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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編。
というわけで、番外編です。
本編前の珍しくはないネタですが、最後がちょっと珍しいかもしれません。

では、急ぎ足ですがコメント返しさせていただきます。


コスモ さん

流石の雫も海人の恩恵なしでは、まだまだルミナスには及びません。
それでもエアウォリアーズで隊長狙えるぐらいの実力があるんですけどね。

チャーハン……文章にすると意外に差別化がしんどいんですよね。
やるとすれば番外編じゃなく、本編でやると思います。


次話ですが、ある程度形は整ってきました。
視点がかなり多くなってるので上手くまとめたいところですが、いつもより忙しない話の流れになるかも(汗)
毎度遅筆ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。

では、今回も数多くの方のご来訪ありがとうございました。
気が向いた方は『続きを読む』で番外編をお楽しみください。





 番外編




 被験者の映るモニターを眺めながら、海人はふと思った。
 どうしてこの男は命乞いをするのだろうか、と。
  
 モニターで泣き叫びながら許しを乞うている男は、町中で海人に刃物を向けてきた男だ。
 人通りの少ない路地裏で、大人しくついて来いと脅してきたのである。

 一応理由を聞いたところ素直に答えてくれたのだが、中々に頭がおかしくなる内容だった。
 
 この男、どうやらある新興宗教の信者らしいのだが、その教祖が神からお告げを受けたらしい。
 そのお告げの内容というのが、世界に厄災を振りまく邪悪な青年の命を祭壇に捧げよというもの。
 さすれば現在世にはびこる邪悪は消え、神が浄化した青年の力によりこの世に平和がもたらされるという。
 そしてその青年とは他ならぬ海人の事であり、場所も教祖の神通力により判明した、そういう事らしい。
 あとは海人の命を神にささげさえすれば、それで世界が救われる、と恍惚と語っていた。

 ――――正直、全てを聞き終えた段階でお笑い芸人よろしくツッコみの嵐を叩き込みたい気分だった。

 確かに海人は厄災を振りまいているが、意図的にそうしているのはほぼ命を狙ってきた相手に限定されている。
 皆無ではないが、一応一般人は極力巻き込まないよう善処はしているのだ。
 その余波で様々な方面に影響が出ているのは事実だが、そんなのはそもそも相手が仕掛けて来なければ済んだ話。
 強盗しにきたその地域の顔役を返り討ちにしたら、それが逮捕された影響で治安が悪くなったと言われても、
知った事かとしか言いようがないだろう。

 研究成果の公表による悪影響については弁明のしようもないが、一応それで助かった人間の方が多いはずだ。
 例えば海人の開発した薬の余波で製薬会社が潰れた事があるが、
それで困窮した人間より安価で効果の高い薬で命が助かった人間の方が圧倒的に多い。

 無論、多くの人間に被害を与えているのも事実なので、到底胸を張れる話ではないが、
神だろうがなんだろうが一概に邪悪と評される筋合いはない、そう反論できる程度の自負はある。

 そして、なぜわざわざ祭壇とやらに命を捧げなければならないのかが分からない。
 世界を救えるほど偉大な神なら、たかが人間如きに殺されるような命一つ、
世界のどこにいようが容易く奪えておかしくないはずだ。
 まして、居場所まで特定しているのだから。
 
 さらに言えば、世にはびこる邪悪とやらの根源は人の欲望だと海人は思っている。
 それがあるからこそ害も生じているが、それがあるこそ進歩も存在するのだ。
 もし欲望を無くしてしまえばこの世は活気を無くし、生きながらに死んでいるような世界になるだろう。
 平和、というより終わりを迎えた世界の方が適切に思える。
 もちろん、あくまで人間の観点から見た場合の話ではあるが。
 
 その他にも多数ある言いたい事を全て飲み込み――――海人は問うた。

 世界を救おうという君なら、より多くを救う為に命を差し出せるのか、と。
 自分の犠牲で済むなら安いものと素直に死ねるのか、と。

 それに男は当然だ、と高らかに答え、海人に襲い掛かってきた。
 殺さず動きを止める為か、足元を大型ナイフで狙って。

 直後、海人があらかじめ設置しておいた非殺傷用小型地雷で吹っ飛んだが。 
 
 そんな回想をしながら海人は泣き叫ぶ男に通信を繋ぎ、語りかける。

「いや、君が言ったんだろうに。より多くを救う為なら命を差し出せる、と。
今君で実験している薬は今の段階で数万人、未来まで考えればそれこそ何十億という人間を救える薬だ。
確かに末期レベルの大病と治癒を繰り返した君は遠からず死ぬだろうが、その犠牲で数えきれない人間が救われる。
まあ、やってる事の関係上君の犠牲は歴史に残らんが、それによって救われた命は未来に繋がっていくだろう。
まさに偉業。素晴らしい結果に結びつく自己犠牲と言えるじゃないか……!」

