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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄87
 二時間後、海人の屋敷では海人とシェリスの交渉が終わりつつあった。

 彫刻の独占契約の条件はきっちり細部まで詰められ、
楽器の製法や楽譜の譲渡においては金額や時期まで綿密に決められている。

 それらが記された数枚の契約書に海人がサインし、ようやく契約が完了した。

「では、これらの条件で交渉成立という事で」

「うむ、有意義な交渉だったな。
しかし、彫刻の方はともかく楽器や楽譜は本当にこれでよかったのか?」
 
 今しがたサインを終えた書類を眺め、首を傾げる。

 そこには楽器の製法などの譲渡条件が記されているが、
今重要なのはそれらの譲渡時期が来月だという事だ。

 シェリスの性格からして、早めに手に入るならそれに越した事は無いと言われると思い、
別室に楽器や楽譜を一通り揃えておいたのだが、結局出番がなかったのである。

「ええ、本当なら今日手に入れたいところなんですが、
音楽関連となると部下にかなり面倒なのが三人もいましてね。
嗅ぎつけられたが最後、新たな音楽に夢中になって仕事を放り出しかねないんです。
しかも全員部下の中でもトップレベルに有能なので、やらかされると尋常ではない悪影響が出ます」

「ああ、この間ローラ女士が言っていた音楽狂とやらか。んなに凄いのか、その三人」

「ええ、凄まじいですよ。随分前の話ですけど、仕事に支障が出始めているから、
と音楽禁止を言い渡されたらローラに三人で襲い掛かったぐらいですから」

『ぶっ!?』

 あまりの内容に、海人達主従が思わず噴き出した。

 ローラの戦闘力は、あの屋敷の中ですら群を抜いている。
 さらに、いかなる理由でも大人しく殴られるような性格ではない。
 抗議で殴りかかられたところで、仕事に支障が出ない範囲で叩きのめし、
罰として仕事を倍にするぐらいのものだろう。

 当然海人達より付き合いの長いシェリスの部下がそれを把握していないはずもない。
 
 となると、熱くなると後先を忘れてしまう類の気性の持ち主か、
結果が分かりきっててなお立ち向かわずにはいられぬ程音楽への情熱が強いかだが、
シェリスの口振りからすれば間違いなく後者だ。

 尋常ではない情熱の持ち主達という他ない。

「さらに言えば、間違いなく意識を刈り取り、手足も痺れが当分抜けないように攻撃したにもかかわらず、
その後十回程起き上がって襲い掛かってきました。
楽器を、歌を、と呟きながら立ち上がってくる様は、まるで怪談のようでしたね」 

 淡々と付け足しながら、ローラはその時の出来事を思い返す。

 全員の意識を刈り取り、手足に一時間は痺れが抜けない打撃を叩き込んだ。
 これぐらいやっておけば、起きた時に少しは頭が冷えているだろう、そう思って。
 
 にもかかわらず、彼女らは起き上がった。
 そればかりか後始末を他の部下に任せ立ち去ろうとしたローラの背後から、
かなりの勢いで襲い掛かってきたのだ。

 無論撃墜して先程よりも強めの打撃を叩き込んだのだが、彼女らはそれでも尚立ち上がった。
 完全に意識がないにもかかわらず、ふらふらと立ち上がりながら武器を握り締め、
ぶつぶつと呟きながら再び襲い掛かってきたのである。
 
「……それ、もはや人間やめとらんか?
宗教の狂信者でもそこまでの不死身っぷりは見た事ないぞ」 

「あら、そう言った手合いも縁があったんですか?」

「何度かな。神のお告げだの神意の代行だの言われて命狙われた事がある。
あの手の連中は本気で面倒なんだよなぁ……言葉が通じるようで通じない。
それに、千年以上昔の人間の教えやら物語を盲信する人間はまだ理解できなくもないが、
自分は神の化身だなどと自称する馬鹿を崇め奉る連中は本気で理解不能だ」

 嫌な事を思い出し、海人は顔を顰めた。

 様々な人間に命を狙われてきた海人だが、その中には宗教関係者、
それも狂信者と呼ばれる類の人間も混ざっていた。
 
 そして、彼らは一人の例外もなく厄介な相手だったのだ。

 例えば、こちらの過去の悪行を持ち出し、今からでも遅くないから神の教えに帰依せよと言われた時の事。
 その時の経緯をそもそもの元凶が同じ宗教の人間だという事まで証拠付きで説明したのに、心を惑わす悪魔呼ばわりされ散々罵倒された。
 その後もとりあえず可能な限り分かりやすく説明し、せめてそもそもの元凶が誰かぐらいは認めてくれといったのだが、
一切聞く耳持たず、狂ったように悪魔悪魔と連呼するだけだった。

 またある時は、神の化身である教主に捧げる為心臓を寄越せと言われた。
 一応話を聞いてみれば、神である教主が地上に降りる際、悪魔に奪われた力が海人の心臓に宿っているという。
 神たる力を発揮して世界を救う為にはその力が必要なので、心臓を寄越せという事だった。
 色々穴の多い話だったので片っ端から論理立てて説明を求めたのだが、途中でつべこべ言わず心臓を寄越せと叫び出した。
 その後も会話にならず、教主の為に、世界の為に、貴様の心臓をと繰り返すだけだった。  
 
