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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄85
「ぅ……ん……?」

「気が付いたか」

「……カイト?」

「ああ。話の途中で急に倒れたんだが、覚えているか?」

「ええ……覚えてるわ。ちょーっと驚きすぎたわね。
まっさかローラさんがあんな場所であんたに告白するなんて思ってなかったから」

 弱々しく、笑う。
 その笑顔にはいつもの太陽のような明るさがなく、どこか儚げだ。

「……告白?」

 怪訝そうに首を傾げる海人。
 なんの話をしているのか分からない、とでも言わんばかりの表情だ。

「こら、いくらなんでも分からなかったはずないでしょ?
あんな誤解の余地もないぐらいに明確に言われたんだか……どうしたの、頭抱えて」

 急に頭を抱え始めた海人を不思議そうに見つめる。
「……いや、なんというか君もしっかり女性してるんだなという驚きと、
あの程度の言葉遊びで人を卒倒させてしまえるローラ女士がな……」

「言葉遊び?」

「うむ、最初に言っておくが、一応彼女の言葉が嘘というわけではない。
確かに彼女は私と生涯添い遂げてもいいとは思っているようだ」

 ぴっ、と人差し指を立てながら、解説を始める。

 あの時のローラの表情に、嘘の色はなかった。
 紛れもなく彼女は海人と生涯添い遂げてもいいと思っている。
 だからこそ、海人も思わず呆気に取られたのだ。

「……言葉遊びもへったくれもないじゃない」

「いやいやルミナス、言葉を反芻してみろ。『添い遂げてもいい』だぞ?」

 じとっとした目を向けるルミナスに、苦笑交じりの言葉を返す。

「それがどう……あれ?」

 言いかけて、首を傾げるルミナス。
 確かに、告白にしては妙な言葉だった。

「分かったようだな『添い遂げたい』ではない。御世辞にも情熱的な言葉ではないな。
そしてあの時の話の流れを思い返してもらいたいんだが、どのぐらい覚えている?」

「きっちり覚えてるわよ。あんたの自己評価が……正確には人格含めた自己評価が低すぎるって話だったでしょ?
んで、それ受けてローラさんはあんたなら性格を踏まえても生涯添い遂げ……あれ?」

「記憶違いではないぞ。性格を含めても、だ。さて、理解してもらえたかな?」

「……どっちかっつーと能力的な評価によるところが大きくて、人格もマイナス材料とは思わないって話か。
あの人の性格考えたらそれでも十分意外だけど、確かにあんたの能力が手に入るんだったら一生使う価値はあるわよね。
つまりあんたに対するローラさんの評価であって―――」

「告白などではない、という事だ。
もっとも緊張で言葉選びを間違えた、という可能性も0ではないんだがな。
ま、彼女に限ってそういうことはあるまい」

 言葉を締め括り、肩を竦める。

 他の人間ならば、あの言葉で告白ではないと断じる事までは出来ない。
 往々にして普通の人間はそういう場面では緊張し、意図した言葉と違う内容を発する事もあるからだ。
 実際、海人もかつて妻に求婚した際は、何度もシミュレーションした挙句、本番で舌を噛んだ記憶がある。
 
 が、今回の発言者は他ならぬローラ・クリスティア。
 
 他の人間が束になっても終わらぬ膨大な仕事量をこなしながら、
部下はおろか主君すらもミスらしいミスを見た事がないと言わしめる完璧超人。
 全ての行動は計算尽くで行われ、予定外の事態すらも瞬時に取り込み組み直すと言われる怪物である。

 彼女に限って間違いは考えられない。
 むしろ性格を考えればあの緊張した場面でおちょくりを入れる為に嘘ではない程度の発言をしたと考えるべきだろう。 
 
 ルミナスは納得し、次いで頭を抱えた。

「そーよねぇ……はあ、それでぶっ倒れるってどんだけ間抜けよ私」

「まあ、意外性は抜群だっただろうし、仕方ないんじゃないか?
私としては君がまだ恋愛事に興味津々だった事を知れて一安心でもあったが」 

「は? どうしてあんたが安心すんのよ」

「結婚願望が強いはずの君が休暇中もここに滞在して相手を探そうともしないんだから、心配もするさ。
仕送りの必要がなくなるまでそういう事は考えないようにしてるのであればいいが、
無意識に諦め始めているんだったら自覚させてやるべきだろうしな」

 シニカルに、笑う。

 これまであえて口には出さなかったが、海人はルミナスの現状を憂慮していた。
 なにせ、初対面以来彼女と自分が一緒にいる時間は長すぎる。
 それこそ、新たな出会いなど到底見込めない程に。
 
 ルミナスはまだまだ美しく性格的にも能力的にも申し分ない超優良物件だが、それでも既に二十六歳。     
 慌てて結婚相手を探す必要はなくとも、良い相手を見つける為の網ぐらいは広げておいた方が無難な年齢だ。
 彼女は結婚願望が強いので、尚更である。

 それが、休暇中という一番網を広げやすい時にこの屋敷でくつろいでいるのだ。
 そしてその事に危機感どころか疑問すら抱いている様子がない。
 正直、心配になるレベルだった。

「……私が住み込んでるの、迷惑だった?」

「なんでそーなる。私としては君がいる生活は実に楽しいが、君の夢を考えるとどうなのか、と思っていただけだ。
まあ、君なら生涯独身でも美味い物食べてられれば結構幸せそうな気もするがな」

「酷いわね。これでも恋愛に憧れる純な乙女なのに」

「二十代半ば過ぎて乙女というのもがががががっ!?」

「そーいう口の悪さが災い招くっていいかげん学習しなさいね?」

 にっこりと笑いながら、握り締めていた海人の頭を解放する。

「あたたた……まあ、顔色含めて問題ないし、
なによりそれだけ元気なら体調が悪いという事はなさそうだな」

「……心配してくれてたの?」

 きょとんとした顔で訊ねる。
 先程からの海人の態度はあまりにいつも通りで、観察しているような雰囲気はまるで感じなかったのだ。

「当たり前だ。落ち着いて診察する為に他の人間も排除しているんだぞ。
シリル嬢なぞ、あまりに騒ぐものだから刹那に黙らせてもらったぐらいだ」

 そう言って、海人は周りを示す。

 それを見て、ルミナスはようやく先程から感じていた違和感の正体に気付いた。
 本来この場にいるべき人間が、根こそぎいないのである。

 この屋敷の住人は、程度の差こそあれ軒並み御人好しである
 ローラやメイベルはともかく、彼女らはルミナスが倒れたとなれば心配してくれたはずだ。
 特にシリルは通常なら目が覚めるまで絶対に離れる事は無いだろう。

 それが、誰もいない。
 海人との会話が楽しく、それに集中してしまっていた為気付かなかったが、おかしな話だった。
 
「そっか……」

「ま、今日はゆっくり休め。いくら驚いたとはいえ、あれだけで倒れるのは少々反応が過剰すぎる。
大方、最近本業の頻度が激減している事とかで心労が溜まっていたんだろうが、気にしすぎても毒だ。
折角の休みなんだし、細かい事は考えずのんびりした方が良い」
 
 ルミナスの目を見て、優しく諭す。

 海人の予想では、ルミナスが倒れた最大の原因は心労。
 常日頃から溜まっているそれがローラの発言で一気に押し寄せたのだろう、それが海人の見立てだった。

 そしてルミナスの状況を考えれば、心労の最大原因は仕事の少なさだろうと予想できる。
 己の将来の為、そして実家の為に稼がねばならないというのに、現状は空き時間が多い。
 海人と会う前は仕事の量も質も尋常ではなく、次こそ死にかねないなどと言っていたのだから、
尚の事焦りは強くなっているだろう。
 休暇中も給料は出るらしいが、あくまで生活に困らない範囲らしく、
仕事が来ない限り収入はたかが知れているようなのだから。
 
 とはいえ、それはルミナスが悩んでも仕方のない話だ。
 仕事を用意するのは彼女の上司達や第二部隊の面々らしいので、やれる事がそもそもない。
 悶々と落ち込むよりは、次への英気を養う為に遊んでいる方が余程健全だろう。

 本音を言えばルミナス用に仕事を用意したいところなのだが、
彼女の性格と現状を考えるとただ働かせて報酬は受け取ってもらえない可能性がかなり高い。
 海人の創造魔法によって生活費がほとんどかかっていないので、その埋め合わせと言われてしまうだろう。
 それを避けるためには危険度と報酬額の高い仕事を用意すればいいが、そんな物を用意する人脈も資金の余裕もなく、
またそれで友人を危険に晒すなど気が進まない事この上ないので、現実的には不可能だ。

「……そうね。分かった。心配してくれてありがとね」

「なに、好きでやっているだけだ。気にする事は無い」

 ひらひらと軽く後ろ手を振りながら、海人は部屋を出た。
 彼の気配が遠ざかるのを確認して、ルミナスは思いっきり溜息を吐く。
 
「……自覚しちゃうと、この程度でも結構寂しいもんねぇ……」

 薄く、儚げな笑みが浮かぶ。

 先程海人が部屋を出た時、本当は引き止めたかった。
 自分にゆっくり休めと言うなら、もっとそばにいて欲しいと。
 それが一番くつろげて、一番楽しくて、一番幸せなのだと。
 
 これまでも同じような場面で似たような思いを抱いた事はあったが、その思いがより強くなっている。
 おそらくは、無意識に目を逸らし続けていた感情を自覚してしまった事によって。

