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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編。
というわけで番外編です。
割と珍しいネタだとは思います。
時系列は本編前になります。

では、急ぎ足ですがコメント返しさせていただきます。


コスモさん

雫の普段はあんなもんですからね。スイッチ入れば別なんですが。

果物卸し……どっちかっつーとシェリスというより、スカーレット暴走記になりそうな気が。

ロボット三等兵さん

ええ、海人の理性揺るがす色香だけで大したもんです。
身内補正もあってこそではありますが。

ホセさん

実は本編最新話で既に飲んでたりします。
もっとも、あれはまだコーヒーの良さを知って自分で色々試している最中で、コーヒーの牛乳割りみたいなイメージですが。
番外編の方はそれから時間が経って変わり果てた結果と思っていただければと思います。
ココア牛乳は……うーん、ちょい作者の中の雫のイメージからずれちゃいますね。
御理解いただけると幸いです。



次話ですが、おそらく次回更新できると思います。
間抜けにも風邪ひきましたが、一応最終調整中でそれ含めても問題なさそうなので。
毎度遅筆ですが、気長にお待ちいただけると幸いです。

では、今回も数多くの方の御来訪ありがとうございました。
気が向いた方は『続きを読む』で番外編をお楽しみください。







 番外編



 とある宿屋の一室。
 壁紙は所々剥がれており、床板も年季が入って時折不吉な音を立てる。
 立地は悪くないが窓ガラスの透明度が低いため、景色も良くはない。

 そのど真ん中で、シリルは部下―――ヴァルガス・クライドルと食事をしていた。
 
「ナイフを使う時はもう少し脇をお締めなさい。それだけでも印象が違いますわ」

「は、はい……」

 言われるがまま、ヴァルガスは脇を締める。

 そして、今しがた口を付けた前菜へと向かった。
 程良く火の通ったネギをフォークで押さえ、ゆっくりとナイフで切っていく。
 そのまま大した抵抗もなく切れたネギをフォークで突き刺し、周囲のソースを絡めて口に運んだ。

 その瞬間、緊張の最中にあったヴァルガスの心がわずかに緩む。

 ネギの食感はしっかりと残しながらも、甘味がこれでもかと引き出されている。
 添えられたソースは穏やかな酸味でそれを引き立て、爽やかな香りで軽さを演出していた。
 劇的に美味い料理というわけではないが、穏やかで優しい味わいが心をほぐしてくれる。

 その味に浸っていたヴァルガスに対し、シリルは淡々と告げる。 
 
「今度は締めすぎでしたわね。あれでは緊張でガチガチになっているように見えます。
今ぐらいの力の抜き方のまま、もう一度やってごらんなさいませ」

 そう言って、シリルはヴァルガスの脇を一瞥する。

 先程切った時締めすぎていたヴァルガスの脇は、今は緩んでいた。
 意識しすぎて固くなっていた動きが、料理の味で適度に緩められたのだ。
 今ぐらいの緩み具合で動ければ、食事の動きとしては問題ない。

 シリルは冷静に、そう判断していた。  

 軽く頷き、再び言われるがまま動くヴァルガス。
 先程と同じように料理を切り、口に運ぶ。

 その動きはシリルから見ても問題はなかった。
 慣れた大衆店でがっつくような動きでも、緊張で肩に力が入りすぎた動きでもない。
 お世辞にも優雅とは言えないが、高級店でも恥をかく事にはならない所作だ。

「よろしい。では、このままこの前菜を食べ終えてしまいましょう」

「はい」

「……少々ムラはありますが、動き自体は特別問題ないでしょう。ただし、別の問題がありましたわ」

「え゛?」

「昨日教えた内容ですわ。自力で思い出しなさいませ」

「ええっ!? えーっと……」

 毅然とした上司を前に、ヴァルガスは必死で昨日の授業を思い出す。

 ワインはグラスのボウルを鷲掴んで一気に呷るのではなく、ボウル下部を柔らかく持ちゆっくりと飲む。
 ましてくう~っ、などと叫びながら勢いよくテーブルに置くなど以ての外。
 次やったらボディにパンチではなく、全力の蹴りを叩きこむ。

 料理を食べる時は、面倒だろうが少しずつ切りながら食べる。
 アスパラガス一本一口で食べるなど以ての外。
 まして食べてる途中で口からアスパラガスの一部が出ているなど万死に値する。  
 次やったら脳天チョップではなく、剣で頭蓋をぶん殴る。

 料理を切り分ける際は面倒でもナイフとフォークを使い、音を立てない。
 見えなければいいだろうと風魔法で切るなど言語道断。
 ナイフとフォークを使うにしても、多少ならともかく大きな音は論外。
 なにより当たり前の話として、料理を切るのであって皿を斬ってはならない。
 次にやったら脛にキックではなく、鞘付の剣を脛にフルスイング。

(ど、どれも守ってる、はず、だよな……?)

