜんざいの色彩のコントラストがなんとも美しい。 

 見た目だけなら美味そうで、慄く理由などどこにもない。

「あっはっは、お姉ちゃんのドジっぷりってさ、
やっぱりいっそ殺してくれってぐらいの罰がないと改善しないと思うんだ。
だから今回はこの寸胴一杯分全部食べてもらった方がお姉ちゃんの為かなーってね」

「待て! 器一杯でも危険そうだというのに、寸胴全ては流石に死ねそうだぞ!?」

 じり、と近づいてきた雫から逃れるように、一歩後ろに下がる。

 このぜんざい、見た目こそ非の打ち所がないが、香りが危険だ。
 ぜんざい特有の甘く誘われる香りは微塵もなく、あるのは強烈な刺激臭のみ。
 外見は極上のぜんざいそのものだというのに、もはや命の危険さえ感じる芳香を放っている。

 一杯飲み干したら、その無謀は表彰に価するだろう。

「危険物にしたのだーれだ?」

 楽しげに、そして朗らかに問いかける雫。

 しかし、その目は笑っていない。
 それどころか、その右手は今にも漆器を握り潰しそうにブルブル震え、
左手に到っては持っている匙がへし折れている。

 限界が来たら、ぜんざいと共に砕けた食器も姉の口に押し込みそうだ。

「た、確かに拙者だ! 否定の余地はない! 土下座でも何でもしよう!
だが流石にそれは、それだけは……!」

 瞳に深紅が混ざり始めている妹に慄きながら、どうにかこの場を治めようとする刹那。

 確かに、悪いのは自分だ。
 雫が朝から丹念に作っていたぜんざいを、台無しにしてしまったのだから。

 やったこと自体は、調味料を運んでいる最中に躓いてそれを手放してしまった。それだけ。
 だが、刹那は面倒だから一気に運ぼうと多種多様な調味料を運んでいた。   
 塩、砂糖、各種スパイス、御酢、味醂、醤油などなど、多数の物を。
 そしてどんな運命の悪戯か、その大半が雫のぜんざいが吸い込まれるように突撃した。
 恐ろしい事に、瓶入りの物は蓋まで取れた状態で。

 結局雫が呆気にとられている間に全ての惨劇が終わり、今の状況だ。
 雫が怒り狂うのも、無理はない。

 だから、今日の夕食を差し出せと言えば差し出すつもりだし、
一週間デザートを全部寄越せと言われても躊躇わず進呈する。
 
 しかし、このどう変化したか分からない元ぜんざいを食えというのは、流石に受け入れがたい。
 白玉は被害を免れているのでまともな味だろうが、ぜんざい部分が危険すぎる。