 どちらも結局始末したのだが、その後殉教者と扱われた彼らの後に続け、と狂った連中の襲撃が繰り返され、
状況が落ち着くまでに二月を要したのである。

「あー……宗教はお嫌いですか?」

「いや、嫌っているわけではない。
それで迷惑を被った事が多いのは事実だがな。
結局のところ、私や身内に害がなければ他人が何を信じてようがどうでもいい」

 シェリスの問いに、海人はあっさりと答えた。

 宗教関係者に散々迷惑をかけられた事があるのは事実だが、それで全否定するつもりはない。
 宗教に負の側面が多いのは事実だが、なんだかんだで人類史において多くの人間の心を救っている事も事実だし、
常識的な教義の解釈で善良な生き方をしている人間も多くいる。
 
 なので殊更に嫌うつもりはない。
 自分や周囲に害が及ばない限りは、だが。
  
「なるほど……ああ、話が逸れましたね。
要は私の屋敷にあると、あの三人が知った場合高確率で暴走するのでここに置いておきたいんですよ。
今ちょっと色々立て込んでるものでして」

「……また厄介事か?」

「まだまだ不確定ですけどね。まあ、一週間ほどはのんびりしていただいて問題ないと思います。
何かあればまた連絡いたしますよ」

「ふむ……その口ぶりだと、協力せざるをえなくなるような案件かな?」

 席を立とうとするシェリスに、問いかける。

 これまでなんだかんだで厄介事の際に協力する事が多かったが、
あくまでもその方が良いと判断しただけで、揉め事に極力関わりたくない事に変わりはない。
 
 そして、シェリスもそれは重々承知のはずだ。
 事実、これまでの協力した時もシェリスから助力を求めた事はほとんど無い。
 むしろ、遠ざける努力をしてくれていたフシさえある。
  
 そんな彼女が何かあれば連絡すると言い、助力を求める様な言葉がなかった以上、
厄介事の内容は海人が関わらざるをえなくなる内容の可能性が高い。

「どちらかというと、今回はカイトさんが協力を求める案件かもしれませんね」

「……なるほど。ではすまないが、その時は頼む」

「ええ、貴方とは良い関係でいたいですし、可能な限り協力はさせてもらいます」

 深々と頭を下げる海人に、シェリスは優しい微笑みを返した。 
























 夕方、カナールの町の冒険者ギルド。
 ここはある事件で一時期人が激減していたが、最近は数が戻り始めている。
 今も酒とつまみを楽しみながら情報交換や自慢話に話を咲かせる者達が多く集い、
酒場顔負けの賑やかさだ。
 
 とはいえ、冒険者というのは基本男が多い為、華には欠ける。
 余計な揉め事を防ぐ為、給仕しているのも男だからだ。

 そんな中に、美女と美少女が入ってきた。

 当然場は盛り上がり、声を掛けようとする者、馴れ馴れしく近づこうとする者、果ては尻を撫でようとする者、
それぞれの意図で動こうとするが、顔を正確に認識した途端、全員その手を止める。

 どちらも一級品の美貌の持ち主だが、中身は化物だ。
 二流の冒険者程度秒殺出来るし、三流ならば戦闘にすらならないだろう。 
 触れれば火傷どころか命が無くなりかねない。
 
 周囲にそんな畏怖を与えながら二人――――ルミナスとシリルは受付にやってきた。

「はい、依頼の証拠品一式。引き受けたのは全部片付けてきたわよ」

「あいよ。そんじゃ検分させてもらおうか……流石エアウォリアーズ第一部隊のトップ二人だな。
ここ何日か、そこそこの難度とはいえかなりの数の仕事こなしてんのに、どれも状態が良い。
これなら報酬も上乗せだな」

 ルミナスから受け取った物の検分を終えると、受付の男は報酬を計算し始めた。
 
 手近な紙に基本の依頼料を書き連ねていき、最後に上乗せ分を加える。
 更に数度検算をして間違いがない事を確認すると、男は報酬を用意し、ルミナスに手渡した。 
 
「ありがと。で、今日は他に何か良い依頼ないかしら?」

「あるにはあるが、別の奴が確保してる。
ってかここんとこどんな風の吹き回しだ? 今までこんなにがっついて稼いでなかっただろ」

 怪訝そうに問いかける。
 
 ルミナスは冒険者としての知識や経験には欠けるが、
それを戦闘能力で補っている為、これまで仕事を依頼したい時はままあった。
 そして実際引き受けてもらえる事は多く、成果も出している。

 が、ルミナスは精力的に稼ぐタイプではなかった。
 短期間で稼げる良い仕事があれば引き受けるが、安値の依頼にはほとんど興味を示さず、
掲示板を一目見てそのまま冒険者ギルドを後にする事も珍しくなかったのだ。

 それが、ここ数日仕事の鬼と化している。
 割の良い仕事を優先して受け、その道中でついでにこなせそうな細々とした依頼を見極め、
一日で稼げる限り稼いでいるのだ。
 実際にはシリルと山分けしているので半額だが、それでも相当な荒稼ぎをしている。
 
