ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄23
 憎々しいまでに晴れやかな空。時折心地良く吹き抜ける風。
 そして上空を忙しなく行き交う小鳥達。

 これだけの心地良さを感じるべき要素が揃ってなお、天地海人は不機嫌だった。
 いかに元の世界では常識を覆し続けてきた天才科学者だろうと、このファンタジーな世界では逆に常識を覆される事がある。
 そんな現実を突きつけられた気分だった。
 
 理由は彼の手元。激流の川で泳ぐ魚を捕縛すべく川に突っ込んだ、捕獲用のタモにあった。
 ふと手応えがほんの僅かながら軽くなる。
 本日何度目になるか分からない溜息を吐きながら、海人はぼやいた。
   
「……よもやこんな事になろうとは……考えが浅かったな」

 引き上げた網の中に、魚は一匹もいない。それも当然で、つい先程まではタモだった物が吹流しになっている。 
 おおよそ大型の魚が暴れてもビクともしないように出来ているはずの網が、見事に引き裂かれていた。
 
 創造魔法という、植物以外の生物を除けば基本的に何でも作れるという実に便利な魔法によって、
後四十個ほどのタモが用意されているが、既に彼は十個消費している。そして、釣果はまだ一匹だ。
 その一匹も小さかったために次の獲物を狙っていたのだが――それ以降まるで釣れない、というか捕らえられない。
 二個目のタモを食い破られた段階で正攻法を諦め、金魚すくいの要領で破れる前にひょいっとこちらの岸に放り投げようとしているのだが、上手くいかない。
 
 ここ数日、彼の食事は実に健全だった。なにしろ、食事の主材料全てが植物性だ。
 出汁などの液体は動物性でも創造魔法で作成できるため、貧しい食卓ではないが、動物性蛋白質が致命的に欠けている。
 うどんや蕎麦を食べる際の天ぷらは野菜の掻き揚げだし、ご飯のおかずは漬物や野菜の煮付け。
 一応肉もあるが、それは以前貰ったビーフジャーキーのみ。極上の味だが、食事のおかずとしては物悲しさがある。 
 特に好き嫌いは無い海人だったが、何日もそれが続くと流石に飽きてきた。
 そこで、近くの川で釣りをする事にしたのである。
 町に材料を買いに行くという案も考えたのだが、ここから町までは歩くと着くのは翌日になる。
 魔力による肉体強化を行いつつ走ったとしても、海人の場合は数時間かかる。
 しかも、それも何事もなかった場合限定だ。
 山賊や盗賊が珍しくないこの世界では、無防備に一人で歩いていれば町に着くまでに高確率で襲われる。
 とはいえ武器を使えば返り討ちにする事なぞ造作も無いのだが、
それをやると相手の口を塞がなければならないため、色々面倒になる。
 死体の始末から何から余計な仕事が増えるし、他の人間にタイミング悪く見つかりでもしたら下手をすれば強盗と間違えられかねない。
 
 マウンテンバイクでも使ってこの舗装されていない道を一気に走り抜けるという手段もあるのだが、
それはそれで目立つし、町に着いてから盗まれない保証が無い。
 
 釣りならば危険は少ないし、何より元手がかからない。
 そんな軽い気持ちで海人は釣りを始めた。  

 が、いざ釣りを始めてみれば、最初のアタリで釣竿が折れた。
 魚自体のやたら強い力に激流の勢いが加わり、糸を食い千切られるついでに竹製の釣竿までボッキリと折られてしまったのだ。
 とはいえ、ある意味これは想定の範囲内。元々流れの速さゆえに普通の釣りでは無理があるとは思っていたのだ。
 試した理由は、単にやってみたらどうなるか見てみたかっただけにすぎない。
 さすがに竿がへし折られるとまでは思っていなかったが。
 
 なので普通の釣りは無理と判断した海人は、即座にあらかじめ用意しておいた別の戦法に変えた。
 引き合いになる事など無い、タモというある意味反則な戦法に。
 が、結果はそれでも駄目で、海人は屋敷に戻って大量のタモを作る羽目になった。   
 
 弱気になる自分を奮い立たせるように自らの顔を叩き、海人は次のタモを取りに向かった。
 一匹とはいえ捕らえたのだから、二回目捕らえられないはずが無い、と自分に言い聞かせながら。

 疲れた様子で十一個目のタモを手に取ったところで、海人の腹がくう~、と鳴った。
 まるで摂取できるかもしれないカロリーよりも消費するカロリーの方が大きいと抗議しているかのようだ。

 それで気力を削がれてしまい、海人はタモを持ったまま尻餅をついて天を仰いだ。

「……ああ、ルミナスやシリル嬢の作ってくれた食事は美味かったなぁ……」

 ほんの数日前の事だというのに、えらい懐かしく感じてしまう食卓に思いを馳せる。

 今にして思えば、あまりにも恵まれた環境だった。
 特に意識している様子も無いのに、トータルで見ればかなり栄養バランスが取れた食事。
 なにより、作り手である元同居人二人の好みで、肉が多かった。
  
 だが、残念ながらその生活は終わってしまった。

 会話の相手すらいない事に一抹の寂しさを覚えながら、海人は数日前の事を思い返した。 







 ほんの数日前。とある人里離れた断崖絶壁にある家。
 
「ん~、のんびりゆったり、平和ねぇ~……」

 ルミナス・アークライトが、まったりとした口調で呟いた。
 彼女はテーブルの上にだらしなく突っ伏し、緩んだ顔でまどろんでいる。
 背に生えた漆黒の翼が時折思い出したかのようにバサバサと動く様が、まるで寝返りのようだ。
 無防備にも見えるその姿は、彼女の美貌と相まって妙に色気がある。
 
「ですわねえ……こーやってゴロゴロしてられるのはなんとも形容し難い幸福感ですわよねぇ……」

 同じくまったりとしているシリル・メルティが暢気そうな声で呟く。
 同じだらしない仕草でも、彼女の場合外見は十二、三歳にしか見えないため、非常に可愛らしい。
 時折眠気を覚ますために顔を拭っている仕草など、まるで子猫のようだ。

 のんびりしている同居人二人を横目で見ながら、海人は苦笑した。 

「だらけとるなぁ……まあ、仕事が入ったらそんな事はしてられんのだろうが」

「まーね。私の隊は癖のある奴多いから纏めんのも一苦労だし」

 傭兵団の一隊の長という立場にあるルミナスが、そんなぼやきをこぼした。
 彼女の任されている部隊のメンバーは能力が高い反面性格がかなり個性的なので、まとめるのが難しい。
 というか、自分に同性愛的慕情を抱き、夜這いまで企むシリルが一番まともという段階でどうかしてる、と口には出さず嘆く。

 そんな嘆きの篭った視線を受け流しつつ、シリルは欠伸をかみ殺しながら呟いた。

「そーいえば、未だに誰も来ませんわねぇ……余程前回の仕事でへばってるのでしょうか?」

 今となっては何ヶ月も前の、地獄のようだった戦場を思い返す。
 
 その時、最後の最後で彼女らの隊は分断されてしまい、結果隊長と副隊長を欠いた隊員が、敵軍のど真ん中に取り残された。
 それから三時間かけて他の団員の協力と彼女らの捨て身の特攻でどうにか全員助け出したものの、
三時間もの間強敵に囲まれた状態で奮戦していた事は歴戦の戦士達の心も多大なダメージを与えたらしく、
仕事が終わった直後には皆一様に頭のネジが数十本飛んでいた。
 
