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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
白衣の英雄120
 エルガルド王城。
 建国以来一切変わらない、外壁の白が印象的な城。
 見るからに堅固そうな城でありながら無骨さはなくあるのは、威風堂々たる風格のみ。
 城という建造物の本来の役割である防衛機能に特化し、その隙の無さゆえの機能美と言われている。

 実績としても、エルガルド王国数百年の歴史において不落。
 未だかつて大軍が王都まで届いた事はなく、少数精鋭の部隊が届いた時は見事に撃退。
 まさにエルガルド王国栄光の歴史を象徴する、偉大なる城。
 
 ――――昨日までは、そうであった。

「あーもう……さっさと道開けなさいってば。
滅んだって国民の生活大して変わらないんなら、意地張る必要ないでしょうが。
無駄死にしたかないでしょ?」

 溜息を吐きながら、ルミナス・アークライトが立ちはだかる近衛騎士達を諭す。

 エルガルド王都は、既に隣国ベルガモール王国の軍に包囲されている。
 それに加えて、王城もベルガモールに雇われた傭兵団が侵入しているのだ。
 正門をぶち破ってきたのはルミナス達エアウォリアーズだけだが、
城の外壁からは他の傭兵団が突入しており、陥落は時間の問題。
 
 この場で近衛騎士達がどう足掻こうが、エルガルドの滅亡は動かない。

 そして、ベルガモール王国は公式にエルガルド王国民の生活保障を約束している。
 ただの口約束ではなく、周辺国家に向けてもその旨を文書で知らせているので、まず破られる事はない。
 ならば、ここで足掻いて死んだところで、無駄死ににしかならないはずだった。

 が、近衛騎士達の先頭に立っていた男は、ルミナスの言葉に怒声を返した。

「無駄なものか! 国王陛下達さえ御健在であればいつの日かエルガルド再ぐああああっ!?」

「……そーいう考え、マジで嫌いなのよね。
奪われたもの取り返す戦いって言えば聞こえ良いけど、平和に暮らしてる国民まで巻き込まれるの分かんない?」 

 左腕があった場所を押さえる騎士に、ルミナスは冷たい視線を向ける。

 亡国の王族が雌伏の時を経て国の再興。
 その国の民が虐げられているならば、美談だろう。
 力不足ゆえに果たせなかった王族の責を、遅ればせながら全うしたとも言える。

 が、民がそれまでと何ら変わりない生活を送れているのであれば、途端に唾棄すべき醜態に早変わりだ。

 どれほど上手く立ち回ろうが、それだけの事を起こせば犠牲は不可避。
 仮によりよい生活を民に与えられたとしても、喪われた人命の代わりにはならない。
 犠牲になった者達からすれば、その元王族達は平和を奪った怨敵にしかならないだろう。
「何を馬鹿な事を! エルガルド王国民がベルガモール如きに滅ぼされ、安穏と暮らせるわけがなかろうが!」

「そう思ってんのはあんたら上流階級だけよ。平民は生活が変わらなきゃ文句もない。
むしろその為に戦い起こそうなんて、ぶち殺しても飽きたんないわよ」

「誇りなき平民如きの感情など知っ……」

 最後まで言い終える事無く、左腕を失った騎士は命まで失った。
 修練を積んだ騎士に、挙動を悟らせる事なく必殺の斬撃を放ったルミナスによって。

「で、あんたらの方は――――聞くまでもない、と。よし、さっさと片付けるわよ」

 一斉に襲い掛かってきた近衛騎士達を見ながら、ルミナスは背後の部下達に指示を出す。
  
 待ってましたとばかりに、近衛騎士達に襲い掛かるルミナスの部下達。
 繰り出される武器を回避し、弾き、受け流し、一撃も受けぬまま攻撃を返し続ける。
 その攻撃は近衛騎士達のそれとは真逆に確実にダメージを与え、みるみる命を削っていく。
 ルミナスにいたっては、自分と相対した敵は一合も交えず叩き斬っていた。

 結果、僅か二分ほどでその場にいた近衛騎士達は全滅した。

「はあ……時間無駄にしたわね。指示とはいえ、面倒だわ」

 騎士達の残骸を見下ろし、ルミナスは億劫そうに息を吐く。

 先程の問答は、別に善意ではない。
 戦場で武器を構え、襲ってきた段階でそれは敵。
 通常ならば武器と戦意を捨てない限り、即斬り捨てている。

 ではなぜあんな問答をしたのかといえば、つまるところ雇い主の指示だ。

 今回の戦争において、ベルガモールは倒すべき相手を貴族階級以上に絞っている。
 幾度となくベルガモールに侵略を企てたのは彼らであって平民に責はない。
 そう公言し、実際ほぼその前提で軍事行動を行っていた。

 占領後もそれを続けるつもりのベルガモールにとって重要なのが、エルガルドの騎士達。

 ベルガモールは軍事力が特別高いわけではない為、占領後に自国の戦力を割くのは痛い。
 治安維持には引き続きエルガルドの騎士を使いたいところだが、一歩間違えれば反乱が起きる。
 