 ぷるぷると震えながら、ヴァルガスは上司の顔色を窺う。

 呆れは多分に混ざっているが、怒気は見当たらない。 
 疲労感は滲んでいるが、かなり手間をかけさせているので当然の事。
 というか、もし昨日厳命された内容を破っていればとうにヴァルガスの意識が飛んでいる。

 しかし、眼前の幼い外見の上司はこういう状況で嘘は言わない。
 厳しいし容赦もないが、教える側としては真面目であり、寛容な方でもある。

 ヴァルガスが困り果てていると、シリルは仕方なさそうに口を開いた。

「まったく、今回の授業は何の為ですの?」

「そりゃ、口説きたいお嬢様と食事に行くためですが……」

 むう、と唸るヴァルガス。

 今回頭を下げて教えを乞うているのは、最近良い感じの御令嬢と食事に行く為。
 彼女が行ってみたいと言っていた人気の高級店に予約を入れ、誘いを受け入れてはもらったものの、マナーを碌に知らない。
 そこそこの商会の長の一人娘なので、相手は当然そういう店にも行き慣れている。
 何の準備もなく行って醜態をさらせばフラれるだろうし、相手にも恥をかかせてしまう。
 
 ゆえに、礼儀作法が完璧かつ短期間で仕込んでくれると評判のシリルに頼んだのだ。
 思った以上に教え方が厳しく幾度か目的を見失いかけたが、忘れる事はない。

「忘れていなければ結構。で、何か思い出しませんの?」

「……あ」

 ちょいちょい、と自分の下にある皿を指差すシリルを見て、ヴァルガスはようやく思い出した。   
 昨日、女性とのデートなら身に着けておくべき心構えとされた内容を。 

「一般女性の食べるペースは、基本的に遅いものです。
気にしない方もいらっしゃいますが、殿方がさっさと平らげてしまえば、急かす事にもなりかねません。
当然、心地よい食事からは離れます。相手の心を掴みたいなら、ペースは相手に合わせるべきですわ。
無論、相手の手元を見すぎては逆効果ですので、それとない観察に留めるべきですが」

「はい、すんません……」

「職業病の一種でもありますから、過度には気になさらないように。
さて、続けますわよ。今日中にある程度の形にはしていただきますので、御覚悟を」

 素直な部下に微笑みかけ、シリルは優雅にグラスの水を呷った。























 その夜、シリルは意気揚々と去っていくヴァルガスの背を見ながら、安堵の息を吐いていた。
 昨日散々叱責し、脅し、今日実践させたおかげか、一応ある程度の形になったのである。

 本当に、最初はどこの蛮族か、と言いたくなるほどに酷い有様だった。
 上品な店に行く前提であれば、それはまずやらないだろうという事の乱発。
 この男、実は自分に嫌がらせをしているのではなかろうかと疑う程に。

 が、どうにか引き受けた責はギリギリ果たせたと言っていい。
 清々しい気分で、シリルが伸びをしながら宿に戻ろうとした時、そこに苦笑するルミナスが立っていた

「お疲れさま、シリル。大変だったわね?」

「お姉様ほどではありませんわ。わざわざコース料理を三度も作ってくださったんですもの」  

「店で食べた事ある物の劣化品だけどね。ま、作法の練習用には丁度良かったでしょ。
味に意識奪われちゃうような出来じゃないから」

「盛り付けは本家と遜色有りませんでしたから、尚更ですわね。
随分記憶をひっくり返されたのでは?」

「多少はね。ま、それなりに手間かかったのは事実だから、上手くいってほしいもんだけど。
本番でも上手くやれると思う?」

「無理ですわね。私を前に形になった程度。本命を前にすれば色々やらかすでしょう」

「……もちっと時間かけてあげた方が良かったんじゃない?」

 あまりにもあっさりと非情な返答をするシリルに、ルミナスの表情が引きつった。

「御心配なく。アンリさんの情報によるとお相手は隠そうとはしてらっしゃるものの、そもそもヴァルガスさんにお熱。
付け加えますと、傭兵の事もそれなりに御存知らしいので、元より作法に期待はしてらっしゃらないでしょう。
まあ、流石に最初のあれのままなら一気に冷めたでしょうが」

「……それならあそこまで仕込む必要なかったんじゃない?」

「ふふっ、甘いですわねお姉様。作法はまともに期待していなかった意中の相手と初めての食事。
それが思ったよりはまともな作法を身に着けて、気遣いも見せるものの、所々慣れているとは思えない妙な粗が出る。
さて、恋する乙女はどう思うでしょうか?」 

「あー……なるほど。ヴァルガスは色々不器用なタイプだし、それに惹かれてんなら余計に効果あるかもねぇ」

「という事です。ま、所詮時間制限付きの中での小細工。上手くいくかは分かりませんが。
まあ、失敗したところで私のせいではありませんし、むしろ失敗してくださった方が次から作法教示が無くなって好都合ですわね」

「ホント素直じゃないわね、あんたも」

「本音ですわ。今まで何人に頼まれたかご存知でしょう?」

「そーね。当然、今まで渋られても断られた奴は一人もいないって事も知ってるわよ?」

「そうでしたかしら? 記憶にございませんわね」

 茶化すようなルミナスに、シリルは悪戯っぽい笑顔で答えた。

コメント

テーブルマナーかぁ…海人の腕前はどんなもの何でしょうね?まあ、それだけで番外編を一話くらい作れそうですが。
まあ、恋が実るかは…これからでしょうけど

追伸
この世界の屋台って、時代劇でみる木の屋台を思い浮かべればいいんでしょうか?ついでに屋台ネタはいかがでしょうか?
[2018/02/19 07:15] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


更新ありがとうございます。シリルさんもあくどいというか恐ろしい女性ですね。
[2018/02/21 14:02] URL | ロボット三等兵 #- [ 編集 ]


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