ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編。 1/11
というわけで番外編です。
時系列は特にない思いつきですが、未来の話と考えた方が筋は通りそうです。

では、コメント返しさせていただきます。


コスモさん

雫の心労のネタが増えた話、が一番適切かもしれません(笑)
餅の味も書こうかと思ったんですが、ぱっと浮かばなかったんですよね。

一夫多妻については海人側の心情もありますね。
彼が多数の女性を愛する事をよしとできるのか、という問題が。
経済的には十分可能でしょうけど(笑)

 さん

卵白……とりあえず、黙秘でお願いします(汗)

三毛猫さん

楽しんでいただけたようで何よりです。
最後のインパクトは思いっきり狙ったので、作者としては嬉しいかぎりです。


次話ですがとりあえず明日……既に今日ですが休みなので、どんどん書き進めたいと思います。
幸いにして珍しく他の予定は何も入ってないので。
毎度遅筆ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。

では、今回も数多くの方のご来訪ありがとうございました。
気が向いた方は『続きを読む』で番外編をお楽しみください。



 番外編


 
 その日、シェリスは久しぶりに自らの屋敷の図書室を利用していた。

 とはいえ、これといって調べ物があるわけではない。
 珍しく面会予定が一つキャンセルになって時間が空いた為、
多少なりとも知識を増やそうと思って足を運んだだけだ。
 たかが一時間程度の空き時間だが、それでも読んだ知識の片鱗ぐらいは頭に残るだろう、そう考えて。
 
 屋敷の主であるシェリスが身につけねばならない知識の幅は広く、深い。
 様々な戦略を動かすために必要な交渉を、より確実にまとめる為それが求められるのだ。

 部下達もそうだが、シェリスは彼女ら以上に交渉においてミスが許されない立場にある。
 部下達ならば多少しくじっても上司が出るという手段を使えなくはないが、
トップであるシェリスが失敗すれば後はないからだ。

 そして交渉を円滑に進める際に効果的な手の一つが相手の好きな、
あるいは得意な話題を振って好感を得るということなのだが、これが意外に厄介なのだ。

 それで好感触を得る為には、最低限話についていける知識が必要になる。
 よく分からずただうんうん頷いているだけでは、最悪話を聞いているのかさえ疑われかねない。
 また、そういう態度はそれだけで教養を侮られかねない為、どうしても所々知識を見せる必要があるのだ。
 
 勿論知識があれば良いというものではなく、相手の知識量を分析しながら侮られぬよう、
そして相手が気分良く話せるよう知識の見せ方を工夫せねばならない。
 それこそ、相手によってはあまり知識を持っていないように見せかける事もあるが、
やはり汎用性という点においては知識を持っている方が圧倒的に有利だ。
 そしてミスが許されない立場である以上、それは広さだけでなく深さも不可欠となる。

 ――――持っていない知識を持っているように見せかけるより、持っている知識を持っていないよう装う方が容易。

 そんな随分昔に部下に言われた言葉を胸にシェリスは勉学に励んでいると、部屋のドアが開いた。

「あ、シェリス様、お疲れ様です。魔法学ですか?」

 ハンナ・トリーティアは、言いながら本と睨めっこをしている主の横に紅茶を差し出した。
 そしてそのまま手持ちの茶器で自分の分を用意すると、主の向かいの席に腰かける。 

「ありがとう。ええ、比較的話を転がしやすい分野だから。
でも、やっぱり高等理論の理解は難しいわね。
この水属性術式構築理論なんて、半分も理解できないもの」

 紅茶を一口含むと、シェリスは開いているページを指先で軽く叩いた。

 多大な知識が求められる立場にあるが、自分は公爵令嬢だ。
 幼い頃から人の上に立つ為の教育を施され、それに相応しい教養を身につけてきている。
 ゆえに大概の書籍は知らぬ内容でも一度読めばある程度理解できるのだが、
魔法学の高等理論となると、正直お手上げになる事が多い。

 魔法学の歴史自体極めて長いものであり、その膨大な知識を元に生み出された高等理論も当然複雑化していく。
 専門家でも、例えば火属性の攻撃魔法系の配置法の高等理論しか分からないという人間の方が多いぐらいだ。
  