 ゆえに、あくまで努力目標としてだが全兵士に指示が出された。
 相対したエルガルドの騎士が、王の為に戦う者か民の為に戦う者かの確認を。
 前者であれば憂いの元として容赦不要、後者であれば可能な限り助命すべしと。 

「仕事の上で指示されている以上、やむなしかと。それに、さしたる浪費でもありませんわ」

 舌打ちするルミナスを宥めながら、シリル・メルティが懐中時計を確認する。

 無駄な会話ではあったが、長くはなかった。
 城門を破って一気に駆け抜けた分、まだまだ他の兵より先んじている。
 今回最大の大物である国王を捕獲する事に、何の支障もない。

 そう思っていた矢先、後方から怒涛の如き足音が響き始めた。

 振り返ってみれば、二十を超えるエルガルドの騎士達の姿。
 城内に待機していたものの、位置関係で駆けつけるのが遅れた騎士達なのだろう。
 遠目に仲間の亡骸を確認した途端雄叫びを上げ、さらに加速し始めた。 

「あちゃ……流石に背後取られたまんま前進はしたくないわね」

「であれば、私が殿を」

 すっ、と前に出るシリル。
 数多の騎士達の雄叫びにも、まるで動じる様子はない。

「何人必要?」

「一人で十分ですわ。我が愛槍を遠慮なく振るいますので」

 そう言って自分の槍を指差すシリルに、彼女の部下達は思わず目を見開いた。

 彼らとて、シリルの強さは十分すぎるほどに知っている。
 元々傭兵業界上位の実力者であったのに、今の力は更なる高み。
 弓使いゆえに接近されると弱体化していたのが、現在は接近戦こそが本領。
 接近戦で振るわれる槍術の冴えは、十年のブランクがあったなど誰も信じぬ領域だ。
  
 が、それでもあの数のエルガルドの騎士を一人で足止めするのは、難しいはずだった。

 ルミナスは落ち葉でも薙ぎ払うかの如く剣で蹴散らしているが、それは彼女だからこそ。
 若さに見合わぬ膨大な戦闘経験による先読みと敵を鎧ごと斬り捨てる攻撃力あってこその結果だ。
 流石のシリルもルミナス程の速度では仕留められないはずなので、数の差による不利は一気に肥大化する。
 負けるとまでは思わないが、用心の為に二人ぐらいは残しておくべきなはずだった。
 
「ふぅん……いいの?」

「どうせ時間の問題ですし、貰った物は使い倒すべきでしょう?」

 ころころと楽しそうに笑うシリル。
 そこに気負いは一切なく、むしろ余裕さえ感じさせた。

「――――なら、任せたわ。行くわよ」

 軽く頷くと、ルミナスは迫りくる敵兵達に背を向けて歩き始めた。

 ルミナスの部下達は流石に一瞬迷ったが、それでもすぐに彼女の後を追いかける。
 シリルは命を賭ける事はあっても、勝算なくそれをする事はない。
 なにより、ルミナスが大事な副官を無意味に危険に晒す事はない。
 
 詳細は不明であっても、強い勝算あっての事。
 彼らには、そう判断できる信頼関係があった。

「たかが一人で我らを足止めとは、舐められたものだな」

「いえ、そういうわけではないのですが。まあ、論より証拠。
時間もありませんので、どうぞまとめて死ににいらしてくださいませ」

 億劫そうに、シリルは左手の指で手招きする。
 右手で槍は握っているが、肩にかけたままで構えてすらいない。

「その慢心、あの世で悔やむがいい!」

 一人の騎士の怒声を合図に、一斉にシリルへと騎士達が殺到した。

 ただ殺到するのではなく、広い通路を活かして一部は回り込み、
あるいはシリルの横をすり抜けルミナス達を追いかけんとしている。 
 どう転んでも時間も人員も無駄にならない、賢明な判断だ。

 ――――尋常な相手であれば。
 
 シリルが軽く後ろに跳び、槍を構える。
 それを逃がすまい、と駆ける速度をさらに上げる騎士達。

 そして一人の騎士の槍がシリルに向かって伸びた時――――その柄が斬り飛ばされた。

 それに一瞬呆けた騎士に向かって、シリルは穂先を振るう。
 騎士は咄嗟に手元に残った槍でそれを防ごうとしたが、それは無意味。
 シリルの槍の穂先が騎士の柄をすり抜けるかのように斬り、そのまま首を刎ねた。

 あまりに非現実的な光景に騎士達の動きが一瞬止まるが、それは完全な愚行。
 その隙を逃さずシリルの槍が振るわれ、理不尽極まりない屠殺が実行される。
 技もへったくれもなく、ただふるった槍の穂先の軌道にある全てが両断された。
 鎧も、盾も、それが守っていた肉体さえも例外ではなく。 

 エルガルド騎士の装備は、決して粗悪ではない。
 それどころかエルガルドが誇る一流職人が個々に合った素材を見繕い、惜しみなくその技を振るった逸品。 
 大陸全土を見渡してもこのレベルの支給品はなかなかないだろう。

