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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編セット9
 番外編41



 ルミナスは自分の分の料理を食べながら、さりげなく周囲の反応を観察していた。

 まず初めに、刹那。
 彼女はいつも通り美味しそうに、食べていた。
 あくまでも楚々とした佇まいで上品に箸を運んではいるが、表情がとても緩んでいる。
 くすぐったい称賛の言葉もくれるが、それ以上にその顔が雄弁に評価を語っていた。

 次に、雫。
 彼女もまた満面の笑顔で食べているが、姉とは違い動きが激しい。
 あーんと大きく口を開け、一口一口たっぷりと放り込んでいる。
 あれほどの量では食事速度が遅くなりそうなものだが、現実にはこの場の誰よりも速い。
 残像が見えそうな速度で咀嚼し、次の一口に移っている為に。
 彼女も、かなり気に入ってくれたのだろう。

 満足そうに小さく頷き、シリルに視線を移す。
 彼女は、普段と大して変わらない。
 美味そうに食べてはいるが、前の二人とは違い落ち着いた食べ方だ。
 元々淑やかで上品な食べ進め方をする女性だが、今回に関しては好みの問題もあるだろう。
 好みに合っていると、彼女は淑やかながらも食べ進める手が速くなる。
 今回作った物は、質はともかくシリルの好みには合わなかったようだ。

 そしてルミナスは、最後に海人に視線を移した。

 ある意味、反応を観察するにあたっては一番厄介な相手だ。
 元々食事にさしたる興味がないので、美味い物を食べても反応が薄い。
 多少気に入った程度では表情にも食べ進める速度にも一切の変化がなく、
注視していないと美味いと思っているかどうかさえ判別が難しいのである。

 結局変化らしい変化が見つけられなかったルミナスは、海人に直接訊ねる事にした。
「カイト、今日の料理の出来はどう?」

「美味いぞ。初めて作ってこの出来なら上々だろう」

 箸を止め、淡々と答える海人。
 今目の前にある料理は、実際大した出来だった。
 まだ使い慣れない材料もあるというのに、見事に美味い料理に仕上げている。
 
「初めて作って、って事は改善の余地はあるって事?」

「いや、申し分ない出来だと思うぞ。
まあ、私はどちらかというとカツも少し煮て衣につゆを染み込ませた方が好きなんだが」

 ザクザクとした食感のカツを呑みこみ、説明する。

 今日ルミナスが作ったのは、カツ丼。
 カツの揚がり具合は頃合い、玉子は半熟トロトロ、
味付けも出汁やその他調味料を使い素材の味を存分に活かしきった見事な品だ。

 しかし、折角香ばしく揚がったカツをわざわざ湿気させるのは勿体無い、と
ルミナスは丼に出汁で煮た玉子を盛り、その上にカツを乗せるという形式を取っている。

 当然だが、これは充分に美味い。
 豪快にカツと卵と米を口に放り込むと、まずカツの香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。
 噛むとざっくりとしたカツ、トロリとした玉子、程良い弾力の米という三種の個性的な食感が襲ってくる。
 それと同時に広がるのは、豚肉の旨味、玉子の濃厚さ、出汁の利いた甘めのつゆの味。
 それらだけでも十分な快楽だが、噛んでいくうちに米の甘味も加わり更なる至福へと導かれる。
 出汁は海人が創造魔法で作った一流店の物、他の食材も極上とはいえ、初めて作ってこれほどの味を引き出すあたり、
流石の腕前と言って差し支えないだろう。
 
 だが、海人の好みはどちらかと言えばカツの衣がつゆの味をたっぷりと吸った物。
 どこか頼りないがふんわりと優しい口当たりの衣の食感があってこそのカツ丼だという気がするのだ。
 もっともあくまでどちらかと言えば、であり絶対にこちらが良いという程のこだわりはないのだが。

「うーん……この食感と香ばしさ殺しちゃうの勿体無いと思うんだけどねぇ。
ま、あんたの好みがそれなら、次は試してみるわね」

 苦笑しながら、ルミナスは最後の一口を口に放り込む。

 実を言えば、最初は海人に言われた通りの手順で作るつもりだった。
 最初に作る物なのだから、下手なアレンジは全体のバランスを瓦解させかねないと。
 腕に自信はあるが、最初ぐらいは素直に指示に従って作るべきだと思っていたのだ。

 が――――いざ香ばしく揚げたカツを前にして、迷いが生じた。

 ジュウジュウと小気味良い音を立てながら、油から引き揚げられたカツ。
 歯を通せばザクザクと小気味良い食感と香ばしさが楽しめるであろうそれに、
つゆに絡めた玉子で閉じるなどという暴挙を行い、ふにゃふにゃにしてしまっていいのだろうかと。
  