「いいから、食えぇぇぇぇ――――っ!?」

 勢い余って握り潰した器と共に元ぜんざいを姉の口に叩き込もうとした瞬間、それが阻まれた。
 光り輝く、強靭な障壁によって。

 こんな事をするのは、屋敷で唯一人。

「強烈な匂いがするから何かと思えば……また刹那が何かやったのか?」

「どぉぉぉして邪魔したんですかぁぁぁぁあっ!」

 顔を顰めて問いかける主の胸ぐらを掴み、抗議する雫。
 その頭を撫でながら、海人は刹那に視線を向けた。

「その、拙者が躓いて雫のぜんざいに各種調味料を……」

「……成程。あー雫、少し落ち着け。ほれ、この間気に入ってた和菓子詰め合わせ作ってやるから」

「朝から付きっきりで作ったあたしの労力はどうなるんですかぁぁぁっ!」  

 海人の宥める声もまるっきり効果はなく、雫は更に詰め寄って抗議する。
 
「だから少し落ち着け。そうだな……それで駄目なら、まず当分刹那に和菓子系は禁止しよう」

「……話を聞きましょう」

 悪戯っぽい主の笑顔を見て、雫の勢いが衰えた。
 一瞬前までの激情は既になく、主と似たような笑顔を浮かべている。

「ついでに、君の和菓子系デザートは全て要望通りに作ってやる。
水羊羹でも葛切でもわらび餅でも、好きな物を言え」

 海人の言葉を聞き、刹那の顔が青褪めた。

 今海人が言った物は、全て刹那の大好物。
 そして今の状況。何を企んでいるのかなど、考えるまでもない。

「ほほう、じっくりうまうまと食べながら、おかわりも有りですか?」

「無論。ちゃんとたっぷりめに作ってやる。まだ不満はあるか?」

「いえいえ、流石は御主人様。部下の心をちゃんと掴んでおられます」

 乱れた主の胸元を直し、恭しく首を垂れる。
 その口元には、実に楽しそうな笑みが浮かんでいた。 

「あの……海人殿、当分というのは具体的には……」  

「それを言ってしまっては効果が薄れるだろう?」

 楽しそうに笑う主に、刹那はがっくりと肩を落とした。
 次からはもっと気を付けよう、そんな何度目か分からない誓いを胸に。








 番外編39







 とある日の早朝。海人は欠伸をしながら屋敷の地下から這い出ていた。

 最近は夜になったら自室で寝る頻度が圧倒的に多いのだが、昨夜は新魔法術式の完成が間近だった為、
ついつい地下に籠もって一気に仕上げてしまったのだ。
 術式を完成させ、理論上問題がない事を確認して寝たのがつい三時間前。
 
 短い睡眠時間ではあるが、昔は三日間不眠不休など当たり前だったので、さして苦にはならない。
 今残っている眠気も、一時間も起きていれば、いつのまにやら飛んでしまうだろう。 

 寝ぼけた頭で考えていると、換気に開けられたと思しき窓から金属音が響いてきた。
 音は二種類。打刀と小太刀がぶつかるやや軽快な音と、剣と剣がぶつかる若干重い音だ。
 
(……この時間だと刹那達はまだまだ朝の鍛錬か。ルミナスとシリル嬢も同様だろうな)

 廊下を歩きながら、そんな事を考える。

 流石一流の武人達と言うべきか、同居人達は誰一人として鍛錬を怠らない。
 雫だけはたまに眠いから怠けたいと愚図る事があるが、その際も姉によって強制的に鍛錬する羽目になる。
 以前海人が見た時はまず眠気を覚ませと激流の川に叩き込む容赦の無さだったので、逃げる事は無理だろう。

 そして、刹那達もルミナス達も、鍛錬の時間は滅多に変えない。
 長年の鍛錬で学習した、最適な時間をきっちり守っている。
 無論鍛錬の内容で変わる事はままあるが、そう大きな変動はなく最大で三十分程度だ。
 今の時間は、もっとも短い終了時刻の一時間前である。
 
 つまり――――話し相手が、いない。
 
(地下に戻って久しぶりにシューティング……も、スコア消すのは嫌だしな。さて、どうしたものか)

 廊下を歩きながら、思考する。

 一瞬地下に戻って現在雫がやっているシューティングゲームをやろうかと思ったが、あれはクリアするとスコアが残る。
 それ自体は問題ないが、昔のアベレージが現在の雫のハイスコアの倍なので、見られたら心をへし折りかねない。
 かといって折角出したスコアを消去するのは面倒だし、気が乗らない。  
 
 いっそのこと寝直すかとも考えるが、折角起きたのに再び寝るのもなんとなく癪だった。

「……朝食でも作るか。といっても、ありきたりのメニューじゃつまらんな。さて、何にするべきか……」

 呟きながら、足を厨房へと向ける。

 朝食を作るというのは、決して悪い案ではない。
 なにせ、現在外で鍛錬に励んでいる連中は揃いも揃って大の食いしん坊。
 激しい鍛錬後では尋常ではなく腹を空かす事になる。
 食事の準備をしておけば、おそらく喜ばれるだろう。   

 ただ、メニューが問題になる。

 皆、朝の鍛錬後は腹を空かせている為か、味が良ければ何でも良いという状態になるが、
折角作るなら大きく喜ばせたい。
 
 が、海人のそう多くはないレパートリーは既にほぼ出し尽くしているので、
何を出しても新鮮味に欠ける。
 野菜カレーでも出せば確実に大喜びだろうが、それも既に出してしまった物。
 新鮮味が強く、かつ彼女らが万遍なく大いに喜んでくれそうな物となると、なかなか難しい。
 
