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ラノベを目指してみよう
グース・カピーこと九重十造が人様を楽しませられるレベルの文章を目指して色々書き連ねる場所です。          軽く楽しく読める話を書ければいいなと思ってます。
番外編。日曜更新できそうにないため、前倒しさせていただきます。
というわけで番外編です。
毎度おなじみ思いつきの定番ネタになります。
諸事情で日曜更新できる状況になさそうなので、代わりに本日更新させていただきます。

そして前回書き忘れたのですが、コメントは全て目を通していますが、
非公開コメントについては原則コメント返しなしという事にさせていただいています。
もしコメント返しご希望の場合は、その旨書いていただくようお願いいたします。


では、コメント返しさせていただきます。


コスモさん

実はあまり宗教事情詳しくないので、あれは完全思い付きだったりします(汗)
昔からある宗教だと、むしろ影響受けてない娯楽作品の方が少なそうですよね。

そうめんネタ……話広げるのが難しそう……流しそうめんならいけるか? ちょっと考えてみます(汗)

サイべリアンさん

書籍で御存知になった……本になったんだなぁ、という実感が湧いてきますね。
更新速度遅いですが、気長に楽しんでいただけますと幸いです。


次話ですが、一応お盆休みがあるので、そこで可能な限り書き進めたいと思っています。
最新話の修正については、おそらく次回にやると思います。

では、今回も数多くの方の御来訪ありがとうございました。
気が向いた方は『続きを読む』で番外編をお楽しみください。







 番外編



 海人は、屋敷の中庭で日光浴に興じていた。
 
 気温は高く、日差しを遮る雲もない、まるで焼けた鉄板の上の如き気候。
 湿度こそ低いが、御世辞にも快適とは言えない環境だ。

 が、今日の海人にとっては、これがなかなか心地良かった。

 地下室で長々研究に勤しんでいると、海人も徐々に陰気が溜まってくる。
 それは研究時の思考に影響を及ぼす事もままあるので、定期的に発散した方が望ましい。 

 その発散手段として、この日光浴はもってこいなのだ。
 
 目を閉じて尚、これでもかとその威光を知らしめる太陽の輝き。
 もはや暑いというより熱いと呼ぶべき灼熱だが、それが心身の弱った部分を浄化してくれるように思える。
 ビタミン生成など健康面での利点もあるが、そういう小賢しい事をすっ飛ばして単純に気持ちが良い。

 海人がそうして日光浴を満喫していると、唐突に日光が遮られた。
 
「気持ち良さそうですねー?」

「ああ、なかなか心地よいぞ。君もどうだ?」

 柔らかい雫の声に対し、海人はゆっくりと目を開け、彼女を日光浴に誘う。
 普段の雫なら二つ返事で乗ってくるのだが、今日は違った。
  
「ん~……今の気分はごろ寝よりお茶と御茶菓子です。海人さんもどうです?」

 言いながら、雫は持ってきた木桶とお盆を海人の前に掲げた。

 木桶の中に入っていたのは、大量の氷とそこに埋まった大きな瓶と3つのグラス。
 瓶の中には鮮やかな緑色の液体――――水出しの緑茶が入っていた。
 グラスは無色透明でシンプルな物だが、造形に高級感が漂っている。
 そしてお盆の上には、丁寧に和紙で包まれた色とりどりの干菓子。

 雫が暑い日に好む定番のセットの一つだ。

「ふむ……そうだな。充分のんびりしたし、いただこうか」

「はいはい、少々お待ちを~♪」

 むくりと身を起こした海人に気分を良くして、雫はお茶の準備を始めた。

 グラスに付いた水を素早く丁寧に拭い去り、そこに緑茶を注ぐ。
 陽光を浴びたグラスが輝き、緑茶の緑が何とも映える。
 
 次いで懐から取り出した懐紙に干菓子を乗せ、グラスと一緒に海人へ差し出した。

「ありがとう……うむ、美味いな」

「ぷはぁ~……熱々のお茶と茶菓子も捨てがたいですけどねー」

 緑茶を飲み、揃って満足気な息を吐く海人と雫。

 何よりも先に立つのは、キンキンに冷えたその温度。
 灼熱の如き気候の中で味わうこの冷たさは、それだけで御馳走だ。
 香りは吹き抜ける風の如く、清涼かつ余計な余韻がない。
 味はほんの微かな甘みと、それを程良く引き立てる苦みのバランスが絶妙。
 
 ついつい、二人共干菓子の存在を忘れて一気にグラスを空にしてしまう。

「いやはや、暑い日に冷たい飲み物は魔物だな」

「ですねー。でも、干菓子食べた後に飲むとこれがまた格別なんですよねぇ……」

 言いながら、雫は干菓子を一つ口の中に放り込んだ。

 舌の上でみるみる溶けていく干菓子。
 一瞬前まで固形物だったとは思えぬ程、さらさらと消えていく。
 砂糖らしい強い甘さも同様に、まるで夢か幻のように。
 干菓子が消えた後その余韻を残すのは、口の中の僅かな渇きぐらいのもの。