 そして、数瞬カツと睨み合った末に―――ルミナスは己の判断を優先させた。
 やはり、この揚げ立てのカツの素晴らしさを最大限生かすべきだろうと考えて。

 しかし、海人がそれを食べた上で煮込んだ方が好みだというなら、次はそうするべきだろう。
 なにせ彼は美食に興味は薄いが、味覚は非常に鋭い。試す価値は充分にある。

「そうしてくれるとありがたい。というか、私の次の一杯をそうしてくれると嬉しい」

 言いながら、空になった丼を見せる海人。
 そこには米の一粒も残されておらず、実に綺麗さっぱり食べ尽くされていた。

「そりゃ構わないけど……大丈夫なの?」

 海人に心配そうな目を向けるルミナス。

 普段の海人は、どちらかと言えば少食だ。
 ルミナス達が米櫃を幾つも空にする横で、多くても茶碗二杯程度しか食べていない。
 おかずの量も少なく、汁物をおかわりするわけでもなく、本当に多くは食べないのである。

 それが、一杯あたり茶碗二杯分以上の米を盛ってあるカツ丼をおかわり。
 その事に、ルミナスだけでなく他の面々も驚きを隠せなかった。
 
 そんな周囲に、海人は苦笑しながら説明する。

「朝食い損ねたせいか妙に腹が減っててな。もう一杯ぐらいなら入りそうなんだ」

 言いながら、空になった丼に目を落とす。

 海人にしては珍しい事に、今日はやたらと腹が減っていた。
 カツ丼一杯たっぷりと平らげて尚、まだ満腹には程遠い。

 というのも、今日は朝食を食べ損ねてしまっていたのだ。
 新魔法術式を二つ構築する為に呼びに来た刹那に朝食不要の旨を伝え、
ぶっ続けで作業を続け、全てが終わったのが一時間前。
 しかも昨日の夕食後から延々続けていたので、余計に空腹感は強かった。

 それでも食べ始めれば徐々に治まるだろうと思っていたのだが、
こうしてカツ丼一杯食べ終えて尚まだ空腹感が残っている。

 らしくもなく、もう一杯カツ丼を食べようと思ってしまう程に。

「へえ~……うん、そういう事ならすぐ作るわ。他の皆はどう……聞くまでもないみたいね」

 海人以外の食事状況を見て、思わず苦笑する。

 流石と言うべきか、全員が綺麗さっぱりカツ丼を食べ終えている。
 付け合せの漬物や、味噌汁までも跡形も残っていなかった。
 雫にいたってはテーブル中央にある漬物入れから取り出した沢庵を齧っている。 

 考えるまでもなく、当然の事だった。
 海人が食べ終えている以上、他の面々が食べ終えていないはずがない。
 空腹で多少増えたとはいえ、それでも海人の食事量は他の半分にも届いていないのだ。

 期待を込めた目で自分を見る大食らい達に、ルミナスは思わず苦笑した。   
 





 番外編42




 その日、海人は屋敷の中庭でのんびりと過ごしていた。

 心地良く晴れ渡った青い空、緑豊かで長閑な風情の庭、時折やってくる小鳥達。
 ついでに海人のすぐ横には幸せそうに日向ぼっこに興じる雫の姿もある。
 最近ではすっかり見慣れてしまったが、どれも心に安らぎを与えてくれる事に変わりはない。

 穏やかで平穏な時間に、思わず海人の頬が緩み始めた時―――突如、屋敷の中から破壊音が響いた。

 その音はなかなかに豪快で、折角集まっていた鳥達が一斉に逃げてしまうだけの音量があったのだが、
海人も雫も動じた様子はない。
 二人にとっては、ここしばらくですっかり聞き慣れてしまった音なのだ。

「ふむ、また床板をぶち破ったか?」

「それで正解だと思いまーす。気配の位置が二階から一階に落っこちてるんで」

 寝っ転がったまま、主の疑問を肯定する雫。

 つい先程まで屋敷の二階にあった気配が、今は一階に落下している。
 元いた部屋が寝室である以上、気配の主が床板をぶち破った事は明々白々。
 ついでに現在なにやらあわあわと慌てふためいている様子も感じられるので、 
もはや疑う余地はない。

 毎度の如く―――姉が掃除の練習で屋敷を破壊したのだ。

「どこをどうすればああも破滅的な家事能力になるんだかなぁ」

「ほーんと不思議ですよねぇ」

 しみじみとした主の言葉に、雫もまた不思議そうな声を返す。

 海人の疑問は、もっともだと思う。
 姉は生真面目なので、本来は家事に向いてるはずなのだ。
 普通なら不器用でも間抜けでも、練習すればそれなりになるのだから。  
 
 が、生憎、こと家事において刹那に普通という言葉は当て嵌まらない。

 料理においては自由に作らせたが最後、文字通りの必殺料理を生み出し、
自由を封じて単純な料理を作らせても、扱う調味料が三種以上になったら到底油断できず、
それどころか魚の塩焼きすら稀に火力調節を誤って消し炭に変える事がある。

