ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編。10/3
というわけで番外編です。
それほど珍しい系統の話ではないと思います。
なお、時系列は本編前です。

では、コメント返しさせていただきます。


fujiさん

いえいえ滅相もない! ものすごく助かります!
番外編セット作れなかった最大の理由は、アホな理由で番外編フォルダ内の順序が一部むちゃくちゃになってるからなんです。
次がどこからなのかさえ分かれば記事の履歴遡ればいいだけなので、これで作れると思います。
流石に今日は無理ですが、次回から一つずつ作っていこうと思います。
本当にありがとうございました!


さて次話ですが、やっぱり血生臭い場面が入りそうです。
控えめにするか普通にするかがまた悩みどころですが。
他の場面との兼ね合いも含め考え続けたいと思います。

では、今回も数多くの方のご来訪ありがとうございました。
気が向いた方は『続きを読む』で番外編をお楽しみください。







 番外編


 近接戦における魔法使用。
 言葉にすれば単純だが、これはかなりの高等技術だ。

 そもそも、魔法の使用自体が決して容易なものではない。
 魔法とは脳裏に浮かべた術式に自らの魔力を通し、それを一定時間維持し続ける事で発動するもの。
 つまり使用に当たっては術式を一定時間思い浮かべ続けなければならず、かなりの集中力を要する。

 それを近接戦の真っ最中にやるとなれば、もはや曲芸の域だ。
 敵の攻撃が常に間近にある状態でそれほどの集中力を別の作業に割くのは、並々ならぬ度胸が不可欠。
 さらに言えば、度胸があったところでその割いた集中力の不足のせいで致命傷を負えば本末転倒だ。

 ゆえに、多くの近接戦士は戦闘開始前から補助魔法を発動待機させておき、
開始直後に発動させ、効果が切れそうになったら距離を取って再発動というのが定石だ。

 一定レベル以上の達人になると近接戦に全神経を集中しながら、条件反射のように魔法を発動させる離れ業を行う者も多くなるが、それが出来る者でも大半は一つ二つが限度で、三つ以上の魔法を同時起動させる事が出来る者は少ない。
 
 当然だ。完全に魔法に集中できる環境でも多重起動は難しいというのに、
難度が桁違いの近接戦中となればもはや狂気の沙汰だろう。

 とはいえ、あくまで『少ない』だけであって出来る者がいないわけではない。 

「ば、が……な……」

 呆然と呟きながら、男が倒れる。
 切り裂かれた首からは、血がとめどなく流れ出ていた。
 その無念を叫ぶかのように、男の得物であった剣が地面に重々しい音を立てて落ちていく。

「んな驚くような事やってないんだけどねぇ……」

 ふうっ、と大きく息を吐き、ルミナスは剣を収めた。

 非常に、手強い男だった。
 大きな体から繰り出される剣撃の威力はルミナスを超えていたし、
要所要所で混ぜてくる蹴りや拳も威力が高い上に避けにくく、
普段なら一気に攻めるルミナスが終始守勢に回る羽目になったのだ。

 が、彼の唯一の欠点である魔法に付け入る隙があった。

 どうもこの男、習得している魔法は近接戦に不可欠な補助魔法ばかりな上に、
多重起動も習得していなかったようで、他は低位の攻撃魔法をルミナスが間合いを取った時の牽制に単発で使ったのみ。
 初めは誘いかと思って警戒していたのだが、それにしては使うべき場面で使っていなかったので、
魔法を不得手と断定し攻め入ったら、あっさり勝ててしまった。

 中位火炎魔法と同時に斬りかかり、それを避けた所で後頭部に低位風魔法の礫、
一瞬気を取られた隙に風魔法で砂を巻き上げて男に目潰しを食らわせ、
距離を取ろうとしたところに思いっきり踏み込んで、首を叩き斬ったのだ。

 流石と言うべきか、首を落とすつもりだった斬撃が喉を深く斬り裂く程度に留まったが、
それでも致命傷には違いなく、一時間近く続いた戦いは呆気なく終わってしまった。

「十分驚くような事をなさってましたわよ?
多重起動だけならまだしも、最後の目潰しの制御はかなりの曲芸ですもの」

 いつのまにかやって来ていたシリルが、呆れ混じりの感想を漏らす。

 シリルの言うとおり、近接戦における魔法の多重起動だけならそう驚く事ではない。
 一般的にはかなりイカレた技能だが、起動数三つ程度ならシリルクラスの人間なら習得している人間はいる。
 ルミナスレベルともなれば、全体の半数は習得しているだろう。