 それが、まるで何の役にも立たない。
 その残酷極まりない事実を受け止める前に、シリルに襲い掛かった騎士達の命は尽きた。
 
 そしてシリルは、優しく可憐に見える微笑みを向ける。
 運良く、あるいは運悪くシリルの槍の軌道上に居なかったエルガルドの騎士達に。
 
「さあ、残りの方々もどうぞ?
参考までに申し上げますと、逃げても背後から薙ぎ払います。
ですので、まだ立ち向かった方が生存率高いかと思いますわ。
残り短い人生、お好きなように使って下さいませ」

 花が咲くような笑みを浮かべ、シリルは非情な通告を行った。
 所詮は努力目標。ルミナスのように優しい手間をかけるつもりはない、と。 















 天地海人は応接間に通した客人を、困った顔で見つめていた。

 客人はシェリス・テオドシア・フォルン。
 この国の公爵家の令嬢であり、あちこちで暗躍しているやり手でもある。
 とはいえ、海人にとっては見慣れた相手であり、特に緊張する必要もない相手。
 その立場らしからぬ親しみやすさがあり、むしろ話していて楽しい相手だ。

 が――――今日の彼女の顔は、普段とは違った。

 普段の人の警戒心を緩めるような茶目っ気はなく、ただ毅然とした空気がある。
 公爵令嬢の名に相応しい厳かで凛とした、思わず背筋が伸びるような空気。

 そのままシェリスは、深々とテーブルに頭を擦りつけるように頭を下げた。

「先日は、誠に御迷惑をおかけいたしました。
そして、此度もこの国の為に多大な御助力をいただいた事、深く感謝いたします。
お詫びの品と謝礼の品を御用意いたしましたが、不足があればなんなりと仰ってください。
私に可能な限りは、応えさせていただきます」

 そう言って、シェリスは海人に二つの木箱を差し出した。
 銀で洒落た造形の装飾がされた木箱で、見るからに高級感がある。 

「それで君の気が済むなら受け取るが、今回も勝手に首を突っ込んだだけだ。
ついでに言えば、地下の古代遺跡は流石に予想不可能だろう」

 強い謝意を示し続けるシェリスに、海人は淡々と見解を述べる。

 シェリスが謝罪しているのは、先日の王都での事件。
 古代の術式盤によって引き起こされた、魔力で出来た獣や人型による無差別攻撃事件だ。

 そしてその事件の最大の問題点は、王都地下の古代遺跡。
 そこにあった巨大術式盤さえなければ、問題などなかった。
 エルガルドの手の者による被害はシェリス達に未然に防がれ、海人達は何事もなく観光を満喫できただろう。

 そして、その古代遺跡の存在を知らなかった事は、ある意味当然の事。 

 なにしろ、場所が王都の地下深く。
 それも下水道の深さなど比較にも値しない深度だ。
 掘り返す可能性など皆無に近く、仮に掘り返したとしても深すぎて手掛かりに引っかかる可能性さえない。
 その存在を示す文献などもない為、エルガルドの調査能力と幸運を称賛する他ないはずだった。 
 
「失態は失態です。やろうと思えば情報を掴ませてすぐに皆殺しも可能でした」

「少し泳がせておいて、繋がりを持つ連中を炙り出そうとしただけだろう?
古代遺跡の事を知らない状態では、むしろそうしない方が問題だ」

「そう言っていただけると助かりますが、今回はカイトさんの歓待が主目的でしたからね。
やはり万全を期して始末しておくべきでした」

「……ま、自分に厳しいのは悪い事ではないな。
とはいえ、どのみち私がやったのは決め手でしかない。
私に謝礼払うより、冒険者達に報いてやった方が良いと思うがな」

 軽い調子で言いながら、肩を竦める海人。

 先日の事件で海人が担ったのは、あくまで決め手。
 事件の元凶を破壊し終息させたのは事実だが、それだけでは被害は防げなかった。
 事件の規模の大きさに比して民間人の死者0というのは、騎士達と冒険者達の功績だ。

 騎士達はそれが仕事で給料を貰っているが、冒険者達は有志。
 海人からすれば、良いところを持っていっただけの自分より、彼らにこそ報いるべきだと思えた。

 あえて空気を軽くした海人に対し、シェリスも纏う空気を緩める。
  
「そちらは王城で開催した晩餐会に招待し、報奨金も与えています。
数が多かったので、なかなか出費が痛かったですが」

「……そう言えば、冒険者といえばどの冒険者も自分達だけ逃げようとはしていませんでしたね。
さして強くない人間はともかく、腕の立つ人間については少々意外です」

「終盤はともかく、それまでは腕の立つ人間なら最後まで生き残る事は十分可能だった。
後を考えれば、そうそう逃げるわけにもいくまいよ」

 刹那が口に出した疑問に、海人が答える。
 その言葉に、シェリスの目が軽く見開かれた。

「あら、御存知だったんですか?」

「前、ゲイツが王都や特に大きい都市の依頼は現地の冒険者へ優先的に回されると言ってたからな。
余所者には大口の依頼は滅多に来ず、ゲイツでもカナールで待機してる方が十倍以上の確率で大口の依頼を受けられるとか。
自分達を見捨てた連中にその優遇が続くとは、余程の馬鹿以外考えんだろう」