 洗濯においても、余程頑丈な生地でなければ到底任せる事は出来ない。
 最後の乾燥の段階で燃え尽きる可能性は当然ながら、大概の衣服はその前に加減を誤った馬鹿力で引き裂かれてしまう。
 二人で旅を始めた頃、帰ってきたらお気に入りの服が壊滅していた光景は、未だに生々しく記憶に焼き付いている。
 
 そして、掃除。
 窓を拭けばガラスを砕き、床を掃けばすっぽ抜けた箒で壁を破壊し、
箪笥を動かせば持ち上げた勢いで天井に突き刺すなど、もはやわざととしか言いようのない破壊劇を繰り広げる。
 どれも力加減を誤ったがゆえの悲劇ではあるが、刹那の場合その頻度が多すぎる上、
武技を振るう時の絶妙な力加減の上手さとのギャップが激しすぎる。
 刀を使えば敵の産毛のみを剃るような芸当が造作もなく出来るのに、
なぜ拭き掃除では窓枠ごと外壁を破壊してしまうのか、いくら考えても理解できない。
 
 唯一つ断言できるのは――――七歳の姉に家事の習得を禁じたという両親の判断は、英断だったという事だ。

「……ま、最近は少しずつ上達してるみたいだし、しばらくは見守るとしようか。
努力と気概だけなら感心に値するしな」

 肩を竦め、苦笑する海人。

 まだまだ酷いが、屋敷に来た当初に比べれば刹那の家事能力は劇的な進化を遂げていた。

 料理はルミナスという優秀で降りかかる火の粉を薙ぎ払える教師を得た事で、
そこそこ美味く食べても命が保証される料理を三種類ほど習得している。

 洗濯も何百枚もの服の犠牲を経て破く頻度が以前より二割程減り、
更に海人が乾燥用の魔法術式を改良して火力の上限を低くした事で、
最後の最後で服が燃えカスになる事も無くなった。

 掃除も、まだまだ練習の度に大破壊が行われるが、最近は一度の掃除で三回程度しか床板は壊さない。
 この間など、なんと窓ガラスを罅も入れずに綺麗に磨き上げ、後で割れる事も窓枠が壊れる事も無かった。

 ゆっくりとだが努力の成果はちゃんと現れている、などと海人が考えている横で――――雫が静かに苦笑していた。
 
(……海人さんが主じゃなきゃ、とっくにクビなんですけどねー)

 そんな事を思いながら、甘い主に身を寄せる。

 創造魔法と瞬く間に部屋を修復可能なロボットがあるとはいえ、
姉の所業は普通ならとうにクビか家事の練習を禁じられている。

 創造魔法は便利だが、海人の超魔力を持ってしても一日の使用回数は十回程度。
 その内数回を、海人は刹那の家事練習の為に使っている。
 修復用のロボットも使用には色々と手間がかかるらしく、
なにやらパソコンの前で頭を抱えて懸命に作業している姿を見た事がある。

 結局、稀有な能力と身内に激甘な性格を併せ持つ海人だからこそ、
以前に比べれば画期的な姉の進歩があるのだ。   

 ――――そうこうしている内に、刹那が中庭にやって来た。

「か、海人殿、申し訳ございません……その、また床板を……」

「分かっている。二階の床板以外には壊した物は?」

 深々と頭を下げる刹那を遮り、訊ねる。

 刹那が掃除の練習で色々破壊する事は、もう割り切った。
 その為に建築ロボット用の追加プログラムを作成し、より効率的な修理が行えるようにもしている。
 必要な建材も地下に溜め込んであるので、今この場において一番必要なのは被害状況の報告であった。

「た、箪笥と窓枠と花瓶を……その、それと二階をぶち抜いて、落下した勢いで一階の床も……」

「箪笥とかはまだしも……ここしばらく進歩していると思った途端、二階ついでに一階まで破壊か……」

 ふ、と天を見上げる海人。

 どうせロボット任せなので、さして手間はかからない。
 プログラムの作成には手間がかかったが、完成した今となっては楽が出来る。
 元の世界だったら台数が問題になったかもしれないが、今は創造魔法による大量生産が可能なのでその心配もない。  

 が、それでもなんとなく物悲しい気分になる事は抑えられなかった。

「も、申し訳ございません……」

「いや……いい、気にするな。何年かかるか知らんが、いずれ真っ当に出来るようになってくれればそれでいい」

「……はっ! 一日でも早く御期待に沿えるよう精進いたします!」

 疲れたように、だがどこか優しげに笑う主に、刹那は強い決意を秘めた言葉で答えた。





 番外編43





 とある森の中で、ラクリアは一人戦っていた。

 相手は、小さい猪形の魔物。
 見た目こそつぶらな瞳が特徴的な愛らしい外見だが、その性質は凶暴。
 俊敏な動きで得物を翻弄し、その速度のまま鋼よりも頑強な鼻で突進して相手の骨を砕き、
最後には強靭な歯で骨ごと食らい尽くす、物騒な生物だ。