 ああでもないこうでもないと唸りながら考えている内に、厨房に到着してしまう。 

「……うーん……出来れば栄養バランスも考えたいところだし……ん?」

 頭を悩ませながら厨房を歩いていると、底が丸い鉄鍋が視界に入った。

 ふと、海人は立ち止まる。何かが、引っかかった。
 どうも、何か失念している気がする。
 上手くいけば先程から悩んでいる事が、全て解決してしまいそうな料理を。
 
 そして数秒考え――――海人は気が付いた。

「ああ……なるほど、そういえばあれは作っていなかったか。
ふむ、試しに作って良さそうだったら出せばいいか」

 頭を掻きながら、海人はまず創造魔法を使う事にした。















 二時間後、屋敷の食堂は異様な空気に包まれていた。

 はぐはぐはぐ、と一様に食事をかっ込む音だけが響き、誰一人として言葉を発していない。
 そして海人を除いた全員の目が血走り、眼前の皿に向けられている。
 普段なんだかんだで優雅に、そして美しく食べているシリルでさえも。 

「気に入ってもらえたようでなによりだ……おかわりいる人ー」

 海人の言葉に、無言で四本の手が上がった。
 そして目線で訴えてくる。もっと食べたい、と。

 苦笑しながら、海人は部屋の隅にある移動式の調理台に向かう。

 その横には刻んで軽く火を通した野菜、固めに炊かれた米、軽く煮込んで味を染み込ませた肉、新鮮な溶き卵、
そして一番の決め手となる物も大量に揃っている為、火さえ入れればいつでも作れる。
 というより、どうせなら出来たてを小まめに食べた方が良いだろうと作れるよう準備しておいたのだ。

 着火装置を使って火を熾し、鍋を温める。
 程良く温まったところで底に油を一掬い入れ、溶き卵を放り込む。
 卵が固まり始めた瞬間に米を投入し、次いで程良く米ほぐれたところで野菜と肉を入れた。
 そして最後に仕上げの決め手――――海人製のカレー粉を放り込むと、香ばしく、かつスパイシーな香りが部屋中に広がる。
  
 炒め終えたカレーチャーハンを既に空になった四人の皿に盛り、海人は最後に自分のおかわりを盛り付けて食べ始めた。

(……うむ、なかなか良い出来だ。即興の思いつきとしては及第点か)

 食べながら、海人は自分の料理を分析し始めた。

 まず口に入れた瞬間、香ばしさと食欲をそそるスパイスの香りが一気に広がる。
 この段階でも美味いが、一噛みすると舌にスパイスの刺激と、
それをやんわりと包み込むような油と米の甘味、そして具材の旨味が同時に広がりと、えも言われぬ快感と化す。
 噛むにしたがって次第に米や具材の味が勝ってくるが、それでもスパイスの味はその引き立て役として立派に存在を残す。
 最後に呑みこむと、喉に少しひりつくような刺激を残して消えていくのだが、この感覚がなぜか次の一口へと手を伸ばさせる。

 カレーの魅力は残しつつ、煮込むカレーではありえない鮮烈な香ばしさがプラスされた、良い料理だ。
 しかし、問題もあった。

(……煮込んだカレーと比較すれば旨味が落ち、具材や米との馴染も落ちる。
香ばしさで補えているかもしれんが……そのうちスパイスの配合含めて考えるかな)

 海人がそんな事を考えていると―――女性陣の匙を動かす音が消えた。
 一瞬の静寂の後、大きな声が響く。

『御馳走様でした!』

 一斉に叫び、海人に向かって頭を下げる女性陣。
 その顔には一人の例外もなく、笑顔が浮かんでいる。

(……うむ、早めに考えよう。こうも喜んでくれるなら、甲斐があるというものだ)