 一度ぐらい様子を見に行った方が良いかな~、などとシリルが考えていると、

「いくらなんでもそりゃないわよ。
あれで立ち直れなくなるほどヤワな連中じゃないでしょ?」

 何でもなさそうに、ルミナスが否定した。
 実のところ、前回ほどではなくともルミナス達の隊は幾度となくトラウマになるような戦場を共に潜り抜けてきている。
 それでも全員懲りる事無く傭兵を続けており、精神的に追い詰められても最長一ヶ月で復帰している。
 ルミナスはそんな部下達の逞しい精神力に全面の信頼を置いていた。
  
「……言われてみるとそうですわね。ですが、それならなぜ来ないのでしょう?」

「大方女遊びなり男遊びなりに精出してんじゃないの?
あとは博打でストレス発散しようとして前の稼ぎスって必死でバイトしてるとか」

 寝そべったまま、シリルに返答を返す。

 己の部下に対してあまりと言えばあまりな人物評だが、概ね傭兵というのはそんなものなので、別段酷評ではない。
 むしろ仕事が無い期間をのんびり過ごせる事が幸せというルミナス達の方が、傭兵としては異端なのである。
 
「あー、ありそうで……噂をすれば、ですわね」

 言葉の途中で、シリルは玄関へと視線を向けた。
 そして脇にあったカップの紅茶を一気に飲み干すと、すぐさま耳を塞いで身を縮める。
 それを見計らったかのように家の外でダダダッ、と複数の人間が着地する音がし、それをかき消すかのような声が響いた。
 
『隊長ぉぉぉっ! いますかぁぁぁっ!』

 男女入り混じった凄絶なまでの大合唱が家の中にまで響き渡った。
 その音量の大きさを物語るかのように、家の軽い小物がガタガタと揺れている。
 もはや音響兵器にすら等しいその声量に、油断していた海人は脳髄を揺さぶられてしまった。
 対してルミナスは慣れた様子で両耳を塞ぎ、それを免れている。
 声の残響が消えたところでルミナスは玄関のドアを乱暴に開け、案の定立っていた部下達を怒鳴りつけた。

「やっかましいっつーの! まったく、せっかくゆっくりしてたってのに」

「すんません。なんせ久々だったもんですから。お変わりないっすか?」

 悪びれる様子もなく、ドアの真正面に立っていた男が訊ねる。
 彼の背後に数人の男女がいるが、彼らもまた一応頭を下げているだけで、悪びれている様子は無い。
 まるで反省していない部下達に嘆息しつつ、ルミナスは玄関のドアを全開にした。

「見ての通りよ。ほら、入るんだったらとっとと入りなさい」

「おっっ邪魔っしま~……隊長、なんすか、あの屍」

 テーブルの上に突っ伏している物体を指差し、訊ねる。
 その屍は、頭を揺らしながら、必死で体を起こそうとしていた。
 
「あー、うちの居候……つーか大丈夫、カイト?」

「大丈夫なわけあるか。鼓膜が破れるかと思ったわい」

 グラグラと頭を揺らしながら海人が体を起こすが、どうにも安定しない。
 見かねたルミナスが苦笑しながら、右腕で優しく彼の背中を支えた。
 その造作は素っ気無いながらも慈愛に満ち溢れている。 

『…………』

 一同、しばしの沈黙。
 
「あん? どうしたのよ、あんたら?」

 急に黙り込んだ部下達の様子を不審に思い、問いかける。
 が、それに返ってきたのは予想もしなかった大絶叫だった。

『た、た、た、隊長に男ができたぁぁぁあっ!?』

 先程にもまして凄まじい大音声、さらには慌てたルミナスの支えまで外れ、持ち直しかけていた海人が再び倒れた。
 ぐわんぐわんと頭の中で声が木霊し、否定したくともする余裕が無い。

「な、ななな……っ!?」

 一方でルミナスは予想外の誤解に咄嗟に言い返すことも出来ず、ただ顔を赤面させてうろたえている。
 すぐさま否定の言葉を返したかったのだが、なぜか上手く言葉にならない。
 そうこうしているうちに、部下の一人――隻眼の男が血相を変えて言い募った。
 
「や、やばいっすよ隊長! 俺らはまだしも副隊長にこんな事知られたらその男殺されちまいますよ!?
俺らが復活してんですから副隊長だってすぐにでも……!」

「私ならここにいますわよ? まったく、毎度のように騒がしいですわね」

 シリルが溜息を吐きつつ海人の影からひょっこりと顔を出す。
 どう転んでも当分はありえない、馬鹿馬鹿しく野暮な誤解をしている部下達を冷たく睥睨する。  
 これは単なる心情の表れではなく、頭に血が上って暴走しかかっている部下に冷や水を浴びせる意味もあった。
 
『…………』

 一同、再びの深い沈黙。

「どうかしましたの?」

『ふ、二股ぁぁぁぁっ!?』

 三度目の大音声により、やっとの思いでもう一回体を起こそうとしていた海人がまたしても倒れた。
 いっそ全員爆殺してやろうか、などと物騒な事が頭を過ぎるも、それを実行するほどの余裕は無かった。

「なんてとんでもない誤解してますの!?」

 自分の予想を超えて色々と問題がありすぎる誤解に発展させた部下達に、シリルは反射的に言い返していた。
 冗談ではない。海人はたしかに気に入っているが、恋愛対象としてなど考えた事も無い。
 まして、今の彼女の唯一にして絶対の恋愛対象であるルミナスとの二股を許すなど、ありえるはずも無い。
 あまりに心外な誤解に、シリルの顔が真っ赤に染まった。
 
 が、そんな彼女の様子も目に入らないようで、一番体格の良い筋骨隆々とした男が体に魔力を漲らせ始めた。

「こ、この誑しが! 純な隊長弄ぶたぁ良い度胸だ! ぶっ殺す!」

「待て落ち着け! 他の人間ならともかく、隊長と副隊長だぞ!?
どんな凄まじい手段使えばこの二人に二股掛けられるのか吐かせてからでも遅くない!」

 優男風の青年が男を羽交い締めにして取り押さえる。
 彼は多少冷静さを残しているらしいが、それでも海人が二股をかけていると当然のように認識しているようだ。

「そんなもん、あっちのテクニックじゃないの?
相当な色男だし、あたしも一度相手してもらいたいものねえ」

 浅黒く日焼けしたナイスバディな女性が妖艶な笑みを浮かべつつ、海人に流し目を送る。
 それに別の男が自分ならいつでも、と反応して殴り倒されたり、
それを助け起こすフリをした男が女性隊員のスカートの中を覗こうとして顔に膝を叩き込まれたりと、
他の人間もそれぞれが勝手に騒ぎ始め、瞬く間に家は乱痴気騒ぎになった
 