「……我ながら、よくもまあ今の今まで逃げ続けられたもんよね」 

 自嘲しつつ、目を閉じて想像を始める。
 己の中にある、大切な感情を再確認する為に。
 無意識の逃避などという下劣な真似が二度と出来ないよう、逃げ場を潰す為に。 

 思い浮かべるのは、海人と過ごす自分。

 それ自体は、これまでも時折思い浮かべていた。
 理由は分からなかったが、最近彼がいない時はふとした拍子に浮かぶ事が多かったのだ。
 今にして思えば、その段階で気付けと過去の自分を殴り倒しに行きたくなるが。

 とはいえ、それはあくまでも現在の日常の想起にすぎなかった。
 騒がしくも穏やかで心温まる、そんな日々。

 とても大事で続いてほしい日常―――なのに、常に物足りなさも感じていた日々。

 何が足りないのか、長らく分からなかった。
 食はかつての比ではない程に満たされ、周りには笑顔が溢れている。
 これでどうして不満を感じるのか、そこまで自分は貪欲だっただろうかと自己嫌悪に沈んだ程だ。

 それがつい先程、理解できた。
 どうして今まで気付かなかったのかと思うような、単純な答えが。

 それを確信に変える為、ルミナスは想像を始める。 
 
 思い浮かべるのは、自分が未来に望んでいるであろう光景。
 心の奥では何よりも強く望んでいただろうに、今に至るまで可能性すら考慮しなかった未来だ。 

 町で、海人と隣り合って歩く。
 互いの指が柔らかく、だがしっかりと絡められている。
 感触を確かめるように手の力を強めると、彼もまた優しく握り返してくれた。

 ベンチで一休みし、並んでくつろぐ自分達。
 二人の間に距離はなく、足と足が触れ合っている。
 そのうちに自分が甘えるように彼の肩に頭をあずけると、海人は慈しむように頭を撫でてくれた。

 場面を変え、夜の海人の部屋。
 ベッドに腰掛け、取り留めもない事を語り合う二人。
 やがて話題が尽き、何とはなしに自分の視線が枕に向く。
 その瞬間、海人が自分の体を柔らかく押し倒し、覆いかぶさる。

 そして自分はそれを拒絶する事もなく目を閉じ、

(んきゃああああああぁぁああっ!? ヤバい、恥ずかしすぎる! これ以上は流石に無理!)

 決定的な場面を想像する前に、ルミナスはベッドの上を悶えながらゴロゴロと転がった。
 翼が下敷きになって地味に痛いが、それすら気にならぬ程に頭がゆで上がっている。
 
 が、それでも頭の中に残った冷静な部分が告げる――――これで確定だ、と。

 最初の方の想像は、他の男だと想像する気にもならないし、
無理に想像しても今までの経験上、手を握ったり、足が触れ合ったりする前の想像であり、
触れ合った瞬間嫌悪感から拒絶しているはずだ。
 最後の想像に到っては、今まで想像しようと思ってもその瞬間に嫌悪感が湧いて出来なかった。
 仮に渾身の精神力で無理にやっていたとしても、最後の場面で惨殺するとしか思えない。
 
 それが海人相手だと嫌悪感を全く感じない。
 それどころか、全身がこの上ない歓喜に満たされていく。
 何をおいてもこの想像を現実にしたい、そう思わずにはいられない程に強い歓喜だ。
  
 顔は火が出そうな程に火照って仕方ないぐらいに恥ずかしいが、
これらの想像にはそれを圧殺する程に強烈な幸福感が伴っていた。

「――――ヤバい。癖になりそうだわこれ」

 火照る顔を押さえながら、ぼやく。

 たかが脳内での想像だというのに、今まで得た快楽の何よりも勝っている。
 これまで食したいかなる美味よりも、これまで得たいかなる達成感よりも、
これまで得たいかなる優越感よりも、この想像が心地良い。

 これを実現させられれば、どれほど幸福だろうか。
 現在からでも垣間見えるその過程の困難を予想しても、気にならない。
 いかなる困難も乗り越えるまで、と一切の逡巡なく思ってしまう。
 この感情の前では、僅かに残っていた疑念すらも霞んで消えてしまった。
 
 これまでの逃避が二度とできないよう、ルミナスは己の思いを口にする。

「私――――カイトに恋してるんだ」
 

 













 時は僅かに遡り、海人の屋敷の広間。
 そこでは目覚めたばかりのシリルが、恨めしげに刹那を睨んでいた。

「……取り乱した私が悪いとはいえ、即締め落とすのはどうかとは思いますわ」

「主命ですので。それに、拙者にはあんな海人殿に逆らえる程の気概はありません」

「あれはほんと凄かったよねぇ~。あたしでも思わず腰が引けたし」

 畏怖するような、感心するような表情で呟く雫。

 ルミナスが倒れた時の海人の対応は、峻烈としか言いようがなかった。
 誰よりも早くルミナスの元に駆け寄り、脈や肌の色など諸々を瞬時に確認すると、
すかさず抱え上げて彼女の部屋へ向かい始めたのだ。
 そればかりか、ルミナスが倒れた事や海人が彼女を抱え上げた事で動揺し詰め寄ってきたシリルを一瞥すると、
常では考えられない程冷たい声で刹那に命令を出した。

 ――――黙らせろ、と。

「……確かに、あの状態のカイトさんに逆らえというのは無理がありますわね」

 自分も目にしたそれを思い出し、シリルは苦虫を噛み潰したような顔になる。

 意識を失う前に目にした海人は、普段とはまるで違っていた。
 膝を屈して当たり前、命とあらば頷く他ない、そんな佇まい。
 その才覚と能力に相応しい、絶対者の威厳。
 
 あまりにも暴力的で圧倒的な、まさに大魔王と呼ぶ他ない姿だった。   
 咄嗟にあれに逆らえる精神力の持ち主自体稀少だろうし、元々海人に従順な刹那では拒む事など出来ようはずもない。 

「まあ、身内相手の事ですからカイト様も焦っておられたのでしょう。
普段はあの通りなのですから、恐れる必要はないかと」

「その通りですが、他人事のように仰ってくださいますわね?
状況からして、どう考えても貴女の言葉遊びでお姉さまがぶっ倒れたはずなのですが」

 ギロリ、とローラを睨みつける。
 その瞳には、僅かながら殺気が滲んでいた。

「……言葉遊び、ですか?」

「まあ、あの状況ではそうそう気付きませんわよね。
私も締め落とされてる間に頭が冷えたから気付いたようなものですし。
まずあの時の会話の内容からですが……」

 刹那の問いに溜息を吐き、シリルは解説を始めた。
 
 奇しくも、同じ頃海人がルミナスにしていた事とほぼ同じ内容を。
 ローラの言葉はあくまでも海人に対する評価であり、告白などではないと。
 そしておそらくは意図的に勘違いさせる言葉を選んだであろうとも。

「……なるほど。言われてみればその通りですね。
拙者はともかく雫まで今に至るまで勘違いさせ続けるとは、流石と言う他ないですが」

「うん、あたしも完全に騙された。ってか心臓止まりかけたんですけど、マジで」

「嘘は一切言っておりませんので、責められる謂れはないかと存じます。
あの程度で倒れてしまうようなルミナス様の状態を知りながら長らく放置した方にこそ、非があるかと」

「……やはり、全て承知の上でやりましたのね?」

 今までの苦労を水の泡にされたシリルが、明確に怒りを見せる。

 これまで雫と立ち回ってきたのは、ルミナスの海人への想いの自覚を遅らせる為。
 現状ではどう転んでも苦しむしかないそれを、少しでも遅らせる為に奮闘してきたのだ。
 それを部外者の横槍で潰されるなど、腹立たしい事この上ない。

「後の事を考えれば、むしろもっと早くやるべきだったはずです」

 鋭さを増すシリルの視線を受け流し、ローラは静かに紅茶を啜る。
 それに怒りを煽られたかのようにシリルが身を乗り出した時、
 
「シリル殿、落ち着いてください。むしろローラ殿には感謝すべきでしょう。
先延ばしにすればするほど、ルミナス殿が自覚した時の衝撃も大きくなったはずなのですから。
それに、以前雫に訊ねられた時でさえ自覚なさらなかったのですから、あれぐらいでなければ自覚出来なかったはずです」

『……は?』

 予想外の人物からの言葉に、脇にいた雫共々硬直した。
 それを気にした様子もなく、刹那は言葉を続ける。 

「付け加えますと、その前にメイベル殿の言葉で揺さぶられたのも大きかったでしょう。
あれで動揺が収まりきらなかったところにローラ殿のあの発言となれば、自覚させるには完璧です。
御二人共、示し合せておられたのですか?」

「いいえ、私は普通に接してただけよ」

「メイベルの発言が丁度良かったので、止めを刺させていただいただけです」

「なるほど……ローラ殿が偶発的な事を上手く活用したという事ですか」 

 ふむふむ、と刹那が頷いていると、肩をちょんちょんと叩かれた。
 振り向くと、そこには引き攣った笑顔を浮かべる妹の姿がある。  
 
「ちょーっと待とうかお姉ちゃん。ひょっとしてあたしとシリルさんが……」

「どうにかルミナス殿を刺激しないようにしていた事か?
まあ、あれも態度を見れば丸わかりだろう」

「ぐおらぁぁぁぁぁっ!? あたしらがどんだけ苦労したと思ってんの!?
それを高みの見物って流石に酷くない!?」

 姉の胸ぐらを掴み、ぶんぶんと前後に振る。
 雫の目尻には、ちょっぴり涙が光っていた。

「拙者はお前と違って器用な性質ではないからな。
下手に関わらん方が立ち回り易かろうと思っただけだ」

「ぬうう……まさかお姉ちゃんが、剣術一直線で色恋興味皆無のお姉ちゃんが、
どんな男に口説かれても邪魔の一言で片づけるお姉ちゃんが、
むしろ剣術と結婚するつもりなんじゃないかってお姉ちゃんが、
ルミナスさんの気持ちに気付いてたなんて……!」