 あまりの変貌ぶりに、興味を抱かずにはいられなかった。
 
「色々あんのよ。で、今出せるのは掲示板のあるのが全てって事でいいのかしら?」

「そうな……ちっと待て。そういや、今日来たばっかの依頼がまだ清書前だった」

 引き出しから大雑把に依頼内容が描かれただけの紙束を取り出し、次々に読み上げ始めた。
 
「犬探しで成功報酬二万ルン、場所はこの町だ」

「時間かかるし下手すりゃ町の外に出てるかもしれないのに、その額じゃ割に合わないわ」

「カナールから王都まで荷馬車の護衛。二十万ルン」

「拘束時間が長すぎる、報酬も安すぎる。次」

「ロイフル湿原のマッドサーペントの群討伐。五十万ルン」

「受けた。他は?」

「おいおいちょっと待てよ。マッドサーペントだぞ?
どこに隠れてるかも分からねえから、討伐はかなり厄介だぜ?」

 あっさりと難度の高い依頼を受けるルミナスを、思わず止める。

 マッドサーペントは湿地帯に生息する蛇型の魔物だが、かなり厄介だ。
 通常はぬかるんだ地面に潜み、獲物が攻撃範囲に入るとその牙で襲い掛かる。
 力は弱く噛まれても肉を食い千切られわけではないが、
牙には麻痺毒があり生半可な戦士では一噛みで動けなくなってしまう。
 そうして痺れさせた獲物を生きたまま餌にする、恐ろしい魔物なのだ。

 一定以上の実力者なら肉体強化を行っているだけで牙を防げる為さしたる脅威ではないのだが、
それでも群の討伐となるとかなり厄介である。
 ぬかるんだ地面の中に隠れている為姿は見えず、防御力が高い為生半可な攻撃魔法も通じない。
 結局、現実的に一番効率的なのは生息地域を歩き回り、噛みつかれた瞬間に仕留めるという手段だと言われている。

「場所のあたりつけて空から上位の火炎魔法叩き込みゃほとんど死ぬでしょ?」

 あっけらかんと物騒な事を言うルミナス。

 マッドサーペントの防御力は確かに高いが、上位魔法を受けて生き残れるほどではない。
 そしてマッドサーペントは群のなわばりが狭い為、その近隣を上位の火炎魔法数発で焼き払えば、
潜んでいる地面ごと蒸発する事になる。
 さして手間のかかる作業ではなく、これが最高効率の駆除方法だろう。

 上位魔法は並の人間なら発動前にぶっ倒れるかねない程に魔力消費が多いという問題を除けば、だが。   
 
「駄目ですわお姉さま。ロイフル湿原は薬の原料となる植物が何種類も群生しています。
比較的取りに行きやすい場所ですから、焼き尽くしてしまうとあちこちに迷惑がかかりますわ」

「あ、そうだった…………んじゃ、保留で。次は?」

「あと目ぼしいのは……ねえな。とてもお前の要求に応えられる内容じゃねえ」

「そっかー……んじゃ、マッドサーペントと掲示板にあったレウィス草とライムベルツの採取」

「あいよ。しかし、お前らの強さは分かってんだが……ちっと休んだらどうだ?
連日仕事入れすぎて、疲れであの世行きなんてのは良くあるパターンだぜ?
今受けたのはどれも急ぎじゃねえし、あんま無理すんなよ」

「……分かっちゃいるけど、ね。ちょっと止まるに止まれないのよ。
ほら、シリル帰るわよ」

 言うが早いか、ルミナスはシリルを促して冒険者ギルドを後にする。
 その背中を眺めながら、シリルはひっそりと溜息を吐いた。

(……はあ、今日の顛末を聞けば少しは改善されるのでしょうけれど) 

 




























 その夜、海人の屋敷の食堂。

 夕食を終えた海人達は、食後の御茶を楽しみながら雑談に興じていた。
 雰囲気は和気藹々としており、実にほのぼのとしている。
 皆が茶を、茶菓子を楽しみながら話に花を咲かせていた。

 が、シリルだけは疲労感を笑顔で塗りつぶすのに必死だった。
 気を抜けば、それこそぶっ倒れそうな程の徒労感に襲われていたのだ。

 原因は、先程の冒険者ギルドでの表情が信じられない程穏やかなルミナス。
 そして、その激変の原因である海人だ。
 
「なーるほど……ローラさん、今のあんたが受け入れない事承知の上でキスしたんだ」

 途轍もなく上機嫌で確認するルミナス。

 海人が受け入れないだろうとは思っていたが、実際結果が出ると凄まじい安心感があった。
 今日まで積み重なっていた肩の荷が、根こそぎ下ろされた、そんな気分だ。
 隠そうとしてはいるのだが、どうにも表情が緩むのを止められない。

 が、幸いな事にそれを見られたら困る相手は、俯いて頭を悩ませていた。

「らしいな。しかも当然ながら諦める気配は皆無ときた。
どうしたもんだかなぁ……」

「気にしなくていいんじゃない? あんたはちゃんと答えだしたんだし、
それで諦めるかどうかはローラさんの勝手でしょ?
そこまで覚悟決めてる以上易々と諦めるとは思えないし。
ってか、実際どうなのあんた? 少しは揺らいでたりするの?」