 そんな事を考えながら薄く微笑み、海人は質問したそうにしているルミナスに話を向けた。  






 番外編40








 海人の屋敷の中庭。
 良い具合に心地良い日差しが差すその中央で、屋敷の主が寝ていた。

 その表情は、いたって穏やか。
 顔の造形的に少々気難しそうに見えてしまうのだが、
それでも安らかに眠る彼の顔には、一切の邪気がない。
 普段の彼しか知らぬ者なら、目を疑う程に。

「……ほんっとに、寝てる時だけは可愛らしく見えるわね。
普段もこんぐらいの愛嬌見せりゃいいのにねぇ……」

 膝の上に乗せた彼の寝顔を見下しながら、ルミナスが呟く。

 普段の海人はどこか尊大さが漂い、同時に周囲への警戒心が滲み出ている。
 それが悪い、というわけではないのだが、おかげで人相がいっそう悪くなっている事は否めない。
 元々悪人系の顔なのは事実だが、精神状態が顔に滲み出てさえいなければ、
もっと親しみやすくなるのではないかと思ってしまう。

「……愛嬌を振りまいてる海人殿、というのは凄まじく恐ろしい気がしますが」

 ルミナスの言葉に、引き攣った笑みを返す刹那。

 別に、海人の人格を否定しているわけではない。
 性格に少々難があるのは事実だが、基本的には寛大で優しい主だ。
 むしろ完璧超人すぎる能力の持ち主なのだから、性格に多少問題があるぐらいで丁度良いとさえ思う。

 しかし、それはそれ、これはこれだ。

 この悪戯好きな主が穏やかな顔で愛想なぞ振りまいていたら、
おそらく刹那はまず全神経を研ぎ澄まし、周囲を警戒する。
 それで異常がなければ、海人が頭でも打ったのではないかと心配し、
それも違ったら全身全霊で許しを乞うだろう。

 なぜなら――――海人が本気でそんな事をしていたら、碌でもない事を企んでいないはずがないからだ。

「い、言われてみれば確かに……でも、カイトの悪戯ってそんなに悪質なのはないと思うけど……」

 刹那の言葉に同意しつつも、一部否定する。

 海人の悪戯は、基本的にさして悪質ではない。
 相手の限度を見極めた上で、許される範囲内で色々と楽しんでいる。
 性質が悪い事には変わりないが、そうそう恐れる程の事はないはずなのだ。

 が、刹那はゆっくりと首を横に振った。 

「先日のシリル殿の惨状をお忘れですか?」

 天を見上げ、回想する刹那。

 数日前、シリルは例によって例の如く海人にディルステインで挑み、連敗記録を伸ばしていた。
 まさに操り人形の如く海人の思惑通りに動かされ、気が付いた時には完膚なき惨敗。
 そんな悲惨で勝ち目のない戦いを、三回も続けていた。

 そして四戦目が始まる前――――海人がある提案をした。
 
 そろそろ疲れてきたので、この試合で終わりにしたい。
 しかし、条件次第ではあと十戦ぐらいは付き合ってやってもいいと。
 
 その条件は、シリルが十連敗した段階で彼女の顔に一時間は消えない落書きを施すというもの。

 ただし、十戦中一度でも海人の駒の数を二割減じる事が出来れば罰は無し。
 そればかりか、その暁には今後一週間文句言わず着せ替え人形になってやるとの条件まで付けた。

 それでも分が悪いと悩んでいたシリルだったが、勝つ気でやってるのでは? 
戦う前から敗北宣言か? などなど安っぽくも実に効果的な数多の挑発を、絶妙な間で浴びせられ続け、
最終的には望むところ、と獰猛な笑顔で承諾した。

 ――――結果は言わずもがな。海人の駒を一割減じる事さえ叶わず、シリルは十連敗した。

「……確かに、あれは酷かったわねぇ。ってか、あそこまで笑い誘える落書きってのも凄まじいわよね」

 シリルに施された落書きを思い出し、暢気に眠る友人を半眼で睨む。

 なんというか、凄まじい落書きだった。
 目が合った瞬間、思わず腹を抱えて笑い転げてしまう程に。
 デザインそれ自体もさる事ながら、計二十もの色が生み出す色彩がそれを引き立て、
一瞬視界に入ったが最後、強制的な抱腹絶倒を強いる出来になっていた。