 それを考えれば、むしろ専門家でもない自分が基本属性の高等理論を二十も三十も理解できている事を誇るべきなのかもしれない。
 そうも思うのだが、身近に何人か自分の十倍以上の数を理解している人間がいるので、素直に割り切れない。

 いっそどこぞの白衣がトレードマークの化物クラスに次元が違っていればまだ諦めもつくのだが、
生憎彼女らは一応同じ人類と認められる程度の知識量ではある。

 才無き己の身を嘆き、シェリスは深~く溜息を吐いた。

「あの……よろしければ解説いたしましょうか?」

 シェリスの溜息を理解できぬ事への嘆きととり、ハンナはそんな事を提案する。

「……解説できるの?」

 おずおずとした申し出に、シェリスは怪訝そうな目を向ける。

 確かにハンナは水属性系の術式構築理論を得意としているが、
以前本人に聞いた時は高等理論を活用しての術式構築なら出来なくもないが、
人に教えるとなると色々と粗が出るだろう、という話だった。

 が、出来ない事を出来ると言う人間でもない。
 それがいかに愚かな事か、かつて上司達に魂の髄まで刻み込まれているはずだ。 

「ええ、ついこの間カイト様に教えていただいたばかりなので。
今なら、どこをどう訊ねられてもお答えできると思います」

「そう……なら、お願いするわね」

 自身に満ちた表情で言い切る部下に、シェリスは穏やかに微笑んだ。













 そして五十分後。シェリスは先程まで読んでいた本を横に、机に突っ伏していた。
 その姿は、まるで精根尽き果てたかのように生気がない。

 なぜこんな事になったのかと言えば、ハンナの解説だ。

 といっても、理解できなかったわけではない。
 決して上手ではなかったが、要旨を押さえた的確な解説ではあったため、
シェリスの知力をもってすれば理解は難しくなかったのだ。

 ならば万々歳ではないか――――確かにその通りだろう。

 理論の理解という目的だけを考えれば。

「あ、あのシェリス様、私何か粗相を……?」

「いいえ、ハンナ、貴女は何も悪くないわ。いえ、誰も悪くないのよ。
強いて言えば現状、そしてそれを仕方ないと諦めた私に非があるのでしょう、ええ……」

 心配する部下に、シェリスは突っ伏したまま答える。

 そう、誰も悪くなどない。
 ハンナは一生懸命に勉強し、成果を出した。
 彼女に教えた化物教師は、自らの仕事を完璧以上にこなした。
 ただそれだけで、悪い事をした人間など誰もいない。

 だが、シェリスはショックを受けた。
 先程の理論に留まらず水属性魔法理論全般の知識において大差をつけられてしまった事を、
解説の過程でさらっと出てきた別の理論の数々によって理解してしまったが為に。
 それらの理論についても軽い調子で解説された事がそれに拍車をかけた。
   
 ――――少し前まで、ハンナの水魔法系知識はシェリスより少し下ぐらいだった。

 ハンナのそれは得意分野で、シェリスは万遍なく身につけている知識の一つなので、総合的にはかなりの差があったと言える。
 そしてこの差は当然で、埋める事は至難のはずだった。
 公爵令嬢として幼少時から高等教育を受けてきたシェリスと、元々はただの村娘だったハンナでは土台が違いすぎる。
 むしろ得意分野だけとはいえ、シェリスに食らいつけるハンナに感心していたぐらいだ。  
  
 それが、この短期間で逆転した。
 無論、仕事的には喜ぶべき事だし、シェリスも喜んでいないわけではない。
 また、あくまでも一分野の知識が逆転しただけで、総合的に見ればシェリスの圧勝だろう。
 それは、シェリスも自覚している。

 ではどうしてここまでショックを受けているのかと言えば――――ひとえに己の迂闊さだ。

 大差がつけられた理由は明白。
 天地海人という規格外の教えを受けているか否かだ。
 ハンナは休暇を利用してそれを受け、自分は休暇が無いので受けていなかった。
 それが、このとんでもない逆転劇を生んだ。

 海人の教授能力が規格外なのは知っていたのだから、なんとしても時間を作るべきだった。
 彼ならば誠意を持って頼めば仮にこちらの都合に合わせた時間で呼びつけても嫌がる事なく受けてくれるだろうし、
それが無理でも彼との交渉のついでに少しでも授業をしてもらえば良かったのだ。
 海人の教授能力なら、例え十分や二十分でも十分な効果が望めるのだから。