「言ってくれるではないか……遺言はそれでいいな?」

「はい、そこまでですわ。まあ、済んだ事はもういいですわ。
それに、あの調子ではどうせ傭兵引退まで先延ばしにする事は出来なかったでしょうし、
セツナさんの言うように、ローラさんには感謝すべきところなのでしょう」

「御理解いただけたようで何よりです。とはいえ、これで大きく変わるというものでもありません。
ルミナス様が現状これといった行動を起こせるはずがありませんので」

「お姉さまの心労は確実に倍加しますわよ?」

「それはないかと。自覚さえしていれば、難度はともかく解決策は単純です。
ルミナス様の性格を考えれば、結果的に心労は減るでしょう」

「まあ、確かにそうですわね。もっとも、仰るように難度は高いわけですが」

 ふ、とシリルが溜息を吐いたところで、雫がふと顔を上げた。
 その視線が向かっている先には、ルミナスの部屋がある。

 状況を察したシリルは、数度深呼吸をして気分を落ち着け、部屋のドアが開くのを待った。

「シリル嬢、ちょっといいかー?」

「……なんでしょう?」

 妬ましい事この上ない馬鹿野郎の暢気な声に、険のある声を返す。
 心構えはしていたつもりだが、ふつふつと込み上げる激情は隠しきれなかった。 

「とりあえず、ルミナスの体調に異常はなかった。
ただ、おそらくここしばらく本業がないんで心労が溜まってるんだろう。
すまんが、ちょっと話でもして労わってやってくれ」

「心労……お姉さまがそう仰いましたの?」

「いいや。だが、あの状況であの反応ならそれしかないだろう。
いくらローラ女士の発言が意外すぎたとはいえ、反応が過剰すぎる」
      
「……よーく分かりました。お引き受けいたしましょう」
 
 どこまでも鈍感な幸せ者の友人への憤りを押し殺しながら、シリルは席を立った。


































 ルミナスの部屋に、コンコンとノックの音が響いた。

「どうぞー」

「お姉さま、御気分はいかがですか?」

「あー……うん、最悪な気分だけど、すっきりもしたわね」

「……やはり、自覚なさってしまわれたのですね」

「ま、ね。我ながら馬鹿というかアホというか根性なしというか……あんたにも手間かけさせたわね。
私が自覚しないで済むように色々立ち回ってくれてたでしょ?」

「自覚されては勝ち目が一気に薄くなります。ただそれだけですわ」

 当然のように、答えを返す。
 本心は見透かされているだろうと思いつつも。
   
「そっか……でも一応言っておくわ。ありがとう」

「御気になさらず……それで、どうなさいますの?
自覚なさったところで、今はまだ何も出来ないと思いますが。
お姉さまの事情が解決しない限り、進展の為の行動はカイトさんの負担にしかなりませんもの」

「ええ。だからこそ余計に目ぇ逸らし続けてたんでしょうね。
それでカイトに理不尽な被害出しまくってたってのに……我ながら情けないわ。
今からでも土下座しに行きたいとこだけど、理由聞かれたらまずいだろうしねぇ……」

 あーあ、と天を仰ぐ。

 本音を言えば、先程海人に全ての事情を話し、
そのせいで時折度が過ぎる攻撃になっていた事を土下座して謝りたかった。
 それで彼の怒りをかって関係が崩壊する可能性もあるが、
それが筋であるし、元々隠し事自体好きではないのだ。
 
 が、今それをやってしまうのは海人にとって負担以外の何物でもない。

 以前、海人は未だ亡き妻へのけじめすらつけられていないと言っていた。
 彼女が亡くなる原因となった研究、それはまだ完成していないようなのだ。

 そんな状態でルミナスの想いを知れば、さぞかし苦悩するだろう。
 恋愛対象としては見ていなくとも、好ましくは思っている女性。
 現状ではすっぱり断る以外の選択肢はないだろうが、それが本当に自分のルミナスと言う女性に対しての想いであるのか。
 ただ機械的に受け入れないだけではないか、では正確に己の感情を見つめるには、と発展していくだろう。
 それは焦りを生み、かえって研究の完成を遅らせかねない。
  
 それだけならまだいいのだが――――ルミナスは、仕事が死と隣り合わせだ。

 確かに一流の傭兵の名に相応しい武力はあるが、最強には程遠い。
 滅多にいないが、団長や副団長クラスの相手なら確実に秒殺されてしまう。
 そうならぬ為の戦術・戦略であり仲間だが、それも絶対ではない。
 そうであれば、今まで部下を喪った事があるはずがないだろう。

 では、実際ルミナスが戦死すればどうなるか。

 正直、現段階でも海人が粛々と受け入れるとは思えない。
 もっとルミナスを信じて何かしら渡していれば、そう苦悩する姿が目に浮かぶ。
 とはいえ刹那や雫がいるのでいずれは受け止め、消化するだろう。
 ルミナスとしては寂しい話ではあるが、海人にとって回復不能なダメージにはならないはずだ。

 が、これに告白していたという要素が加わった場合どうなるか。 
 
 自惚れかもしれないが、もはや正気を保っていられないのではないかと思う。
 断っていれば、その精神的なショックがなければ、と。
 受け入れていれば、なぜ守ってやれなかったのか、と。
 保留していた場合でさえ、それが迷いを生んだのではないか、
何らかの答えを出していればこうはならなかったのではないか、とひたすら苦悩し続けそうに思える。
 これも刹那や雫が癒してくれると思いたいところだが、自分を愛した女性がまた死んだ、
という衝撃が彼に与えるダメージは、正直見積もりきれない。
 図太い男だが、脆い面はとことん脆い男でもあるのだ。
 最悪、それで悲しむ人間が周囲にいる事すら忘れ、自害する可能性も否定できなかった。  
 
 かといって、ルミナスが今傭兵を引退する事も出来ない。
 実家への仕送りはまだ続ける必要があり、その為には傭兵としての稼ぎが必要なのだ。
 少なくとも、あと数年は続けなければならないだろう。

 それを考えると、今全てを明かすのは最悪だ。
 ルミナスの気分が多少楽になるだけで、海人にとっては害しかない。
 上手くルミナスの恋慕だけを隠して話せれば別だが、
嘘をたちどころに見抜いてしまう彼が相手では、まず不可能だろう。 

「現実的には、早急にお金を稼ぐべきかと。
幸いにしてここに滞在している限り食費は最小限に抑えられますし、
冒険者の仕事でそこそこ割の良いものを選んでいけば、それなりの収益になるでしょう。
引退までの期間を確実に縮められますわ」

「そうね。私もそれは考えてたわ。でも……あんた、随分協力的ね?」

 訝しげに訊ねる。

 シリルはルミナスを恋愛的な意味で慕っており、幾度となくフラれても諦める気配がなかった。
 それがここに来て、ルミナスが海人に惚れたからといってそれに協力するというのは違和感がある。
 なりふり構わず妨害できるような性格ではないが、かといってただ協力できるほど潔い性格でもないのだ。

 そんなルミナスの疑念に、シリルは苦笑しながら答える。

「これもまた打算ですわ。傍観や妨害は事の成就の確率を下げられる代わりに、
お姉さまの好感を得られない、あるいは減じる事になりますので。
ならば協力して好感を得ておき、フラれたところに付け入るのが最善ですわ。
カイトさん相手となれば、いかなお姉さまといえど事を成せると楽観できませんもの。
勝機はまだまだ残ってますわ」

「ブレないわねぇ……ま、ありがとうって言っとくわ」

「こちらの勝手でやる事ですので。ところで、私もお姉さまに違和感を感じているのですが」

「ん? 何かおかしい?」

「いえ、お姉さまの性格からしてもっと落ち込んでいるかと思っていましたので。
正直、これまでの事を思うと御自分が許せないのでは?」

「……まあ、ね。そりゃあ、過去に戻れたら自分ぶっ飛ばしたいぐらいに情けない気分だけど、
落ち込んだところでなかった事に出来るわけでもないし、カイトに心配かけるだけでしょ?
なら、いっその事開き直って元気な姿見せようって思ったのよ。
で、時期が来たらそれも含めてぶちまけた上で告白する。結果がどうなろうとね」

「もし受け入れられなかったらどうなさいますの?」

「受け入れてもらえるまで続けるに決まってるじゃない。
あの理不尽が許せないっていうなら何度でも頭下げる、魅力が足りないってんなら女磨く、
性格が合わないって言うならそれでもいいと思わせるぐらいに自分を磨く。
それぐらいの想いでこそ、恋。違うかしら?」

 あっけらかんと、迷いもなく言い切るルミナス。
 陰りのないその笑顔は、純粋な決意の光で輝いている。
 どれほど泥に塗れようと、必ずや成し遂げてみせる、と。

「ふ、ふふふ……杞憂でしたわね。流石お姉さま。
これならもっと早く自覚を促す努力に切り替えるべきでしたわ」

「……でも、実際競争激しいはずなのよねぇ……シェリスのとこのメイドの一部だって本気っぽいし、
今はそんな様子ないけど、セツナさんやシズクちゃんがその気になれば立場上私より圧倒的に有利。
ローラさんにいたっちゃ、総合スペックで足元にも及ばないし、性格もカイトは気に入ってるみたいだから、
参戦してきたらそれだけで敗北する可能性が濃厚になる……うん、改めて並べるとかなり酷い状況ね」

 事実を羅列した直後、がっくりと肩を落とす。

 海人程の男ならば、競争率が高いのは当たり前だ。
 他に想い人がいるのでもない限り、彼を知れば狙ってみたくはなるだろう。

 が、いくらなんでも現状のライバル、あるいはその候補はラインナップが凶悪すぎる。
 特に刹那、雫、ローラは現状海人に対しそういった感情は持ってないようだが、
これから先抱く可能性は否定できず、また抱いた瞬間途轍もない強敵として立ちはだかるだろう。
 さらに、告白にあたっては全てを包み隠さず告げるつもりなので、それで不興をかう可能性も無視できない。
 