「いや、現状は尊敬できる女性止まりだな。
気は合うし、好感は強いが恋愛感情に発展するかどうかは分からん」

「発展しないとは言わないんだ?」

「んなもん断言できるような事でもないからな。
性格の相性は良いから可能性は低くあるまいが、
今の感情から恋に発展する気はしないのも事実だ」

「へえ、じゃあ……」

「ルミナス、色恋沙汰に興味があるのは仕方ないが、あまり詮索するのは褒められた事ではないぞ?」

「う……ごめん」

「別に構わん。ああそうそう、交渉ついでに彫刻の注文入れられたんで、少し忙しくなる。
食事当番などに影響させるつもりはないが、絶対にないとも言い切れんので覚えておいてくれ」

「そりゃ全然構わないけど……難しい注文だったの?」

「いや、計算上は十分こなせるはずなんだが、なにせ初注文だし、ぶっ続けで幾つも作った事は無いからな。
不測の事態が起こらんとは言い切れん、ということだ」 

 少し大仰に肩を竦め、苦笑する。   

 今日シェリスから注文された彫刻の量は、通常の製造限界量だ。
 それもデザインに一定の統一性を持たせつつ、一つ一つモチーフを変えて欲しいという。
 出来ると明言したとはいえ、余技でやっていた人間に初っ端から随分と難度の高い注文である。

 まして初仕事である。
 技術はあれどそれ用の修練を積み重ねたわけでもない海人では、不測の事態が起こらないとは言い切れないのだ。

「あんま頑張りすぎても駄目よ? 倒れたらそれこそ元も子もないんだから」

「心得ている。が、それは君にも言える事だぞ?
ここ何日かの帰宅時間を考えると、日中はかなり仕事を入れているはずだ。
君の場合仕事の性質上無理が生死に直結するんだから、私以上に気を付けるべきだろうに」

「うぐ……だって、今のままじゃ傭兵引退いつになるか分からないし、
何歳で腕が衰え始めるかも分かんないから……」

 拗ねたように唇を尖らせながら、言葉を絞って反論する。
 
 まったく厄介だ、と思う。
 現状海人に自分の想いを悟られるわけにはいかないが、まるっきりの嘘も言えない。
 嘘を一目で見抜いてしまう上に頭が回る彼に嘘を吐けば、最悪そこを糸口に答えに辿り着かれかねないのだ。

 なので、彼の誤解を誘導する言葉を選ばねばならないのである。

「……なるほど、この間私が余計な事言ったせいか。 
ルミナス、ああは言ったが君なら何歳になっても求める男は数多いはずだ。
傭兵引退が多少早まったところで、さしたる差にはならんだろう。
さっさと稼いで相手探しをしなければならんほど切羽詰まった状況ではないはずだ。
もし容姿的な衰えが不安ならそれを極力抑える手段もあるし、君にならば無償提供する。
だから、無闇に危険を増やすような真似はしないでくれ」

 目を合わせ、真摯に諭す。
 想い人の真剣な表情に、思わずルミナスの顔に嬉しそうな微笑みが浮かぶ。

「心配してくれてるんだ?」

「当たり前だろうが」

「一応ある程度余裕は見てるんだけど、それでも心配?」

「……その程度で心配を消せるほど、私の中で君の価値は安くない」

 むすっ、と不貞腐れたように答える。

 海人にとって、ルミナスは大切な友人だ。
 それこそ、彼女が危ないとなれば迷わず命を懸けられる程に。
 実際には多少余裕が残っていようが、毎日のように危険の伴う仕事を大量にこなしているとなれば、
平静でいられるはずもない。

 そんな切実な思いを見て取ったルミナスは微笑みながら軽く息を吐き、肩の力を抜いた。

「……そっか。分かった。あんたがそこまで言うんだったら、少し控えるわ」

「そうしてくれると助かる……ん? シリル嬢どうかしたか?」

(……貴方が諭したのはここ数日私が散々説いた内容なんですのよ! くぉの鈍感男がぁぁあっ!)

 テーブルに突っ伏したまま、心の中で絶叫する。

 海人がルミナスを諭した言葉は、ルミナスが仕事を増やし始めた初日から散々シリルが説いた内容と大差はなかった。  
 むしろ、分量で言えば海人の言葉の方が圧倒的に少なかったぐらいだ。

 にもかかわらず、ルミナスは素直に海人の言葉に折れた。

 ここ数日、シリルが散々言葉を吟味し、理を尽くし、思いの限りを込めて諭した時は揺らぎもしなかったのに。
 言っている事は嫌になる程分かっているが、それでもローラが参戦した以上、多少の無理ぐらいしなくては怖くて仕方がない、   
そう言って全ての言葉を切り捨てられてしまったのに、だ。

 ルミナスの中での立ち位置の差を考えれば当然とは分かっているのだが、あまりにもやるせない話だった。

「……そういえば、帰ってきた時から少し顔色が悪かったな。
ルミナスの仕事に連日付き合っていたせいで、疲れが溜まっていたか?」

 気遣わしげな海人の言葉に、シリルの体が一瞬跳ねかける。

(……まったくこの馬鹿は……見ていないようで見ていますわね)
 