 好奇心で自分の惨状を見たシリルでさえ、鏡を握り潰し怒り狂いながらも笑い転げた。
 全身で笑いながら、殺意漲る眼差しを海人に向けるという恐ろしく矛盾した物を両立させながら。

「あれで拳を振るわずに収めたあたり、シリル殿の精神力は並大抵ではありませんな。
条件を受けてしまったとはいえ、普通顔にあんな落書きをされれば怒りで我を忘れそうなものですが」

 うむ、と感心したように頷く。

 色々とプライドをズタズタにされながらも、シリルは海人を殴り飛ばさなかった。
 このいかなる悪魔よりも悪辣で邪悪な魔王の提案を受けてしまった自分が間抜けなのだと、
必死で自制し、睨みつけるにとどめていたのだ。

 流石に、無駄だと言われながらも一時間ずっと懲りずに顔を洗ってはいたが。   
 
「うん、あれは我が部下ながら尊敬したわ。でも、あの後カイト一応フォローしてなかった?」

「まあ、流石にやりすぎたと思ったのでしょう。海人殿は、身内には甘いですから」

 苦笑し、シリルの洗顔後の事を思い出す。

 機嫌が恐ろしく傾いていたシリルに、海人は用意しておいた菓子をやると言ったのだ。
 最初はその程度で治まると思うか、と激怒したシリルだったが、実物を見て言葉を止めた。 
 
 物は、チョコレートで出来た王冠。
 ホワイトチョコをベースに王冠の形が作られ、色とりどりのゼリーやグミを宝石のようにあしらい、
煌びやかさを出す為に金箔も散りばめられていた。
 実に美しく、芸術作品と呼んで差し支えない逸品。
 それも、シリルの好みに良く合った色彩。

 シリルはそれをまじまじと見た後――――あっさりと機嫌を直した。
 やはり条件を受けてしまった自分にも非がある、と。

「……でもま、性質の悪い悪戯には変わりないわよね。
後でフォローされたとしても絶対やられたくないわ。うん、私が間違ってた」

「ええ。身内には甘いから大丈夫、と安穏としていられる方ではありません」

「……つくづく、厄介な奴よねぇ」

「まったくです」

 口とは裏腹に、眠る海人の顔を見つめる二人の顔には、微笑みが浮かんでいた。 
 
 
 








 一方、庭の片隅。

「やはり、やはりあの時に仕留めておくべきでしたわ……!
お姉さまの膝枕……! これで何度目ですのっ……!?」

「お、落ち着いてシリルさん! 海人さん寝てただけなんですから!」

 地面を這って叩き落とされた剣に向かおうとするシリルを、必死で止める雫。
 
 話している途中で寝てしまった海人を、ルミナスが優しく膝枕した。
 それは既に十分程前の話だが、その時から雫はシリルを止めっぱなしだ。
 足を払って地面に叩き付け、剣を奪い両腕を極めて尚、芋虫の如く這って剣の元に向かっている。
  
 実に、恐るべき執念だ。
 
「寝てるだけで自然と膝枕してもらえるなどと……!
そんな羨ましい話、許せるはずがありませんわぁぁぁっ!」

「許しましょうよそんぐらい!? てかそんな暴れるとホントに外れますよ!?」

「腕の二本ぐらい、あの怨敵を討ち滅ぼす為ならばぁぁぁっ!」 

「だあああああああっ!? やばっ、ホントに外れる――――ええい仕方ない! ずおりゃっ!」

「がはっ!?」

 後頭部に雫の頭突きを受け、昏倒するシリル。
 彼女の意識が完全に断絶したのを確認し、雫はシリルの上から降りた。
 念の為、手持ちの糸で彼女の両手両足を縛りながら。    

(……あたし、最近結構働き者な気がするなぁ)

 主の平穏な生活を守る為、ここしばらく密かに奮戦している少女は、ひっそりと溜息を吐いた。





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