 今度余裕がある時に海人に相談しよう、そう心に決めつつ、シェリスは別の事も考えていた。
  
(……やはり私達だけでは勿体無いわよね。
今は無理だろうけど、いずれ本格的にこの国の教育水準向上に取り組む際は何とか協力してもらわないと。
彼の存在が表に出ない範囲であの解説力を活用し、より多くのレベルの引き上げを狙うなら……)

 あまりにも有能すぎる為、現状が勿体無すぎる男を最大限活用すべく、将来の計画を練り始めた。
 
 向かいでどう対処したものか悩んでいる部下の存在を忘れて。
 十分後、戻ってくる気配のない主を連れ戻しに来た銀髪メイドに拳骨を叩き込まれるまで。

  
コメント

シェリスがとても可愛い話でした!
とても有能な人なんでしょうけど、周りに化物がいるせいでヘッポコ属性が付いちゃってるといいますか(笑)
[2016/01/11 03:28] URL | イオ #- [ 編集 ]


一介の村娘の知識量を幼い頃から高等教育を受けてきた貴族よりも上にした海人…とはいいますがあくまで魔法の一分野の事だけであって万遍なく知っていなければならないシェリスとは比べるのが間違っているんですよね。…まあ、それでも気にしなければならないのがシェリスの立場ですが

追伸
海人の世界の硬貨を創造したけれど彫刻扱いになったネタとかいかがでしょう?
[2016/01/11 09:01] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]

更新お疲れ様です
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年も応援させていただきいただきます。

感想ですが
シェリスは自国の教育水準向上に海人の協力を得たいのだろうけど、高等教育機関の教授を海人がやるはず無いですし、教科書の作成ぐらいかな
まぁ、シェリス領ならまだしも、直接関わった事のない国家のために教科書すら作らないでしょうね。
[2016/01/11 10:45] URL | 名無しの権兵衛 #y2a4lNMg [ 編集 ]


海人の教授能力が規格外なのは知っていたのだから、なんとしても時間を作るべきだった。
 彼ならば誠意を持って頼めば仮にこちらの都合に合わせた時間で呼びつけても嫌がる事なく受けてくれるだろうし、
それが無理でも彼との交渉のついでに少しでも授業をしてもらえば良かったのだ。
 海人の教授能力なら、例え十分や二十分でも十分な効果が望めるのだから。

確か契約内容は、メイドたちの授業だったような従ってシェリス嬢に対する授業はけ違約範囲外だからやるとしたら改めて契約を結ぶ必要が有るはず。
それなのに授業に紛れ込むどころか呼びつけても嫌がる事なく受けてくれるだろうとか交渉のついでとかいって対価なしで知識を得ようとするのはいらっときますね。

正直これまでシェリス嬢は、一般的なライトノベルの強欲貴族と違って一般市民への配慮を忘れない善良なキャラだと思っていたので今回の自分の思い通りに動くのが当たり前と言わんばかりの傲慢な態度には失望しましたね。


だいたい正直いってカイトはカネに困ってないはずだしローラならともかくシェリス嬢の手札に十分や二十分でも十分な効果が望める教授能力に見合うだけの物がいくつもあるとは思えませんね。
それを提供する義務があるわけでもないのに格安な金を払うだけで提供するだけでもかなりサービスしているのにその恩を忘れて金さえ払えば何でも提供するのが当たり前なんて思いこみで立場を使って仕事を強要するのは、恩知らずの不誠実だとか言いたくなりますね。
[2016/01/11 19:08] URL | シャオ #xDU5tAck [ 編集 ]


あはは、彼女らしいと云うか。

努力家で、有能で、立場もあって。

一を聞いて十とは行かなくても三や五は見える視野をも併せ持つ。

まさに理想の上司であり君主なんだけど、いささか有能すぎて自分の足下がすっぽ抜けるのが弱点。

そして絶対に分かってて指摘しない超有能すぎる部下(笑)。

「何で指摘してくれなかったの~!」
「指摘したらお嬢様のためになりませんので」*(台詞は固有名詞を出さないよう改変されています)
[2016/01/12 10:08] URL | ゴールドアーム #n08XGfOg [ 編集 ]


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