 が、ラクリアは素早さで上回るその魔物を見事に翻弄していた。
 
 最大の要因は、炎の攻撃魔法による猛攻。
 下位魔法ではあるが、宝石で威力を増幅されたそれは触れた敵を無慈悲に焼き尽くし、確実に殲滅する。
 当たれば一撃必殺、掠っても大火傷というえげつない攻撃の乱射。
 全てを完全に避けなければ次がない。

 このままなら、魔物の命運は遠からず尽きる。

 それを感じ取ってか魔物はその速度を更に増し、攻撃の隙間を狙って反撃に転じるが、
魔法の乱舞を掻い潜りながらでは必然的に辿れる道筋は限られる。

 ラクリアは接近されても慌てず、あらかじめ発動待機させていた無属性防御魔法の障壁を展開し、
魔物をそこに衝突させた。
 バキン、という鈍い音と共に障壁は砕かれてしまうが、突進の勢いは完全に相殺されている。
 
 そして、それはこの状況下において勝敗を決するに十分な要素であった。

「――――鋭く力強き天の風、我が元に来たりて敵を討て《アックスウインド》」

 短い詠唱と同時に、ラクリアの眼前にいた魔物の首を突風が通り抜けた。
 一瞬遅れて魔物の首が地面に落ち、傷口から血を噴出しながら体が倒れていく。
 
 おびただしく流れる血の上を歩きながら、ラクリアは魔物の血抜きを始める。
 そしてきっちり血抜きが終わったところで皮を剥ぎ、食材として解体していく。

 この魔物は内臓は食べられないが、その分骨と肉が良い食材になる。
 骨は短時間で美味いスープが取れるので、そこらに生えている食用植物と一緒に煮込み、
塩胡椒を混ぜるだけでお手軽に美味しい一品が出来る。
 肉は冷却しておくだけで一月は食用に耐えるので、旅の真っ最中であるラクリアにとっては格好の食材だ。
 
 これでしばらく食料に困らない、そんな事を考えていると森の奥からフェンが戻ってきた。

「……フェン、お腹いっぱい食べられた?」

「ウォンッ!」

 主の問いに、元気よく返事を返すフェン。
 それを聞きながら、ラクリアは小さく溜息を吐いた。
 
「……今から食事作るけど、食べる?」

 捌き終わった食材を眺めながら、問いかける。

 完全な意思疎通とまではいかないが、ラクリアはフェンの鳴き声を聞けば大体どんな事を考えているのか分かる。
 今のは不満はないが、完全に満足してはいない時の鳴き方。
 王城で好物以外の食事を出された時に良く聞いた声だ。

 おそらく、生の肉や骨を食っただけでは腹は膨れても満足しきれなかったのだろう。
 元々王城で良い物を食べていたせいか、彼は味にうるさいのだ。

 ラクリアの予想は概ね当たっていたらしく、フェンは嬉しそうな鳴き声を返した。

「ウォンッ!」

 ぺたんとお座りの体勢になり、主を見つめるフェン。
 ハッハッ、と舌を出しながらパタパタ尻尾を振るその仕草は、まさしく健気な忠犬そのものだ。
 
 ラクリアはそんな騎獣の顎を軽く撫でてやり、調理に取り掛かった。
 
「まずはお米を……」

 食料袋から貰った米を取り出し、水を注いだ鍋に放り込む。
 そして柔らかく丁寧に米を砥いで水を捨てると、再び水を注ぎ蓋をして火にかけた。

(……たったこれだけで、あんなに美味しい物が出来る。とても、便利。
時間守れば誰でも作れるし……ちょっと焦げてもそれはそれで美味しいし)
 
 厚めに肉を切り分けながら、そんな事を考える。

 ラクリアが思うに、米の優れた点は味もさる事ながら、炊き方がそう難しくないという点だ。
 覚えるべきは米の量とそれに見合った水の量、あとは大雑把な火力と時間だけ。
 しかも多少失敗したとしてもおこげという物ができ、かえって魅力を増す場合さえある。
 極めるのは難しいらしいが、練習段階で大きな失敗が起きにくいというのは充分に優れた点だろう。
  
 これほど便利な食糧なら、大々的に広める価値があると思う。
 既にこの国では試験的な生産が行われているらしいが、
それこそ大陸全土に広めていく価値がある食材ではないかと思わずにはいられない。

 既に政治力がある身ではないが、何かできないかなどと考えていると、いつの間にかかなりの時間が経過していた。
 
「……あ、そろそろお肉焼かないと」

 呟きながら、近場で取った野菜を刻み、肉に強めに塩を振って胡椒を軽く振る。
 そしてフライパンに肉から切り離した油を引くと、肉を焼き始めた。

 肉の焼ける香ばしい匂いが立ち上り、ラクリアのお腹が鳴る。
 彼女の後ろではフェンも涎を垂らしながら待っていた。

 肉の両面が香ばしく焼けたところで、刻んだ植物をフライパンに放り込み、一緒に炒め始める。
 この野菜は、肉と一緒に炒めると実に相性が良い。
 ほのかな苦みと少し癖のある香りがアクセントとなり、旨味を引き出してくれるのだ。