 が、最後の目潰しは別だ。

 あの時、ルミナスと男は互いの武器の射程範囲にいた。
 普通に下位魔法で旋風を起こすだけでは、互いの目をくらまして終わり。
 相手の目だけを的確に潰せたのは、ルミナスの優れた制御能力あればこそ。
  
 少なくとも、相手の男は完全に想定外だっただろう。
 中位攻撃魔法と同時に超高速突撃しながら、同時起動した風魔法の礫で後方から奇襲、
挙句それらをしのいだと笑みを深めた瞬間、下方から別の魔法による砂煙が自分の目だけに襲ってくるなど。
 まして、砂煙はついでとばかりに彼の鼻の穴にも突撃してダメージを与えていたのだ。

 正直、あそこで咄嗟に後方に大きく飛び退けただけでも称賛に値する。

「何言ってんのよ。副団長だったらもっと良い角度で中位魔法の礫当てて、そのままぶった切れたでしょうが」

「副団長がイカレすぎてるだけですわ。というか、副団長でしたら攻撃魔法を使うまでもなく一刀両断でしょう。
お姉さまにしのがれる程度の使い手だったのですから」

「……ごもっとも」

 お手上げ、とばかりに両手を上げる。

 酷い言い草に聞こえるが、シリルはルミナスの剣技を馬鹿にしているわけではない。
 副団長―――クレイア・アスガルドの剣技がルミナスですら比較にならないレベルで化物じみているだけだ。

 ルミナスにとっては手強い相手だったが、クレイアであればこの男は一合も交えず殺されている。

 なにしろ、これまで散々組手をしているにもかかわらず、ルミナスは彼女の剣閃を見切れていないのだ。
 鍛錬の一環で組手をする時は見切れる程度に抑えてくれるが、それでもルミナスは十合以上打ち合えた事がない。
 超高速の斬撃に反応するだけでも大変だというのに、彼女は軽めのその斬撃と体術で相手の体勢を崩し、
あっさりと相手を必殺の状況に追い込む。

 ルミナスが体験した例としては、防いだ直後に別角度からの斬撃で僅かに崩し、
徐々に崩されつつもそれらを幾度か防いで斬撃に慣れ始めたところで、狙いすましたような前蹴りが腹にめり込んだ。
 そして派手に吹っ飛ばされ、追撃を受ける前に立ち上がろうとしたら首に刃が当たっていた、そんな具合である。

 思いっきり手加減されている状態でさえ、その始末。
 本気を出されたらルミナスの命など風前の灯だ。

 なにせ一度だけ見せてもらった本気の一閃は、全く見えなかった。
 それどころか、抜刀の鍔鳴りかと思ったら納刀の鍔鳴りだったのだ。 
 そんな速度でドラックヴァン鋼の分厚い甲冑が一刀両断されたのである。

 ルミナスがそれを浴びていれば、間違いなく何も分からぬまま愛剣ごと両断されていただろう。

「もっとも、副団長が魔法制御能力にも優れているのは事実ですけれど」

「そーなのよねぇ……」 
 
 付け加えられたシリルの言葉に、溜息を吐きながら賛同する。
 
 クレイアはその剣の絶技だけでなく、魔法制御能力も非常に卓越しているのだ。

 そもそも、先程ルミナスがやった戦法は以前クレイアにやられた手の劣化版だ。
 彼女の場合実に四つもの下位魔法を多重起動し、火球を避けた先に氷弾を叩き込み、
それを倒れ込みながら強引に回避したところに地属性魔法の突起を隆起させ、
そこから体を回転させながら直撃を避けたところで、風魔法の礫の一撃を顎に叩き込み、
無防備になったところを鞘打ちで地面に沈めてきた。
 
 極めて高い先読み能力もだが、精緻な制御能力が無くては、あそこまで完璧な流れは作れない。 
   
「あーあ、つくづく自分の非才が嫌になるわねぇ……」

「そこまで落ち込む事はないかと。副団長は御年からして衰えはせずとも劇的な成長は見込めません。
若さという武器がある私たちなら…………まあ、希望は捨てなくともいいかもしれないという気もしなくもありませんわ」

「最後どんどん弱気になってったわねぇ……」

「……副団長ですし」
 
 ふ、と青々とした空に視線を移すシリル。

 ルミナスも自分も、これからまだまだ伸びる。
 それは偽らざる本音であり、誰もが認めるであろう事実だ。
 クレイアの年齢的に劇的な成長がありえないというのも、同様。
 髪の色以外は若々しく二十代と言われても信じてしまいそうな程だが、既に四十半ばなのだ。
 僅かずつにしても、着実に差は詰められるだろう。