 呆れ半分感心半分の感想を抱きながら、シリルは思考を巡らせる。

 疲れが溜まっている、その見立ては正しい。
 ここ数日の重労働は確実に体を蝕んでいる。
 ついでに言えば、どこぞの馬鹿男のせいで精神的疲労も馬鹿にならない。

 が、帰ってきた時から顔色が悪いというのなら、おそらく別の理由だ。

 アンリが関わっているであろう厄介事。
 その内容に見当がついてしまっているからだ。
 もし彼女の懸念が現実となった時は、極めて危険な状況になる事も。
   
 とはいえ、馬鹿正直にそれを語るのもよろしくない。

 アンリがわざわざ自分だけに伝わるような小細工をしてきた事からして、
現在揃っている情報ではまだ懸念で収まる範囲なのだろう。
 ならば、無駄に周囲を不安にさせる事もない。
  
 シリルは少し考えた末に、突っ伏したまま答える事にした。
 
「そのとーりですわ。お姉さまの仕事量に完全についていくのは、私でも少し無理がありましたので。
まあ、明日から多少控えて下さるなら何の問題もありませんわ」

 言い終えると同時に、むっくりと起き上がる。
 ルミナスに、少しばかり恨めし気な視線を向けながら。 
 
「むぅ……ごめん」

「御気になさらず。これも惚れた弱味というものですわ。
ところでそれはそれとして――――先程容姿的な衰えを極力抑える手段がある、と仰いましたわよね?」

 にっこり、と海人に向けて優雅かつ可憐に微笑む。
 気品あるその笑顔はなんとも見栄えする美しいものだったが、
何故かそれを向けられた海人の表情は引き攣っていた。 

「…………うむ、あるぞ」

「私の記憶が確かなら、それについてこれまで一度も伺った事ありませんわよねぇ?
私が美に強い執着を持ち、肌の手入れにも最大限気を配っている事は御存じのはずですのに」

「……いやほら、君の場合衰え以前に成長してるのかすら怪しい容姿じゃないか。
時間の流れを真っ向からねじ伏せてる君にはいらないんじゃないかなーと思ってだな」

 背中にダラダラと汗を掻きながら、言葉を返す。

 一応、嘘ではない。
 シリルの実年齢は二十歳だが、外見は十代前半である。
 それも身長などによるパッと見の印象ではなく、肌艶や体型を含めた総合的なもので、だ。
 冗談でも何でもなく、シリルの肉体年齢は海人から見ても十二、三歳にしか見えないのだ。

 毎日丁寧に手入れをしているのは知っていたが、
仮にそれを止めても一般的な速度で老化するだけではないだろうかと思ってしまう程に、
シリルの外見年齢は時間の流れに逆らっている。

 なので、わざわざ海人の持つ美容品を紹介しなくてもいいのではないかと思ったのは、事実だ。

「あらそうですの。ちなみに、一日の手入れにかかる時間はどれぐらいですの?
御存じの通り、私平時は最低でも朝晩一時間ずつかけているのですが」

「………………」

 一見穏やかなシリルの問いに、海人の全身からぶわっ、と汗が噴き出た。

 そう、休暇中のシリルは肌の手入れに一日最低二時間かけているのだ。
 時間が空いている時は昼にも一時間手入れを行っている。
 かなりの時間と労力を割いて、その肌に磨きをかけているのだ。
  
 だからこそ――――海人がこれまで黙っていた事は許されざる大罪ととられかねない。

「ふふ、貴方にしてはなかなか素直な反応ですわね? でも、だんまりはより罪が重くなりますわよ?」

「……一日二回、最大十分もあれぶぉあぉぁっ!?」

 言葉の途中で海人の体が押し倒され、その頬が千切れんばかりに引っ張られ始めた。
 獲物に襲い掛かる虎の如く、テーブルを飛び越えてきたシリルによって。
 
「十分!? 十分とほざきましたの!? 二時間かけていたのが二十分になる、そうほざきましたのこの口は!?」

 修羅の形相で海人の頬を掴んで頭を揺さぶる。
  
 シリルの日頃の手入れは長年かけて様々な美容法を合成し、効率化したものだ。
 劇的な変化こそないが、一月二月続けていれば効果が実感できる為、
自分は勿論これまで教えた人間の多くも続けている。

 が、それでも一日二回一時間ずつはかかり、時間の消費は馬鹿にならない。
 それが一回十分になるのであれば、やれる事もかなり増える。

 これが他の人間の発言であれば効果が全然違うのだろう、と笑い飛ばせるのだが、
相手は空前絶後の理不尽の権化だ。
 その超短時間でシリルの美容法を遥かに上回るような手法を持っていても何ら不思議はない。

「い、いや全身にクリーム塗ったくるだけだから一回五分あればぁあんぎゃぁぁぁあっ!?」

「一回五分!? 戦場でも確保可能な時間だとほざきましたの!?
しかもクリームを塗るだけ!? お手軽という言葉すら生温いではありませんの!」

 海人の頭蓋骨をギリギリと締め上げながら、更に詰め寄る。

 当然ながら、仕事中は平時のような肌の手入れをする余裕はない。
 二時間もあれば、情報収集どころか罠の設置だって十分に可能なのだから。 
 一応簡略化した最低限の手入れをしているが、やらないよりはマシ程度のものだ。