 が、騒ぎの話題の中でもその基点となった海人に対する憶測は凄まじい勢いで肥大化し、
まずはシリルを口説いてから一緒にルミナスを襲っただの、逆にルミナスを口説いてから一緒にシリルを手篭にしただの、
その際に筆舌しがたいあくどい手段を用いただの、まさに言いたい放題であった。

 誤解を解くべくルミナスとシリルが大声で諭すも、誰一人として反応を返さない。
 騒ぐ音が大きすぎて、そもそも彼女らの声が耳に届いていないのだ。
 彼らとしてもまるで予想していない光景だった、という混乱もあるのだろうが。
 
「……だ、駄目だわ。こいつら、話全く聞いてない」

「落ち着くまで待つしか……あの、カイトさん?」

 いつのまにかゆらり、と立ち上がっていた男に、シリルが恐る恐る声をかける。
 この場で最も貧弱であるはずの、それこそ肉弾戦なら一瞬で肉塊に変えてしまえるはずの男が、やたら怖い。
 逆らってはいけない。なぜか彼女の戦士としての本能がそう叫んでいる。

「物理的に落ち着かせる。邪魔はしないように」

 静かに宣言する海人に、シリルだけでなくルミナスもコクコクと頷き、彼の前からどいた。
 二人が脇に避けると同時に海人の右手の先に魔力の光球が現れる。
 それは次第に大きくなっていき、ものの数秒とかからず海人の前面を覆い尽くした。
 
 あまりに莫大な魔力の輝きに、騒いでいた者達が息を呑み、言葉を止める。
 そんな中で、先程海人に殴りかかろうとした男が、余裕たっぷりなニヒルな笑みを浮かべた。

「とりあえず落ち着こう兄ちゃん。そんな魔法で吹っ飛ばされたら俺らちょっと無事じゃすまないんだ。
いや、生き残る自信はあるんだけどな? 生き残ったとしてもそれが精一杯っつーか、むしろ苦しんで死ぬ事になりそうなんだ。
初対面の人間いきなりぶち殺すのはどうかと思うぜ?」

 余裕そうな表情とは裏腹に、今にも地に頭をこすり付けんばかりの口調で命乞いをする男。

 が、それも無理は無い。彼の認識では、目の前で今放たれんとしているのは光の下位攻撃魔法セイクリッド・ブレッド。
 威力は弱いが発動時間は短く、術者次第ではそれを多数同時発動させる事で上位魔法に匹敵する威力を発揮する魔法。
 その場合術式制御が難しく、魔力消費も通常の上位魔法の五倍近くまで膨れ上がるが、その分はるかに早く攻撃が可能となる。
 そして、歴戦の猛者揃いの彼らといえども、この状況下で放たれれば、最終的な生存確率は低い。

 実のところ、海人は創造という特殊属性のせいで、光を含め基本属性魔法全てが使えないため、
放とうとしているのは上位魔法の消費の十倍近い絶大な魔力をそのまま放つ魔力砲なのだが、彼らがそんな事を知る由も無い。
 まあ、威力に大差は無いため放たれる側としてはどちらも大差ないのだが。
 
 そして、海人は相手の声から慄きを感じ取りつつも、淡々と命乞いを却下する。

「なに、話を総合すると、私はおおよそ人道とはかけ離れた手法で二人を弄び尽くしている鬼畜らしいからな。
その程度では心は痛むまいよ。ま、実際たかか十人程度殺した程度で痛むような心の持ち合わせはないんだがな?」

 海人の口唇が邪悪に吊り上がり、大きさは変わらぬまま光球の輝きが強まる。
 自分達の死亡率が一気に跳ね上がった事を感じ、男はもはや恥も外聞も捨てざるをえなかった。 

「すいませんでした! せめて俺だけでも見逃してください! まだ七歳の妹がいるんです!」

「ずりいぞてめえ!? お、俺だって七十のじーさんばーさん抱えてるんだ! 見逃してくれ!」

「あ、あたしは父親が足悪くして働けないんだ!」

 口々に涙ながらの命乞いを始める者達。
 よくもまあこれだけ、と言いたくなるほどにそのバリエーションは豊富だった。
 
 ちなみに、誰一人として嘘は言っていない。
 妹がいても自分自身が勘当状態であり何年も仕送りはおろか会ってもいないことや、
七十の祖父母が未だ現役で稼いでいる冒険者な事や、父親の代わりに母親が働いて以前の倍の収入がある事などを言っていないだけである。
 
 この緊迫した状況下にありながらそんな小細工を思いつく歴戦の勇士達の
見苦しくもどこか愉快な騒ぎを聞きながら、海人は優しげに微笑んだ。

「……ふむ。要は皆仲良くふっ飛ばしてほしいと」

『全然違うぅぅぅぅっ!?』

 一同喉も張り裂けんばかりの大絶叫。
 今から防御魔法を使ったところで発動時間の関係で紙の如く破られる事が目に見えているだけに、必死だった。
 が、それにも構わず海人は一個小隊を壊滅させかねない威力の一撃を放たんと意識を集中する。

「はいはい、カイト。怒るのはしょうがないけど、そこまで」

 その矢先、ルミナスが海人の鼻先を人差し指で軽く弾いた。
 意表を突いた彼女の行動でイメージが崩れ、魔力の光球は砲撃にはならなかった。

「……邪魔するなと言わなかったか?」

 やや不機嫌そうに、ルミナスの顔を睨む。
 が、その顔は不愉快、というよりはむしろ遊んでいた玩具を取り上げられた子供のようだ。
 
「言われたけどね。そのままそれぶっ放されると家具は壊れるし、家の風通しも良くなりすぎるでしょうが」

「む……失念していた」

 部屋に満ちていた魔力を霧散させる。
 本当ならば体内に戻したいところだったが、それをすると魔力砲であった事がばれてしまう。
 彼らに不要に情報を与える気はなかったため、海人はあえて魔力を無駄にした。
 そんな思惑など知る由もなく、ルミナスの部下達は命拾いした事にただ胸を撫で下ろしていた。

「ありがと。さて、とりあえず言っとくと、あんたらの下世話な妄想は全部大外れ。
こいつはちょっとした事情でうちに居候してる友達よ。
名前はカイト・テンチ。見ての通り体は貧弱だけど怒らせると怖いから覚えときなさい。
あと、下らない勘違いはちゃんと謝るように」

『はい! すいませんでした!』

 一斉に海人に向かって敬礼した後、頭を下げる。
 先程までの勝手な騒ぎの時とは違い、見事なまでに整然とした動きだ。
 そんなルミナスの統率力に感心しつつ、海人は聞くべき事を訊ねた。 

「……で、仕事の話があるのなら席を外すが?」

「あ、今回は厳密には仕事の話じゃないんで、そのままいてもらって大丈夫っすよ」

 隻眼の男が、そう言って立ち去ろうとしていた海人を止めた。
 これからする話は、聞かれて困る事ではない。
 というよりはやる事の大きさの関係上、知りたい人間ならいつでも知れる事だ。
 