 くっく、と低く笑う海人。
 
 冒険者ギルドは国に所属する組織ではないが、働いているのは現地の人間だ。
 有事に日頃優遇している冒険者たちに見捨てられれば、その後優遇する気持ちは失せるだろう。
 そして優遇を無くしたからといって、文句を言われる筋合いはない。
 冒険者の能力に応じて公平に扱っていると言われればそれまでだ。

 利に敏く、有能な冒険者であれば間違いなくそこは見落とさない。  
 無論死ぬ可能性の方が高いとなれば逃げ出すだろうが、今回は終盤までそこまでの事態にならなかった。

 逆にさして有能ではない冒険者だと、金色の獣達を突破して逃げられない。
 例え自分の身を守る為だけに戦っていても、実力不足と解釈される可能性が高いのだ。

「なるほど。そこもシェリス殿の仕込みで?」

「いえ、それについては父の功績です。
つまるところ、今回無事に終わったのは大半が貴方方の善意と父の恩恵によるもの。
まったく、我が身の未熟を恥じる他ありませんねぇ……」

 はあ、と物憂げに溜息を吐くシェリス。

 今回最大の功労者たる海人達は、偶然生じた善意の協力者。
 ありがたく感謝してもしきれないが、ただの幸運でしかない。 
 
 王都や大都市の冒険者達を、有事に民を護る為の手札とする為の優遇。
 これを考案したのは、シェリスの父であるフォルン公爵だ。

 シェリスとしては失態を幸運と善意と親の力でどうにか取り繕えたという感覚しかない。

「そうかな? 私達の後始末が出来ただけでも大したものだと思うが。
自分で言うのもなんだが、あれだけやらかした後始末は相当大変だったんじゃないか?」

「ふふ、そもそも契約がありますからね。義務を果たしたにすぎませんよ。
後手に回り続けた事は言い逃れのしようもありません」

 探るような海人に、シェリスは不敵な笑みを返す。

 海人の予想通り、彼らについての情報隠蔽は非常に大変だった。
 白装束の仮面戦士程度なら放置しても問題なかったが、その実績が問題だったのだ。

 有効な対策が見つからなかった金色の獣達への対策を迅速に発見。  
 騎士や冒険者達が手こずっていた金色の獣を瞬殺する強さ。
 タマと呼ばれていたらしい白装束は、最後に出現していた人型さえも次から次に消滅させていったという。 
 とどめに、地下深くにある古代遺跡の術式盤を上空からぶち抜く大魔法である。

 当然、数多の貴族達が調査と確保に動いた。

 放置するには恐ろしく、手中に収めれば強力極まりない手札である。
 確保に動くのは貴族として当然であり、むしろそうでなければ貴族にあるまじき怠惰だ。
 
 それを抑える為に、かなりの無茶を通した。

 城に忍び込んで秘密裏に国王と直接会談。
 父であるフォルン公爵の協力も得て、他の貴族への牽制。
 偽情報の流布で人数や戦力の詳細な情報をぼやかし、真実を曖昧化。 
 しつこく探りを入れてくるフォルン公爵を時間節約の為絞め落としもした。

 時間も金も手間もかかったが――――それは当たり前の事。

 海人とは、極力彼の情報を隠すという契約を結んでいる。
 彼が国に害をなさず、むしろ多大な益を与えている現状、それを破る事は許されない。
 
「謙虚な事だ。後手に回ったにしても、元凶は自分の手できっちり潰しただろうになぁ?」

「あら、今回のエルガルド滅亡には我が国は一切関わっておりませんよ?」

 探るような海人の視線に、きょとんとした顔をするシェリス。
 そんなシェリスに対し、海人は思わず苦笑した。

「表向きには、だろう? 他にも動機を持つ国が多い中、ベルガモール王国は都合が良すぎないかね?
しかも王都の一件から宣戦布告までが異常に早かった」

 節穴ではないぞ、とシェリスを見る海人。

 今回のエルガルド滅亡は、このシュッツブルグに都合が良すぎる。
 滅ぼしたベルガモール王国はシュッツブルグとは友好関係にあり、食糧自給率が高い。
 ついでに言えば好戦的な国でもなく、ここ百五十年程は侵略戦争をした事がなかった。
  
 それが今回エルガルドを滅ぼしたのは、かの国が先王の時代にベルガモールに幾度も侵略を企てていたからだ。
 その理由もグランベルズとの衝突に備えて実り豊かな土地を確保しておきたいなどの、身勝手なものばかり。
 
 エルガルドを滅ぼしてシュッツブルグと隣接する国としては、おおよそ理想的。
 例えばこれがグランベルズであれば、エルガルドが滅びた途端、拡大した国境を活用して侵略される危険が激増する。
 かの国は強大な軍事力に加え、度重なる侵略戦争で領土を拡大してきたという実績があるのだ。
 エルガルドに隣接する他の国も、グランベルズ程ではないがシュッツブルグに牙を剥く可能性が高い国ばかり。

 そんな中で、決して軍事力に優れているわけではないベルガモールが滅ぼした、というのは偶然にしては出来すぎている。  

「やはり露骨すぎました?」

「状況的にはな。証拠さえ残ってなければいくらでもこじつけられるだろう。
ま、いずれにせよルクガイア滅亡から今回のエルガルド滅亡まで。
この国にとってはおおよそ理想的な状況の推移だったな。大したものだ」