 しかし、一回五分ならばどうだろうか。

 余裕、とまでは言えないが、状況次第では十分確保可能な時間だ。
 やり方によっては、戦況が膠着状態の時に策を練りながら手入れする事も可能かもしれない。
 クリームを塗るだけなら、鏡とにらめっこしながら手入れをする必要もないのだから。

 それほど素晴らしい手法があるのなら、黙っていた事は許し難い。
 我知らず、シリルの両腕の力が増していく。 

「シ、シリル殿! そこまでです! それ以上は流石に海人殿の御命が!」

「殺して死ぬようなタマではありませんわっ! 
おのれ、私が時間かけて手入れしているのを陰でせせら笑っていましたのね!?」

 刹那に羽交い絞めにされながらも、頭痛に悶えている海人に食ってかかる。
 その剣幕に圧されながらも、海人はきっちりと言葉を返した。 

「ち、違う! 詳しくは話せんが事情があったんだ!」

「……嘘ではないようですわね。失礼、些か取り乱しましたわ」

 疑わしげに海人の表情を見て、シリルはようやく落ち着いた。
 溜息を吐きながら、海人は創造魔法で手の平サイズの銀色の容器を作り出す。

「まったく……ほれ、とりあえず現物だ」

「あら、あまり香りはしませんのね」

 蓋をあけ、中身を確認したシリルが軽く頷く。
 やや黄色がかった白のクリームだが、全く匂いはしなかった。

「香料の類を入れると効果が目に見えて落ちるんでな。
ま、その分効果は高い。一日二回塗らねば最大の効果にはならんが、
これから全身に塗ったくっただけでも、明日の朝には効果を実感できるだろう」

「あら、それは素晴らしいですわね。期待させていただきましょう」

「存分に期待してくれ。君らも試してみるといい」

 言いながら海人はシリルに渡したのと同じ物を三つ作り、残りの同居人に手渡した。
















 
 一方、その頃のカナールの町。
 ケルヴィン・マクギネスは部下を引き連れて酒場に入っていた。
 
「ふう~……流石に連日戦い続けんのは堪えんなぁ……」

「それに付き合わされてるこっちの方がダメージ大きいんですけど」

 大儀そうに伸びをする上司に、半眼を向ける女性。

 ここしばらく、ケルヴィンは凄まじい勢いで己を鍛えていた。
 己の最大の欠点である動きの制御の未熟さを改善すべく基本的な動きをひたすら反復し、
それを実戦でも再現できるようになるべく部下との組手をひたすらに繰り返していたのだ。

 その甲斐あって短期間としてはかなりの成果が出ているのだが、
次元の違う上司の組手相手を務めさせられる部下達としてはたまったものではない。
 目的がその絶大な身体能力の制御なので、下手をすれば即死しかねないのだ。

 勿論部下一同も命がかかった組手の結果実力を伸ばしているのだが、
体力お化けのケルヴィンほどの持続力はないため、連日の組手はかなり堪えていた。
 
「あー、悪い。こないだアンリに付き合ってもらったせいか、基準があいつになっちまってるみてぇだな」

「あの人もよくもまあ忙しい中隊長に付き合ってくれましたよね。そういえば、この間の絵はどうなったんですかね?」

「さあな。いくらなんでももう届いてるだろうし、気に入らねえって事はねえと思うんだが……」

「ええ、ちゃんと届いて気に入ったっすよ。ま、欲を言えば木炭画の作者の水彩画が欲しかったっすけど、
あの水彩画もケルヴィンが選んだ物としちゃあ上出来っす」

「……アンリ、マジ心臓に悪いからこっそり背後に立つんじゃねえよ」

「声掛けるまで気付かない自分の鈍さを先にどうにかするべきっすね。
ま、以前みたいに慌てふためかなくなった辺りは進歩したってことっすかね」

 鋭い視線を事もなげに受け流しつつ、アンリはケルヴィンの横に腰かけた。

「へーへー、どうせ俺は鈍いですよ」

「で、あの木炭画は何なんっすか? ケルヴィンが選んだにしちゃあ随分センスの良い掘り出し物だったっすけど?」

「……掘り出し物なのか?」

「そりゃそうっすよ。華に欠ける為需要の少ない木炭画、さらに所々それと分からぬ程度ながら手抜きが見られる為、値段は確実に下がるっす。
しかし構図は素晴らしく、さらに木炭の濃淡を巧みに使う事で木炭画でなければ出し得ぬ味わいを醸し出している為、質は間違いなく高い。
高レベルの批評眼を持つ人間がじっくり間近で眺めるには向かないっすけど、部屋の壁に掛けて軽く眺める程度ならば問題なし。
総括すると、質は高いが市場では評価されにくく比較的安値で買えそうな絵ってとこっすかね」