「厳密にはってどういう事?」

「実はアンリ隊長経由で団長から連絡が来ましてね。
休暇が長かったんで、鈍ってないか一度チェックするんだそうです」

「ふーん。前みたいにトーナメント戦かしらね」

 三年程前の事を思い返し、ルミナスが呟いた。
 以前も一度休暇が続いた時、鈍っていないかどうかのチェックが行われた。
 それは闘技場を借り切ってトーナメント形式で行われ、三位までは賞金も出た。
 その時と同じならば、臨時収入を得るチャンスでもある。
 前と同じであれば、鈍りすぎていた場合はクビになるのだが。  

「ええ、二週間後、数日間かけてグランベルズ帝都郊外の小さな闘技場借り切ってやるんだそうです」

「……こっからだと今日出発でギリギリ三日前か。そういや、今回あんたら今まで何やってたわけ?
一度も顔出さないなんて珍しいじゃない」

「えー……まあ、色々ありまして。あ、来てない連中は先にグランベルズ行ってるんでご心配なく」

 あはは、と乾いた笑いで隻眼の傭兵は誤魔化した。
 他の者は一様にあさっての方向を向き、気まずそうにしている。

 とてもではないが、言えなかった。
 全員が全員、前の戦いの心的外傷でほんの数日前まで色々壊れていたとは。
 ある者は夜な夜な全裸で街中を生の喜びを絶叫しつつ疾走して自警団との鬼ごっこに興じ、
ある者は大木に向かって剣を振るってなにやら怪しげな見た事も無い奇怪な神像を彫る事に熱中し、
またある者は森に引き篭もって走り回りながら連日魔物を斬り殺しまくるバーサーカーと化していたなど。

 まして、結局全員が召集をかけに来た別部隊のメンバーに三人がかりで取り押さえられ、しこたまぶん殴られてようやく正気に戻った事や、
現在来ていない同僚達は正気に戻ったものの、積み重なった無茶で動けなくなってグランベルズへ馬車で輸送されている事など、
なんのかんので部下思いな上司に言えるはずもなかった。

「ふん? なんか隠してるみたいだけど……ま、今は置いときましょ。
すぐ出発しないといけないから準備もしなきゃいけないし……じゃ、カイト。
残念だけど……」

「ああ。今日で居候は終わりだな。楽しい生活だったよ」

 笑顔を向け、右手を差し出す。
 その手を握り返しながら、ルミナスもまた笑顔を返した。

「ん、私も楽しかったわ。戻ってきたら遊び行ってもいい?」

「勿論だ。好きな時に来い。美味い物を用意して待っていよう」

「ありがと。それじゃシリル、荷物まとめ終わったら送ってあげて。
私らはカナールで道中の食料買って待ってるから」

 シリルに指示を出し、旅の準備を始めに自分の部屋へ戻ったルミナスの背中を眺めながら、
海人もまた必要な物をまとめるために部屋へと戻っていった。
 
  





 最後まで賑やかだった居候生活の回想を終え、海人は軽く天を仰いだ。

 ――数日前と比較して、今の生活のなんと味気ない事か。
 
 そんな弱気が出てきそうになるのを、海人は軽く頭を振って振り払った。

「……ま、終わった事を考えても仕方ないか」

 気分を切り替えつつ、海人は今日も動物性蛋白質の摂取を諦めた。
 いい加減空腹が限界に近付いているし、なにより他にもやらなければならない作業がある。
 
 海人はタモの山を脇にどけると、布製のシートを広げ、そこに持ってきた御重を乗せた。
 その中には一番上にたっぷりめのご飯、二段目に野菜の煮物、三段目に漬物と和菓子といった具合に詰められており、
なかなか見栄えが良い。
 これで焼き魚があれば完璧なのだが、肝心の魚が無いのでは仕方ない。

 清々しい大自然の中での食事というスパイスで我慢する事とし、
海人はすっかりお馴染みとなった健康的ながらも色々物悲しい食事に手を伸ばした。




















 
 とある森の中で、宝蔵院刹那は困っていた。

 ここ数日、食事があまりに寂しい。 
 理由は単純で、ここしばらく、おおよそ三日ほど穀物を食べていない。
 武者修行の一環として現在彼女がいる森の奥でモンスターを狩って肉を調達し、そこらの植物を食べて暮らしていたが、
予想よりも早く、持ち込んでいた芋などの穀類が底を尽きてしまった。
 とはいえ、修行の一環と思えば我慢できない事は無い。
 
 彼女が困っているのは、それによって生じた現在前を行く妹の態度だ。
 予想よりも十日以上早く穀物が尽きてしまったので怒るのは分かるのだが、そこまで怒らずとも、と思ってしまう。
 なにせ、自分から話しかけない限り一切の言葉を発してくれない。
 それでいて、修行の時間になるとまるで飢えた猛獣の如く全力で刃を向けてくる。
 しかも、夜中には対奇襲用訓練という口実で爛々と目を輝かせながら、夜襲の隙を窺っている。

 そろそろ、限界であった。

「雫、拙者が悪かったから機嫌を直してくれないか?」

「へー……悪かったって何が悪かったって思ってるのかなー?
あたしの言葉無視して穀物少量しか持って来なかったことかなー?
それともこっそり持ってきて土ん中隠しといたあたしの芋見つけて食べちゃったことかなー?」

 しょぼくれた顔で頭を下げる姉に少女――宝蔵院雫は振り返って優しそうな笑みを向けた。
 
 いわゆる目が笑っていない笑みとは異なり、まさに完璧な、満面の笑み。
 ただし、その笑みと同時に放たれ始めた彼女の禍々しいオーラは、周囲の獣を残らず散らしている。
 その象徴的な出来事として、文字通り脱兎の如く逃げ出した哀れな兎が、
よりにもよって数百m先のモンスターの口に飛び込んでしまい、そのまま食われてしまっていた。

「わ、悪気は無かったんだ。
あんなに穀物の減りが早いとは思ってなかったし、いざとなれば地面を掘れば芋ぐらい出るだろうと思ってたんだ。
で、掘ったら芋が見つかったから……」

 恐々といった様子で、釈明を始める刹那。
 彼女としては自分の楽観で食料が尽きた責任を取るつもりで、穴を掘って芋を探したのである。
 だが、雫はそんな姉の心情を汲み取った上で、軽やかに叩き潰す。
  
「草も何も生えて無いとこ掘って芋が出てくるって事を不思議に思わないこと自体どうかしてるよねー。
しかも見つけた事あたしに言う前に一人で先に食べちゃってたし」

「い、いや、腹が減ってたから、つい……そ、それに、その詫びは一応やったじゃないか」

「一人で野草とか調達してくるって言って持って帰って来た毒キノコと毒草の山の事かなー?
そりゃあ、あたしもお姉ちゃんもあの程度の毒物でどうこうなるような柔な体して無いけど、
何も毒入りだけ選んで持ってくること無いんじゃないかなー?
それとも毒草や毒キノコの判別も出来ないくせにあんな無謀な事言っちゃったのかな、お姉ちゃんは?」