 ゆえに、いずれ追いつけそうにも思えるのだが――――どうにもそのビジョンが浮かばない。

 老いた彼女に腕を上げたルミナスと二人がかりで挑んでも、その直後に首が二つころんと転がっている気がする。
 これまでに叩き込まれた敗北の記憶が鮮烈すぎるゆえだとは思うのだが、そう断言できない。

 それほどまでに強大で頼りになり――――恐ろしい上司なのだ。

「つくづく遠いわねぇ……んで、これで全部でいいのよね?」

「ええ、残りの雑魚は私が処理いたしましたので。
隠れていた人間もきっちりと射殺しておきましたわ」

「ありがと。しっかし珍しいわね、傭兵が仇討なんて」

「まあ、自分の子供を皆殺しにされれば仕方ないのではないかと。
自ら臨んだ戦場で戦った結果なのですから、逆恨みですけれど」

「つーか、私が殺したの二人なのに、なんで五人全部なんて話になってたのかしらね?」

 不思議そうに、首を傾げるルミナス。

 仕事の過程で殺した人間を全員覚えているわけではないが、今しがた倒した男の息子二人は覚えている。
 わざわざ名乗って挑んできたし、腕前もなかなかだったので印象に残っていたのだ。 

 しかし、この男は五人の息子の仇と言って襲ってきた。
 ルミナスがいくら記憶を検証しても、他に名乗った人間も彼に似た人間もおらず、
武技の癖に共通項のある人間も見当たらないのに、だ。
 
 終わった今ではどうでもいい事だが、少々謎であった。

「単純な話ですわ、お姉さま。あの時、敵前逃亡した人間が何人かいたでしょう?」

「ああ、そういや私達が突撃したら怯えて逃げ出したのがいたわね。
こっちに来た連中の中で最後列にいたから流石に追う余裕……って、ちょっとまさか」

「はい、一人は逃げた先にいた第二部隊に、残り二人は第三部隊に、
他の人間と一緒にさっくりとやられてしまったようですわね。
周りが気遣って彼には敵前逃亡の件を知らせていなかったのではないかと」

 知っている事実から、シリルは推測を述べる。

 敵前逃亡、それも戦う前から逃げ出すというのは傭兵にとって途轍もない不名誉だ。
 せめて生き残っていれば敵わぬ相手から迷わず逃亡を選んだという事で生存能力ぐらいは評価されたかもしれないが、
臆病風に吹かれて逃げ出した挙句別の敵に殺されました、ではそんな評価すら得られなくなる。

 息子を全て喪った父親にそんな残酷な事実を告げる人間がいなかった、というのは考えられない話でもない。
 命が軽くなってしまう業界ではあるが、人情がないわけではないのだ。
   
「……だとすると、今回の件って……」

「はい、本来分散されるべき恨みがお姉さまに集結した、という事ですわね」

「……ついてないわね。ま、良い経験になったから良しとしましょ」

 言いながら軽く伸びをして、ルミナスは気分を切り替える。

 確かに不運だったが、足元で転がっている男との戦いは色々学ぶ事が多かった。
 剣の使い方、虚実の使い方、足さばき、どれも一級品で取り入れられそうな要素も多そうだ。
 多少の面倒と引き換えにそれを得られたと考えれば、今回の戦いはそう悪いものでもない。

 そうポジティブに、何より貪欲に強さを求める思考によって、ルミナスはこの件を消化した。
 強くなれば稼ぎも良くなる、そうすればまた一歩夢に近付ける、そう思いながら。
 
(……ま、仕送りはあるけどそれでも結構稼げてるんだし、後は良い相手見つけるだけなんだけどね。
まあ……それが一番の難関なんだけど)

 はぁ、と一つ溜息を吐き、ルミナスは肩を落とす。
 その姿には戦っていた時のような歴戦の戦士たる風格はなく、どこか幼さが漂っていた。    

 ――――後にルミナスは、この時の事をこう述懐する。

「ホント暢気だったわ……良い相手と出会った後に絶望的な難関が待ち受けてるなんて、想像もしてなかったもの」


   
コメント

今回の話は海人に出会う前の話ですか。そしてこの話の少し後に運命の出会いがあるわけですね。
つまり、ルミナスの上位互換が副団長という事で良いんでしょうか?

追伸
もっと後に出す予定だったけど色んな理由で早めに出さざるをえなくなったキャラはいますか?
[2016/10/03 07:07] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


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