「理想的、ですか?」

 海人の言葉に、雫が首を傾げる。

「ああ。今回ベルガモールがエルガルドを滅ぼした事で、隣接する国家が友好的な国ばかりになった。
北のグランベルズが懸念材料だが、ガーナブレストとの同盟関係がある以上そうそう攻めてはこれん。
欲を言えばガーナブレストがルクガイアを滅ぼしてくれるのが最善だったんだろうがな」

「……あー、なるほどガーナブレストとグランベルズが接するからですか」

「加えて、この国の国土が広くならん分戦力を集中できる。
とはいえ、ガーナブレストは元々豊かだし軍は少数精鋭だからな。
ルクガイア占領となると旨味が少なく、なにより人手が足りん。
現実的な理想は実現できたと言っていいだろう」

「そう言っていただけると嬉しいです。まあ、仰るようにグランベルズは依然懸念材料ですが」

「……やはり、危険かね?」

「いえ、現状は荒地などの開墾による食糧生産力の向上に注力してますので問題ないでしょう。
食糧事情が完全に解決されてしまった場合は、安心できませんが」

 ふう、と溜息を吐くシェリス。

 グランベルズ帝国は、シュッツブルグにとって最大の懸念事項だ。
 近年は国民の食糧事情を改善に注力しているが、元は侵略戦争常習犯。
 その軍事力は未だ強化され続けており、常に侵略の可能性を考えておく必要がある。
 
 ガーナブレストとの同盟は非常に大きな抑止力だが、それとて完全ではない。
 グランベルズ軍最大の長所はその頭数なので、ガーナブレストから友軍を送られても防ぎきれない可能性がある。
 いかに強い戦士であろうと、視界にすら入らない距離の敵は倒せないのだ。
 
「ま、気にしすぎても仕方あるまい。君らなら、打てる限りの手は打ってるだろうしな。
ところで、これ中身は何なんだ?」

 そう言って、海人は最初にシェリスが差し出した二つの箱を指差した。

「お詫びの方は地下遺跡の術式盤に使用されていた金属。謝礼の方は地下遺跡の調査資料です。
御要望であれば、人目につかず直接調査出来るよう取り計らいもいたしますよ」

「……ありがたいが、相当苦労したんじゃないか?」

 しれっと答えるシェリスに、驚いた目を向ける海人。

 件の地下遺跡の術式盤は、間違いなく古代遺産の大当たりに分類される。
 それなりに時間が経っているので調査が終わっている事は驚く程ではないが、
極秘情報レベルであろうそれを海人に持ってきた、というのは驚く他ない。
 その術式盤に使われていた金属の実物もセットとなれば、尚の事だ。

「いいえ。どちらも調査員に部下を紛れ込ませてくすねただけです。
それに、調査資料の方は碌な情報が出てませんので」

「そうなのか? ふむ……いや、悪くない情報量だと思うが? 流石に遺跡の仕組みまでは望めまい」

 資料に軽く目を通し、海人は首を傾げる。
 
 大絶賛する程ではないが、十分すぎる情報量だ。
 先日散々手こずらせてくれた術式盤の術式は、海人が吹き飛ばした部分以外は完全。
 術式それ自体もだが、どの程度の深さで刻まれているかも詳細に記してある。

 術式盤に辿り着くまでにある遺跡のギミックについては記されていないが、これは仕方ない。
 古代遺跡に仕掛けられた装置というのは、ほとんどが分解しようとすると何らかの形で崩壊する仕組みになっている。
 脱出用のショートカットの仕掛けでさえ一度使えば二度と使えず、使う前に分解しようとするとその途端機能を失う。
 例外は最奥部に隠された古代遺産ぐらいのものである。

 それを考えれば、この資料は上出来だった。

「肝心の術式盤が欠けてしまってますし、その部分の推論もないですから。
厳密には、術式全体が推論すら出来ない程に理解不能なのですが」

「……なるほど。私には十分使えるから大丈夫だ。
正直、貰いすぎな気がするぐらいにありがたい」

 シェリスの言葉の意味を悟り、海人は軽く頷きながら言葉を返す。

 それは慰めではなく、単なる事実。
 海人の知識は、既に魔法学研究の時間を何百年も進めている。
 他の学者には見当もつかなくとも、海人なら話は別だ。
 事実として、これまで出なかった案が既に何百と浮かんでいる。
 これまでまるで進展しなかった内容についてさえも。
 