 まさかそんなはずないよねー、と不吉なほどに明るい声で付け加えつつ、再び前を向いて歩き始める。
 その言葉の真偽は、脂汗をだらだらと流し始めた刹那の姿が何よりも雄弁に語っていた。 

「す、すまん……」

「本気でそう思ってたら、諸々の怒りを全力でぶちかましてやろうとした妹の正義の刃を払って
合計三百発以上峰打ち叩き込んだりするかなー?」

「ちょ、あれはああしないと拙者が殺されてただろう!?」

 軽い調子ながら明確な怒りを滲ませた妹の声にうろたえつつも、しっかり反論する。

 事実、ここ数日の修行は非常に危険だった。
 なにせ首、心臓、喉、脾臓、と一通りの即死級の攻撃を各数百回は狙われた。
 しかも夜中は少しでも深く寝入ればその瞬間に急所目掛けて刃物が飛んでくる。
 一撃でも直撃していれば刹那は今頃土の下か何者かの腹の中である。

 が、そんな当然な反論に雫は軽やかに振り向き、

「むしろ死ね、愚姉♪」

 笑顔のまま、この上なく簡潔かつ冷たい言葉で却下した。
 
「あうう……」

 容赦ない言葉に肩を落とす刹那。
 非があるのは自分であると自覚してはいるが、可愛い妹の毒舌は堪える。

 そんな彼女に、雫はため息を一つ吐き、
 
「はあ……ま、お姉ちゃんの間抜けも無知も御馬鹿っぷりもいつもの事だからいいけどね。
そろそろ肉じゃなくて魚食べたいから、あっちの川で魚獲ろ。
あたしの代わりに魚獲ってくれたら許してあげる」

 にかっ、と可愛らしい笑みを浮かべ、少し先にある川を指差した。
 かなりの激流だが、食用になる魚が生息している事は二週間ほど前に確認済みである。
 それがなかなかの美味であった事も。
 
「分かった! 任せておけ!」

 むん、と気合を入れ、刹那は程近い位置にある激流の川へと歩き始めた。 
 











 良く言えばヘルシー、悪く言えば侘しい弁当を食べていた海人は、唐突にその手を止める事になった。
 理由は、突然向かいの森の奥からひょっこり出てきた、女性と少女の二人組。
 
 女性の方は二十歳前後。艶やかな黒髪を白の紐でポニーテールにまとめており、上は白の半着、下は紺の馬乗袴を履いている。
 顔は凛々しく整っており、腰に差した二本の刀と合わせると見事なまでに女剣客といった風情だ。

 少女の方は年齢おおよそ十四、五。濃い緑の半着に下は紺の四幅袴を履いている。
 髪は漆黒のそれを短めに切り揃えていてボーイッシュではあるが、可愛らしい顔立ちが彼女の性別をこれでもかと示している。
 彼女は二本の小太刀と思しき刀を十字に背負い、空になっているらしい紐付きの大きな布袋を肩から下げている。
 
 どちらの容姿も目の保養になるが、海人が食事の手を止めた理由はそこではない。

(……川の音と水しぶきがあったとはいえ、ここまで気付かなかっただと?)

 探るような目で、二人を観察する。
 食事中も海人は一応周囲に気を配っていた。
 このファンタジーな世界、しかも室内ならまだしも屋外での食事。
 モンスターや野盗など、危険には事欠かない。
 そのため、何があっても対処できるよう無属性魔法の防御壁を瞬時に展開出来る準備をしている。

 そして、一番何か出てきそうな森の方は常に横目に見ていた。

 だというのに海人が、常人には分からないほど僅かな色の違いすら一目で見破るほどの観察力を誇る彼が、
森の中から二人の姿が完全に出てくるまで気付かなかったのだ。 
 
 若干警戒しながら様子を窺っていると、二人が海人へ顔を向けた。
 そして女性は丁寧に一礼し、少女の方は笑顔で軽く手を振った。
 その造作はどちらも極めて自然で、何か企んでいるような様子は見当たらない。

 どうやら敵意は無いらしいと悟り海人が緊張を緩めた時、女性の方がざぶざぶと川に入っていった。
 まるで堤防が決壊して起きた洪水のような激流の川へと。

 しかし、彼女の顔には些かの痛苦も見当たらない。
 まるで普通に歩くかのような気軽さで悠然と川の真ん中まで辿り着き、手馴れた様子で右腕を川の中に突っ込む。
 そしてそのまま微動だにせず、瞑目して呼吸を整えた。

 ――数秒後、突如として川の表面が弾け、魚が打ち上げられた。
   
 それを皮切りに次から次へと魚が川から弾き出され、森の中にいる少女へと飛んで行く。
 少女の方も凄まじい速度で送られてくる魚を落とす事無く軽やかに受け止め、広げた麻布の上に積んでいる。

 魚の山がある程度大きくなったところで、少女――雫が姉に声をかけた。

「こんなもんだね。お姉ちゃん、もういいよ」

「む、そうか。では、焼くとす……待て、そういえば塩はまだ残っていたか?」

 川から出ようとした刹那が、ふとそんな事を訊ねる。

 たっぷりめに用意して持ってきてはいたが、穀物の不足分を埋めるように大量の肉を食べたため、塩の減少は激しかった。
 モンスターを狩って食事に変えてしまうアグレッシブな姉妹ではあったが、流石に塩無しで食べられるほどには野性的ではない。
 しかもここはあくまで川であるため、水による塩味も期待できない。

「げっ!? あっちゃ~……そういえば使い切ってたよ。
すいませ~ん、そこの素敵なお兄さ~ん!」

 雫はくるり、と海人へ向き直り、大声で話しかけた。
 
「……私の事か?」

 雫の言葉に軽く周囲を見回し、己を指差す。
 一般的な評価では間違いなく美青年の部類に入る海人だが、少々自覚が薄い。

「謙遜するまでも無くこの場にいるお兄さんは貴方しかいませんよー。
申し訳ないんですけど、お塩ありましたら分けていただけませんか?」

 にこやかな笑顔を向けて、雫はお願いした。

 近くに山積みされた大量のタモから、目の前の男が釣りに来たという事は容易に想像がつく。
 ならばここで食事をしている以上、当然調理用の塩は持って来ているはず。
 貰えるかどうかは別として、訊ねて損は無い。
 
 そんな計算の上に成り立ったお願いは、思いのほかあっさりと受け入れられた。

「構わんが、代わりに魚を一匹分けてくれないか?
情けない話だが、先程から獲ろうとして全然獲れなかったんだ」
 
「あ、いいですよ。お姉ちゃん、あと何匹か追加。あの人に差し上げて」

 岸に上がろうとしていた姉に指図する。
 刹那は軽く頷くと川の中に両腕を突っ込み、計八匹の魚を捕らえた。
 いかなる技によるものか魚は全て気絶しており、ピクリとも動かない。
 そしてそのまま激流の川を悠々と歩み渡った。

「これは何処に置きましょうか?」

「そこの中に入れてくれると助かる」

 海人が魚用に用意しておいた桶を指差すと、刹那は身を傷めないようそっと中に投入した。
 そして、服の水を軽く振り落としてから海人の方へ歩きだし――突如、早足になった。    
 血走った目で急接近してきた刹那に、海人が目を丸くした。