 そうして肉と野菜が仕上がったところで、丁度米も炊けた。

「……ん、良い炊き具合」

 炊きあがった米を見て、満足そうに頷くラクリア。
 米は眩いばかりの光沢とふっくら感を持ち、かつ縁にカリカリとした美味しそうなおこげが出来ている。 

 ラクリアは米を平皿に盛り付けると、その上に肉と野菜を乗せ、肉をナイフとフォークで切り分けた。
 その途端に塩分を含んだ肉汁が下にある米へと流れていく。   
 それを見て生唾を呑みこみながらもう一皿作り、それをフェンに差し出す。

 そして道具入れから箸を取り出すと、両掌を合わせた。

「いただきます」

 料理に向かって軽く頭を下げ、食事に取り掛かる。

 まずは、一口肉汁のかかっていない米だけを食べる。
 ふくよかな甘味が口の中に広がり、噛むにしたがってその甘味が増していく。
 もちもちとした食感も心地良く、なかなか噛むのを止められない。

 おこげを食べてみると、こちらはカリカリとした食感。
 甘味は少し飛んでしまっているが、これも美味い。 
 肉は狩ったばかりなせいで少々淡白な味だが、それでも肉の味がしっかりと感じられた。
 その肉汁が絡んだ野菜もまた、肉の旨味との相乗効果で旨味が増し、
更にシャキシャキとした食感の心地良さもあるので堪らない味わいだ。

 そしていよいよ、肉と野菜、そして米を一緒に食べる。
 
「……ん~♪」

 もぐもぐと咀嚼しながら、嬉しそうな声を上げるラクリア。

 それも単品で食べて美味い味わいだったが、全てが合わさると一気に味の次元が変わった。
 肉の旨味、野菜の滋味、米の甘味、それら全てが混然となり、なんとも良い味になっている。
 喜びに浸るラクリアの後ろでは、フェンも一心不乱にがっついていた。

 やがてラクリアもフェンも食事を終え、一息つく。

(……ん、食材の良さもあるけど、前に比べると腕は上がった。みんなに感謝)

 お腹を撫でながら、そんな事を考える。

 箱入り育ちの身ゆえに、最初にラクリアが作った料理は酷かった。
 食材の基本的な扱い方はおろか、塩の適量すら把握できず冗談抜きに食べられた物ではなかったのだ。

 それが、つい数日前まで滞在していた屋敷の住人達に料理を仕込まれ、めきめきと腕を上げた。
 旅をするなら料理技術は必須、と約二名が熱心に教えてくれたおかげで、
最終的には全員に美味しいと言ってもらえる出来になったのである。 

 しかも彼らは米や調味料一式まで餞別として持てるだけ持たせてくれた。
 元々の恩義もあるが、本当に感謝してもしきれない。

(……いつか、何かしらの形で恩を返したいな)

 遠い空の下にいる友人達の姿を思い出しながら、ラクリアは野営の準備を始めた。 







 番外編44






 その日、雫は厨房で一人唸っていた。

 眼前に並ぶのは、大量の豆腐。
 どれも海人に頼んで作ってもらった、彼のいた世界の最高級品だ。
 食感、味の濃厚さ、香りどれ一つとっても非の打ち所がない。

 それゆえにどう調理しても美味いのだが、雫はより美味しく食べる為色々と模索していた。。
 
「……お、これは今までで一番かな?」

 ごくっ、と豆腐を呑みこみ、呟く。

 今日のお題は、豆腐を食べる際の最適な温度。
 それを探究して様々な温度の豆腐を作っている。
 失敗も多く、冷却しすぎてもはやただの氷と化した事もあったし、熱を上げすぎて豆腐が蒸発した事もあったが、
その甲斐あって段々求める温度帯が絞れてきた。

 冷えすぎても熱すぎても大豆の香りや味は縮こまってしまう。
 常温に近い、だが触れればほのかな熱を感じる程度が一番香りも旨味も活性化するように思えた。
 今はその温度帯の中で最も理想的な温度を探している最中だ。

 特に今食べたのは、これまでで一番良い感じだった。

 舌に乗せた瞬間豆腐がトロリととろけ、大豆の香りがふんわりと広がり、同時に濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。
 豆腐のみで食べても十二分に美味いが、ほんの僅か醤油を垂らすと大豆の香りを殺さず旨味をいっそう引き立てる理想的なバランスになる。
 極上の豆腐の旨味をかなり引き出せたはずだ。