 正直、これから全てをかなぐり捨ててアプローチをかけたとしても、勝てる可能性は楽観できる程に高くないだろう。
 
「ですが、諦める気は毛頭ないのでしょう?」

「当然」

 見透かしたようなシリルの言葉に短く答え、ルミナスは不敵に笑った。















 海人は、中庭に出ていた。
 昼間とは違い周囲の風景は闇に溶け、美しさよりも不気味さが出ている。
 時折吹き抜ける風が木々を揺らす様は、まるで姿なき何かの悲鳴のようだ。

 が、海人はそれを気にした様子もなく地面に寝そべって天を見上げていた。
 
 その視線の先にあるのは、満天の星々。
 でんと鎮座する月も美しいが、空に散りばめられた宝石のように輝く星々も美しい。
 風は些か冷たいが、それを堪えても眺めていたいと思えるだけの光景だ。

 そうしてしばらく過ごしていると、若干低い美声が彼の耳朶を打った。

「隣、よろしいでしょうか?」

「ああ、一人で空を眺めているのも飽きてきたところだ」 
  
 海人がそう答えると、刹那は海人の頭の横に腰を下ろした。
 そのまま、しばらく二人の静かな星空見物が続く。

「……何か話があるんじゃないのか?」

「あるにはありますが、こうして海人殿と空を眺めているのも悪くありません。
拙者も一応女ですし、たまには素敵な殿方と一時を楽しむのも一興でしょう」

「素敵、か。本当に私にそんな魅力があるのやら」

 刹那の言葉に、自嘲めいた笑みを浮かべる。
 それを見た刹那の目が、僅かに細まった。

「……気が変わりました。予定通り、話をさせていただきましょう。
とはいえ、このまま話をするのも無粋ですね」

 そう言うと、刹那は海人の頭を持ち上げ膝枕をする。
 彼女の足は袴越しでも感じるぐらいに、柔らかくしなやかだった。
   
「……ふむ、良い感触だな。少々袴が厚いのが残念だが」

「次の機会があれば、別の服でやってみましょう。
さて、話を蒸し返すようで恐縮ですが―――海人殿の男性としての自信のなさは、
過去女性に騙され続けた経験からですか?」

「……察しがついてるならわざわざ口に出さんで欲しいんだがな。
懲りたし、報復もしたとはいえ正直落ち込む事実だ」

 苛立たしげに、頭を掻く。

 刹那が言うように、海人の男としての魅力についての判断材料は過去の経験からだ。
 これまで海人が付き合った女には、唯一人を除き全てに裏切られている。
 ある時は酒に睡眠薬を盛られ自分を解剖したがっていた者に売り飛ばされそうになり、
ある時はデート先に自分を狙っていた暴力組織の戦力が待ち構えており、
またある時は手料理に毒を盛られ解毒剤が欲しければ研究成果を寄越せと脅された。
 
 言うまでもなく、どれも能力を知った上での行動だ。
 そして一度の例外もなく、お前にそんな魅力があると思っていたのかと冷笑されている。

 報復として相手を人体実験の材料にしたり、暴力組織諸共まとめて爆殺したり、
盛られた毒を密かに手持ちの薬で解毒した上で相手の隙を突いて新作の猛毒を飲ませたりはしたが、
それで何が変わるわけでもない。
 逆転されてから掌を返したように愛を語られても白々しいだけである。
 まして、それが嘘だと表情から読み取れるなら尚の事。
 
 自覚はしていても、あまり触れられたくない話であった。

「そうなのですか?」

「当たり前だろーが。私の能力を重々承知で、なお私を殺そうとしたり捕獲したりするような手合いばかりだったんだぞ?
男としてはほぼ終わってると言って差し支えあるまっつぅっ!?」

 海人の言葉は、途中で遮られた。 
 彼の額に打ち込まれた、刹那のデコピンによって。

「寝惚けた事を仰らないでください」

「なに?」

「海人殿の能力を承知の上で殺害や捕獲に動く女ばかりだった?
そんなのは単に破滅的に女運が悪かっただけでしょう。
貴方という人間を知った上で害する選択を取るならば、それはただの度し難い大馬鹿。
リスクの大きさも安全策による利益の大きさも計れない愚か者の判定がそんなに重要ですか?」

 海人の頭を両手で抑えながら、覗き込むように諭す。

 刹那からすれば、海人の劣等感はあまりにも愚かしい話だ。

 海人の能力は、その気になれば世界を手に入れかねないもの。
 それは付き合いの浅い自分でも分かる事であり、一時的だろうと海人の恋人に収まっていた人間ならば分からぬはずがない事だ。
 さらに、現在でさえ海人は身内には非常に甘く、さして付き合いの深くない知り合いにも助力を厭わない。
 かつての海人であれば、自分の愛する女の為であればそれこそ力を惜しむ事は無かっただろう。
 ならば、彼の心を手に入れた女がやるべき事は、ただ彼の愛を受け入れその関係を続ける事。
 それは悪女であっても同じ事だ。むしろ、欲望が強い者ならば尚の事彼を切り捨てるべきではない。
 ただ愛されるだけで、大概の欲望は叶えられるはずなのだから。 

 にもかかわらず、海人は騙され続けて散々な目に遭わされたという。
 
 となれば、単純にこれまで関わった女の大半が馬鹿すぎたというだけの事だ。
 普通に恋愛関係を続けていればそれだけで多くの欲望が叶えられるというのに、
わざわざそれをドブに捨てて関係を壊し、挙句金の卵を産む鶏を絞め殺すような真似をするなど、
もはや愚かしいを通り越して哀れみたくなるほどの頭の悪さだ。

 そんなゴミ女の評価を気に病む必要など、どこにもない。
 まだ猿に告白してフラれたと落ち込む方が価値があるというものだ。 

「む……」

 刹那の指摘に、思わず呻く。

 確かに、客観的に見れば彼女の言う通りなのだろう。
 今の海人ならともかく、かつての海人の理想的な活用法なぞ誰でも思いつく。
 それをしなかったのなら、彼を低評価したのは見る目がなく、先の読めない女達だったという事だ。
 その後海人が積み上げた実績も、それを裏付けている。

 確かに、そんな連中の評価を気にするのは馬鹿げているだろう。
 無論、言われてすぐに割り切れるものでもないが。
 多感な時期に摩り込まれ、染みついている認識なのだ。

「もっとも、そんな連中に惚れた貴方の見る目のなさは猛省すべきでしょう。
もっとも、誰も受け入れてくれず弱っていた時期に言い寄られて碌に考えずに騙されたのだとは思いますが」

「……ふむ、よくそこまで当てられたな。正直、君を侮っていたかもしれん」

「これでも海人殿の事はしっかり見ているつもりですので。
それを元に予想すれば、この程度は当てられるかと」

「そうか。ちなみに、それで思いっきり反省して二度と騙されないようにと思い、
嘘を見抜く技術を開発したんだが、それは気付いたか?」

「そうだろうな、とは思っていました。
昔の海人殿の性格を想像するに、開発を思い立ってから始めるまでに、さらに何度も騙されているのではないかとも思いましたが」 

「……意外に、君も意地が悪いな」

「そんな光景が透けて見える程、今の海人殿もお人好しだという事です。
それゆえに、あそこまで完璧な技術を確立してしまった事で生じたであろう弊害も予想できますが。
陥った人間不信はさぞ深刻だったのでは?」

「……そこまで御見通しか。これは本当に侮っていたなぁ……」

 肩を竦めながら、自嘲する。

 嘘を看破する為の技術を開発した時、海人は喜んだ。
 これでもう騙されずにすむ、ちゃんとまともな友人や恋人を作れる、と。
 物騒な事からは逃げ切れずとも、未来に希望を持てる、そう思っていた。 

 それからが、新たな地獄の始まりだとも知らずに。

 それまでは笑顔で近付いてくる人間を疑ってはいても、それに救われてもいた。
 心外極まりない陰口を叩かれたり、人種や年齢などで面と向かって罵倒されたり、
そんな事が日常茶飯事だったので、疑念はあれど笑顔は救いだったのだ。

 それが、その技術によって全て反転した。

 完成させた技術と話術を駆使して悟られぬよう調査した結果、
笑顔で近寄ってきている人間こそが一番悪意に満ちていたと判明したのだ。
 それは直接的に人種差別をしてくる人間や陰で馬鹿にしている人間が善良に見える程に、
醜悪極まりないおぞましさに満ちていたのである。
  
 時折海人を気遣うような事を言っていた研究者はその実海人の研究成果を奪おうと狙っており、
当時の自宅の隣人はその年で自立しているのは偉いと褒めながら、陰で海人を暴力組織に売り飛ばす算段をしていた。

 違う人もいるはず、そう思って確かめ続けたが、結果が変わる事は無かった。
 ひょっとすると技術の方が間違っているのかもしれない、そう思って隙を見せてみたら後ろから襲い掛かられた事もあった。  
 
 結果――――海人は深刻な人間不信に陥った。

 妄想でも何でもなく、事実として周りにいる人間が全て悪意を持っている。
 新たに現れた人間さえも例外なく、海人に何らかの強い悪意があるのだ。
 これでは恋人はおろか、友人を作る希望すら持てない。