「……ちなみに、お前だったらいくらまで出す?」

「ん~、珍しい物ですし、個人的にかなり気に入ったんで五十万までなら出せるっす……どうしたんっすか、急に頭抱えて?」

「そういえば、あれはどこで買ったんですか? 良い物が安く手に入ったって喜んでらっしゃいましたけど」

「実はあれ例のルミナスの男……実際は違うらしいが、あいつが描いたのを無理言って売ってもらったんだよ」

「へえ~、あの人画家さんなんですか」

「いや、本人曰く素人らしい。が、勿論売ってもらう以上見合った対価は必要だと思ったし、
一目見てこれだと思ったんで、提示された額に色付けるぐらいのつもりでもいたんだ」

「やれやれ……その様子だと十万ぐらいで買ったようっすね。
妥当とまでは言わないっすけど、市場評価だけで考えれば買い叩いたって程じゃないっすよ?」

「十万じゃねえ、五千だ」

「……は?」

「だから、五千ルンで買ったんだよ!」

「……よ~し大馬鹿野郎、ツラ貸せっす。
仕事でもないのに一般人を脅迫なんて、団のイメージ貶める様な真似するとは思ってなかったっすよ。
傭兵といえど最低限のイメージは大事だって事を魂の髄まで叩き込んでやるっす」

「ちげぇぇぇぇえっ!? 俺は二十万ぐらいは出すつもりだったんだ!
なのにあいつは暇潰しに描いたもんだし、所々手抜きしてあるからそれぐらいで良いって言ったんだよ!
しかもプレゼント用ならこれだけじゃまずいだろうからって、画廊でもう一枚買う事まで勧められたんだ!
そこまで言われちまったらそんなもんかと思っちまうに決まってんだろ!?
俺は絵の相場なんざ碌に知らねえんだから!」

「ほほう……つまりケルヴィンはこう言いたいんっすね?
あれだけの絵を暇潰しで描けるような素人画家が存在し、それが絵を一枚五千ルンなんて超安値で売る程に奇特な人間でもあると。
しかも他の画家の絵も買った方が良いと言ってしまう程にその腕前の自覚がないと。
寝言は寝て言うもんっすよ?」

「言われてみりゃその通りだなおいっ!?」

 ぬおおおおっ、と頭を抱えるケルヴィン。

 嘘など一切言っていないし、隠し事も全くない。
 ただ自分が体験した現実を語っただけだというのに、胡散臭さ抜群の話だった。
 自分が他の人間に聞かされても、アンリと同じ感想を抱くだろう。

 が、それで説得を諦めるわけにはいかない。

 平時に一般人を脅迫したなどとアンリに思いこまれたら、明日の朝日どころか今夜の月すら見れないだろう。
 それほどにアンリは規律に厳しく、戦闘能力が高いのだ。 
  
 そうこう考えている間に、アンリの手がケルヴィンの胸ぐらに伸ばされる。
 
「ま、ままま待て! 考えてみろ! 俺がこんな事で嘘吐くと思うか!?」

「思うっす」

「即答!? いやだから待て! そ、そうだ! あいつがルミナスとシリルに気に入られてる事自体は間違いねえ!
さらに相当手練れの護衛が二人もついてんだぞ!? んな相手脅せるわけねえだろ!?」

 ケルヴィンの言葉に、アンリの手が止まった。
 事実か、と確認するようにケルヴィンの部下達に視線を這わせる。 
 
「はい、今仰った事は間違いないです。
それと護衛の二人は少なくとも、私達では実力を推し量れませんでした」

「……なるほど、トイレに行った時でも見計らって脅した、と。尚更性質が悪いっすね」

「俺の信用どこ行ったぁぁぁぁっ!?」

 一瞬の迷いもない断定に、思わず雄叫びを上げる。
 その目尻には、僅かに光る物が滲んていた。
 
「ま、冗談はこの辺りにしとくっすか。思いがけず良い情報も手に入った事ですし」

「……は? 待てアンリ。どっから冗談だ?」

「最初から嘘吐いてない事は分かってたっすよ?
信じ難い話っすけど、自分を欺ける程の演技力がケルヴィンにあるはずないっすからね~」

 からからと、心底楽しそうに笑う。

 アンリは戦闘においても高い能力を誇るが、団内で最も重宝されているのは主に情報収集や情報操作だ。
 広まっている情報はもちろん隠されている情報すらも引っ掻き集め、
必要とあらば集めた情報に恣意的な方向性を与えてばら撒き、団に有利な状況を作り出す。
 その辣腕ぶりたるや、団屈指の戦略家であるシリルでさえも届かないと認める程である。

 当然ながら洞察力や観察力にも長けており、嘘を吐かれても見破れぬ事はほとんどない。
 表情は勿論、言葉の抑揚なども含めて長年の経験から総合的に判断し、瞬く間に看破する。
 そして、それは相手が獣人族であっても同じ事だ。

 まして、相手はケルヴィン。

 高い戦闘力や直感による危機回避能力の高さゆえに第三部隊の隊長を務めているが、
控え目に言っても単純馬鹿な性格と教養の乏しさゆえに、就任させるかどうか散々悩まれた男である。
 結局まともな副官をつければカバーできる欠点として三人目の隊長に就任したが、
その欠点においてはその頃から大した成長が見られない男だ。