 次は今の温度を軸に試してみよう。
 雫がそう思っていると、厨房に気配が一つ近づいてきた。

「ありゃ? シズクちゃん、なんか凄い事やってるわね」

「どうもー、ルミナスさん。どんぐらいの温度が一番美味くなるか色々試してるんですよ」

「研究熱心ねぇ。でも……この豆腐の山、どうするの?
流石に食べきれないんじゃ……」

「……あ゛」

 ルミナスの指摘に、思わず凍りつく雫。

 主目的が味見なので、どの豆腐も僅かずつ手を付けたのみ。
 とても雫一人で食べきれる量ではない為夕食にでも使うしかないが、
どれも手を付けてしまっている為、形が歪になってしまっている。

 人に出すには、難しい状態であった。
 
「あー、考えてなかったのね……まあ、崩した状態で使える料理にすれば問題ないわよ。
ただ、こんだけの量となると、食欲煽られる類の料理じゃないと食べきるのは厳しそうよね……」

 ん~、と考え込むルミナス。

 豆腐と言う食材は素晴らしいが、良くも悪くも滋味あふれる味わいだ。
 はんなりと上品でしみじみ美味いのだが、がっついて食べたくなるような味とは対極に位置する。
 油で揚げるなどすれば味を活かしつつ食欲を煽ってくれるが、それだけでは早々に飽きが来る。
 
 なかなか、難しい問題だった。

「……ま、まあ冷蔵庫入れておけば今日明日で腐る事はありませんし、
あたしが責任もって処理しておきますよ」

「処理なんて気分で食べるんじゃ勿体無いじゃない。折角良い食材なんだから」

「つっても、この量は流石に難しいですし……ん?」

 話しながら、雫はまた一つ気配がここに向かっている事に気付いた。

 気配の主はいつものパターンだとこの時間帯は大概庭に出るのだが、
そのドアがある位置を素通りしてこちらに向かってきているのだ。

 程なくして、気配の主―――海人が厨房に姿を現した。

「おー、いたいた。雫、豆腐はまだ残って……るな、大量に」

「すみません、どう使い切るか考えてませんでした」

「ああ、気にするな。久々に食いたい料理があったから残ってるのは丁度良い。豆腐少しもらうぞ」

 しょんぼりしている雫の頭を優しく撫でると、海人は豆腐を皿に乗せ、必要な材料を冷蔵庫から取り出した。

   









 




 
 少しして、厨房の真ん中にはなかなか異様な料理が鎮座していた。

 白く艶やかな豆腐が、赤い挽肉入りのソースの中に崩れた状態で沈んでいる。 
 その赤いソースにはかなり辛い調味料がふんだんに使われており、豆腐の繊細な味なぞぶち壊してかき消してしまいそうだ。
 見た目はそれなりに食欲をそそるのだが、どうにも思いつきで味のバランスも考えずに作ったような印象が拭えない。

 が、作った海人は美食家でこそないが、味覚は確かな男。不味い物は作らないだろう。
 そう思い、まず雫が皿に手を伸ばした。

「……美味しい!?」

「うむ、久々だったがなかなか上手く出来たようだな」

 料理―――麻婆豆腐を食べて驚愕の声を上げる雫に、海人が満足そうに頷く。

 実際食べてみると、なかなかの出来だった。
 作ったのは数年ぶりだったので不安があったが、悪くはない。
 レシピを記憶の底から引っ張り出して作ったにしては、上出来だろう。

「こ、これだけ強烈な味なのに豆腐の存在感が消えないなんて……!」

 ルミナスが、驚きに目を見開く。

 調味料の味が強く、肉が入り辛味も強烈だというのに、豆腐はその存在を消してはいなかった。
 むしろ自身の味を残しつつ周囲の強烈さを優しく受け止める事で、次から次に食べたくなる中毒性を生み出している。
 しかも熱が加わった事で舌触りがより滑らかな官能的な食感になっており、
これまた夢中になってしまう中毒性だ。
 
 存在感が消えるどころか、豆腐がこの料理の大黒柱になっている。
  
「あれぐらい質の良い豆腐だと、意外に存在感は消えんのだ。
そうそう、米と一緒に食っても――――」

「ん~、美味しいです~♪」

 海人に言われる前に麻婆豆腐を冷や飯に乗せていた雫が、幸せそうな声を漏らす。

 米が冷たい為温度差が少々気になるが、米の甘味と麻婆豆腐の旨味が良く絡んで実に美味い。
 全体的に液体的な食感が強い麻婆豆腐に米のもちもちとした食感が加わる事で、食感の良さも倍加している。
 単品でも美味いが、確かに米と一緒に食べるとなお美味かった。

「早いな。すまんが、こっちにも米をくれんか?」

 海人がそう言うと、雫はすかさず茶碗に飯をよそって手渡した。
 次いでルミナスにも御飯を渡し、ついでに自分のおかわりもよそう。

 時刻は既に三時ではあるものの、おやつ代わりと言うには明らかに食べすぎだったが、誰もそれが気にならない程に美味かった。 
 元々大した量を作っていなかった事もあり、あっというまに麻婆豆腐は完食されてしまう。 