 そこに、雫は注ぎ足した緑茶を再び煽る。

 渇きは瞬く間に洗い流され、口中に残るほんの僅かな甘みと緑茶の味わいが絡み合い、
また新たな味わいが生まれた。

 あっという間に消えてしまう儚い味わいだが、これがまた美味い。
 
「くぅ~~! たまらないですねぇ!」

「幸せそうで何よりだが……なんというか、反応がおっさんくさいな」

「ほほう? 面白い事を仰いますね? 今のあたしをみてどこがおっさんくさいと?」

「……外見による補正は恐ろしいよなぁ」

 挑むように顔を覗き込んでくる雫に対し、海人は思わず遠い目になる。

 先程の雫の仕草は、仕事帰りにビールを一気飲みする中年男性そのもの。
 よくぞここまでと言いたくなるほどに、らしい仕草だった。

 が、海人が実際に見た印象はまるで違う。

 まず、雫は紛れもない美少女である。
 顔の造形は可愛らしさたっぷりにとても整っており、非の打ちどころがない。
 それでいて、今回のような仕草だと年に似合わぬ妖艶さが漂う事もある。
 
 結果――背伸びした子供のような愛らしさに言い知れぬ艶が加わり、かなりの魅力が醸し出されていた。  

「ふっふっふ、なんといっても美少女ですからね! なにやっても映えるのです!」

「こないだシリル嬢にやった鼻フック試してみてもいいか?」

「あっはっは。あたしと肉弾戦やりたいんなら構いませんよ?
シリルさん程手加減上手くないですけどねー?」

「命が惜しいからやめておこう。そういえば、刹那はどうしたんだ?
食材は十分にあるから、狩りではないと思うんだが……」

 シュッシュッ、と素振りを始めた雫を宥めつつ、海人は首を傾げた。

 海人は先程地下室から出てきてから、刹那を見ていなかった。
 普段ならば、地下室にいない時は大概中庭にいるというのに。
 他に考えられる可能性として狩りがあるが、今は食材が十分にある。

 となると残る可能性は一つなのだが、だとすれば妙な事があった。

「ああ、お姉ちゃんなら……ん? んん? 
待った。海人さん、今日物が壊れる音聞きました?」

「聞いてないが……やはり掃除の練習か?」

「……はい。朝食の後、海人さんが地下室行ってからずっと。
もっと言えば、掃除練習部屋の一つから出てません」

 海人と雫が、揃って唸る。

 刹那の掃除技術は、改善された今でもまだ破滅的だ。
 その為、練習をしている時は最低でも一度は破壊音が聞こえる。
 朝食後からそろそろ昼食時というこの時間まで聞こえていないのは、異常だ。

「……ついに刹那が物を壊さなくなったか?」

「本気で言ってます?」

 海人の希望的観測を即座に全否定する雫。

 愛すべき姉ではあるが、これまでの所業を思えばその可能性はない。
 稀にではあるが、未だに花瓶を磨いて花瓶と窓ガラスを破壊する事があるぐらいなのだから。

 何が起きた、と二人が戦慄しながら考えを巡らせていると、刹那が駆け足で中庭にやってきた。
 
「海人殿っ! ついに、ついに物を壊さずに掃除ができました!
壁に罅も入っていませんし、床も抜けていませんし、花瓶も無事です!」

「……なるほど。寝ていた……いや待て。こんな時間帯に刹那が寝るか?」

「そもそもずっと気配動いてましたよ。
流石のお姉ちゃんも寝ながら動く程器用じゃないはずですけど。
でも、夢でもなきゃありえないですよねぇ……?」

「酷いっ!?」

 即座に夢と断定した二人に、刹那が涙目で抗議する。
 手間はかかったが、確かに一部屋綺麗に掃除しきったのだと。

 涙ながらの訴えに雫は疑心に満ちた目を向けていたが、
海人は半信半疑といった様子ながらも、とりあえず信じようと軽く頷いた。

「正直信じがたいが、事実であれば喜ばしい事だ。
百聞は一見に如かず。刹那、その掃除した部屋を見せてくれ」

「はっ! 是非お願いいたします!」

 主の提案に、刹那は自信満々といった様子で力強く頷いた。
 
 自分自身、綺麗に掃除出来た事が信じられず、何度も確認したのだ。
 部屋の壁も、天井も、床も、花瓶も、全て罅一つ入っていなかった。
 むしろ頑張って磨いた甲斐あって、どこも光り輝く程。
 
 あれならば確実に海人に褒めてもらえる。そう確信して。
  
 ――――部屋のドアを開けた衝撃でベッドの足が折れ、そこから連鎖して大惨事になるとも知らずに。
コメント

体を張った大惨事っぽいピタ◯ラスイッチとはやりますねぇ!(違)
しかし、これは当分は無理ですねぇ、ある意味仕方ないとはいえw

追伸
シェリスが食べる海人の料理、または創り出した材料を使った料理ネタはいかがでしょうか?
[2020/08/08 07:08] URL | コスモ #Y2SfxCmk [ 編集 ]


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