 シェリスにとってはどうあれ、海人にとってはありがたい資料だった。

「それなら良かったです……ああ、そうそう。それとは別にカイトさんにお届け物があります」

「届け物?」

「ええ。ルミナスさんからの手紙です」

 どうぞ、とシェリスは海人に便箋を差し出した。

「ほう? 珍しいな」
 
 便箋を受け取ると、海人は開封し中身を読み始める。
 ほんの数秒で読み終わり、海人はなにやら興味深そうに頷いた。

「…………つくづく珍しいな」

「どうかなさいました?」

「いや、エアウォリアーズでこの屋敷に来たがってるのが何人かいるようでな。
連れてきてもいいか、という話だ。シェリス嬢、ルミナスに返信を届ける事は可能か?」

 言いながら、シェリスに視線を向ける海人。

 海人としては、別に断る理由もない。
 むしろ多くの人間と会話できる機会は、願ってもないぐらいだ。

 が、ルミナスの性格からして、無許可で仲間を連れて押しかける事は考えにくい。

 海人から連絡しなければ、仲間をどこかの町で待機させ、自分達が屋敷に来て確認するという手法を取るだろう。
 それは非常に面倒だし、待たされるであろうルミナスの仲間達に申し訳ない。
 なので、可能であればさっさと返信を返したいところだった。 

「ええ、何日でどこに着くかも書いてありましたので問題ないですよ」

「では、すまないが頼む」

 そう言うと、海人はテーブルから便箋と紙を取り出し、返信を書き始めた。
















 十日後。ルミナスとシリルの姿がシュッツブルグの平原にあった。

 彼女らの傍らには、大きな荷馬車が一台。
 木製のそれは年季の入った風貌だが、危うさは感じない。
 むしろ長い年月を経た大木の如き風格がある。

 そこに腰かけながら、ルミナスはのんびりと伸びをしていた。

「ん~、久々に帰ってきた感じがするわね~」

「実際、久しぶりですわ。無駄に時間かかりましたもの」

 まったく、と鼻を鳴らすシリル。

 シリルからすれば、今回の対エルガルド戦は無駄に長い戦いだった。
 一般的な戦争としては非常に短く、近年の大陸史ではルクガイア滅亡時のそれに次ぐ程だったが、
エルガルド王国上層部次第ではさらに短くなる可能性が高かったのだ。

 そもそも、開戦直後に大勢は決していた。

 宣戦布告と同時に、ベルガモール王国との国境にエルガルドは王国の第一軍を派遣。
 国力低下を抑える為、最大かつ最強の戦力で一気に片付ける意図だったのだろうが、これが裏目に出た。
 最前線に、ベルガモール王国側の戦力としてエアウォリアーズがいたからだ。

 数は一桁上で、練度も十分すぎる兵士達ではあったが、相手が悪すぎた。
 初日で全力突撃を敢行する大胆さと、それがまぎれもない策として機能する実力。
 大将首こそ取れなかったものの、名のある騎士達が何人も討ち取られ、エルガルドの士気は一気に落ちた。
 反対にベルガモール軍はエアウォリアーズの噂以上の活躍に士気が向上し、その勢いのまま戦線を押し上げた。
 
 ――――賢明な指揮官であれば、ここで撤退を考えただろう。

 ベルガモール王国軍は、見事に波に乗っていた。
 向上した士気の赴くまま、腰が引けたエルガルド軍に果敢な突撃。
 犠牲も少なくなかったが、その三倍以上の犠牲をエルガルド軍に強要した。

 そして、最初に突撃したエアウォリアーズの損害は、軽傷者十五名。
 その軽傷もかすり傷レベルであり、戦力低下は皆無と言っても過言ではない。

 が、敵指揮官はその場での立て直しを図った。
 後日捕縛した際の尋問によると、あそこまでやられてただ撤退する方が最終的な士気に関わると判断したらしい。
 
 間違った判断とも言い切れないが、結果としてはこれが致命傷。
 ベルガモール軍は勝利を重ねて極めて高い士気を維持、対してエルガルド軍は敗北を重ねてどんどん士気が落ちる。 
 連戦連勝に勢いづいたベルガモール軍に伏兵などの罠を仕掛けもしたが、それすらも危険に敏感な傭兵達が察知して事前に対処。
 やる事成す事裏目に出続けた挙句、最後には王都まで押し込まれた。
 とどめに王都で国王が徹底抗戦を叫び、王城での最終決戦となったのだ。

 とはいえ、ルミナスはそれについてはさして文句もなかった。

「いいじゃないの。おかげで褒賞金たんまりもらえたわけだし」

 今回稼いだ金額を思い出し、思わずにやけるルミナス。

 初日で叩き落とした手柄首は、実に十。
 どれもかつてベルガモールへの侵略で大きな被害を生んだ者ばかり。
 恨み骨髄のそれらにベルガモールが掛けた金は非常に大きかった。
 
 その後も戦うたび手柄首を取り続けたが、極めつけはやはり国王捕縛。
 公開処刑にしたがっていたベルガモールの喜びようは尋常ではなく、報奨金もそれに見合っていた。

 一刻も早く金を貯めて傭兵を引退したいルミナスとしては、喜ぶべき事だった。
   
「団長と副団長が稼ぐ機会譲ってくれたのは忘れちゃ駄目っすよ?
今回はシリルさんのお祝いの意味もあっての特別処置っすからね?」

 突如、先程までこの場にいなかったはずの声が響く。
 が、ルミナスもシリルも慌てる事無く、声の主に視線を向けた。 

「忘れちゃいないわよ。ってか、あんた付いてきて問題ないわけ?」

 振り返りながら声の主―――アンリエッタ・マーキュレイに訊ねるルミナス。

 エアウォリアーズ第二部隊の隊長である彼女は、基本的に年中忙しい。
 張り巡らせた情報網を使いつつ、より良い仕事を探して東奔西走。
 給料もその分高いが、使う暇が非常に少ない人物でもある。