 そんな現実に耐え切れず、ならば初めから誰も信じなければいいと思ってしまったのである。

「おそらく、人間不信の状態はある意味楽だったのでは?
裏切りを前提に行動していれば、リスクは最小限に抑えられ、いざ裏切られても予定通りでしかありませんから」

「そうだな……確かに、そうだった」

 海人の顔に、自嘲めいた色が浮かぶ。

 刹那が言うように、人間不信に陥った時は楽だった。
 それが正しい世界との付き合い方だと思い込んでしまう程に。

 元から悪意をぶつけてきていた人間は、気にならなくなった。
 どうせ何を言っても、何をやっても罵倒されるならば初めから理解など求めなければいい。
 自分の研究による余波など考えず、好きな研究をしてその成果を好きなように使えるのだからそちらの方が合理的だ。
 そのせいで多くの人間がノイローゼに陥り、場合によっては発狂死していたが、知った事ではないと割り切れた。

 笑顔で陥れようとしていた人間には、やんわりと距離を取った。
 どうにか疑念を捨てて歩み寄ろうとなど考えなければ、危ない目にはあわない。
 どうせ自分が心を開いたところで、相手は心を開くどころかそれを利用して陥れる事しか考えないのだから、それでいい。
 焦れて強硬策に出た者もいたが、策に嵌まるフリをして逆に陥れてやればよかった。
 以後たまに同僚や隣人の射殺死体が出るようになったが、何の感慨も湧かなかったのだ。
 
 そこから徐々に裏社会で白衣の魔王だの幼き蹂躙者だのと囁かれ始めたらしいが、
結果としてそれが抑止効果を生じ、それまでよりも平穏な生活が訪れた。

 人間不信に陥り非情になってようやく、海人は平和を手に入れたのだ。
 
 ――――心の中で、何かが泣き叫んでいる声から耳を背けつつも。     

 そんな事を思い返していると、刹那が柔らかく海人の額を撫でた。

「拙者としては、そこからどうやって立ち直ったのかが気になるのですが。
喜びもない代わりに苦しみもない、そんな環境から脱するのは並大抵ではないはずです」

 じっと海人の目を見ながら、訊ねる。

 人間不信の状態は心を通わせる事による喜びがない反面、裏切られるという苦しみもない。
 喜びのない人生など、と言う者もいるだろうが、海人のように裏切られ続けた人間は、
喜びと引き換えにしてでもそれを無くしたいと思う事が多いだろう。 
 寂しくとも苦しい思いだけは無くなるのだ、と。

 それを脱するのは、並大抵では無理なはずだ。 

「色々と要因はあったが、土台は両親だな。
あの二人が子供の頃胸焼けする程に愛情を注いでくれたからこそ、
人間というものに完全に絶望はしなかったんだと思う」
   
 懐かしむように、目を細める。

 海人が人間不信を脱したのは、そこから直接引き上げてくれた人間や極稀にあったささやかな善意なども大きかったが、 
なによりも幼い頃確実に愛してくれた人間がいたという記憶によるところが大きい。
 だからこそ化物と知りつつも愛されるという希望を心の底で持ち続けられたし、
本当に人間という生き物に絶望する事はせずに済んだ。

 あれがなければ、人間不信から引き上げられる前に潰れていただろう。

「つくづく、良い御両親だったのですね」

「ああ、それだけにそれに見合う人間になれたとは思えんのだがな……」

 ふ、と溜息を吐く。

 才に恵まれた自分が、最高の両親にも恵まれた。
 金銭面でも豊かだったので、この上なく恵まれた存在だったはずだ。

 そのなれの果てが、今の自分。

 親の言いつけを無視して自ら災厄に突撃して人格を歪め、
数多の画期的な研究成果と引き換えに多くの不幸を生み出した。
 そのあげく、自分の妻子すらも己の傲慢と油断で死に追いやった男である。

 その後この世界で結果として命も救っているが、それでも今の自分があの両親に見合った男になれたとは思えない。
 この先も自分の性格を考えればなれるかどうかは疑わしいだろう。
 
 そんな事を思っていると、刹那が気遣わしげに口を開いた。

「どういう意味でしょう?」

「……すまん、忘れてくれ。今はまだ全てを話す気にはなれない」

「いつかは、話して下さるのですか?」

「ああ、そのつもりだ」

「では、それまで待たせていただきましょう。ですが、一つだけ」

「なんだ?」

「前にも言った事ですが、拙者はこの先も貴方と共にありたいと思っています。
それは貴方の過去に何があったとしても変わる事はありません。
例え過去に地獄に落ちる他ない罪を犯したのだとしても、
そしてこの先そんな罪を犯したとしても――――拙者は貴方と一緒ならば喜んで地獄に落ちましょう。
どうかそれだけは、忘れないでください」

「……分かった。ありがとう」

 優しく額を撫でる刹那の手の感触を感じながら、海人はゆっくりと頷いた。 



















 ローラとメイベルは、ワインとつまみを楽しんでいた。

 ワインは、赤、白、ロゼ、さらには極甘口の物まで、
つまみも丁度良い熟成状態のチーズが十種類以上に自作したカナッペ十数種と実に種類豊かだ。
 量も多く、女性二人で食べるには多すぎるように見える。

 それを、二人は瞬く間に食べ尽くしそうな速度で食べていた。
 
「う~ん、どれもずば抜けて美味しいわね~。ワインはどれも香り高くで味わい豊か。
チーズも色々揃ってるし、とんでもない贅沢させてもらってるわね」

「そうね。カイト様の気前の良さは特筆すべきものがあるわ」

 カナッペを口に放り込み、頷く。

 宿泊にあたり、ローラは高待遇を受けている。
 その内の一つが、創造魔法で作成可能な物の使い放題。
 それも補充は迅速に行い、別途要望があれば新たに好きな物を作り足してくれるというおまけ付。
 
 おかげで、ここ以外では手に入らない超高品質な酒を水のように飲みながら、
様々なつまみを楽しむという金額換算すると凄い事になる楽しみを満喫できている。

 昨日まではこの権利を使う事はあまりなかったのだが、
気兼ねなく接する事が出来る相手が来た事で、折角だからと厨房から色々と拝借したのである。
  
「いやいや、流石にこれは貴女への好意あればこそじゃない?」

「それなりに好感を持っていれば、誰にでも同じ待遇をするわよあの方は。
実際、ルミナス様達は常に同じ待遇のようだし」

「……昔の私達みたく、どこかの王宮からかっぱらってきたとかかしら?」

「出所はどうでもいいわね。追手がかかる類の話なら彼に貸しが作れる可能性が高い、
違っても美味しい物を存分に楽しめる、それだけで十分でしょう?」

「そうね。授業の度に食べてる果物とかといい、どう手に入れてるのかは気になるけど。
ところで、実際貴女どうなの? さっきカイト様が貴女の顔見ても何の反応も見せなかったって事は、
間違いなくシリル様と同じ解釈してるんだと思うんだけど……放置してるって事はあの解釈通りって事?」

 探るように、親友の顔を覗き込む。

 海人という男はメイベルをして手強い相手だし、サディスティックな性格もしているが、決して不実な男ではない。
 仮に嫌っている相手だとしても、真剣な告白には真剣な態度で返すだろう。
 それがこうも見事に何の反応もないとなると、シリルと同じ解釈をしたとしか思えない。
 それも、疑う余地もない程の確信を抱いているとしか。

 それが誤解で真意がメイベルの予想通りだとすれば、ローラの態度は妙だ。
 海人の頭を握り潰すどころか、彼を捕獲すらしていない。 

「どちらにせよ、対応は同じね。
彼があの状況で私の言葉を聞いた以上、それ以外に解釈するはずがないもの」

「……確かに、貴女を知ってる人間の大半はそう思うわよね」

 グラスを傾けつつ、溜息を吐く。

 ローラ・クリスティアという人間は、常に冷静沈着であり我が道を突き進む。
 近場でいかなる悲嘆を目にしようが眉一つ動かさず、あまりに騒がしければ拳で黙らせる。
 理由があれば部下はおろか主君たるシェリスにすら迷いなく拳を振るい、気が向けば誰であろうと悪戯を仕掛ける。
 それで反感を買おうが実害がなければ柳に風、あっても実力で蹂躙するのみと本気で手が付けられない。

 何があろうと碌に感情すら見せずに我が道を生きる人間。
 恋心などという人間味があるようには見えず、自ら告白など想像もできない。
 それが彼女を知る人間の大半の評価である。

 その評価自体は、決して間違ってはいない。
 長い付き合いのメイベルから見ても、ほとんど否定する気にならない事実だ。

 が――――それは決して正しくもない。

 ローラという人間を正確に評価するには、まだあまりにも大きな要素が欠けている。
 それを含めてこそローラという人間であり、そこを抜きに彼女を語るのは知る者からすればあまりに愚かしい。
 そこ抜きの評価だけで決めつけられてしまうのは、親友としてはあまりに物悲しい話だ。

 とはいえ、それを批難する気にはなれない。
 それどころか、ある意味では哀れにさえ思う。
 
 彼女らの評価は――――ローラの思惑通りに誘導された結果に他ならないのだから。

「勘違いしているようだけど、カイト様は私をほぼ正確に把握しているわよ。
むしろ、人格に関しては少し過大評価されているでしょうね」

「へ……? いやいや、それだったらあんな結論になるはずがないでしょ?」

「いいえ。だからこそ、あれしか結論がないのよ。今の状況で、私が恋愛なんてできると思う?」

 試すように、問いかける。

 問いを受け、メイベルは若干戸惑いながらも思考を始めた。
  
 ローラの人格と、今の状況を合わせて考える。
 この問いで重要なのは、おそらくシェリスや部下達。
 それ以外に彼女が恋愛できないなどと言うとは思えない。

 が、これといった問題があるようには思えなかった。 

 三年見ない間に、全員かつてとは比較にならない成長を遂げている。
 三年間必死で仕事をこなし続けていたせいか本人達の自覚は薄いようだが、
事務能力も戦闘能力も飛躍的に向上していた。