「御馳走様。にしてもカイト、これもかなり美味しいのに何で黙ってたの?」

「普通に忘れてた。まあ、これについては研究も何もしていないから、君が本腰を入れて取り組めばはるかに美味い物が出来るだろ」

「……そうね。横で見てて基本的な作り方は分かったし、これよりちょっと上ぐらいならすぐできると思うわ」

 空になった皿を見ながら、苦笑する。

 この料理は確かに美味かったが、所詮はさして料理が得意ではない海人が作った物。
 料理上手なルミナスからすれば横で見ていただけでも幾つか改善点があったし、
じっくり味わうと味のバランスも十分改善の余地があった。
 その気になれば、すぐにでもこれより上の物を作る自信はある。 

 もっとも――――彼が本気でこの料理を探究していればそんな事はありえなかっただろうとも思うのだが。

「これよりもっと美味しくなるんですか!? 是非食べたいんですけど!」

「うーん……それじゃ、何種類か作りたいからシリルとセツナさん呼んできてくれる?」

「はいはーい!」

 ルミナスに促された雫は、元気よく返事をして厨房から走り出していった。

 

 






 番外編45






 天地海人邸。そこの数多ある呼び名の一つに『絶対不可侵の城砦』というものがある。

 その由来は、例え何者であっても突破できないセキュリティの強固さ。
 数多の精鋭達がその突破に挑んだが、未だかつて成功者はいない。
 
 まず、空から侵入しようとすれば真っ先に対空レーザー。
 もはやSFの砲撃に等しいそれは、今までに数十の戦闘ヘリを撃ち落としている。
 中には上空から爆弾を投下して屋敷を消し去ろうとした機体もいたが、
それすらもセンサーが察知して投下と同時に爆弾ごとヘリを消滅させた。
 他にも仕掛けは山のようにあるのだが、現状これ一つで空からの侵入を全て防いでしまっている。

 では、地上から侵入すればどうなるか。
 戦車などの兵器は山に侵入した段階でセンサーが感知し、小型ミサイルにより乗員ごと粉々に爆散させられる。
 その迎撃機能の精度は極めて高く、今まで侵入した戦車の最高侵攻記録が十mである。 
 乗用車で侵入しようとしても、不法侵入の場合同様の洗礼が待ち受けており、屋敷に辿り着く事は至難。
 徒歩で侵入すれば好奇心旺盛な子供などを殺さぬよう、落とし穴や電気ショックなどの軽度の罠で済むが、
それも十人以上の集団で入れば敵とみなされ殺害前提のトラップに切り替わる。
 更に徒歩で上手く屋敷の門前に辿り着いても、屋敷の防備は山の比ではない。
 不法侵入者は完全な敵とみなされ、余程運の強い人間でないかぎり入って三分以内に消滅させられてしまう。

 と、ことほど左様に無敵の防備を誇る海人の屋敷で――――屋敷の主は、その内部を必死で逃げ回っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ええい、今度屋敷内部のトラップの数も増やすべきか……!」

 息を荒げながら、廊下の壁に背を預ける海人。

 外敵には堅固な防御を誇るこの屋敷だが、内部に侵入されると意外に脆い。
 外と違って生活空間なので、あまりゴテゴテと仕掛けるわけにはいかない為だが、
こうなってみるともっと色々仕込んでおくべきだったと後悔せずにはいられない。

 とはいえ、後悔しても仕方がない。
 今はこの状況をどう打破すべきか考えるべきだ。

 そう海人が気を取り直して頭を回転させ始めた時、背後から彼の肩に柔らかい手が置かれた。

「みぃ~つけた♪」

「ぎゃあああああああああああっ!?」

 悲鳴を上げながら、全力で横っ飛びする海人。
 
 だが悲しいかな、彼の脚力は元々貧弱そのもの。
 鍛えて同年代の平均近くにはなっているが、所詮それだけ。

 才に恵まれ、時として人の領域すら超越していそうな襲撃者から逃れるには、あまりに不足だった。

「はいは~い、愛しの旦那様。もう終点よ?」

 勢い余ってすっ転んだ海人の頭上から声を掛ける襲撃者―――エミリア。

 いつものように美しく穏やかな微笑みを浮かべてはいるが、海人にはその奥に隠れた憤怒がありありと分かる。
 なにせ、手に持った刀がプルプルと震えているのだ。内部に押し込めている激情を必死で抑え込むかのように。