 百戦錬磨の商人の嘘さえ看破するアンリを騙せるはずがない。
 
 そしてそれはアンリにとって太陽が東から昇るに等しい事実であり、
彼と会話する上での大前提といっても過言ではない。
 
「こ、ここここの性悪男女があぁぁぁぁっ!?」

 思わず席を立ってアンリに掴みかかろうとしたケルヴィンだったが、その勢いは瞬く間に衰えた。
 いつの間にか優しく首に触れていた、彼女のナイフによって。

「何か文句でも?」

「いえ、何でもありません!」

 ビシッと敬礼するケルヴィン。
 その反応に満足げに頷きながら、アンリはナイフをしまった。

「しっかし、そんだけ良い画家ならそれだけでも伝手は作っておきたいっすね。
今の段階なら手も空いてるし、一度御挨拶に行くべきっすかねぇ……」

「……今の段階? 次の仕事決まったのか?」

「そっすよ。少しばかり先の話になるっすけど。
ただ、今はその前に前々からの懸念が具体化する可能性が出てきたんで準備してるとこっす」

「ふーん……ま、なんだか知らねーが、当分この町拠点にしてっから、必要だったら呼びな」 

「そっすね。必要だったら。んじゃ、まだやる事あるんで失礼するっす」

 あっさり言うとアンリはゆっくりと席を立ち、静かに去っていった。
 他の客はおろか、店員に気付かれる事さえなく。

 その背中が完全に消えた事を確認すると、ケルヴィンが部下の女性に話しかけた。

「……オルガ」

「なんでしょう?」

「悪いが、手勢集められるだけ集めとけ。事が起きたらデカそうだ」

「そりゃ御命令とあれば否はありませんけど……なぜ大きいと?」

「いつもより僅かにアンリの汗の匂いが強かった。普段通りに見せちゃいたが、ありゃ緊張してる。
多分、情報は足りねえが何かが勘に引っ掛かってんだろ。準備しとくに越した事はねえ」

 ふん、と鼻を鳴らしながら、断言する。

 ケルヴィンは騙されやすい性格ではあるが、アンリに関しては付き合いが長いため多少は見抜ける。
 普段の彼女なら、怒るケルヴィンをわざわざ黙らせず、更におちょくって遊ぶであろうことぐらいは。 

 そして集中すれば獣人族の優れた嗅覚によって、汗の匂いの違いなどから多少なりとも感情を読めるのだ。
 普段の匂いをある程度しっかり覚えていないと使えないが、団の中で一番付き合いの長いアンリに関しては高い精度を誇っている。

「――――承知しました。第三部隊全軍に最速で招集をかけます」

 オルガは上司の言葉に力強く頷くと、飲みかけの酒を置いて酒場を後にした。  


コメント
友人「お前、何時まで仕事?」私「・・・・・・31日だが何か?」
タイトルのような問答をして、友人と気まずくなった私です!
むー何やら、キナ臭い事になってきてるのかな?エアウォリアーズと事を構えることになるんだろうか?どうなるのやら。

>獲物に襲い掛かる虎の如く、テーブルを飛び越えてきたシリルによって。
そりゃー1時間が、10分になる何て言われたら、そうなるでしょう(汗

ケルヴィン達の掛け合いも、面白かったですね。ケルヴィンはきっと、弄られる星の下に生まれたんでしょう!
後、シェリス嬢の部下。音楽狂いの三人、怖い。いや、他の部下も怖いけどね。物理的に。
[2015/12/28 23:00] URL | 飛べないブタ #t50BOgd. [ 編集 ]


ルミナス達の傭兵団のでかい仕事で、同じ仲間のアンリが汗をかく仕事ねぇ…。まさか、シェリスの敵側に雇われたとか?……ちょっと情報が足りないな。


追伸
質問ですが設定としては海人は西暦何年に飛ばされたんですか?
[2015/12/29 15:31] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


「私の記憶が確かなら、それについてこれまで一度も伺った事ありませんわよねぇ?
私が美に強い執着を持ち、肌の手入れにも最大限気を配っている事は御存じのはずですのに」

いくら優しいとはいってもくれるのが当たり前なんて態度でいちゃもんをつけられたらいらっときますね。

ところで2章でローラに渡した薬と同一のものだと思いますけどその時にシリルが一切反応していない理由がきになりますね。

それにその時反応がなかったから特に興味が無いとか渡す必要が無いとカイトが判断してもおかしくないというかむしろ自然なきがしますね。
[2016/01/03 19:52] URL | シャオ #xDU5tAck [ 編集 ]


久しぶりに立ち寄ったら更新されていたので一気に読ませていただきました。
やはり最高に面白いですね。これからはこまめに立ち寄らせていただきます(笑)
[2016/01/19 19:02] URL | フィリップ #- [ 編集 ]


いつも楽しく読ませていただいております。疑問に思った点がありますので質問させて頂きます。

>いつもより僅かにアンリの汗の匂いが強かった。
とありますが獣人側のマナーや嗅がれた側の心境はどうなってるのでしょうか?
文化や能力の違う異種族が入り乱れるといろいろな違いがあるのでそこがどうなってるか気になりました。

次回の更新もお待ちしています。
[2016/01/25 09:14] URL | fuji #- [ 編集 ]


とても面白いです!1日でいっき読みしてしまいました!!続き楽しみにしてます!!!!!
[2016/01/30 00:25] URL | 素人 #- [ 編集 ]


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