(まあ、それでも―――――ん? ああ、そういう事か)

 親友の言わんとするところを察し、肩を落とす。

 冷静に考えてみれば、確かに現時点でのローラに恋愛など出来そうになかった。

 三年で著しい成長を遂げた主や後輩達だが、それでもまだまだ足りない。 
 ローラがシェリスに雇われた時、人知れず掲げた目標。 
 その領域には、誰一人として到達していないのだ。

 恋愛というのは人に活力も与えるが、反面平常心を崩す元にもなる。
 より早く目標を達成出来る可能性もあるが反面、逆に遅らせてしまう可能性もあるのだ。
 ローラは、そんな博打を許容できる性格ではない。

 そして、これは彼女の目標を知らずとも、状況と性格を知っていれば辿り着ける結論でもある。

「分かったようね。加えて彼の自己評価の低さ、あの状況、諸々考慮すれば、あれ以外の結論はありえないわ。
まして、直後にルミナス様が倒れたわけだから、わざわざ他の可能性を考慮はしないでしょうね」

「なるほど……というか、そもそもどうしてバレたわけ?」

 怪訝そうに、問いかける。

 ローラの隠蔽は、ほぼ完璧な筈だ。
 彼女の行動をただ傍目から見たり、自分がそれに巻き込まれたりすれば、まず気付かない。
 数少ない尻尾を掴まれそうな出来事でさえ、知らずに見れば誤解を加速させるだけなのだ。

 例えば、ゲイツがローラを恐れるようになった一件。
 
 本当の意味でローラを知っている人間からすれば、まるで違った評価になるのだが、
知らずにあれを見れば残虐極まりない魔女にしか見えないだろう。

 肉体的な怪我は、当分まともに起き上がれないレベル。
 精神的な怪我は、女を見ただけでその怪我の痛みすら忘れて全速力で逃げ出すレベル。
 ついでに言えばそれを刻み込んでいる間、止めに入ろうとしたスカーレットも一撃で沈められ、
一連の光景を見ていただけの後輩一同でさえ、腰を抜かして動けなくなっていた。

 そんな調子だと言うのに、短い付き合いの海人が気付くというのは意外な事この上ない話だった。

「少し前にしくじったのよ。
まあ、どちらかと言えば初対面の悪印象さえ乗り越えて見極めたカイト様を称賛すべきかもしれないけど」

 静かに、グラスを傾ける。

 海人がローラの性格に気付いた時の事は、正直意外だった。
 ガーナブレストに赴く際、根拠はないものの妙に嫌な予感がしたので自分が不在の間の協力をルミナスに要請したのだが、
シェリスに勘付かせぬ為に秘密裏に依頼したのが仇となったのだ。
  
 とはいえ、依頼時点ではリスクなど0に近かった。
 ローラを知るルミナスやその知り合いだけであれば勝手に勘違いする可能性が極めて高かったのだ。
 そして事実、概ねその通りになった。

 予想外だったのは、依頼時点では彼女の周囲に存在していなかった海人。
 彼だけは、話の状況から迷いもせずに真実を見極めてしまった。
 初対面で武器で脅しをかけて無理に協力させた為、悪印象が強かったはずにもかかわらず、だ。

 時間的には短い付き合いなので多少先入観が弱かったというのもあるだろうが、
それにしてもあの程度の話で看破するのは尋常ではない。   

「ふーん……シリル様達が知らないって事は、黙ってくれてるのね」

「ええ。口止めはお願いしたけど、元々他言するつもりはなかったようね。
それとなく印象を和らげられるようにしようとは思っていたみたいだけど」

「……やっぱり、良い男よねぇ」

「そうね。これまで私が会った中では最高の殿方だと思うわ」

 メイベルの評価に、淡々と相槌を打つ。
 どこか弾んだようにも聞こえる親友の声音に、メイベルは半眼を向けた。
 
「……どー考えてもシリル様の解釈は激しく間違ってる気がするんだけど?
その貴女のお母さんが好んで着てたって服の事も考えると余計にね」

 問いながら、絶世の美貌を包む衣装を観察する。

 白の襟付きシャツに、紺のタイトパンツ。
 この衣装は、かつてローラの母が好んで着ていた物だと聞いている。

 ――――世界で一番美しかった、ローラにそう言わせるほどの女性の衣装だと。

 かつてなら色気のある話には程遠かったが、現在ならむしろそちらにしか思えない。
 全てが終わり、己の名で生きている今のローラならば。

「どうかしらね? 今の私の容姿で母と同じ衣装なら、
あの不変不動のカイト様にも悪戯として通用する、そう思っただけかもしれないわよ?」

「ルミナス様達がいる中、素性がバレる可能性を高めてでも?」

 ふ、と鼻で笑う。

 ローラの衣装は、質はともかく物自体はどこにでもある平凡な服装だ。
 それこそ大きな町を歩いていれば、似たような服を何人も見かけそうな程に。   
 
 が、これにローラの美貌と怪物的な戦闘力が加わると、状況が変わる。
 
 重装備を纏っていても容易く死が訪れる戦場において、最前線を普段着で渡り歩いた女。
 まるで町中を散歩するかのように、数多の軍隊を壊滅させていった歩く災害。
 一切の慈悲を持たず徹底した殲滅を好むがゆえに、通った後に残るのは屍一つ残らぬ焼け野原。
 死を厭うならば、何があろうと関わる事なかれ。

 そう畏怖され、絶望の象徴とされたある傭兵の姿が連想されかねないのだ。 
 
「私の実在は現役当時でさえ疑問視されていたもの。
それに名前から何から相違点が多いわけだし、そうそう気付かないでしょう」

「……ま、そういう事にしておいてあげましょうか。
にしても、貴女にそこまで評価されるぐらいなのに、どうしてカイト様は自己評価があんなに低いのかしらね?
過去に女絡みで痛い目をみたって言っても、それだけであそこまでなるものかしらねぇ……」

「……そうね、それだけならああはならなかったでしょうね」

「何か知ってるの?」

「多少ね。まあ、自分で考えなさい」

「む……少しけち臭くない?」

「推測もかなり混ざるもの。そんな内容をべらべら喋るのも品がないでしょう?」

 唇を尖らせる親友を眺めながら、次のワインを注ぐ。

 推測とは言ったものの、実際はほぼ確信している。

 海人が現在の自己評価に落ち着いてしまった最大の理由は、おそらく妻の死だ。 
 死因は知らないが、病死、事故死、他殺、自殺、どんな理由にせよ彼女は既に故人である。
 あの海人が最愛の妻の死を座して見ているはずがないのに、だ。

 救えなかった、あるいは防げなかった、その無力感は尋常ではなかっただろう。
 なまじ優れ過ぎた能力があるだけに、その絶望もさらに深くなったはずだ。
 これほどの能力を持ちながら、みすみす死なせてしまったと。

 その無力感や喪失感が、あのあまりに事実とかけ離れた自己評価に繋がっている可能性は高い。
 そして推測だが、それをさらに加速させた要因がある。 

(……真に逸脱した才は、自らの心すら殺す。因果なものね)

 グラスを傾け、苦い思いごと飲み下す。

 基本的には鷹揚かつ尊大で、常にどこか余裕を感じる海人だが、時折強い陰が覗く。
 これまで見た中で一番大きかったのは亡き妻の話が出た時だが、それ以外にもある。

 それは彼の得意分野である知力系の話が絡んだ時。
 基本的に楽しげに話を進めているのだが、一定条件が揃うと一瞬だが陰が見えるのだ。
 その中には己の能力を称賛されるなど、本来喜色が見えるはずの場面も含まれている。
 本当に一瞬なので表情の詳細な分析は出来ていないが、見当はついていた。
 
 ――――あれは、諦観だ。 
 
 誰一人として、自分には届かない。
 そればかりか、追いかけてすらくれない。
 そんな紛れもない傲慢でありながら、あまりにも悲しい諦め。
     
 どんな分野でもそうだが、競合相手の存在は重要だ。
 いなくとも成長は出来るだろうが、いれば追いつかれてなるものか、と伸びが速くなる。
 これがいるといないとでは、成長に大きな差が生まれるし、何よりその道を邁進する活力が違う。
 実際、部下達にもそれを意識させる事で成果を挙げているので間違ってはいないはずだ。

 ただ、その競合相手は必ずしも自身に匹敵する才能の持ち主である必要はないが、
絶対に欠かせない条件がある。

 ――――本気で張り合おうとする、という事だ。
 
 相手が本気で張り合ってくればこそ、切磋琢磨できる。
 才にどれほどの差があろうと、油断をすれば抜かれるかもしれないと気が抜けなくなる。
 結果、己の精進に掛ける情熱が自然と跳ね上がる。

 が、才能がありすぎる人間だと、そんな相手はなかなか見つからない。
 一の労力で一の成果しか生み出せない人間が、一の労力で百の成果を生み出す人間に本気で張り合うには、
強靭極まりない精神力が必要となるのだ。

 まして、海人だ。

 ローラが知っている限りの情報でさえ、史上最高どころか空前絶後であろう、化物研究者。
 その才覚の付随品程度でしかないはずの教授能力でさえ、匹敵しそうな人間すら存在しない規格外。
 知が絡んだ勝負では、おそらく誰一人として相手にならないであろう、真性の魔人。
 こんな化物に本気で張り合おうと考える人間なぞ、そうそういない。
 僅かにいるかもしれない酔狂者も、普通は一日で心が折れるだろう。
 
 ゆえに――――自信も、今の比ではなかったはずだ。

 競合相手はおろか、追いかけようとする人間すらいない。
 そんな環境は強い寂寥感の裏で過信を育み、自身の能力の絶対性に対する確信を強めていたはずだ。
 それこそ、その気になれば出来ない事は何もない、という程に。
   