 大仰に両手を広げ、感動に打ち震えるように語る。

 一応、内容自体は本当の事だ。
 今男で試している薬は、現状治療手段がないとされている病の特効薬。
 完成間近であり、後はこの男で取ったデータがあれば隙なく完成する。
 現状でも数万人の人命を救い、救われた命がさらに命を育んでいく事を考えれば、
人類が続く限り救われたと言える人間の数はどんどん増えていく。

 無論実際には他にも多数の犠牲者、もとい尊い献身者がいたので功績は分割されるだろうが、
それでも十分すぎる程の偉業だろう。

「ちが、ちが、う……! おれが、おれがいぎでなぐぢゃ意味がないィィいっ……」
 
「またまたそんな冗談を。あれだけ自信たっぷりに言ったじゃないか。
ま、どのみち手遅れだから、諦めた方が良いぞ?
病は完治しても、体はボロボロだからな」 
 
「あ、ぐま……あぐまめ! あぐまめ゛ぇぇぇぇえっ!」

「今更だな。私は世に厄災を振りまく邪悪なのだろう?
では、さらばだ。なるべく長く生き残り、人類の未来に貢献してくれたまえ」

「ま゛、まっでぐ……!」

 男の最後の懇願を聞き届ける事もなく、海人は通信を切った。
 空中ディスプレイが消え、ブツンとあからさまに通話が打ち切られた音で絶望したのか、
モニターの中の男は床に崩れ落ちボロボロの体で弱々しく床を叩いている。

「ふん、悪魔か……あんな奴に言われるのは流石に気分が悪いな」

 憎々しげに零しながら、手元の資料に視線を落とす。

 そこにあったのは、現在実験体となっている男の経歴。
 神の力を取り戻す為の生贄に、とこれまでに多くの子供を攫った事が記されている。
 親を殴り倒して高らかに宣言しながら攫って行くというのに、逃げるのが上手く未だ捕まっていなかったらしい。
 資料作成者の言葉を信じるなら、密かに警察との繋がりがあるのが最大の理由のようだが。

 その下にあるのは、男が所属する教団に関する資料。
 表向き、というより信者向きにはかつて力を削られた絶対神を復活させる事を至上の目的とした教団だが、
その実態は裏組織と結びつき、様々な手段で上層部の私腹を肥やしている組織。
 その手段の一つには、人身売買や児童売春なども含まれている。

「……やはり不愉快だな。研究の集中力を削がれるのも腹立つし、実験終わったら根こそぎ潰すか。
と言っても私一人では万一もあるか……ついでだし、もう一つ貸しを返してもらうか」

 そう結論を下すと、海人は最近すっかり見慣れた番号に電話をかけた。
 用件を切り出した途端、は? と絶句した相手に、重ねて返事を聞くと、オッケーと軽い返事が返ってくる。
 その後海人は何やら上機嫌そうな相手に釣られ、久しぶりに長時間他愛もない雑談に興じた。
 
 そして一月後――――世界が震撼した。

 これまで成す術がないとされていた難病の一つの特効薬が発表されたのだ。
 それも出たばかりの薬としては非常に安価な、庶民にも手が届く価格で。
 開発したという老研究者によると、少しでも多くの人に薬が行き渡るようにと製薬会社と協議を重ねたらしい。 
 これで命を燃やし尽くしたのか、彼はその後五年も経たずにこの世を去るが、
その葬儀にはその薬に救われた人やその家族から多くの花が届けられたという。

 また、そのニュースの陰で忘れ去られたが、同時期にとあるカルト教団の本拠地が爆発している。

 それによって教祖を含む多くの信者が死亡し、同時に焼け跡から教団が関わっていた犯罪の証拠資料が収められた金庫が見つかった。
 それを元に多くの人間が逮捕され、また教団に攫われ行方不明だった子供たちが救出されたという。
 爆発に関しては当初部外者による爆破との見方が優勢だったが、
金庫から見つかった資料の中に教団の武装についての内容が見つかり、
また爆心地から爆弾を作っていたと思しき痕跡も見つかった為、事故と結論付けられた。

 爆発が起きた時間帯、近隣に見慣れぬ黒髪の青年と金髪の女性のカップルがいたという噂もあったが―――事件との関係は不明である。







コメント

うむ、なんというか海人らしさが抜群な話ですね。相手は自業自得ですし

追伸
ステーキネタはいかがでしょうか?
[2016/07/25 12:47] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


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