 それが、ルミナスとシリルの休暇についてくるというのは、少々不安を抱かざるをえなかった。

「次の仕事の候補は絞ってありますし、どれも優良案件。
部下も良い具合に育ってきてるんで、そろそろ任せてやる頃合でもあるんっすよ」

「ならいいけどね。実りがあるかは怪しい、ってか多分ないわよ?」

 不敵に笑うアンリに、ルミナスは一応忠告をする。

 アンリの目当ては、分かりきっていた。
 もう一人の同僚であるケルヴィン・マクギネス。
 彼が理性を失う程に気に入ったソース焼きそばという料理のレシピを手に入れる事だ。

 とはいえ、その交渉相手は海人。
 寛容ではあるが、譲らない時は絶対に譲らない男だ。
 一度失敗している以上、二度目で成功する可能性はほぼない。
 
「いえいえ、先日はレシピに固執しすぎたのも敗因っすからね。
要はあの馬鹿犬の手綱を握れればいい、それを失念したのは失態でした」

「あー……それなら案外成功するかも。問題は値段だけど、あんたなら余裕あるだろうし。
ってか、ケルヴィン達遅いわね」

 懐中時計の時刻を確認し、ルミナスが首を傾げる。

 現在ここにいない同僚は、海人からの返信を聞いて文字通り飛び上がって喜んだ。
 気に入っていたようだから、今度はたっぷりとソース焼きそばの材料を用意しておくと書いてあったのだ。

 そしてそこまでされて何もなしでは男が廃る、と先程手土産を用意しに行った。
 ケルヴィンがそこまで気に入った料理に興味津々な部下達を引きつれて。

 と言っても、予定しているのはさして珍しい手土産でもない。

 少し離れた山に生息している、ブラッディボアという魔物。
 味はさしたるものでもないが、肉だけは特筆すべき点がある。
 少々手間と材料費をかけて干し肉にすると、酒と抜群に合うのだ。
 知る者はあまり多くないそれを是非味わってもらおうと、狩りに行ったのである。

 強さとしては例え百匹いてもケルヴィン達の脅威にはならないはずなのだが、それにしては妙に遅かった。 

「あの馬鹿の事っすから、別口で良いもん引き当てたはいいものの、苦戦してるとかじゃないっすかね?」

「ケルヴィンに加えて部下までいて苦戦するとか、大事件だと思うけどねぇ……」

 アンリの予想に、ルミナスは否定的な見解を返す。

 ケルヴィンは、仮にもエアウォリアーズ第三部隊の隊長だ。
 同僚二人に勝てぬ事とシリルの大躍進で最近今一つ団内での評価が芳しくないが、それでも超人。
 付け加えれば、能力的には傭兵以上に大物狙いの冒険者の方が向いてそうな男でもある。

 それが部下付き、それも全部隊混成とはいえ部下付きで苦戦するとなると、中位ドラゴン程度の力では収まらない。
 間違いなく発覚と同時にこの近隣の町で大騒ぎが起き、場合によっては外出すら制限されるレベルだ。
 
 とはいえ、あれで時間は守る男なので、この遅れはそれぐらいしか考えられないのも事実。
 
 何があったのやら、と考えていると、三人の知覚に高速で接近する気配が引っ掛かった。
 それは本来人間どころか速度自慢の魔物ですら短時間では踏破できない三人の警戒範囲を、みるみる侵していく。
 その尋常ならざる速度に、思わずそれぞれの得物を構える三人。 

 が、その気配の主たちの姿が見えた瞬間―――――ルミナスとシリルは武器を下ろした。
 それを見たアンリが思わず目を丸くするが、ルミナスが苦笑しながら大丈夫と手を振るのみ。

 程なくして相手がルミナス達の姿に気づき、徐々に速度を緩め、彼女らの真横で停止した。

「ルミナスさん、シリルさん、お久しぶりです」

 そう言って騎獣であるフェンから降り、挨拶するのはラクリア・ベルゼスティアード・トレンドラ。
 エルガルドより前に滅ぼされたルクガイア王家唯一の生き残りである。

「お久しぶり。急いでるみたいだけど、何かあったの?」

「……その、実はこの子に乗ってる状態でケルヴィンさん達と遭遇しまして」

 フェンの体を撫でてやりながら、言葉を濁すラクリア。
 その態度を見て、ルミナスが軽く顔を顰めた。
 
「あー……もしかして、一緒にいた誰かに喧嘩売られた?」

 心配そうに、ラクリアの顔を覗き込むルミナス。

 隠してはいるが、ラクリアの正体は騎獣であるフェンを見れば一目瞭然。
 カイザーウルフを騎獣にしている人間は、旧ルクガイア王家のみだからだ。

 そして、以前ルミナスを含むエアウォリアーズは、ラクリアの捜索で散々徒労を味わった経験がある。
 時間が経っているとはいえ、元々血の気の多い連中の事、八つ当たりをした可能性は否定できなかった。