 というか、先程からずっとその刀を振り回して追いかけてきていたのだから、表情を見るまでもない。

「エ、エミリア! どう考えてもこれはおかしい! 今回私には何ら非がないはずだ!
あれは私では不可避の事態だった!」

「そーね。あなた貧弱だし、へっぽこだし、ああいう事が起きてもしょーがないっちゃしょーがないわよね」

 うんうん、と夫の言葉に頷くエミリア。

 が、言葉とは裏腹に刀を手放す様子はない。
 それどころか、床で無様に這いつくばっている夫の首に刃を当てている。

「そこまで分かってて何故こんな事をする!? というか、あれぐらい君の祖国なら挨拶で済むんじゃないのか!?」

「そーねー。あっちの方じゃあんぐらいなら挨拶代わりにやるわよねー……でも海人?
その今は硬直してる賢しい頭を回してすこーし考えてみなさい?」

 喚く夫に、優しく語りかける。
 まるで、物分かりの悪い子供を諭すかのように。

「な、何をだ?」 

「私が人生の半分ぐらい過ごしてる国、今私達が住んでる国、貴方の祖国、ついでにあの女の祖国……全部一緒なのよねぇ。
当然あっちの倫理観が入る余地なんてほとんどないと思うんだけど……これは私の気のせいかしら?」

「き、気のせいじゃありません……」

「ついでに言えば、この国の倫理観じゃ――――妻帯者の男が他の女から頬にキスされるって不倫以外の何物でもないわよね?
そして不倫って、された側の裁量で相手を死刑にしても問題ないぐらいの重罪よね?」

 笑顔で無茶苦茶を言いながら、夫の首に刃を食いこませる。
 出血するには遠いが、切れ味の良い刀なので手元が狂えば即大惨事な状況だ。

「待て待て待て! そこが致命的におかしい! 合意無く頬にキスされたからと言って不倫とは言わん!
ついでに言えば裁判所通さず死刑にしていいなんて法律はこの国には存在しないぞ!?」

 冷静さを世界の果てに投げ捨てている妻を、必死で説得する海人。

 なんでこんな事に、そう思わずにはいられない。
 事の発端は、パーティーでたまたま会った小学校時代の同級生から頬に口づけされただけの事なのだ。
 しかも当時から悪戯好きな女性だったので、本当に他意のない軽い行為のはずである。
 
 それによって引き起こされた騒動が、これ。
 屋敷の壁がところどころ斬撃で引き裂かれ、場所によってはナイフも刺さっている。 
 土木作業ロボがあるのでこの程度の修理は容易だが、それにしたって凄まじい破壊行動だ。

 というか、それ以前にこのままでは海人の命が危うい。
  
「そうだったかしら? ま、些細な違いよね」

「微塵も些細じゃないぃぃぃぃっ!? 」

 可愛らしい声と共に更に深く食い込んだ刃に、絶叫する。

 まだ生きてる以上本気で殺す気はないのだろうが、激怒している事は疑いようもない。
 これからの出来事を想像すると、恐怖しかなかった。

 慄く夫を見て、エミリアは小さく息を吐いた。

「……ま、脅すのはこの辺にしておきましょっか」

 言いながら刀を戻し、鞘に収める。
 先程までの様子が嘘のように、落ち着いていた。

「はぁ……で、なんでそんなに怒ったんだ?
私が浮気するなぞ、天地がひっくり返っても起こりえん事は君も良く知ってるだろうに。
というか、怒るべき相手が違うだろうが」

「ええ、確かに怒るべきはいきなり人の旦那にキスしやがったあの阿婆擦れね。
でも、されて怒らなかったあなたにも腹が立つのは当然じゃないかしら?」

「……そうか、すまん。小学校時代も何回かされてたんで、むしろ懐かしさが先に立っていた。
妻帯者としては確かに問題だったな」

 エミリアの言葉に、海人は深々と頭を下げた。

 頬にキスをされた際、海人は怒らなかった。
 むしろ平和に過ごしていた頃の同級生の以前と変わらぬ行為に、懐かしささえ覚えていた。
 すぐ隣に嫉妬深い妻がいるというのに、暢気な話である。 

 まあ、十年近く会ってなかった知人の悪戯程度で大袈裟な、と思わなくもないがそういう女性だと重々承知して結婚したのだから、あまり文句は言えない。
 彼女の嫉妬は愛情の深さの裏返しでもあるので、余計に。
 
「……もういいわよ。私もあの程度で頭に血が上りすぎてたしね……ごめんなさい」

「なに、気にするな。とはいえ……あの程度であそこまで反応されるとは私の愛情を信じてもらえてないという事だな。
かくなる上は仕方あるまい。今の研究を中断し、三日三晩かけて私の愛情をたっぷりと思い知ってもらうとしよう」

「あら珍しい。なら、私もその間たっぷりと私の愛情の深さを思い知らせてあげないとね?」

 不敵に笑いながら腰を抱いてきた夫に、エミリアは挑戦的な笑みを返した。


 

 
 

 
コメント

誤字報告

妻帯者がの男が他の女から頬にキスされるって不倫以外の何物でもないわよね?
  ↓
妻帯者が他の~   かな?
[2017/07/22 07:18] URL | ムク #- [ 編集 ]


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