 当然ながら、その絶対が打ち砕かれた際の衝撃は常人が感じるそれとは次元が違っただろう。 
 その過信を同時に自覚してしまいでもすれば、事実はどうあれ苦しみは倍加したはずだ。
 せめてあの過信さえなければ、と。

 この考えを補強するような態度も、海人は見せていた。

 今日メイベルがローラに挑んだ時、視線に混ざった羨望。
 完膚なきまでに打ち負かされたシリルが折れる事無く気炎を上げた際に見えた、安堵。
 どちらも僅かな時間だったが強烈なものがあり、これまでそういう存在がいたにしては過剰な反応だった。 

 やはり、この考えが間違っているとは思えない。

(……そう考えるとまだ恵まれていたのでしょうね、私は)

 まだ恨めし気に見つめてくる親友に、少しだけ視線を返す。   
   
 己の人生が素晴らしい、などとは思わない。
 歩んだ道そのものに今更後悔はないが、歩みたかったわけでもないのだ。
 今の記憶と力を持って過去に戻れるのなら、今からでもやり直したいぐらいである。   

 が――――仮にそんな事が出来たとしても、実際はやり直しを躊躇するだろう。

 これまでの人生あればこそ、大事な出会いもあった。 
 それは数多くどれも捨てがたいが、今思い浮かぶのは一人の馬鹿女。
 十五年以上の長きにわたり、懲りずに自分に挑み続ける不屈の精神の持ち主。
 才の不足は重々承知でありながら、知った事かと挑み続ける執念深き挑戦者。
 
 ――――この世で唯一、ローラが親友と認める人間との出会いだ。

「……どうかしたの? 随分穏やかに見えるけど」

「なんでもないわ。片付けは私がしておくから、貴女は早く寝なさい。明日も仕事でしょう?」

「ま、ね。ちょっと強引に時間作ったから忙しくはなりそうだわ。
誰かさんに挑発かまされたせいな気もするけど」

「のったのは貴女の勝手ね。そうそう、これを持って行きなさい」

 ポケットから海人の彫刻を取り出し、手渡す。
 今日見た中で最も複雑な技巧を施されたそれに、メイベルが思わず目を見開く。

「……これが、カイト様の本気?」

「一番複雑な物を、と注文はしたわね。
サンプルとしてシェリス様に見せた後、有効に活用しなさい。
このタイミングで来たなら、あの人身売買の案件を押し付けてきたんでしょう?」

「……貴女がこっちに来た時には証拠は揃ってなかったはずだけど?」

「時間の問題だったし、状況証拠はこれでもかと揃っていたでしょう? 
あれで事実無根だったら太陽が西から上るわね」

「ま、確かにね。分かったわ。
状況を見越してた姉貴分に見捨てられ、実姉に仕事押しつけられた可哀想な子に渡しておくわ」

 クスクスと微笑みながら、渡された彫刻をポケットにしまう。
 そしてゆっくりと歩き始め、部屋のドアを開けると足を止めた。

「……ねえ、ローラ」

「何?」

「私は、もう良いと思うわよ? 
私達も多少伸びたし、あの子達もある程度は育った。
今の仕事量を含めても、貴女が全部背負わなくてもなんとかやっていけると思う。
もしまだ足りないんだとしても、量こなしてれば遠からず十分な処理能力に達するはずよ。
だから……そろそろ、自分の幸せを求めてみたら?」

 そう言い残すと、メイベルはゆっくりと部屋を出た。
 自分の言葉が頑固な親友の心に、少しでも響いてくれる事を祈りながら。
  
「…………」

 メイベルの言葉を聞いたローラは、数瞬手を止めていた。
 軽く目を瞑り、何事か考えているかのようだ。

 が、彼女はその後小さく息を吐くと、すぐに片付けを再開した。
 まるで、何事もなかったかのように。  









 しばらくして、ローラの休暇が終わる日が来た。
 元々の荷物は少量だったはずだが、お土産にと持たされたカレーの寸胴などで来た時の五倍以上の荷物を抱えている。  

「では、御世話になりました。おかげさまでじっくりと休む事が出来ました」

「うーむ、極力休めるよう協力したつもりではあるが……本当に休めたか?」

 気遣わしげに、訊ねる。

 なんだかんだで、ローラはここでゆっくりしている時間は長くなかった。
 屋敷の清掃や洗濯は勿論、時折庭の雑草取りなどもやっていたし、
海人の芸についても抜かりなく調べ続けていたのだ。

 日頃の激務に比べれば万倍楽だったろうが、休めたかどうかは少々疑わしかった。

「ええ。ゆっくり休め、十分な収獲もあり、と実に有意義な休暇でした。
よろしければ、次の休暇も滞在させていただきたいのですが」

「……ま、構わんがな。ただし、今回レベルの対価寄越せとまでは言わんが、
菓子の手土産ぐらいは持ってきてくれ」

「あら、その程度でよろしいのですか?」

 意外そうに、僅かに目を見開く。

 同等の物を持ってこいとまでは言われないと思っていたが、
まさか菓子程度での手土産で済ませてくれるとは思わなかったのだ。

「私としてもそれなりに楽しめたからな。
もっとも、地下室などは変わらず立ち入り禁止だぞ?」

「承知しております。では、機会があればまた何か自作のデザートを持ってお邪魔させていただきます」

「うむ、期待させてもらおう。では、明日から仕事頑張ってくれ」

「はい。では失礼いたしま――――そうだ、一つ忘れておりました」

 踵を返しかけたローラが、振り返った。
 同時に背負った寸胴も回転し、軽い風が巻き起こる。

「ん? 何か忘れ物か?」

「はい、かなり重要な忘れ物です」

「なら、早く取りに――――」

 海人の言葉の途中で、ローラが動いた。

 その動きは、あまりにも自然。
 この場に並び立つ超人達に反応を許さぬ程に、完璧な足運び。
 海人のすぐ横に護衛として立つ刹那でさえも反応できない、そんな体技。
 
 それによって海人との距離を詰めると、ローラはするりと彼の頭に腕を伸ばした。
 意識の空白を突く見事すぎる動きに、誰一人として反応できない。
 両手で頭を引き寄せられている海人でさえも。

 そして、海人とローラの顔の距離が零になった。 
 
「――――なっ、なあああああああああっ!?」

 一早く我に返ったルミナスの絶叫が辺りに木霊する。
 驚きのあまりか、彼女の口はかつてないほどに大きく広げられていた。

 それに釣られるように周囲も似たような声を上げるが、
ローラは気にした様子もなく海人に口づけを続けている。
 されている海人でさえも、あまりに意外な状況に混乱し、ただ目を白黒させているだけだ。  
 
 そうして撒き散らした混乱が収まる頃、ようやくローラが海人を解放した。

「――――初めてよ。意味は自分で考えなさい、鈍感男」

 目を見開いて呆然としている海人にそう言って、彼から離れるローラ。
 自然、彼女へと周囲の視線が集中する。

 ――――それによって、また周囲の時が凍てついた。

 そこにあったのは、笑顔。
 目の錯覚ではないかと疑う程に稀少な、ローラの笑顔だ。

 無表情ゆえに生気に欠けていた顔に、太陽のような生気が満ちていた。
 そればかりか、全てを包み込むような慈愛すらも満ち溢れている。
 無機質だった絶世の美貌に温かさが加わり、強烈過ぎる程の魅力を放っていた。 

 その魅力たるや、ローラの私服を見て動じなかった海人でさえも、見惚れてしまっている程。
 周りの女性陣など、顎が外れんばかりに大口を開け、呆気に取られている。

 そんな彼らの反応に構わず、ローラは一礼して身を翻すと、何事もなかったかのように歩き去っていった。 

 その場に、数瞬後に起きる阿鼻叫喚の大騒ぎの元だけを残して。
 自らの唇を、愛おしげに撫でながら。



コメント
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[2015/09/07 08:06] | # [ 編集 ]


思わず「なん…だと…」て言ってしまうぐらい怒涛の恋愛展開でした。ルミナスの自覚に刹那の良妻っぷりにローラの遠回しの告白に……果たして海人はどういう結論を出すのか気になりますね。
まあ、先の話でしょうが。


追伸
恋愛と言うことでバレンタインネタとかいかがでしょうか?
[2015/09/07 08:48] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


ええ!?演技だったの!?
そりゃないよローラさん……から一転、ラストで悶えました
もっと進展してくれー!
[2015/09/07 08:59] URL | イオ #- [ 編集 ]


うっわぁ、引っ掻き回したわりにはあんまり回収しないまま8章が終わるのかい!