「ど、どうした?」

 刹那が間近に来たところで、海人は彼女の視線が別の場所に向けられている事に気づいた。
 それが指し示す方向は彼の持ってきた御重。より正確に言えば、艶やかな白米がこれでもかと詰められた段である。 

「お、お米……真っ白なお米……」

 まるで数日間砂漠でさまよった末にオアシスを見つけた旅人の如く、ふらふらと手が伸びる。
 その目は虚ろで、既に海人はおろか当初の目的であった塩も映していない。
 
 が、その腕が完全に伸びる前に、雫から投擲された岩によって、ゴツンという音と共に刹那は正気に返った。
 すぐさま手を戻し、海人に一礼してから塩を受け取って踵を返す。
 背筋は伸びているというのに、その背中はどこか煤けていた。 

「あー……少し食べるかね?」

 困ったような、苦笑するかのような声に、刹那の足が止まった。
 振り向くと、軽く頬を掻きながら白米の詰まった御重を差し出している男の姿。

「よ、よろしいんで……い、いえ! お塩を分けていただいた上にそこまでしていただくわけには……!」

 一も二もなく飛びつきかけた刹那は、寸前で思い止まった。
 物乞いではあるまいし、初対面の人間にそこまで情けをかけてもらっては面目が無い、と。

「塩に関しては魚との取引だし、米も屋敷に沢山あるから構わんよ。
ただ、代わりと言ってはなんだが、干物にしたいんでもう少し多めに魚を貰えると嬉しい」

「それだけでよろしいんですか!?」

 刹那は目を輝かせて、海人の提案を喜んだ。
 彼女にとってこの川の魚を獲る事など、雑草を摘むにも等しい。
 それだけに米と引き換えであれば何百匹でも捕獲して見せる、と言わんばかりの表情だった。

「ああ。事情があって米と野菜は有り余ってるんだが、肉と魚が無いんでな。
とはいえ、二、三十匹あれば十分だぞ」

「承知しました!」

 威勢良く叫ぶと、刹那は川に勢い良く飛び込み、再び魚の乱獲を始めた。
 
 










 一時間後、三人は互いの自己紹介を済ませ、海人の屋敷の庭で食事を始めようとしていた。
 初めは川沿いの所でそのまま食べようとしていたのだが、海人が急遽屋敷に誘ったのである。

 本音を言えば海人はあまり屋敷には入れたくなかったが、総数七十匹近くの魚が二人の昼食一回分と聞かされては
米を新たに炊かないわけにはいかず、そうなると米櫃を持って川と屋敷を往復するのも面倒、
さらに言えば見られて困る物を見られる可能性は無視できる程度に低い、との判断から招き入れる事にしたのだ。

「ああ、お米……十年ぶりの、お米……」

「美味しいねぇ……あー、この庭の風景といい、ヒノクニを思い出すなぁ……」

 一口目の米を飲み下した瞬間、姉妹揃って恍惚に身を震わせた。
 そして和風に造られた庭の空気を肺一杯に吸い込み、はふう、と息を吐いた。
 よほど嬉しかったのか、彼女らはそれから一分近く動かなかった。

「喜んでもらえたようで何よりだ」

「そりゃあ喜びますよ。この大陸じゃ、お米なんてほぼ無いんですから。
しかもこのお米すっごい甘味とコクがあって、これ単独でも何杯もお代わりできそうですもん!
もー、懐かしいわ美味しいわ、最っっっ高ですよ!」

 自らの言葉を証明するかのように、雫はパクパクと白米の飯だけを口に放り込んでいく。
 特に無理をしている様子はなく、むしろ米の甘味に恍惚としている。
 どうやら白米の味を思う存分楽しんでいるらしい。

 それを見ながら、海人は食べかけのまま持ってきた御重を開けた。

「よければこっちも食べるか?」

「……梅干、沢庵、千枚漬け――さらには和菓子!?
ああ、素敵です! この大陸でこんな物が食べられるなんて!」

 梅干を軽く摘み、それと白米の相性を確かめる雫。
 口に入れた途端、彼女の体は感動に打ち震え、美味しい、を連呼しながらパクパクと食べ始めた。
 その目の前の物全てを食べ尽くしそうな食べっぷりに海人が呆気にとられていると、

「え、遠慮を知らぬ妹で申し訳ありません! 雫、落ち着け!」

 刹那が頭を下げ、残像すら残している妹の右手を掴んで止めた。
 それで我に返ったのか、雫が申し訳なさそうに縮こまった。
 
「いやいや、構わんよ。あれだけ喜んでくれるとこちらとしても嬉しい。
二人共、遠慮せず好きなだけ食べるといい」

 その言葉に、雫は嬉しそうに頷き、先程と同様のペースで、
刹那はゆっくりと、だが一口当たりを大きくして豪快に食べ始めた。
 海人だけは普通のペースで、魚の味をじっくりと楽しんだ。

 程なくして食べ物が欠片も無くなると、雫は食事に手を合わせて御馳走様をした後、コロンと地面に寝転がった。
 その表情は実に満足そうに微笑んでいる。
 
「……うう~食べた食べたぁ~」

「ご馳走様でした、海人殿」

 雫とは対照的に、刹那は食べ終えると正座したまま深々と海人に頭を下げた。
 その動きはなんとも優雅で、礼儀作法の手本とも言うべき礼であった。

 それに応えるように海人も座り直し、頭を下げる。

「こちらこそ、ご馳走様。雫嬢の焼いた魚の塩加減は実に絶妙だった」

「ふっふっふ、焼き魚には少し自信があるんですよ」

 コロンと起き上がりながら、自慢げに薄い胸を張る雫。
 そしてしばし他愛の無い雑談をしていると、ふと刹那が首を傾げた。
 
「そういえば海人殿。こちらのお屋敷、使用人の姿が見当たりませんが……」

「ああ、少し事情があってな。当面は私だけの一人暮らしなんだ」

「そうなのですか……立ち入った事を聞きました、お許しください」

 言葉を濁した海人に対し、刹那は静々と頭を下げた。
 軽い会釈ではあるが、なんとなく深い反省を感じさせる造作であった。

「いやいや、大した理由じゃないからそんな畏まる必要はないぞ。
……そういえば君らはあんなところで何をしてたんだ?」

「ちょっとした修行で~す。たまに森の中の魔物狩ったり薬草採取しながらお姉ちゃんと組手してたんですよ」

「修行……というと傭兵か冒険者かな?」

「一応冒険者をしております。と言っても修行が主目的なのでそれほど仕事はしていないのですが」

「変わっとるな。普通は目的があって修行するのだと思うんだが」

「う~む、拙者共の場合、強いて言えば強くなること自体が目的になるんでしょうか……」

 少し考え込みながら、答える。
 だが、考え込んではいても、その瞳に迷いは無い。
 刹那の意志の強さを感じ取り、海人は感心したように頷いた。

「……なるほど、それなら納得できる。となると、武器も強い物を探したりするのかな?」

「鋭いですね~。実を言うと今回は鍛錬ついでにこの森の奥地で採れるミドガルズ鉱石を探すのが目的だったんですよ。
良い武具は喉から手が出るほど欲しいんですけど、やっぱり町で買うと材料費が高くつきますから」