「いえとんでもありません! 話がややこしくなるからと、とりあえず逃げるよう勧められたんです!
ですが、追いかけようとされたケルヴィンさんを皆さん総がかりで抑えてらしたんですが……大丈夫でしょうか?」

「ああ、それは心配しなくて大丈夫よ。
部下に袋叩きにされた程度でどうこうなるやつじゃないし、部下の方も怪我する前にとっとと逃げるから。
これからシェリスのとこ?」

「ええ。エルガルド滅亡でまた情勢が変化したので、話を伺いに行こうかと」

「そ。まあ、改めてケルヴィンと話そうと思ったら、カイトの屋敷に来なさい。
話しやすい状態にしとくから」
   
「ありがとうございます。では、日暮前には着きたいので、失礼いたします」

 ぺこりと頭を下げると、ラクリアは軽やかにフェンの巨躯に飛び乗り、再び駆けていった。
 その姿は実に様になっており、最近まで箱入りの王女様だったとはとても思えない。

 そんな後姿を眺めながら、それまで黙っていたアンリがルミナスに問いかける。

「……ルミナスさん? あれ、ラクリア王女っすよね?」

「そうよ。話に聞いてた通りか、それ以上に良い子なのよね。
ちょっと世間ずれしなさすぎてるのが心配だけど」

「そっすか。ちなみに、あの馬鹿がこの国で会ったラスリナさんとかいう人に惚れたって報告があったんっすけど?」

「お察しの通り偽名使ってたラクリア王女なのよね、これが」

「実際どうっすかね?」

「さあ? 私の見立てじゃ見込みなしだけど」

 アンリの問いに、あっさりと答えるルミナス。

 ルミナスが見た限り、ラクリアとケルヴィンが結ばれる可能性は極めて低い。
 ケルヴィンは熱を上げているが、ラクリアの方はいたってクール。
 好感自体はありそうだが、せいぜい良き友人止まりにしか思えない。

 むしろ、健気に尽くしているクセに態度が捻くれすぎて悟られていない誰かさんの方が、
余程見込みがあるように思えた。

「……なんすか、その目は?」

「べっつにー? さっさと素直になりゃいいのになんて思ってないわよ~?」

「……仮にそうだとしても、ルミナスさんの方がよっぽど深刻だと思うっすけどねー?
相手、あの完璧超人なんでしょ? 勝ち目ほぼ潰れてるっすよ」

 からかうように笑うルミナスに、辛辣な言葉を浴びせるアンリ。
 痛い所を突かれ、ルミナスは思わず呻いた。  
 
「ぐっ……!? な、何年も進展ない誰かさんよりはマシじゃないかしら?」

「はっはっはー。久しぶりにマジで一戦やるっすかー?」

 苦し紛れなルミナスの言葉に、アンリが笑顔のまま武器に手を伸ばそうとしたところで、

「はい、そこまでですわ。馬鹿が荷物背負って戻ってきましたわよ」

 シリルがパンパンと手を叩き、西の方を指差した。 
 ルミナスとアンリがそちらに目を向けると、ボロボロになったケルヴィン達の姿。

「すまねえ、待たせた……はぁ……」

「何かあったの?」

 素知らぬ顔をして問いかけるルミナス。
 その問いに、疲れきった彼女の部下が答える。

「あー……ちょっとめんどくさい話絡むんで、移動しながら話しましょう。
つっても、大した話じゃないんですけど……」 

 肩を竦め、ルミナスの部下は先程あった話をしながら荷馬車を引き始めた。



コメント

自分達の王都の地下遺跡の存在が予想外…何かしら資料が残ってなかったのは若干不自然ですが…エルガルドの歴史がシュッツブルグや王都そのもののより大分古いならわからなくもないかな?
海人の屋敷に傭兵団からの複数のお客ねぇ……もし団長、副団長が来たら一波乱ありそうだなぁ

追伸
キャロットケーキとかの野菜を使ったスイーツネタはいかがでしょうか?
[2019/09/23 06:43] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


>しつこく探りを入れてくるフォルン公爵を時間節約の為絞め落としもした。

実の父を絞め落としてまで守ってくれるとは……
頼もしい(恐ろしい)ですね。
[2019/09/23 13:54] URL | リゼルグ #- [ 編集 ]


亡国の王族が雌伏の時を経て国の再興。
 その国の民が虐げられているならば、美談だろう。
 力不足ゆえに果たせなかった王族の責を、遅ればせながら全うしたとも言える。

 が、民がそれまでと何ら変わりない生活を送れているのであれば、途端に唾棄すべき醜態に早変わりだ。

 どれほど上手く立ち回ろうが、それだけの事を起こせば犠牲は不可避。
 仮によりよい生活を民に与えられたとしても、喪われた人命の代わりにはならない。
 犠牲になった者達からすれば、その元王族達は平和を奪った怨敵にしかならないだろう。

これ、同じ暮らしなら自分たちも当てはまるだろうに
[2019/09/23 20:35] URL | #- [ 編集 ]

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[2019/09/30 16:02] | # [ 編集 ]


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