彫刻のシェリスの反応とかは次章枠でいいですけど、これで一年後までにくるかわからない9章の最初で回収されるまでおあずけかー……まあいいや、執筆おつかれさまでした。


正直超人どもの言葉遊びには読者はついていくのが難しいですな。場にメイベルがいればカイトの鈍感解釈にばかり流されないんでしょうけど。
[2015/09/07 12:16] URL | エゾスグリ #HxK6MxNI [ 編集 ]


今回も楽しく読ましていただきました。
特に今回は最初からニヤニヤが止まらないほど恋多き話でした。
最後ではついにローラさんの本気が見えましたね。
他の女性陣には頑張ってもらいたいです。

次回もたのしみにしています!
頑張ってください。
[2015/09/07 14:01] URL | 高2で厨二 #- [ 編集 ]


――――なっ、なあああああああああっ!?
思わず、叫びそうになりました!
ローラ好きの私にとって、前回は最高の回でしたが、まさかその上があるとは!?
主人公が鈍感なせいで、ローラはプロポーズをスルーされるは、女の方からキスさせられるは散々な辱しめを受けたわけですから、これはもう男として責任を取らなきゃダメですよね!!
[2015/09/07 21:35] URL | #- [ 編集 ]


私はローラよ!いつだってローラなのよ!(錯乱)

何を書けば良いのか分かりませんが、ただ一言

神回でした!!
[2015/09/07 21:57] URL | マイキー #- [ 編集 ]


まさかの恋愛面急展開( ゚д゚)
[2015/09/07 22:06] URL | #- [ 編集 ]

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[2015/09/08 01:32] | # [ 編集 ]


おいおいおいおい……なんだよこの圧倒的なヒロイン力は……ルミもロラもセツも


……駄目だ、他にも何か言おうとしたけど言葉出てこないわ
[2015/09/08 04:40] URL | #- [ 編集 ]


えらいことになってきたw
読んでて楽しい展開だ
[2015/09/08 18:20] URL |   #- [ 編集 ]


内容としては面白い部類に入るんですが、相変わらず会話のテンポ悪いなあ……
(1.台詞→2.長々解説→3.台詞(応答)。私的意見ですが2の部分は1と同程度の長さに留めといた方がいいかと。まあ会話に限りませんが

あと認証用キーワードそろそろ鬱陶しいです。管理人の認証制は無問題ですがこれくらい取止めれませんか?
よく知りませんが管理人の認証制にするには認証用キーワードが必須とかならスルーして下さい
[2015/09/08 19:48] URL | #- [ 編集 ]


再読中に疑問に思ったので質問します。
見逃していただけならすいません。時計関係の表記を見てないと思うのですが、この世界にあるでしょうか?(日時計などは除く)
また、在るとしたらどのようなものまであり、無いとしたら今後作るかどうかをお教えください。
教えていただけたなら幸いです。
次回の更新もお待ちしています。
[2015/09/08 22:29] URL | fuji #viWYSvG2 [ 編集 ]

開戦だ!
海人争奪戦、今、始まる!と言いたいところですが、
妻は一人だけにする必要もないような気がします。
単にチートで無双するような主人公と違って、
海人には、なんとなく、この世界の貴族のように
複数の妻がいっても違和感がありませんね。
海人はそれだけの器があって、
複数の妻がいても皆隔て無く愛せると思います。
それに今のところの妻候補もみんな超人過ぎて魅力的で、
ぶっちゃけると、一人だけを選ぶのは非常に難しいです。

つまり、ハーレムまでとは言わないが、
将来複数の妻という展開も考慮に入れてください。
そして番外編でイチャイチャさせてください。
最後のローラはすでにあの破壊力だから、
本当にデレになったらどうなるやら想像もできません…でも見たいです(苦笑
[2015/09/09 05:04] URL | ホセ #- [ 編集 ]


ローラさんはやっぱり最高ですね!
無表情と笑顔が両方そなわり最強に見えるw
主人公も人の裏を疑ってばかりですが、周りの女性陣もローラの裏を疑ってばかりで、人のことを責められたもんじゃないですねw
[2015/09/09 15:49] URL | ローラ好き #- [ 編集 ]


『ズキュウウウン』と効果音が鳴った気がしましたw
最強のメイドさんだけあって時を止める程度の能力は標準実装してるってわけですねw
さすがローラ!おれたちにできない事を平然とやってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!
[2015/09/09 23:39] URL | ロードローラ #- [ 編集 ]


面白かったです。
土下座して問題を解決て26才の女性が言うことじゃねー。とてつもない違和感があるかも
[2015/09/11 03:44] URL | Aaaaaa #- [ 編集 ]

長文失礼します
海人の能力であれば、ローラが彼の『性格上の美点』を好ましく思っていることが嘘ではないと分かっているはずですが、にもかかわらず、ローラの『生涯添い遂げてもいい』を情熱的な言葉でも告白でもないと評する今の海人は最低な『ゴミ男』だと思いました。なぜなら、絶世の美貌をはじめ余人の及ぶところではない才能を持ったローラは、この世界に生まれた海人とも言える存在で、その能力の高さゆえに彼女の言動を素直に受け入れられない海人達は、海人の世界で彼を受け入れず否定した『ゴミ女』達と何も変わらないと考えるからです。
(ローラの普段の言動に問題があると海人達を擁護するのは簡単ですが、であれば、海人の普段の言動に問題があったと『ゴミ女』達も擁護すべきでしょう。『ゴミ女』達には人の嘘を見抜く能力もないわけですし、なおさら海人のような超人を受け入れられなくても仕方がないでしょう)

今回、策を弄さずとも主人公を殺せる人間が、必殺のタイミングで命ではなく唇を奪った(直接的に好意を伝えた)わけですが、人間不信の主人公の心情に影響を与える重要な回であったのではないかと思います。
願わくば、主人公が自分がされて嫌だったことを自分と同じ存在にやり返している『ゴミ男』状態から脱却し、彼女を受け入れる器を手にしてほしいものです
[2015/09/13 17:37] URL | 黒 #- [ 編集 ]


ローラ最高! 
オリジナルや2次創作のweb小説読み漁ってますがダントツで好きなヒロインです
是非彼女には海人と結ばれてほしいですが刹那も好きなのでそこが悩みどころですねぇ
まあ中世的世界の異世界物は一夫一妻にこだわる必要はないですしヒロインたちが全員個性的かつ魅力的なので一夫多妻でも数合わせ的要員はいないのでありだと思います
[2015/09/14 20:30] URL | #- [ 編集 ]


海人の能力は、その気になれば世界を手に入れかねないもの。
 それは付き合いの浅い自分でも分かる事であり、一時的だろうと海人の恋人に収まっていた人間ならば分からぬはずがない事だ。
 さらに、現在でさえ海人は身内には非常に甘く、さして付き合いの深くない知り合いにも助力を厭わない。
 かつての海人であれば、自分の愛する女の為であればそれこそ力を惜しむ事は無かっただろう。
 ならば、彼の心を手に入れた女がやるべき事は、ただ彼の愛を受け入れその関係を続ける事。
 それは悪女であっても同じ事だ。むしろ、欲望が強い者ならば尚の事彼を切り捨てるべきではない。
 ただ愛されるだけで、大概の欲望は叶えられるはずなのだから。 


確かに理屈としてはあっているように聞こえるけど2つ気になりますね。

1つ目は、その程度のことも気づかないような人間が、シリルから気品と良心抜いて二倍性質悪くなったのが平均とか言われるような悪巧みをできるとはおもえないからわかったうえで何か理由があったとしか思えませんね。


2つ目は、「いいえ。だからこそ、あれしか結論がないのよ。今の状況で、私が恋愛なんてできると思う?」とローラが言った理由ですね。

ローラの目標が何かはわかりませんが、それこそカイトの協力があればたいていは叶うはずだしカイトと恋愛して好感度を上げて目的に協力してもらうのはかなり友好な手段のはずそれなのに恋愛と目標が両立しないとか恋愛とシェリスのところでの仕事が両立しないと考えている理由がきになりますね。
[2015/10/10 22:10] URL | シャオ #xDU5tAck [ 編集 ]


神回だわ
次がめちゃくちゃ気になる。
[2015/10/11 16:45] URL | ころっこ #O5mp8qzk [ 編集 ]


ローラ可愛すぎて久々に1話から読み返しました。
初めてよ。ってセリフが追加されてて余計ヤバくなった。
あれ?追加されてたよね?見落としてたんじゃないよね?

次回更新も楽しみにしています。
[2015/10/12 03:37] URL | #- [ 編集 ]


ちょっ、加筆するたびにローラの破壊力(ヒロインパワー)が上がるんですが…
一気にローラに優勢になりすぎるのではないでしょうか?(汗
[2015/10/14 00:46] URL | ホセ #- [ 編集 ]


「ふーん……シリル様達が知らないって事は、黙ってくれてるのね」

「ええ。口止めはお願いしたけど、元々他言するつもりはなかったようね。
それとなく印象を和らげられるようにしようとは思っていたみたいだけど」

「……やっぱり、良い男よねぇ」

「そうね。これまで私が会った中では最高の殿方だと思うわ」

 メイベルの評価に、淡々と相槌を打つ。
 どこか弾んだようにも聞こえる親友の声音に、メイベルは半眼を向けた。
 
「……どー考えてもシリル様の解釈は激しく間違ってる気がするんだけど?
その貴女のお母さんが好んで着てたって服の事も考えると余計にね」


ここ、2箇所のシリルはシェリスの間違いでは?
[2015/11/24 03:02] URL | あき #- [ 編集 ]


最後の最後にやられました。
鈍感男・・・最高!
[2016/01/06 00:53] URL | 三毛猫 #XY/D0U3A [ 編集 ]


今章つまんねーとか思っててすみません、最後で持っていかれました。なんというローラ章。反省して一から読み直します。今後も執筆頑張ってください
[2016/01/17 09:59] URL | #6rMzUsfc [ 編集 ]


85話 誤字報告
「……どっちかっつーと能力的な評価によるところが大きくて、人格もマイナス材料とは思わないって話か。
あの人の性格考えたらそれでも十分意外だけど、確かにあんたの能力が手に入るんだったら一生使う価値はあるわよね」
つまりあんたに対するローラさんの評価であって―――」

おそらく句点を」と打ち間違えてるかと。
[2017/07/23 06:14] URL | ムク #- [ 編集 ]


>お土産にと持たされたカレーの寸胴などで来た時の五倍以上の荷物を抱えている。 
>ローラはするりと彼の頭に腕を伸ばした。両手で頭を引き寄せられている海人でさえも。

しょーもないことなんですがこの瞬間だけ荷物を下に置いたということですか?
[2018/02/10 22:01] URL | #- [ 編集 ]


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