「それは感心。で、見つかったのかね?」

「それが全然なんですよ~。手当たり次第にいろんな所掘りまくったんですけど、欠片も見当たらないんです。
代わりにお姉ちゃんがこんな珍しい物見つけましたけど」

 ごそごそと腰に下げていた袋から、やや青味がかった緑色の草を取り出す。
 それを見て、海人の顔色がにわかに変わった。

「……まさかとは思うが、ロゼルアード草か?」

「へえ~、見る機会なんてあんまり無いのに良くご存知ですね」

 海人の称賛するような、それでいてどこか引き攣った顔を見て、雫が感心する。
 彼の表情はこの草がどういう物かきちんと知っているからこそ出るものだった。

「以前図鑑で見ただけで、実物は初めて見たがな。
確かに珍しいよなぁ……見つけようとしても見つかる物ではないと思うんだが」

「ですよねえ」

「む、雫。そんなに珍しい草なら高く売れるんじゃないのか?」

 二人の態度に、刹那がそんな考えを思いつく。
 稀少な品種であれば、毒草であっても高く売れる事はままあるのだ。
 が、なぜか海人の反応が鈍い。気まずそうに目を逸らしている。
 そんな彼を尻目に、雫が楽しそうに笑いつつ、解説を始めた。

「まあ、確かに高く売れるかもしれないけど――伝手が無いとねえ」

「伝手?」

「これは百何十年前にガーナブレストの国王暗殺に使われた事もある、ヒュドラの毒の十倍とも言われる猛毒の草でな。
昔は対モンスター用に売買されていたらしいが、今はこの近隣諸国では取引禁止。
この国で売るとすれば闇商人相手ぐらいしかあるまいよ」

 軽く肩を竦め、海人が解説した。
 ちなみに希少性が高い理由は、その後数度各国の国王暗殺に用いられ、不吉な草として種の根絶やしが行われたからである。
 そして、ロゼルアード草は元々この近隣諸国で少数生えているだけの草であったため、あっという間に歴史から姿を消した。

「ぶっ!?」

 海人の淡々とした説明に、刹那は噴出した。
 慌てて妹の方に視線を向けると、彼女は実に爽やかでありながらも悪意に満ちた笑みを浮かべていた。

「これを普通に食材にしようとした人間がいたって聞いたらどう思います?」

 小悪魔のような笑みのまま、雫は海人に問うた。
 彼女の楽しそうな笑みに海人は言わんとする事を察し、それに乗った。

「そんな人間がいるのか? だとすれば無知とは恐ろしい、としか言いようが無いな」

 あえて素知らぬ顔をして、大仰に天を仰ぐ。
 無駄に見事な演技力のせいで、約一名すっかり冷や汗だらだらで縮こまっている。
 予想以上の成果を上げてくれた男に心で称賛を送りつつ、雫はこれみよがしに頷いた。 

「うんうん、本当に無知って怖いですよねぇ」

 その言葉と同時に雫と海人は沈痛そうな面持ちで頷き合った。
 もはや顔を上げる事も出来なくなっていた刹那だったが、ふとした拍子に二人の口元が見えた。 
 なんとも意地悪げに楽しそうに釣りあがった口唇が。
 
「だあああっ! 悪かったから絡むな! 二人共無事だったんだから良いだろうが!
海人殿も悪乗りなさらないでください!」

 からかわれていた事に気づいた刹那が、涙目になりながら性悪二人に食ってかかる。
 この女性、凛然とした造形とは裏腹に性格は妙に可愛らしい側面があるらしかった。
 
「悪かった悪かった。だが刹那嬢、君は雫嬢の知識に感謝せねばならんぞ。
こんな物食ってたら間違いなく命は無――」

「あ、食べましたよ。よりにもよって魔物の肉のステーキの臭み消しにすり潰して使いやがったんで、この馬鹿姉。
いやー、危険感じて肉体強化強めるのがあと一分遅れてたら流石に死んでましたねー」

「どういう体しとるんだ、君らは!?」

 からからと笑う雫と、涙目だが平然としている刹那に、海人は戦慄を禁じえなかった。

 図鑑で読んだ知識にしかすぎないが、ロゼルアード草の毒性が恐ろしく強い事だけは間違いない。
 なにしろ、昔は大概の毒が通じない中位ドラゴン退治に用いられていたという猛毒。
 しかもそれで絶命させると肉が毒に冒されて食えなくなってしまうというおまけ付。

 魔力による肉体強化の出鱈目さは知っていたつもりだが、まだ甘かった、と認識を改めさせられていた。
  
「あはは、修行の賜物でーす。さて、ご飯も終わった事だし、そろそろお暇しよっか。
早めに他の収穫売りに行かないとカナールのお店が閉まっちゃうだろうし」

 立ち上がりながら、空を指差す。
 日が暮れるには少し早いが、ここから一番近い町に行くにしても、あまり安心できる時間帯ではない。
 現在彼女らは手持ちの金が少なく、店が閉まってしまうと必然的に野宿になってしまうのだ。

 軽く頷いて刹那も立ち上がろうとしたところで、ふと動きが止まった。
 
「雫。食器ぐらいは洗って……」 
 
「ああ、気にするな。ここからカナールだと距離があるからな。急ぐに越した事は無いだろ」

 海人がそう言って刹那の言葉を遮ると、冒険者姉妹は短く感謝を述べ、揃って一礼した。
 なんのかんので礼儀正しい二人に感心しつつ、彼は門まで二人を送った。

「では、気をつけ……っと、そうだ。カナールで食事をするなら『リトルハピネス』という店がお勧めだ。
あそこは米を扱っているし、やや濃い目だが料理の味もかなりのものだぞ」

 二人が去り際に一礼しようとした瞬間、海人が付け加えた。 

「そんなお店が!? 何から何までありがとうございます!」

「なに、たまたま思い出しただけだ。では今度こそ、気をつけてな」

「はい! 機会があればまたお会いしましょう」

「それじゃ、海人さん、お元気で~」

 冒険者姉妹は揃って最後に一礼すると、ゆっくりと歩き始める。
 そしてある程度距離が空いた所で、一気に駆け出した。
 彼女らが一瞬前まで立っていた場所には凄まじい土埃が立ち上がっている。

「……これはまた凄い。大した達人だな、あの二人は」

 ギリギリで自分に届いていない土埃を見ながら、海人は屋敷へと戻った。



テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

なんだかんだで更新するのが遅れるんじゃないかなーとか思ってましたゴメンナサイ
カイトは新たなフラグを立ててルミナスに説教食らうんですねわかります
あと誤字報告
歩いて翌日→歩いて数日or歩いても帰るのは翌日
最初の方の町までの距離の部分です
[2010/04/18 00:47] URL | ten #BjIfNwW. [ 編集 ]


初めまして。
いつも楽しませていただいてます。

思ったんですが・・・シェリスの家にたくさんの図鑑があるのに知らないということはカイトの作る果物が図鑑に載ってないってことですよね。
そしたらカイトの果物を不審に思わないんですか??
創造魔法があるにしても一度食べたりしなきゃいけないわけだし、もし秘境にあると考えても魔法の存在を知ったのはシェリスにあってからじゃないですか。
[2010/04/18 02:22] URL | umi #- [ 編集 ]

おつかれさまです
この世界の人間って…
現実では個体における人間というのは動物の中で最も弱いとされていますが、この世界では個体でも動物で最強であるという人間も存在するんじゃないだろうか?

オーガスト老なんか(ある意味)個体最強ですがw

この二人が特殊なのかローラ、ルミナス、シリル辺りでも似たようなことができるのかが謎ですね。オーガストは……たぶんできるんじゃね?
[2010/04/18 10:40] URL | とある人 #- [ 編集 ]


更新お疲れ様です

肉のない生活とは続くとなかなか辛そうですね
というかこれは海人のように自分ですぐに食料を調達できる状態じゃないと餓死する立地条件なのでは……
結局一般人はどうやって魚を取るのでしょう
あ、屋敷の値段的に一般人は普通はこの川に関わらないのか
釣りするだけなら他を選びそうですし

新キャラ2名登場ですね!
あの屋敷からそうそうでない海人とこの後どのように関わっていくのか楽しみです
きっと最近の海人の不幸スキルが発動して巻き込まれるのでしょう
ただ、この章はルミナスもシリルも活躍(登場?)できないのでしょうかねー?

次回の更新も楽しみにしています
[2010/04/18 12:30] URL | 華羅巣 #zR7lJLBY [ 編集 ]

更新が早いっ(歓喜/失礼)
新キャラ様二名ご案内~ってこれまたとんでもスペックな二人ですねぇ…

しかも名前とか出身地的にも一波乱ありそうですし…


そしてカイトはさりげなくリトルハピネスの売り上げに貢献…


にしてもルミナスやシリルの二名は第3章では出番の方はあるのでしょうか?

それとも新キャラメインで消えty…ジョウダンデスデバンハアリマスヨネ?ソウダトイッテクダサイマセ…(どこからともなく殺気が届いたらしい)


それはともかく(現実逃避)これからの展開に期待をしつつ待ってます。
[2010/04/18 14:24] URL | リョウ #- [ 編集 ]


竿が駄目でタモも駄目、でなぜ投網を使おうとしないんでしょうね?
[2010/04/18 14:40] URL | meo #TY.N/4k. [ 編集 ]


更新お疲れ様です。
新キャラ登場ですねぇ。
ヒノクニ出身ですかね?
それにしても本当にどんな体の作りしてるんだろう・・・
対モンスター用の毒てwww
・・・ふとカイトはこの毒草も創造できるようになったんだろうか・・・
いつしかケミカルウェポンと呼ばれる日が来そうですなぁwww
[2010/04/18 16:01] URL | ズー #B1FehmyE [ 編集 ]


一人で寂しがってたり、魚が獲れなかったりと、やや弱体化してますなカイトくんw
魚に関してはカイトの能力からすれば、いくらでもやりようがあった気がして、ちと違和感がありましたが、新キャラとの絡みの部分で必要だったのかなとw

新キャラもなかなか魅力がありそうで期待しつつ、次回を楽しみにしています。
[2010/04/18 18:09] URL | レキ #64TjWBNY [ 編集 ]


一人で寂しがるのは、一話の冒頭のことを考えればありえなくもないと思うのですが・・・・・・。
あと、ルミナスはやっぱり自覚してないだけですよね? さっさと気づいても、海人の過去を知っている以上アプローチはかけづらいでしょうし。
新キャラのことを知っての嫉妬が鍵になるのかな? 
[2010/04/18 18:46] URL | ぼるてっかー #RwH1dyjc [ 編集 ]

初めまして
いつも楽しく読ませていただいております。
いつもはROMしていたのですが、少し疑問に思いましたので書き込みさせていただきました。
1人で暮らしはじめたら、シェリルの書類仕事お手伝いするとのことでしたが、
もう連絡はしているのでしょうか?
肉類が捕れないのであれば、報酬の一部を肉類でもらえばよかったのではないかなあと思ったもので。
新キャラも出てきてさらに騒がしくなりそうな感じで楽しみにしています。
また、次回も期待しております。
[2010/04/19 07:20] URL | すち #mQop/nM. [ 編集 ]


いつも楽しく読んでます。
ふと思ったんですけど、カイトって音楽とか聞かないんでしょうか?
クラシックとかリラックスする時に聞いてそうなイメージが。
地球だと普通の音楽でも向こうだと新鮮な音楽になりそうな感じが。
でもカイトだったら自分で作曲とかしてそうで困る。
[2010/04/19 23:19] URL | 神楽 #NgDLdiQA [ 編集 ]

はじめまして
いつも楽しく読ませてもらっております、今回もご飯が出てきたことで思い出したことがありました。
私は以前、成田空港の近くの喫茶店でバイトをしていたのですが、場所柄外国人の方がよく来られましたその時ことなのですが、ランチを頼んだ彼ら彼女らはハンバーグに水をかけ
ご飯に塩をかけて食べてたのです吃驚して聞いてみたところハンバーグは塩辛くてご飯には味が無いというのです。
おかずという概念が無いので一緒に食べるということをしないというのです。
それを思い出したとき、ゲイツの母君が味付けを濃くしてご飯に合わせるというのをしたときに、ご飯に慣れていない客が水と塩をかけたりしたんじゃないかな~と思ったりしました。
[2010/04/24 07:24] URL | アールグレイ #- [ 編集 ]


はじめまして~!
いつも楽しみにしています!
新しい章も先がどうなるやら気になりまくりです!
姉妹キャラも今後の活躍に期待。

ところで気になったことがあるんですが、防御魔法の低コスト化ができるのに魔力砲の低コスト化はできないんですか?魔力砲を術式化するとか。もしくは、魔力剣を短距離魔力砲(極太ビームサーベル)に改造するとか。
創造がコスト高すぎるから他に使うのはモッタイナイ!
[2010/04/25 04:21] URL | トマト #- [ 編集 ]


はじめまして、いつも楽しみにしております。

さて、今回の話では肉類の不足に苦しんでいますが、植物性素材だけでもそれなりのものができますよ。いわゆる精進のもどき料理です。
がんもどきや豆腐ハンバーグ、生麩を使った牛肉っぽいしぐれ煮、エリンギでアワビもどきの焼き物など案外バリエーション豊富です。

もっとも、海人さんの技術力があれば、タンパク質や調味料(アミノ酸など)から合成肉くらい作りそうですけど、目の前に川があるのでそこまで切羽詰まってなかったのでしょうね。
[2010/04/29 05:41] URL | 寝不足人 #spo8Xt6s [ 編集 ]


新章に入ったのかな

やっぱりキャラが立っていて魅力的だよね

魚も物凄く強い世界ってw

主人公のステータスだと最悪、一匹に絞ってマグロ漁みたいに長期戦じゃね
[2010/04/29 20:12] URL | か #OwgcZxnI [ 編集 ]


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